「ゆーちゃん。...今私がゆーちゃんのために準備できるのはここまで。私の大剣をベースに作った短剣、『紅月』とえー君の銃剣をもとに作った短剣、『蒼陽』。そしてゆーちゃんの動きを活かせるように服飾タイプにした霊装・霞。...まぁある程度の防御力と機動力支援ができる服みたいなものかな。そして...えー君のシャドウ-Cをもとにゆーちゃんが持ちやすいように素材や大きさなどを調整した銃、『グロウ-C』。一発しか入らないけど威力は据え置きだから...ここぞというときに使うことをおすすめするよ。えー君みたいに特殊な弾丸を何発も撃ったりはしないだろうからね。」
「うん、わかった。」
「...いいんだね、ゆーちゃん。」
ゆーちゃんの目はもう、戦いに向かう...それこそ何度も見た、えー君の目をしている。それが、私を安心と同時に不安にさせる。ゆーちゃんも、えー君のようにならないか、と。
「...さすがに心配しすぎかな...」
「大丈夫だよ、お母さん。ボクが選んだことだから。」
「っ......!」
ゆーちゃんのその言葉を聞いたとき、気づけば私はゆーちゃんを抱きしめていた。...親子だなぁ...まさかほんとにえー君みたいなことを言うとは...とも思ったし、同時に本当にえー君みたいになりそうで...心配で心配でしょうがない。
「お母さん...」
「...大丈夫、だとは思うんだけどね。...どーしても、えー君のように...お父さんのように、傷ついてこないのか、何事もなく帰ってきてくれるのか...心配で、ね。」
「...うん。大丈夫。...ボクは、お父さんほど強くないから。」
「10歳の娘にそんなことを言わせるなんてね...えー君はほんと...どうしようもない人だ。だから私がそばにいてあげないと...」
ゆーちゃんの両肩を掴み、最後に私は一言言う。これだけは言わなきゃ。
「...絶対、帰ってきてね。」
「うん!」
...快活な顔でゆーちゃんは返事をする。...えー君を送り出した時も...こんな顔をしていた。怖いなぁ...やっぱり怖い。だって、今でこそえー君はここにいるけど、あの時は帰ってこなかったんだから...
「...考えすぎかな...いや、考えすぎじゃないかもしれない...でも...」
『茜!』
沈み行く私の思考はえー君からの通信が来たことで遮られる。
「どーしたの、えー君。」
『今頃...夕と俺を重ねて暮れていた頃だと思ってな。』
「...まさか私が読まれる側になるなんてね。」
『...夕は、俺ほど強くない。だから大丈夫だ。もしもの時は...いや、耐えられなければ壊れてくれる。そしてまた立ち直れる。』
「そういう問題なの...?てかえー君、戦闘は大丈夫なの?」
『義眼の演算の時間が限界を迎えたところだ...フル稼働をもう一度できるまで3600秒。』
「大丈夫なのそれ...?でも待って、それじゃあえー君、けっこうまずいんじゃないの?」
『あー...減ったとはいえ結構まずい。』
「じゃあ私も行くからもう少し頑張ってね!」
『その必要はないよ!アクティブ!』
「うっそゆーちゃん!?確かに装備に慣らすことは大事だと言ったけど...!あーもう、えー君に似ちゃいけないとこ似てない!?」
どんでん返しな状況に私は頭が痛くなるも、今ゆーちゃんがまだ別次元に旅立たないのなら...私は向こうに行くまでの準備と把握をしないと。
「...はがゆいなぁ...」
「夕!?」
空中を駆けるお父さんとネプギアさんの戦場に、ボクも羽ばたく。
「空中戦はさすがに初めてだから...でも!」
お母さんのくれた武器、紅月と蒼陽はアクティブと宣言すると権能として紅い氷と蒼い炎を顕現しながら戦える。空を飛ぶ感覚は凄い楽しいんだけど...同時に感じるのは緊張感。
「そこっ!」
まずは一体...けどこれ多すぎるよ...
「って、やばっ!」
直後、ボクの背後に二本のビームが走る。どうやらボクの背中を狙って敵が攻撃してきたみたい。あっぶなかった...
「突出しすぎだ、夕。調整が終わったら早めに引っ込んでくれ。向こうに行く前に怪我されては困る。」
「う、うん。わかったよお父さん!」
「影さん...!そこまで言わなくても!」
ここはお父さんの戦場だ...ボクはまだ戦闘経験も浅い。だから、場数を踏んだお父さんには従わなきゃなんだけど...でも!
「せぇい!からの、《フレイミィアーチ》!」
お父さんの背後に迫っていた敵を蒼陽の炎で焼き切る。
「...やるな...いや、こっちが鈍ったか...いずれにせよ、夕!時間がない...わけではないがもう十分だろう。あとは自分で慣らすといい。...ギア、少し持たせてくれるか?」
「いけます。だって私は...」
「あんまり気負うな...とは言えないな......頼むぞ。」
「はい。」
お父さんはネプギアさんに戦場を任せてボクと一緒にプラネタワーの中に戻って...そこにはイストワールさんが転移門みたいな魔方陣を起動させていました。
「おかえり、えー君、ゆーちゃん。...帰ってきて早々にあれだけど...ゆーちゃん。もう出る...?」
「...うん。さっき戦ってわかったんだ。この敵...数だけで強くはない。でも量が多すぎて...お父さんでも対処しきれなかった。あのお父さんが。」
「...そっか。だから根っこから倒すと。」
「うん。使い方はわかったし...ボクのやるべきことというか...やんなきゃだから。世界で、4番目に強いからこそ。」
いつかお母さんが言っていた、ボクは世界で4番目に強いって。
「ほんと、ゆーちゃんはえー君にそっくりだ。...約束して、ゆーちゃん。例え何があっても必ず帰ってくるって。ちなみにえー君は約束したのに帰ってくるのがすっごく遅かったからね!ほんっと注意してよ!お願いだからね!」
「う、うん!わかった!わかったから離してお母さん!」
って思ったらお母さんにすっごく心配されるという。お父さんが「あー...」みたいな顔してるし...何したんだろう...
「...あはは。...よし。いってらっしゃい。」
お母さんは離れると、ボクを転移門に送り出す。
「夕。...気を付けて。」
ボクの背中にお父さんの声がかかる。ただそれだけだったけど...
「うん。行ってきます!」
「では、転移門起動します。夕さん...お願いしますね。」
足元が光る。次の瞬間ボクはプラネタワーからどこかの森林の真上に...って、真上!?
「重力に引かれるよぉぉぉぉぉ!!!!」
間一髪、霞を起動させて地に降り立つ。風が吹く。
「ふぅ...さて...どこだろうね、ここは。きっとあの歪みの向こう側に着いたはずなんだけど...」
周囲を見回す。人もモンスターも気配はない。土地勘も全くないからまぁゆっくり街に向かって歩けばいいかなとは思うんだけど...
「ここまで森だとわからないか...まぁ気配を感じ取ることに集中して、それで...」
瞬間、ボクの左から草が揺れる音がする。
「...!誰!?」
グロウ-Cを構え、草むらに向ける。もちろん周囲の警戒は怠らないけど...そこから出てきたのは、一人の女の子。
「わぁ~、撃たないでぇ~」
「女の子...?」
って言ったらまぁボクもそうなんだけど...ぬいぐるみを抱えてこんな森の中にいるのはなかなか異様としか思えない。見た感じボクよりちょっと大きいのかな...?
「えへへ~、あなたが、向こうから来た女の子~?」
「どうして、それを...」
「それはね~、わたしが~、プラネテューヌの女神だからだよ~」
...これが、ボクとプルの出会い。これから一緒に旅をする、心強い仲間との出会いのお話。
次回、第三話「別の世界のプラネテューヌ」
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