並行世界の先導者   作:Feldelt

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ようやく、書けた!
これで第一部終了です!

なんでもう二月なんですか?


第二十話 影伸びるもまた夕刻

振るわれた蛇腹剣を防ぎつつ、ボクは言葉を返す。

 

「説教?だったらボクだって山ほどあるんだけど。ろくに仕事もしないでボクとイストワールさんにどれだけの迷惑をかけているか……考えたことはある?」

「夕ちゃんはそれでもやってくれるじゃない……あたし、とぉっても嬉しいのよ?」

「そりゃそうでしょうよ、何もしなくていいんだから。甘やかしすぎたよ。」

 

対峙。そして吐露。いくらやるときはやると知っていても、ずっと仕事をしないことが多いプルに対して怒りや呆れがあったのは事実。それは、プルの性格や性質であったとしても改善しなきゃいけないことだし、それを指摘してこなかったこっちにも落ち度はある。甘やかしすぎた。だから今後は厳しくする。

 

「甘やかし、ねぇ。あたしも、夕ちゃんを甘やかしすぎたわぁ。」

「……どういう意味、それは。」

 

プルから帰ってきたのはボクに対して、さっきボクがプルに対して思ったことの鏡写し。

 

「夕ちゃんは……戦いの強さに心の強さが追い付いていないのよ。」

「……それで?」

「人の言葉に敏感で余計なおせっかいなのに首を突っ込んで横から逆上して……優しいのか愚かなのかわからないかわいらしい夕ちゃん……でも線引きがうまくできてないせいで自分自身で自分自身が嫌うことをやっちゃってることに気づいてないかわいいかわいい夕ちゃん……」

「……そう。ボクが矛盾してると言いたいんだね。」

「まぁ、そうなるんじゃないかしら。」

「他人事だね。自分の言葉でしょ?」

「他人事よぉ?だって私のことじゃないじゃない。」

 

矛盾。いつかお母さんが言っていた。お父さんは矛盾の塊だって。世界を守るために世界を壊した存在だって。詳しいことは大きくなってから話すって言ってたけど、ボクはこれから学んだことがある。

 

「矛盾ってさ。相反する二つの命題が同時に存在してること、あるいは二つの真とされた命題が同時に起こった時にどちらかあるいは両方が偽となることを言うんだ。」

「ずいぶん難しい言葉回しをするのね。」

「仕事しながら勉強したからね。でも、相反する事象は同居できる。ボクの行動だって事象なんだから、それは矛盾とは言えない……いいや、あり得る矛盾?なんだろ、言葉が思いつかないや。」

「あら、あたしは知ってるわよその言葉。ダブルスタンダードって言うんだけど……」

「ダブル、スタンダード……」

 

あぁ、そうだ。そうだった。それじゃあ結局矛盾のままだ。

 

「夕ちゃんは賢くて勤勉で仕事もできるけど……愚かで怠惰で必要なことができてないわねぇ?」

「必要な事?」

「女神としての振るまい……といえばわかるかしらぁ?」

「仕事しないプルにだけは言われたくないんだけど。」

「だとしてもぉ、限度ってものがあるわよぉ?あたしだってやるときはやるでしょう?」

「まぁ、ね。」

「でも夕ちゃんは……わきまえてないのよ。呼ばれてないのに横からやってきて、癇癪起こして周りをぐちゃぐちゃにする、それが女神ですってぇ?笑わせないでくれるかしら。」

「癇癪……?ボクがそんなちゃちな子供に見えるって言うの?」

「えぇ、見えるわ。自分で自分を律することができない、小さい小さいおこちゃまよ?」

「だったら……」

 

コンバットフォルムの武装コンテナから銃剣を取り出し装備する。

 

「ボクは、いらないと。そう言いたいの?」

 

 

──少しの沈黙。プルの表情からは考えは読み取れない。

 

 

「……えぇ、そうなるわねぇ。」

 

沈黙の後から出たのはこの言葉。ボクはいらないと。

 

「そう。じゃあボクはボクの好きなように、奴らを滅ぼすことを考えるよ。」

「そういうところが……ッ!」

 

ノワールさんが何か言おうとしたけど、ボクは遮る。

 

「もういいよ、言葉もいらない。……ボクはボクの道を行く。ただそれだけ。」

「……そうかよ、じゃあ勝手にしろ。」

 

ブランさんは勝手にしろと言った。だから勝手にする。

 

「それじゃあ女神のみんな、次に会うときは……戦場、かな。敵か味方かはたまた第三者かわからないけど……ボクの邪魔をすると言うなら、容赦はしないから。」

 

変身を解き、その場を去る。もう、ここに用はない。

次に行く当ても、今のところはない。

 

「わたくしの国で好き放題暴れて、好き放題言ってこの場を去る……身勝手ですわね。本当に。」

「……よかったね、しばらくここで好き放題することはないよ。ボクの邪魔をしなければだけど。」

 

殺気を込めた目でやっぱり余計な言葉を放つベールさんを睨む。この人は本当に……でも、もう関係ない。こいつはもう、本当に関係ない。

 

「あ~あ、本当に夕ちゃんは……それができてしまうのねぇ……」

 

プルの最後の心配そうな声音だけが、ボクには少しだけ不可解だった。

 

 


 

 

「……なぁ、茜。今頃夕はどうしてるかな。」

「んー、どうだろうね。わかんないや。でも藪から棒にえー君がゆーちゃんの心配するなんて珍しいね。」

 

ガラスの向こうの空を眺めながら、向こうでどんな日常を、戦いをしているのだろうか。俺のように、喪失を力にしていないだろうか。……そう、夕は他の誰でもない俺と茜の娘で…………でも、俺はやはり親と名乗ってはいけない存在なのだ。どうして、あの子は俺の娘なのだろう。そんなことを考えてもどうしようもないのに。もう、あれから十何年も経ってるっていうのに。

 

「なにか、虫の知らせ、かな。」

「そっか。……心配しなくても大丈夫、なんて思わないけどね。私たちの子どもなら……きっと、多分、とんでもない選択をしてるか、引き返せないところまで来ちゃってるか、かな。」

「……はは、血は争えない、か。」

「似ちゃいけないところだけどね。」

 

どうしようもない、これが俺の俺自身に課してる評価。今こうして生きていることそのものが、本来はあり得てはいけないんだ。

 

「そーやって、いつも自分を傷つけるだけじゃ本当に苦しいだけだよ。」

「今に始まったことじゃない。わかってるくせに。」

「だね。私たちにできるのは……待つことだけだよ。」

「あぁ、そうだな。」

 

次元の向こう、夕には……俺のようにならないでほしいな。

 

 




次回、第二十一話「心機一転、唯我」

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