並行世界の先導者   作:Feldelt

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第十一話 白の大地へ

ルウィー及び七賢人によるラステイション襲撃から数週間。なんでもラステイションはルウィーと七賢人からの嫌がらせを国中のいたるところで受けてるらしく、クエストハンターたるボクもまた警備だとかその他もろもろの仕事をサクサク片づけていったわけだけれども。現状、プラネテューヌではそんなことは起こっていない。妨害するに足りないのが現状だもんね。

 

「出る杭は打たれるとはよく言うけど、ノワールさん、打たれすぎて、そして打たれ強すぎるね。」

「褒めてるのかそうでないのかわからないんだけど。あーもう!毎日毎日七賢人とルウィーの嫌がらせがひっきりなしに!いい加減にしてほしいわ全く!」

「……それをここで言うのはお門違いってものですよ。毎日毎日仕事終わって疲れてるときに愚痴を聞かされる身にもなってください。まぁ、言わなきゃやってられない心情は察するけど、さ。」

「うぅ、しょうがないじゃない!愚痴をこぼせる相手なんてここにしかいないんだもん!」

「あぁ、なるほどそういうことですか。」

「憐れまないでよ!もう!それもこれもルウィーと七賢人のせいだわ!」

 

また始まった……いい加減こっちも限界なんだよねぇ。

 

「他者の感情に少しだけ引っ張られやすいのも考え物かぁ、ね、プル。」

「うん……」

「……プル、いいよ。ちょっと懲らしめよっか。」

「ほぇ~?いいの~?」

「ボクの分も、よろしくね。」

 

それだけ言ってボクは立ち上がり、イストワールさんのところへ。

 

「今からプルがノワールさん懲らしめるんでボクたち二人は明日の分少しやっちゃいましょう。多分、ルウィーに行くことになるので。」

「夕さん、大変ですね……そのことであればお手伝いします。ちょうど彼からも来て欲しいとの連絡がありましたので。('ω')」

「彼……?」

 

と、ノワールさんの愚痴を背景に喋っていると、不意にプルが変身する。始まるか。

 

「だからこうして……って、何変身してるのよプルルート……」

「ボクが代わりに答えるとするなら、自業自得。じゃあね。」

「え、何?夕!?イストワールも!?なになになになに!?のわーーーーー!?」

 

 


 

 

 

なーんて悲鳴を皮切りに阿鼻叫喚の叫び声がプルの部屋から聞こえ始めてから二時間くらい。相当ストレスたまってたんだなぁなーんて思いながら、仕事をするわけだけど……ボクもまた例外ではなく。

 

「……休んだ方がいいですよ。夕さん。( ^^) _旦」

「ボクもそう思います。どのみちあの叫び声を聞いてたら仕事になりませんし……」

「プルルートさんのあれは本当に怖いですから……(+_+)」

「あれより怖いものも、ありますよ。」

 

お父さんが出す殺気に比べればまだまだ甘いもの……と、ついに叫び声が聞こえなくなった。

 

「終わった?」

「終わったようですね。プルルートさんが出てきましたよ(・ω・)」

「わぁ~、楽しかった~すっきりしたよ~」

「それは何より。それで、ノワールさんは?」

「ルウィーニイキマス、チョクセツ、モンクイッテキマス」

「見事に壊れてるね。いいんじゃないかな。」

「いいんですか!?(゚Д゚;)」

「一度くらい折れないと間違えたままとんでもないことをし続けるし、その末路を見てきたから……」

「時折聞く夕さんのその発言はすさまじいほどにリアリティがありますね……(; ・`д・´)」

「あはは、それじゃあ、ノワールさんが正気に戻り次第出発で。」

「彼との集合場所の座標を夕さんにお渡ししますね。('◇')ゞ」

「その、イストワールさん。彼って、協力者なんでしょうけど、名前とか教えてくれないんですか?」

「あぁ、夕さんには言ってませんでしたね。協力者はルウィーの前の大臣さんです。(*'ω'*)」

「ルウィーの大臣だった人……?」

「あたし覚えてるよ~、銀色の髪に~、青い目をしていて~、スーツが似合ってた男の人~。お名前はなんだっけ~」

「たしか、影とかいう名前だったはずよ。前の大臣。苗字は……そうだ、夕と同じ凍月。」

「え……?」

「ノワールちゃん戻った~、思ったより早かったかも~」

「何があったか思い出せないけど今の話の流れに入るとしたらこのタイミングしかなくて……って、どうしたのよ。夕。」

 

ノワールさんが正気に戻ったのは出発ができると言うことなんだけど、確か、ここにボクを呼ぶために転移門を作ったり、ちょくちょく情報をくれる協力者が、お父さんと同じ名前……?やってることはまんまお父さんがやりそうなことだから……こっちの次元のお父さんに今から会うの?

 

「凍月、影は……ボクのお父さんの名前、だよ。」

『えぇーーーーー!?』

 

 


 

 

拭い切れない衝撃と、会ってみたいという高揚感。そしてルウィーへ急ぐノワールさんに連れられるようにルウィーとラステイションを繋ぐダンジョンを通り、間もなく合流の座標に到着するところまできた。

 

「警備兵……合流地点まであと少しなのに……」

「でも待って、あの警備兵、動いてないわ。それに……座標と合致している。」

「賭けだけどボクが行くよ。」

「でもぉ~、本物の警備兵さんだったらど~するの~?」

「喉仏を押し込めばいいだけのこと。それじゃ、ちょっとそのメモ貸してね。」

 

メモをノワールさんから受け取り、警備兵らしき人の前に立つ。これ、人形……!

 

[認証コードを入力してください]

 

「えっと、メモに書かれてるこれを入れて……」

 

[コードを認証しました  1/3 残り60]

 

「え、それだけ?何も、起きない……?」

「夕!突っ立ってないで何が起きたのか説明して!」

「えっと、わからないけど……お父さんなら、二人ともボクのところへきて!早く!」

「わかった~」

「ちょ、プルルート!周囲の警戒ってもんを!」

 

なんていろいろ言いながらもすぐに来てくれるふたり。結果残りカウントが02となったところで3/3と表示され、足元が消える。

 

「え?」

『えぇぇぇ!?』

 

と叫びながら直下……ではなく何かしらのスロープを滑り、着いたのは地下のアジトみたいなところ。

 

「いたた……滑り台なんて子供の時以来だよ……」

「でもでも~、クッションがあって助かったぁ~」

「クッションじゃないわよ!二人とも降りて!」

「なんとぉ!?」

 

驚いて頓狂な声が出て、すっ転ぶ。やれやれ参った。

 

「わわ~、ゆ~ちゃん、だいじょ~ぶ~?」

「大丈夫大丈夫……それにしても、まるで秘密結社のアジトみたい……」

「そうね……奥の方に来い、てことなのかしら。」

 

スロープの先にあるのは細い通路。そして聞こえてくる足音。反射的に身構えるボクたち。

 

「わー、お兄ちゃんの言った通りの三人だ!ようこそ。ルウィーを取り戻すための戦いの前線基地へ。」

 

通路から出てきたのは、銀髪に、琥珀色の目をしたお姉さん。ボクより少し年上なのかな?ノワールさんとおなじくらい?

 

「ルウィーを取り戻すための戦い……お兄ちゃん……?」

「そーだったそーだった。自己紹介忘れてた。私は明。凍月明。ルウィー前大臣、凍月影の妹にして右腕!ま、実の妹じゃないんだけどね。みんなの話は聞いてるから、私についてきて。」

 

促されるまま明さんについていくと、その先にはたくさんのモニターとそのモニターを眺める男の人。あのシルエット……間違いない。

 

「おとう、さん?」

「……それは、当たらずとも遠からず。ようこそ。二国の女神と、向こうの少女。俺は影。凍月影。ルウィーの大臣だった男さ。」

 

立ち上がってこちらを見るその人は、間違いなくボクが知っているお父さんで、ボクの知らない、お父さんにそっくりな、お父さんと同じ名前の別人だった。

 

「わぁ~、ひさしぶり~」

「相変わらずほわほわしてるね、プルルート様は。近況は彼女から聞いている。きちんと仕事をしたらどうなんだ。まぁ、きちんと仕事をできない今の俺が言えたことでもないが……」

 

プルと談笑したのもつかの間、今度はノワールさんの方へ向かっていく。

 

「久しぶりだねノワール君。いや、今はラステイションのノワール様というべきか?」

「あなたに様付けされるのはむしろ違和感しかないわ。プラネテューヌの建国祝いをしてくれた時以来ね。大変だったんだからね、内政のノウハウを教えてくれるって話だったのに急に大臣変わってその話がなくなっちゃったんだから!」

「その節は迷惑をかけたよ。奴らが介入してくる隙を作ってしまったこちらの落ち度だ。さて、では本題だ。」

 

さらりと、ボクには何か話すことなくモニターへ戻っていく。ボクはそれがたまらなく嫌だった。別人だけど、直接声を聞くのはもう、3年ぶりだから。

 

「待って!」

「……俺は君の父親ではないよ。」

「わかってる。」

「……確かに、君をここへ呼び寄せたのは俺だ。七賢人の奴らの動きと、謎のエネルギーの揺らぎ、何かとんでもないことをしでかすと読んだからこそ奴らが襲った次元の君をこの次元まで連れてきた。本来なら、君は帰ってるはずなんだ。だが、君は己の意志でこの次元に残り、己の成したいことを成そうとしている。聞かせてくれ。君は、ここで何をしたい?」

 

前、お父さんに夢はあるかと聞かれたときのことを思い出す。何になりたいのか、何でありたいかなんてそんなこと、考えたこともなかった。けど。

 

「ボクは、目の前にある目標をただクリアすることを繰り返してきた。正直、帰りたくもあるけれど、せっかくプルやノワールさんに会ったんだし、もう少し一緒にいたいと一日一日願って、叶えてる。ボクは、まだここにいたい。」

「そうか。いい友達を持ったな。」

 

そうしてボクの頭を撫でてくれる手はそのまま、お父さんの優しい手そのものだった。

 

「お兄ちゃん私もなでなでしてー」

「よしよし、かわいい妹よ。」

 

その流れで明さんも撫でたところでお父さん、じゃなくて影さんは椅子に座って話し始める。

 

「今から話すのは、ルウィーの現状と七賢人がやってきそうなことの予想だ。これらは俺の予想だから鵜呑みにしてはいけないことだけ先に言っておく。」

 

沈黙。ボクたちはこれから何を聞かされるのだろうか。

 

「……結論から言えば、ルウィーは崩壊する。」

 

 




次回、第十二話「傾国のルウィー」

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