黒と白の墓標の前でもう一つの過去に決着をつけ、夕には秘密だと言ったが……いずれあの子も知る必要はあるのかもしれないと脳裏に思考がよぎる。が……
「まずは茜だな……聞かなきゃならんことができた……」
決着の果てに新しい謎が浮かんだのはあまりよろしくないことだが……合点がいかないのだから問いただすしかあるまい。
「やっほ、えー君。その様子だと、あの子たちに会ってきたんだね」
「あぁ……単刀直入に聞かせてくれ、茜」
「……それは、二人きりで話さないとね」
「……なぜ、俺をもう一度親にした」
「あの子たちと向き合わせるため、でもあるかな。それは副次的なもので、私が親になりたかったからだよ。二人じゃなきゃなれないからね」
「俺にはその資格などないとわかっていながら……」
「だからだよ」
明かりのない部屋の中で、紅の瞳が俺をじっと見つめる。
「私はえー君が欲しかった。ゆーちゃんも欲しかった。ただそれだけ。えー君が嫌がることも、えー君がまだゆーちゃんとはちょっとだけ距離があることも、私はわかるから……」
「……欲張りだな」
「そーだよ?私、えー君の全部が欲しいんだよ」
「そうかい」
沈黙が流れる。言葉は茜には必要ない。
「そうやって、自罰的になるのはよくないよ」
「それ以外にどうしろと?俺はこれしか知らない」
「私を助けるためにえー君はほとんど全部、大事なものを捨ててきた、切り捨ててきた。文字通りね。だから……」
「だから?」
「それを絶対に忘れないようにするために、ね」
忘れることはない。それは現在だから言えることなのか?
「大丈夫、私も背負う。えー君一人の罪じゃない。私を助けるための罪だと言うから、私も背負う。そのための……首輪だったのにね」
「そうだな、互いが互いのいない世界を生きられないから、という名目でもあったが……」
茜が俺の首に触れる。そこには直に手の感触を感じる。少し前までは金属の感触があったのに。
「でも、罪は消えないんだよね。ギアちゃんに赦されても……ブランちゃんと、黒君と白ちゃんに向き合っても、えー君的に言えば、その結果は変わらないんだよ」
「あぁ」
「だから、私はずっとえー君のそばでその罪と一緒に生きるよ。ゆーちゃんとも、一緒にね」
「夕……か」
まだ、俺は夕とは少し不自然さの残るコミュニケーションしかとれてない。状況が状況だったのもあるが……もう平和になったのなら……その不自然さは露呈していくだろう。それが……怖い。
「不器用なわけでもないのに、怖いんだ」
「器用でもないだろ、だったらもっとマシな結果を作ってるはずだ」
「じゃあ無愛想だ。だいじょーぶ。ゆーちゃんは私とえー君の娘なんだもん。えー君の表情を読み取るくらい、できるから大丈夫」
「それ、本当に大丈夫なのか……?」
はは、なんて乾いた笑いが出てきたのち、不意に茜は部屋の明かりをつける。
「ちょっと眩しいね……でも、眩しいくらいがちょうどいいんじゃない?」
「眩しい、か。まだあの理想は眩しいままなら……きっとそうなんだろうな」
「今度こそ掴むんでしょ?何も失わないようにして」
「茨の道だがな」
「茨よりも痛い道進んでたえー君がそれ言っちゃう?」
「傷は残るさ。でも……癒してくれるだろ?茜」
明るくなった部屋の中、俺の言葉に反応してさらに明るくなる茜の表情。
「もちろん!」
その茜の笑顔は……やっぱり、眩しい。昔からよく見ていたが……この眩しさも、大事にしていかなきゃな……
「護ることは、苦手なんだけどな……」
「でも、戦うことはもうないでしょ?……いや……」
「いや?何かあるのか?」
ふと茜が言葉を濁す。まだ何かあるのか……?
「いいや、それは明日になってのお楽しみってことにしよっと。というわけで、明日はプラネテューヌに家族旅行だよっ!」
「旅行ってほどの場所でもないだろ、あそこはもうどこに何があるのか完全に覚えてるって……」
「そーゆーとこだぞ~……?ま、これぐらいのほうがえー君らしいか。それじゃ、この話はこれでおしまい!」
「……いやほんとに終わるのかよッ!」
次回、AFTER04:決闘
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