俺は天使、私は悪魔   作:naomi

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変わる日常

俺の名前は『御使琢磨(みつかいたくま)』

 

『日ノ本第一高校』という高校に通う高校2年生。

 

俺は常に人との関わりから一歩身を引き、人と深い関わりを持たないようにしている。

 

何故か

 

それはある時気がついた『俺にしか無い感覚』を他人からは信じてもらえないからだ。

 

『俺にしか無い感覚』それは…

 

 

 

それは俺が小学生の頃から始まった感覚だ。

 

その日俺は友達と遊びの帰り道、自販機で飲み物を買おうとした時だ。

 

自販機の飲み物が一気に2本出てきた。

 

「…1本多く出てきた」

 

どうするか考えていた時。

 

(貴方はお金を1本分しか入れていません。1本だけ持って行くべきです)

 

声が響いた。

 

「誰。」

 

(私は天使。貴方を正しき道へと導く者。ここで過ちを犯してはいけません。将来貴方は後悔します)

 

「やっぱりダメだよね」

 

(そんなの、この自販機がオンボロだから悪いんだ。2本持ってけよ)

 

「別の声。今度は何」

 

(俺は悪魔。この世の偽善からお前を解放する者だ、これはお前の責任じゃない。自販機が悪いんだ、だから2本持っていっていいんだよ)

 

「それも…そうだよね」

 

(いけません。1本買う対価しか払ってないので、1本だけ持っていくべきです)

 

(このポンコツ機械が悪いんだ。お前は悪くない。お前には2本持っていく権利があるんだよ…)

 

頭の中での言い争いはその日延々と続いた。

 

それ以来、事あるごとに頭の中で言い争いが続いてる。

 

そして今日も…

 

(琢磨さん。貴方は今健康的な身体です。ここはあのお婆さんに席を譲りましょう)

 

(お婆さんってピンピンしてるじゃねえか、席を座りたかったら空いてる席を探すし、時間も考える。別にわざわざ席を譲る必要はねーよ琢磨。)

 

(アクさん。また屁理屈を言って琢磨さんを惑わそうとしないで下さい。)

 

(お前こそ、琢磨が損するような偽善を提案して一時的な正義感に浸らせようとするんじゃねぇよテン。)

 

次は~~~。

 

(えっ、たっ琢磨さん)

 

(おいこの駅は目的地の駅じゃないぞ琢磨)

 

 

 

 

(おい琢磨。なんで全然関係ない場所で降りてるんだよ)

 

(それについてはアクさんに同意です。どうしてですか琢磨さん)

 

「あのままテンに従って席を譲って、年寄り扱いして怒られるのは嫌だし、アクに従って居座っても気分悪いから…降りた」

 

(だからって…)

 

(そういえばあの日も結局、1本も取らずに帰ったよな)

 

(…そういえばそうですね)

 

黙る2人。そうこいつらが表れて以来俺は不憫な日々を送っている。

 

テンに従えば正しい事をしたと優越感に浸れるがなんだか自分が損をした気分に

 

アクに従えば罪悪感はあるが自分が得をした気分に

 

それが、ある時から俺には煩わしくなっていた。そしてこの現象は俺以外の人には起こらないらしく

 

この話しをすると皆に引かれ、次第に人間関係を構築することを躊躇うようになっていた。

 

「出来ればお前達には静かにしていてほしいんだけどな」

 

思わず出た本音に2人は黙りこんだ。

 

(えっあの子)

 

突然テンが慌てた声を出す。

 

(あれはマズイぞ)

 

アクも珍しく焦っている…目の前では車道へ出たボールを追いかけてきた子どもが今にも車に轢かれそうになっていた。

 

(あっ琢磨さん)

 

(おい。琢磨)

 

俺はそこで目の前が真っ暗になった。

 

 

 

「お世話になりました」

 

「お大事に」

 

一週間の病院生活を経て、俺は日常生活に戻った。久しぶりに吸う外の空気を満喫していると

 

「退院おめでとう。お兄ちゃん」

 

妹の優(ゆう)が迎えに来てくれた。

 

「優。ありがとう」

 

「ビックリしたよ、お兄ちゃんが轢かれたって聞いたときは」

 

「迷惑かけたな」

 

「人手助けしたんでしょ…人に無関心なお兄ちゃんがって思ったけど、私誇らしいよ」

 

「優…」

 

「あっ…」

 

優は突然走って行った。その先では重そうな荷物を持って歩くお婆さんがいた。

 

(優のやつ偉いな、お前も助けに行こうぜ琢磨)

 

(優さんが行きました。ここは優さんに任せましょう)

 

久しぶりに聞く2人の声

 

(何言ってるんだ。ここは力のある琢磨がやるべきだろテン)

 

(いいえ。琢磨さんは病み上がりです。貴方は琢磨さんをまた病院送りにする気ですかアクさん)

 

…あれ、俺は違和感を感じた。

 

いつも肯定的な発言をしていたテンが否定的に、否定的な発言をしていたアクが肯定的な発言をしている。

 

(あれお前そんな黒かったっけテン)

 

(貴方こそそんなに白いお姿でしたかアクさん)

 

………えぇ~~~っ。

 

俺の日常はこれまでよりも煩わくなった。

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