並行世界の先導者   作:Feldelt

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第二十四話 集合、そして潜入

現在場所はプラネテューヌ教会応接室。四ヶ国の女神とその側近数名を交えて情報の共有を行っている。

 

「……以上で七賢人による各国の被害状況についての共有及び七賢人への今後の対応の検討会を終了します。何か終了前に伝え忘れたことなどはございませんか?(・・?」

「ラステイションはないわ。まぁ、共有した情報もあんまりなかったけど……」

「プライバシーに関わることなら、致し方ありませんわ。リーンボックスもこれ以上は」

「ルウィーもないわ。夕に関する情報も、国内で不自然に力が跳ねた場所周辺を探してるけど見つかってない……」

「ん~……」

「お開きにしよう。今後の七賢人の動きは読めたしな」

「にわかには信じられない話……というか人権問題じゃないの?その予想は」

「プラネテューヌ教会で預かっていたピーシェちゃんを引き取り女神にする……確かに今回の七賢人の行動とは辻褄が合いますが……」

「ん~……」

 

やはり露骨にプルルートの元気がない。それもそうだろう。レイと呼ばれてた七賢人は俺達を襲撃する前に先にピーシェを回収していた。ピーシェの親族だと騙った七賢人だと知ったのは今さっきのことだ。アノネデスもおそらくノワールにちょっかいをかけた後にこちらを襲撃してきたとみている。ルウィーの内通者問題も全く分からない。記録の改ざんだけでなく記憶まで改ざんするとなるとそれ相応の……

 

「待て、記憶の改ざん……?」

「誰もそんなこと言ってないよ、えー君」

「いや、変なんだ。何か俺自身に引っかかる部分がある、そもそも俺を襲ってきたとき、あの場所はブランですら知らない場所のはずなんだ。インターネットにも一切繋げていないし、アクダイジーンの鍵の情報も全部、知っているのは俺とブラン、明と警備兵二人の計5人……」

 

警備兵二人に魔術系の痕跡はなかった。催眠魔術は光信号を媒体とするがそれでも痕跡は残る。だったら消去法で明しかありえない。でも、いや、そんなはずは……

 

「えー君、まさか……」

「認識を歪められていたのは俺の方か……思い出せない、いつから明はいた……」

 

記憶を遡る。いったい、いつからなんだ。俺はどこで書き換えられた……その考えも正しいかはわからないがだとしても……

 

「影さんの考えていることが真実であれば……わたくしたちは既に3手遅いと言う事になりますわね」

「誰も気づかない高度な改ざん……一番厄介なのは、そのレイとかいう奴なのかもな……」

 

はぁ、と大きくため息をつく。そこに一報が入る。

 

「はい、イストワールです。って夕さん!?心配したんですよ!?(゚Д゚)」

「夕から……!?あの子、今一体どこに……」

「七賢人のアジトらしい場所を見つけたんですか!?(゚Д゚;)」

 

一斉にそのワードに反応する。

 

「わかりました、お伝えしますね('◇')ゞ」

「……座標は?」

「ルウィー西部、M87ポイントだそうです('ω')」

「そうとわかれば出発だ。3手の遅れが何だ、1手で詰ませりゃ関係ねーからな」

「そうね、それじゃあ行くわよプルルート」

「ん~……ゆ~ちゃんに会えるんだよね~?」

「そうですわね……それにもしかしたらピーシェちゃんを取り返せるかもしれませんわ」

「それじゃあ、いく~」

「……俺も行く。確かめないといけないからな」

「私も行くよ、これでもそこら辺のモンスターを倒すくらいはできるからね」

 

計7人。内女神5人。アジトを潰しにかかるには、戦力を過剰投入な気もするが……動かれる前に叩かなければならない事態だ。急ごう。

 

 


 

 

アジトを見つけたのは偶然だった。突っ込んでもよかった。でも、アジトの奥から感じる気配や予感がどうしても気になって、一人で行くことができなかった。だから、利害が一致している女神のみんなを呼んだ。ボクとしてはそれだけ。それだけなのに。

 

「ゆ~ちゃ~ん!」

「わわっ、プル!?そんなに速く走れるんだね……久しぶり……でもないかな」

「心配したんだよぉ~、帰ってこないからぁ~……あたし、あたし、ゆ~ちゃんに嫌われちゃったって思って、それでぇ~……」

「……嫌っては……ないかな。動機や目的、手段やあり方が違っただけで……ボクはプルそのものを嫌ってるわけじゃないよ。でも……そうだね。ボクはボクの矛盾を抱え続けることにした、ただそれだけだよ」

「……ずいぶんと大人になったようなことを言うわね、夕」

「本質について考えろっておと……じゃなくて影さんから言われて……ボクなりに考えたらこうなったって感じかな」

「……相変わらずアドバイスが上手いわね、影」

「そりゃどーも」

「それでは本題のアジトのほうですが……あの建物がそうですの?」

「うん。たまたまここに戻ってくるアノネデスを見かけて……それで」

「なるほど。それでどうする、正面から強行突破が一番話が早そうだが」

「ボクはそのつもりだけど……このアジトの奥、なにかやばい気がして、それでみんなを呼んだんだ」

「じゃあ、急いだほうがよさそうね」

「影、プルルートを任せるわ。この子の変身はできる限り短い方がいいでしょう?」

「俺もそう思う。茜」

「おーけー、それじゃあ全軍、とっつげきー!」

 

 


 

 

「突撃!隣の秘密基地!」

「晩御飯みたいなノリで突っ込むとこじゃないでしょうが……」

 

茜が先頭切って突っ込んだアジトは基本的にはもぬけの殻だった。夕の感覚を信じて奥の方へ進み、目下ここが最奥と読んだ場所。灯はない。

 

「いらっしゃ~い!」

 

声の主はアノネデス。徐々に明るくなっていく部屋。謎の機械と、繋がれている少女。

 

「……さしずめ、もう用済みだから処分しようとでも言うつもりか」

「別に用済みではないわよぉ、人聞きが悪いわねぇ」

「この状況を見ればおのずと人聞きの一つや二つ悪くなるのは無理もない話だと思うがね、仮にも……人の義妹をこうやって縛り上げているのならなおさら」

 

どこからどう見ても、繋がれている少女は明にしか見えない。女神5人と人間2人、その事実を受け止めたうえで……敵陣真っただ中にいる。

 

「仮にも、ねぇ。あなたにしては気づくのが遅かったんじゃない?」

「そうだな、気づかない方が幸せだったのかもしれない」

 

ははっ、なんて笑いがこぼれるが……笑い飛ばしてなんとかなるほど現状は芳しくない。

 

「それじゃあアノネデス、聞かせてもらいましょうか。ここで何をやっているのか」

「やぁねノワールちゃん。急がなくっても教えてあげるわよぉ……まず最初にこの子はもうずっと前……アクさんが凍月くんと一緒に仕事していた頃に仕込ませてもらったわ」

「……影に義妹ができたなんて話は、確かにその時期に聞いたわね」

「俺を弾劾し、ルウィーを実質的に傀儡にしてもなお、俺を脅威としたために情報端末として明を送り込んだと。よくもまぁ仕立て上げたものだ、賞賛を贈るよ」

「ありがたく貰っておくわね。それで……そうそう、この機械はまぁ……これを見てもらえればわかるわね」

『……!?』

 

アノネデスが見せたのは機械の奥、直接明と繋がっている先には女神メモリーがある。だが……それでは辻褄が合わない。

 

「明ちゃんを女神として新しい国を作る、と?」

「だったらぁ、どうしてピーシェちゃんを~?」

「……女神メモリーは、100%女神が生まれるわけではないわ」

「それが狙いだとしたら……笑えん」

「アノネデス……お前は……!」

 

夕は銃剣を生成しアノネデスに向ける。それは逆効果だ。

 

「いいのかしら?アタシを撃ったらこの機械、起動するわよ?」

「だったら動かれる前に壊せば……!」

「待て!」

 

夕に静止をかける。どうせアノネデスの話だ。バリアの一つや二つあるはずだ。それから起動するなんてことも簡単に考えられる。

 

「なんで止めるの!?」

「お前はいつもそうだ、もっと先を考えろ……そうだ夕、俺が合図したら、お前の銃を俺に転送してくれ」

「転送?いいけど、できるかわかんないよ?」

「アイテム移送と同じだ。……できれば、今のうちに俺の周囲に量子格納しておきたい」

「わかった」

 

何ができる、何をできる。明を助ける?助けたらまたこいつらに利用されるだけだ。この子は……この子は、悲しいだけじゃないか……

 

「えー君、思いついた?」

「……賞賛に逆らえるくらいクソみたいなアイデアは、ひとつ」

「また変な言い回しだね……それは?」

「まずは明と話がしたい、とだけ」

 

思いついてしまった一つの考え。それを実行するためには、下準備がいる。

 

「いいわよ、ただし……武装解除してもらおうかしら、兄妹水入らずにしたいでしょう?凍月くん」

「機械から外さないといけないからその分明が無防備になる、機械のバリアもあてにならないから、か。いいだろう。……すまない皆、解いてくれ」

「影……」

「信じてくれとは言わない。でも、手を打ちあぐねるんじゃ奴らが有利だ。だから……」

「馬鹿ね。窮地のときの貴方ほど、信頼できるものはないわ」

「……ありがとう」

 

俺も含めた全員の武装解除を確認される。入念だ、だからこそ成功させなきゃいけない。

 

「それじゃあ兄妹水入らずでね~♪」

「3分でいい……聞きたいことは一つだしな……」

 

機械から外される明。目を開き、歩いてくる。

 

「明……」

「お兄、ちゃん?どうして、ここに……?私は……なんで?」

「ねぼすけさんかい?まぁいい。……藪から棒に少し、明に訊きたいことがあってな」

「なぁに?お兄ちゃん」

 

一呼吸置く。わかってる。震えるな、気取られるな。

 

「明。俺の義妹で、幸せか?」

「うん。幸せだよ」

 

屈託ない笑みと、輝きに満ちた目で明は即答する。「凍月明」にとって、それは紛れもない事実だった。それが確認できたなら、兄冥利に尽きる。

 

「そう、か。よかったよ。本当に……よかった……」

 

明を抱きしめ、夕に合図を出す準備をする。

 

「珍しく体温が高いね。それに、震えてるよ?緊張してるの?」

「そう、だな。緊張しているよ。しないわけがない。俺は……酷いから」

 

明から離れ夕に合図を出し、手元に夕の銃を転送させ、そのまま明を撃つ。澱みなく狂いもなく、ほぼゼロ距離で心臓を穿つ。

 

「幸せなまま……おやすみ、明……」

 

さっきまで明だったものを、まだ暖かさが残るそれを静かに抱きしめる。誰も動けていない。脳が追い付いてないのだ。

 

「賞賛に逆らえるクソみたいなアイデア……硝煙とは……凍月くん、恐ろしい子ね……」

「……アノネデス……これでお前の尖兵はもうない、その機械の意味ももうない。これで……チェックメイトだ」

 

明の亡骸を置き、自分の銃剣を拾いアノネデスに向ける。

直後に天井が崩れ、次の瞬間に俺は壁に叩きつけられた。

 

「ぐはっ……」

「おい!今度はなんだよ!」

「……あれは……女神……?」

 

朦朧とする意識の中、見えたのは黄色を基調としたプロセッサユニットを纏う女神だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、第二十五話「イエローハート」

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