並行世界の先導者   作:Feldelt

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第二十三話 本質の胎動

「状況は?」

 

教会に着いて早々、数名の職員とともにブランのいる執務室に向かう。明と茜の同行を渋ってる奴もいたが、責任は俺が取るということで全部通した。

 

「特別牢の全ての鍵が解錠され、中にいたアクダイジーンが脱獄、ルウィー国内全域にある監視カメラによると南側へ移動していると推察されます」

「さすが元大臣だな……わざわざ遠めの国境へ向かうあたり、こちらの目を欺く気満々だ。正直、それらはダミーだと思う。相手は情報戦、電子戦にはめっぽう強いからな……さて、ブランにどんだけ説教されるのやら……」

 

諦めである。そもそも特別牢の錠前は半電子魔導錠、特定の抵抗値を示す素材に錠前に仕組まれた魔術と反応しない双対魔術をかけ、そもそもとしてピッキングの難しい二層式錠前に合致した鍵を用意しないといけない。ルウィーの魔術技術の最高峰を詰めて作った鍵だ。内通者でもいない限りあのアノネデスでも突破は無理だ。

 

「相手が電子戦のプロとなると監視カメラの映像の意味はなさそうだし……お手上げだな」

「追うこともできないんだったらいっそ次出てくるまで待つってどう?」

「妙案だが名案ではないな、明暗の分かれ道になるぞそれは。なぁ、明」

「こんな状況で韻を踏める余裕があるのお兄ちゃんだけでしょ……」

 

なんて会話をしながら執務室前に着く。露は払っておくか。

 

「じゃあ君たちは業務再開。情報収集と国民の安全を第一にね。あとイレギュラー……夕がこっちに来てるかもだからそこら辺の監視もよろしく。じゃあ俺は絞られてくるよ」

 

ははっ、と乾いた笑いとともに執務室に入る。当然、空気は張りつめている。

 

「影、呼び戻して悪いわね」

「まぁ、無理もないだろう。こっちは移動中七賢人二名に接敵、爆弾とモンスターをけしかけられて酷い目にあったよ。無事だったのは100%夕のおかげだね」

「そう。……リーンボックスの外交特使がここにいることにも繋がりはあるのかしら」

「あるよ、私がゆーちゃんをリーンボックスの監視網の外側に出したからね」

「でも肝心の夕はいない、と。まぁいいわ。それで、影?」

「奴らの目的は七賢人をベースにした新国家の設立とみてる。ルウィーとプラネテューヌだけだったら裏で対立煽りからお互い潰しあうように工作するほうが早いが、四か国ともなるとまず目が多い。となると、同等の力と権力を振るうほうが話は早くなる。だから俺と明、茜は七賢人が夕を狙ってくるとみたんだが……」

「外れた、ということね」

「そうだな。厳密にはそう読んでくる俺達を潰しに来たということだ。本命は別にある。その本命がどこにあるのか理解させないために各国で同時に行動を起こした。情報の共有を防ぐためにな」

 

二手三手先を行かれている。もちろん俺の読みが当たっているとも限らないが……現に俺の耳に入っている情報だと各国で七賢人による行動が散見されたと。ルウィーではある程度の解決を見せているが……

 

「なら、今柔軟に動けるのは私たちだけなのかもしれないわね」

「何か思いついたのか?」

「えぇ。ちょうどそこに各国とうまい具合に情報を取れる優秀な人材がいるじゃない」

「私?……あー、そういうこと?」

「えぇ。貴女の腕を見込んでお願いするわ。各国の七賢人被害についての情報収集をね」

「いいけど、ただでとは言わないよ?私にも立場があるからね。だから……そうだなぁ……そこのえー君を私にくれるって言うなら惜しみなく協力するかな」

「……」

 

情報は多くほしい、そのために情報収集に長けている明と茜を同行させたのだが……難題を吹っかけてきた。おいおい俺が質かよ。

 

「仮にも影は一国の大臣、国のナンバー2よ。そうそう簡単に渡せないわ。それに……」

「それに?」

 

ブランは続きを話さない。表情が崩れないから読むこともままならないが……俺と過ごしてきた時間の事を考えているのかもしれない。そうであってほしい。

 

「……一つ尋ねるわ。影を欲しいって、どういう意味で言ってるのかしら」

「言葉通りの意味だよ」

「そう。……影」

「なんだい、ブラン」

「貴方はルウィーにおける重要機密をとてもよく知っている。今までもこれからも、貴方のその情報処理能力は大きな武器になる。同時に、脅威でもあるわ。正直、七賢人の情報を速やかに手に入れることよりもリスクが大きい。私はそう判断するわ」

「同意見だ。協力を望めると思ったが……残念だよ」

 

ブランの出した結論は俺と同じ。情報の質、その重要性をとった判断だ。

 

「まぁ断られると思ったけどね。それにもうとっくに情報は入ってきてるし。」

「茜、お前まさか……」

「だから条件変更。そうだなぁ、今日の埋め合わせでまた一日えー君を貸してくれることを約束してくれたら、それでいーよ」

「構わないわ。ただし休日に限るわよ」

「……判断が早い。ははっ、うまく丸め込まれたかな」

「乗れる船には乗るわ。いつでも沈めることができるのならなおさら、ね」

 

とまぁ、無事に協力も取り付けてさて……次はどうしようか。

 

 


 

 

ルウィーに着いてからボクはずっと考えている。ボクの力の本質。

 

「コンソールもコンバットも、根本としてるのはシェアエナジーの利用、精製や展開……だったら……」

 

女神化して後ろのユニットを同時にセットする。

 

「今までやってこなかったけど……そうか、これがボクなんだ……」

 

コンソールフォルムのモニター部分の実体化、コンバットフォルムの武装コンテナのスリム化、それもあるけれど、後ろの四枚の羽がX字になって二重円がそこから展開されている。

 

「さしずめ、コンプリートフォルムかな……かなり疲れるけど……」

 

女神化を解除する。さっきの姿の力の跳ねかたはきっと観測されてるから……次はどうしようか……

 

 

 




次回、第24話「集合、そして潜入」

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