同化開放、それは大気中のシェアエナジーと同化して加速するボクの必殺技のうちのひとつ。ボクがボク自身を維持できるシェアエナジーが必要だから一定のシェア、つまりは信仰がないと使えないけど……この場で使わないならいつ使うともいえる必殺技。
「速い……!」
「教えてあげる、これは
「ということは……この速さはほぼテレポートということになりますわね……!」
「正解!」
縦横無尽に重力をはじめとした物理法則を無視した挙動をすることで相手を翻弄、ボコボコにする……と言いたかったけどさすがは女神。あと一手が詰め切れない。
「はぁ、はぁ……」
「息が上がってるよ?」
とっとと倒してしまいたいけれども、焦ってはだめだ。お父さんが言っていた、倒せそうな時ほど落ち着けって。ましてや相手は女神。まだ、終わってはくれない。
「それは、お互い様でしてよ!」
「ッ……!」
まだ動きにキレがある。これじゃあもう消耗戦だ。先にバテたほうがやられる。
「まだやってた……!」
「お互い、とんでもない体力ね。」
「ん~、ゆ~ちゃんもベールさんもぉ、まるで殺し合いみたいだよぉ~」
視界の端、三人の女神の三者三様の反応が耳に入る。同化解放は空間のシェアエナジーと同化するから発動中は空間の振動に強く反応する。人の声、風で揺れる葉、鍔迫り合いで金属のきしむ音……全部、全身に駆け巡る。だから長い時間は使えない。
「終わらせる、《
炎を纏った刀の四連撃。お父さんもお母さんも知らないボクだけの技。燃え尽きてしまえと、強く力を込めて放つ炎の技。
「くっ……きゃぁぁぁぁ!?」
四発目が直撃し、弾き飛ばす。でも、まだ足りない。
「追撃、《
今度は氷の四連撃。空中に跳ね上げられたのなら、女神と言えど無防備。全部直撃させて、叩き落す!
「……凍てついた月の光は、風すらも凍らせるんだよ。」
「……見事、ですわ……」
向こうの変身が解ける。……追撃はもういらないかな。
ボクも変身を解除して、草むらの方を見る。
「終わった、もう出てきていいよ。」
飛ばされた蒼陽を拾い、身体を伸ばす。全身痛い。
「夕、貴女本当に一人で戦って、一人で勝った、のね。」
「そうだね。ちゃんと強かった。言葉選びさえ間違えなかったら、心強いと思えるくらいには。でも、最初から印象が悪いんじゃ、開けないよ。心なんてさ。」
「……その行き過ぎた優しさ、なのかしらね。少しばかり制御してもらわないと胃が痛いわ。」
「胃が痛い、か。考えてみるよ、ノワールさん。ボクだって、怒りたくて怒るわけじゃないし。」
プルは向こうで伸びてるベールさんと話してる。……本当に優しいのはプルだよ。なんであんなのにまで。
「……帰ろう。疲れたし。」
そう言ったところ、ブランさんの情報端末にお父s……じゃなくて影さんから連絡が入る。
「……そう。あまり無視はできないわね。わかったわ。」
「どうしたのよブラン。」
「リーンボックスの中心部に七賢人が二人、暴れ始めたようよ。リーンボックスの外交官から連絡を貰ったそうね。」
「七賢人、か。たしかに無視はできないし、撃退すればここのシェアももらえる、か。」
「じゃあ、倒しに行こう。あんな連中は、もっと虫唾が走る悪なんだから……」
「……また、純粋すぎる殺気が漏れてるわね。」
七賢人の撃退が次のミッション。疲れたから早く帰って寝たいのに。
「先に行くね。……曲がりなりにもあれだって女神だし、連れてきてくれると今後が楽かも。」
「そうね。斥候を頼むわ。」
「うん、倒してくるけど。」
ボクはもう一回変身して飛ぶ。七賢人を倒すために。
「行かせていいの?」
「……どうせ止めても無駄だとわかっているわ。……若いというか、青いわね。ノワール以上に。」
「ちょっと!どさくさに紛れてなんか言ってるんじゃないわよ!」
「事実でしょう?でもそれより……何かとんでもないことになる前に、一度本気で夕を叱らないと危ない気がするわ。」
「それよりって……でもそうね。そう思うわ。」
次回、第十九話「虹臨、冥府の女王」
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