「私は幼年幼女の味方アブネス!不埒な女神にそそのかされた純粋な幼女を救い出すために華麗に参上したわ!さぁ!そこの幼女をこちらに引き渡しなさい!」
……一方的にそこそこ意味不明な要求をする第四の存在。アブネスと名乗るその人はそんな意味不明さと突発さ、勢いよくかつ真っ直ぐにボクに向けて伸ばされた人差し指でボクたちを気圧する。……それでも模擬戦中のお父さんほどではない。それに。
「ボクは幼女と言われるほど幼くないですよ。10年は生きているしそれに……学校じゃボクはもう大人扱いだから。」
「お~ゆ~ちゃんすご~い」
「感心してる場合じゃないでしょ、どうすんのよプルルート、噂をしたこっちもこっちだけどよりにもよって一番面倒なのが来た気がするわ。」
「聞こえてるわよ!……まぁいいわ。引き渡してさえくれればこちらも今日は事を荒立てるつもりはないもの。」
……厄介なことに巻き込まれたなぁ、と思う。お父さんが仕事の書類を見ながら眉間にしわを寄せていた時はたぶんこんな気持ちだったんだろう。
「……七賢人という組織……7人いて、女神をよく思っていない……思想は自由だしそれは問題ないけれど……意見の押し付けはよくないよね……」
「驚いたわ、夕。私たちまだ七賢人について何もしゃべってないのによくわかったわね。」
「周りを見て状況を把握することはお母さんから、そこからどんなことを導き出すかはお父さんがすっごく得意で……見よう見まねでボクも少しはできるようになったんです。」
「とんでもない話だわ……まぁさっきもとんでもない話をしていたからいちいち驚いてられないんだけど……」
ノワールさんは驚き、プルはぽけ~?っとしている。さっきのボクの説明がまだ入っていないのだろうか。
「なるほど……恐ろしいまでの洞察力と推理力!賢い幼女は大好きよ!さぁ、その頭脳があるのなら私のところにきてくれるわよね?」
「……その前に、ボクはあなたの、いや、あなたたちを知りません。そもそも……なぜ、ボクがここにいるとわかって、ボクを連れ込もうとしているんですか?」
「それはっ……」
「おおかた、何かしらの方法、監視カメラだったり次元移動のときに生まれたエネルギーのゆらぎを観測したとか……たぶん前者かな?ハッキング?七賢人にはハッカーもいるんだ……それで……」
「ま、待って待ちなさい!なんで!?私は何もしゃべってないはずよ!?」
「あ、裏が取れた。じゃあやっぱりそういうことなんだ。」
ボクがじっとアブネスさんを見て、一つ一つの言葉に対する反応を見る。思ったより表情に出やすい人で助かった。結構勘だったからね。
「……ッ!!今のは、勘だったって言うの!?」
「ご想像におまかせします。……目的は同じだけど思想はバラバラっぽいな、七賢人……だから多分、ボクを目的としている理由はわからない……」
情報がもうない。でも、こうじゃないかってものはある。
「ボクが別次元から来たとわかっている……というか、あんまり考えたくもないけど……ボクの世界を襲ったのは、貴方たちである可能性がある。」
「勘のいい幼女も大好きよ。」
「そうですか。お引き取りください、事を荒立てるつもりはないのでしょう?」
「むぐ、むぐぐぐぐ……」
「帰りなさい、これ以上いたらまだ夕に情報を透かされるわよ。」
「ええい!いいわよ!退散してあげるわ!次会ったら覚えておきなさい!」
「おめおめ情報を抜かれた挙句コテンパンにやられちゃったってわけ~?アブネスちゃんらしくないわね。」
「かんっぜんにやられたわ……相当切れ者の幼女よ。名前は……夕。凍月夕って名乗ってたわ。覚えたわよ……凍月夕……!」
「凍月……?ふむ、妙に引っかかるな。不思議と知らん気がしない。」
「オバハンの気のせいじゃないっちゅか?」
「黙れネズミ。」
「いや、儂にも心当たりがある。あのルウィーの小僧が確かそんな名前だったはずだ。」
「でもその子はもう無害なレベルにはどかしちゃったわよね。」
「うむ、教会の敷地内に入ることが出来なくなっておる。小娘め、牢にぶち込めとあれほど言ったのに聞かんとは。」
「いずれにせよ、今度は私が出向こう。妙に引っかかるものがあるのだ。ネズミ、お前も着いてこい。」
「ぢゅ、なんでっちゅか。」
「つべこべ言うな。お前とて七賢人、人かどうかはさておくとしてもこの妙な違和感は感じているはずだ。」
「そうっちゅね。仕方ないからオバハンについて行ってやるっちゅよ。」
「へぇ……みんなこの違和感は感じているわけね。じゃあこれがなんなのか、調べてみちゃおうかしら。」
次回、第五話「日暮れの世界で」
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