並行世界の先導者   作:Feldelt

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第十九話 虹臨、冥府の女王

空を駆け、戦場に降り立つ。

 

「ほう、貴様は……」

「誰だ貴様は!俺様の知らない女神だと!」

 

リーンボックスの中心部、七賢人マジェコンヌとコピリーエースの前にボクはコンソールフォルムで相対する。

 

「……別に、名乗るほどの価値があんたたちにはないでしょう?」

 

解析範囲内に二人はいる。もう、まとめて消し飛ばしてしまいたい。

 

「はっ、ずいぶんと大きく出たな小娘……後悔しても知らんぞ?」

「そっくりそのままお返しするよ。始めようか。再構築(リクリエイション)

 

戦場を作り変える、っていうと大げさだけど、再構築は解析範囲内の状態をボクが定義できるようにする技。ボクを中心とした半径2mのものならなんでも作り変えられる。もっとも、一度発動すると範囲が固定されるから逃げられると使えないんだけどね。

 

「なぬ、ぐおぉぉぉぉぉ!?」

「逃げたか……まぁ上々かな。」

 

図体が大きいコピリーエースの腕を分解し、距離を取られる。問題はない。

 

「コンバットフォルム、構築(クリエイション)。」

「その権能、やはり度が過ぎているとしか思えん。そこまでの力、代償がないわけではなかろう?」

「当然!」

 

羽を開き、構築した剣を両手に持ち、空を駆ける。まずは片方、ガラクタのほうから片づける!

 

「ぬぅ、来い!女神!」

「片腕がないガラクタに、ボクを止められると思いあがるな!」

 

図体がでかいから懐に入りやすい。あとは装甲の隙間に刃を突き立てるだけ。簡単!

 

「ぐぅ!」

「次!」

 

オバサンのほうへ飛ぶ。ボクへの弾幕は飛んできてる。切ったり避けたりして接近……できないか。

 

「どうした?わざわざ隙のある弾幕にしておいてやってるというのに。」

「うっざ……見え透いた罠に突っ込むと思う?このボクが、さぁ!」

 

プロセッサユニットから銃剣を取り出す。コンバットフォルムは接続した羽の部分が武装コンテナになり、欲しいと思った装備を構築して出してくれる。ボク自身の構築では作れない複雑なものを作ってくれるのがこれ。

 

「ロール、アウト!」

 

お父さんのような銃剣の二刀流。さすがにあのビットは準備できないからあの《希望なき弾雨(ホープレス・スコール)》はできないけれど。

 

「弾幕には弾幕を、ってさぁ!」

 

魔法とビームがぶつかり爆煙が辺り一帯を覆う。

 

「ここっ!」

 

弾幕が止んだ数瞬の後、爆煙を裂いて敵陣に突っ込む。

当然、突っ立ってるわけなんてないから攻撃はスカるんだけど……想定内。

 

「ふん、どこを狙っている!」

「なるほど、そっちね!」

 

空ぶった反動を活かして攻撃を避け、オバサンに向けて再び撃つ。

……なにか、おかしい。あの図体のコピリーエースが、有視界範囲内にいない。

 

「後ろ!」

 

風の動きと感覚から、何かしらの迷彩を纏った状態でコピリーが攻撃してきたとわかった。が、微妙に反応が遅かった。直撃はしないまでも掠ったとも言えない当たり方をした。

 

「ぐっ……」

「気づいたか、だがもう遅い!コピリィィィィ!ナァァァックル!」

 

姿勢制御の間に直撃コース。なんとか武器を間に挟むけど……!

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

衝撃は消しきれない。吹き飛ばされる。

 

「ガラクタの分際で……!」

 

結構飛ばされた。受け身はとれてるけど痛い。

体勢を立て直して……と思った矢先に声がかかる。

 

「夕?」

「ノワールさん……やっと着いたんですね。ちょうどいいタイミングです。」

「え、あ、そうなの?そう……」

「……何かありました?ボクはガラクタに吹き飛ばされたのでここから戦場までちょっと距離があります。」

「……そう。七賢人は二人……戦場に今そいつらしかいないなら早く戻った方がいいわね。」

「ですね。ところで、ブランさんとプルは?」

「二人とベールは別行動よ。先に教会に行って挟撃するみたい。」

「……そうですか。」

 

……挟撃、か。悪くないし、ボクがうまく的になればさくっと倒せる。

 

「わかりました。それじゃあ急いで飛びましょう。七賢人の頭数をとっとと減らさないと……」

「……本当に、怖い顔をするわね……」

 

 


 

 

「……一発当てたこと、褒めてあげるよ。」

「けれど、一人相手に一発しか当てられなかったんじゃあ、七賢人もそこまでね。」

「ぬ、ようやく戻ってきたと思ったら女神が増えおって……」

「年貢の納め時ってやつだよ。あー、コピリー。1+1は?」

 

戦場にノワールさんと戻る。まだヒリヒリと痛むけど、表情には出ない。そんなとき、二人の女神の気配を感じたから気を引いてみる。

 

「2だッ!おい!馬鹿にしてるのか!」

「2+2は?」

「……4だッ!」

「……」

「4……だよな、マジェコンヌ!」

「そのくらいの計算で自信をなくしてどうする!だから貴様はガラクタなのだ!」

「何をぉ!?」

 

ここまできれいに決まるともう笑っちゃう。言い争いをしてる間に舞台は整った。

 

「正解ッ!行くぞッ!」

 

抜刀。突撃。教会の方からもブランさんとプル……じゃない。ベールさんが戦場に現れる。あれ、プルは?……まぁいいか。意識の外からの挟撃。絶大な隙を突く挟撃。あとはもう、赤子の手をひねるくらい簡単だ。簡単すぎて……あっけなかった。つまらないと思うほどに。

 

「……状況終了。オバサンには逃げられたしガラクタも全壊にはできなかったなぁ。まぁいいや。それじゃあもうここには用なんてないし……ボクは帰るよ。」

「夕……この状況を見て何も思わないわけ?」

「ボクの仕事じゃないよ。ボクはこの国の女神じゃない。ブランさんやノワールさんの国なら手伝うけれど、ね。」

「七賢人を撃退したのは?」

「ボクがあいつらを消し炭にしたかっただけだよ。ここのためにやったことじゃない。」

「……そう。なら貴女は、女神としてはふさわしくないわね。」

「もしかして、ケンカ、売ってる?ブランさん。買うけどさ。」

「そうかもしれないわね。でも、私以上の適任がいるわ。そうでしょう?プルルート。」

 

刹那、鳥肌が全身を駆け巡る。お父さんから感じたそれとは全く違う、でもそうとしか言えない寒気。それは恐怖。

 

「ッ……!」

 

銃剣をクロスして、蛇腹剣の攻撃を弾く。前ちょっかいをかけてきた時とは全く違う、遊びを感じない一撃。

 

「プル……」

「あらあら夕ちゃん、ダメよ防いじゃ……あたしがもぉっと求めたくなるじゃない。」

「……今の、そこそこ威力が乗っていたよ。それがプルの楽しみだというのなら……刃を向けることをいとわない。お互い、躊躇ったらやられるだけ。」

「いい目をしているわねぇ、ゾクゾクしちゃうわぁ。だ・か・らぁ……」

 

構える。どこから来てもいいように。張りつめた緊張。止まらない鳥肌。間違いない。今までで一番、過酷な戦いだ。

 

 

「楽しい楽しいお説教の時間になりそう、ねぇッ!」

 

 

 

 




次回、第二十話「影伸びるもまた夕刻」

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