その日は、透也は輝夜の家に行った。
「何でもある。なかったら買ってこい。」
彼の家の冷蔵庫の中には本当に何でもあった。透也は輝夜に許可を取り冷えてるエナジードリンクを出し、コップに入れる。
「眠れなくなるぞ。ってもう遅いか。」
輝夜が声をかけた時には、透也は一口飲んでいた。
「明日は俺は非番なの。」
警察になったといっても資格を持っていない透也は輝夜の半分の出勤で、武器も持たせてもらえなかった。
「もう警察になった気でいやがる。」
「なったからね。」
輝夜の家の空気が一瞬止まった。透也はもう一口のんで。
「しっかし不思議だよな~、エナジードリンク一つで姿も心も変わっちゃうんだから。」
透也は陸羽の変身を思い出して呟いた。
「俺たち仮面ライダーはさ、この缶一つ飲んだだけの人を倒してるわけじゃん。本当にそれが正義なのかって一瞬おもっちゃったな。」
「暴れるから、最悪の事態になる前に止める。それが警察の役目だ。」
「そういえば、あの人は?もう一人の...」
「ああ、あいつはこの前異動になった...異動になった....」
繰り返した時の輝夜の目は少し、うるんでいたように見えた。
「どうしたの?泣いてるの?」
「眠いだけだ。俺はもう寝る。布団しいてあるからお前も寝ろ。」
「はい。」
輝夜はコップに残っているウーロン茶を飲み干すと、寝室に行った。壁に貼ってある写真を眺める。
『輝夜さん!!』
写真の人は輝夜の相棒、いや、相棒だった人の斎藤白雪である。陸羽の事件の時に同行していた人だ。
「白雪姫は毒リンゴを食べて死んだ....食べる前に殺されてたらどうなってたんだろう...」
輝夜はベッドに横たわり深いため息をついた。
一方透也は、敷いてある布団に入り天井を見つめていた。
「親友....だったもんなぁ...」
透也には親友であった陸羽の使徒と化した姿が忘れられなかった。今もずっと頭の中でぐるぐる壊れたビデオのように同じシーンが流れている。
深夜四時、二人は全く同じタイミングで睡眠に入った。
朝。透也は輝夜にたたき起こされた。
「起きろ!いつまで寝てるんだ!」
「ん~もうちょっと寝かせて!俺非番だし!」
「何言ってんだ、今日は仲間に挨拶にいくんだぞ?」
「え?」
「ほら起きた起きた!朝ごはんできてるからさっさと食って!」
透也は急いで用意をして、輝夜の車に乗りこむ。
「シートベルト!」
遅れそうでイライラしている輝夜を横目に、透也は挨拶で何を言うか考えている。
「ねえ、俺達ってもしかして、MIU?」
「違う、MIUは機動捜査隊、俺達は特殊捜査隊。アルファベットはUIU。素人がなんでMIUを知ってる?」
「流行ってるじゃーん、MIU。面白かったね。第四機捜のドラマ~。」
「第四機捜なんて存在しないけど...」
「俺達404じゃないの?」「何の話だ。」「ドラマの話~。」
そんな話をしながら、駐車場に車を停めて彼らは大文字警察署の特殊捜査隊のオフィスへ入る。
「おはようございます。」「おはようございます!」
輝夜と透也がそこへ入ると、三人の男性が二人を迎え入れた。
「あ!この人が仮面ライダーですか?」
彼の名は本庄千里。変身はできないが学生時代に磨かれた剣術で使徒に立ち向かう。
「隊長!千里は今日は休みなんじゃないですか?」
輝夜が一番年上っぽい男に聞くとその男は答える。
「悪いね。でも千里くんが新隊員に会いたいって止まらないから...」
隊長、彼の名は奈良五右衛門。ついこの間の異動で入ってきた隊長であり、まだ彼らのことを完璧に知っているわけではないので腰がとても低い。
そして奥でずっとスマホをいじっているのが千里の相棒である、相楽呂樹。彼が警察になった理由は誰もわからない。いつもだるそうにしていて、捜査も言われたとおりにしか動かない。しかし千里は彼になついているので、それなりにいい仕事をしているのだろうと予想されているが、実際はわからない。
「こんにちは~、相楽呂樹さーん。」
透也が声をかけるが、呂樹は無視をする。
「ああ、相楽はそういうやつなんだ。慣れてくればわかるよ。」
五右衛門がいう。
透也はムっとして離れる。
「トウヤ、これがお前の制服だ。勤務時間以外は絶対に着るな。」
輝夜が透也にジャケットを渡す。それには《UIU》の三文字が書いてある。
「ねぇ、UIUってどういう意味?」
「UIU。Unique Investigative Unit。日本の中でもここ大文字署にしかない捜査隊だ。そもそも仮面ライダーになれるのがUIUの俺しかいないはずだった。でも日本でもう一人仮面ライダーになれるお前が現れたから斎藤の異動と同時にお前が俺の相棒になったんだ。今日はもう帰っていい。俺はお前に関する書類をかかなきゃいけないんだ。」
輝夜は急ぎ目に自分の机に書類を広げる。大変そうな輝夜を見た透也は変な返事を残して署の外へでた。
透也が外へ出たのを確認した千里が輝夜に報告する。
「瀬戸さん、帰りましたよ。今度は守れるといいですね。」
千里は机の上の白雪の写真を触る。
「冗談ですよ。ただ、ちょっと危なっかしい感じじゃないですか?如月さんもそうですけどなんかやらかしそうで。思っちゃっただけです。」
千里の優しい笑顔は少し怖かった。輝夜は一ミリも笑わず机の引き出しを開ける。
「トウヤは白雪と違って仮面ライダーだ。」
「仮面ライダーじゃないから、斎藤さんはああなった。」
千里が輝夜を煽ると、呂樹が何かを呟いた。しかし彼には聞こえなかったのか、千里は輝夜の肩をつかんで言う。
「仮面ライダーか違うかは関係ないんです。相棒は守らなきゃダメなんじゃないですか???」
輝夜は無言で肩の手を振り払い立ち、千里の胸倉をつかむ。
「ガキ、うるせえよ。」
その輝夜の言葉に腹が立ったのか、千里は無言で腹を殴る。
「うわっ!」
「やめろ!!!」
オフィスに呂樹の怒号が響く。二人は仕方なく自分の席に戻り、座る。
透也は署を出ると、まっすぐに近くのCDショップへ入った。
「うわっ、味がある!」
ジャンキーであり大人な雰囲気が、彼にぴったりである。
暫く彼が店内を徘徊していると、一人の女がイヤホンをポケットの中に入れた。どこか様子がおかしく、周りをきょろきょろ見ていた。透也はすかさず女の腕をとめた。
「けいさつです。」
女は余裕で透也に問う。
「手帳は?」
「ないけど警察なの。これ見て。」
彼は輝夜にもらったジャケットの文字を見せる。
「へぇ~、特殊捜査隊...仮面ライダーか!」「そう!」「じゃあ~...」
二人は笑顔で言い合う。そのとき女はカバンの中からエナジードリンクを出した。
「これ、なんだと思う?」
女が言った途端、透也の笑顔が消滅した。
「おい...」
透也が全力で飲むのを阻止しようとするが、女も力づくで飲み込んだ。
空になった缶が、床に落ちる。透也は絶望した顔で女を見つめる。しかし、何も起こらなかった。
「ん?今のはただのエナジードリンクだけど?イヤホンも返したし、警察が出てくる意味が分からないんだけど。」
「あんたなんか隠してるだろ。」
「おなか、気を付けたほうがいいよ。」
そういわれた透也は腹のほうを見る。女が、ナイフをそこに当てていた。
透也はすぐにドライバーを腰に巻く。すると女は服をめくり、腹を見せる。そこには見たことのないベルトが巻き付いていた。
「警察だ!!いますぐ全員店から出ろ!!!」
透也は叫ぶ。
女はエナジードリンクをもう一本出し、ベルトに差し込む。
「狂奏。」
ベルトのスイッチを押すと女の姿は変わった。
「使徒...?」
「私みたいなのは使徒じゃない。ウェイブさ。クレシェンドドリンクを全身に使うことで使徒の何十倍ものエネルギーを使うことができる。」
透也はトランスレコードをドライバーに入れ、変身する。
「変身!」
『Z!ORIGINAL! KAMEN RIDER!』
店のCDがすべて床に落ちた。