「ゆ~ちゃんがこっちに来て~、一年か~、二年か~、三年くらい~?経ちました~」
「三年と二か月だね」
「もうすっかりゆ~ちゃんはあたしより背が高くなって~、声も少しだけ低くなって~、でもかわいいまんまで~」
「それは、そうだけど今は違うでしょ?」
「ノワールちゃんはラステイションって国を作って~、毎日頑張ってるみたいだね~」
「そうだね、ノワールさんはそりゃそうなるよ……プルもがんばろ?」
「でもでも~、ラステイションとルウィーは仲が悪いんだよね~、ゆ~ちゃん、どうしよう~?」
「いいやだからさ、プル。他国の心配するより自分の国の心配して!イストワールさんもボクもそろそろ休ませて!」
「ほえ~?でもゆ~ちゃんもいすとわ~るもやってくれるよ~?」
「プルがやらないからでしょー!?」
とまぁ、こんな風に現在の状況を確認しながらプルに半分説教してたんだけど……現在ボクはお父さんと通信中。言ってしまえばお父さんの前でこんな会話をしているのである。なんなら最初のプルの説明はプルがやるって言って聞かなかったからやらせたんだけど……プルには向いてなさそう。そう思ったボクはプルに仕事をさせるためにむりやり通信している部屋から出て行ってもらう。まったく……
「……疲れてるんだな、夕。……そうか、そんなに大きくなったか。」
お父さんから出たのは、ねぎらいの言葉。そしてどことなく悲しそうな顔。
「お父さんは、変わらないっぽいね。」
「そうそう簡単に変わるものでもないよ。さて、……そちらの状況、気になるのはラステイションとルウィーの関係だ。」
そんなお父さんは冷静にこちらの状況を俯瞰する。この場にいても、やることは仕事だけだからね……
「七賢人という存在も気になるが……現状判明しているのは三名。残り四人は不明……そうだな。」
「お父さん?」
「俺が七賢人だったら、ルウィーに一人スパイを入れてるかな。」
「え?」
「それもずっと前からな。そうでなきゃ、表立って何もしてないわけがない。ラステイションの成長速度は予想外だろうが、逆にそれを利用してルウィーを潰しにかかるだろう。」
お父さんの分析能力は圧倒的である。だけど、どうして新しいラステイションではなくルウィーなんだろう。
「ラステイションのシェアが増えた分、減ってるんだろう?ルウィーのシェアは。」
「……そっか。力を失った大国は細部がおろそかになって自壊しかねなくなる、ということ?」
「あぁ。ここぞとばかりに忍び込んでいた内偵が国家そのものをひっくり返すだろう。別次元、別世界とはいえ……ルウィーでそんなことさせるものかよ……」
「お父さん……?」
お父さんは怖い顔をする。やっぱり、お父さんはルウィーって聞くと表情が変わる。
「なんでもない、わけではないが……夕、できるならルウィーに行くんだ。あるいは……ラステイションでもいいやもしらん。」
「え?どっちでもいいの?」
「ルウィーに行ければベストだが、行ったところで捕まるがオチだろう。夕は返り討ちにできると思うが、返り討ちにしてしまえば国中で大騒ぎだ。簡単に手が出せない。というわけでラステイションだ。ルウィー側に動いてもらう。」
「どういうこと?」
「七賢人には……俺の見立てだが情報戦に特化した奴がいる。そうでなければ夕が来たことすらわからないはずなんだ。そいつに情報を渡す。」
「でもそれじゃあますますルウィーの中は大変になるんじゃ……」
「そうだな。なんだっけ?あぁ、そうだ。アブネスとかいう広報担当……こいつを使ってルウィーに衝撃を与える。何かしらの動きはあるはずだ。その動きによっては……女神が出てくるだろう。」
「女神を動かして、お父さんはどうするの?」
「俺はここじゃ何もできないさ。それに、ノワールがラステイションの女神になったのなら……ルウィーの女神はブランである可能性が高い。半分賭けだが、ルウィーの女神がブランなら、内偵をあぶり出して始末することが、できる。」
鋭いお父さんの目。画面越しでこんなに鋭く感じるのだから、もし真正面で見てたらボクに切り傷ができてそうなくらいなものだろう。
「それほどまでに、読み切ってるの?」
「不確定要素が多いがな……そもそもよしんばルウィーの女神がブランだったとして、俺の記憶のブランとは少し違うかもしれない。むしろその可能性が高い。だから……やってみなくちゃわからん。」
「それでも……か。」
「正直なことを言えば、帰ってきて欲しいとは思うよ。でも、そんなに毎日が充実してそうな夕を見てたら……贅沢は言えないし、そっちの現状も芳しくはないんだろう?だから、最後は夕が決めろ。やりたいことをやれ。こっちは大人がなんとかするからさ。」
「うん、わかったお父さん。ちょうどラステイションに行く口実も欲しかったし……ラステイションに行ってみる。多分、あの地形的には火山性の綺麗な石が多そうだから!」
「帰ってきたら、夕のコレクションがどれだけ増えたか見せてくれ。じゃあ、気を付けて。」
通信が切れる。最後はまんま私欲だったけど、ボクのするべきことは決まった。
「夕さん、もしよかったら、プルルートさんも一緒にラステイションへ連れて行ってもらえませんか?('ω')」
「そのつもりです。多分考えてることも同じな気がします。」
「あはは……お互い苦労してますもんね(-_-;)」
「とりあえず……プルが帰りたいと言ったらイストワールさんに許可をもらうように言うので……もう早速出発します。急がないとプルが寝ちゃいますから。」
「わかりました、ノワールさんにはこちらから連絡をとるので、すぐにでも出発しちゃって大丈夫ですよ。(*‘∀‘)」
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます。」
ぺこりとイストワールさんにお辞儀をして、荷物を持って、部屋を出ようとドアノブを回し、ドアを押そうとして……
「あれ?開かない?」
「鍵はかけていませんよ?('Д')」
「まさかとは思うけど……いいや間違いない、話し込みすぎてもうこんな時間だ、プル!起きて!お話終わったよ!起きてー!」
「まさかプルルートさん、ドアにもたれて寝ちゃったんですか!?(゚Д゚;)」
「十中八九そうだと思います。ええい!起きろー!」
「ふにゃぁぁ~!?」
結果、寝てたプルを押しのけてドアを開けることに成功する。ゴロゴロ転がったプルは現在ぺたんと座り込んでぼーっと目をごしごし。
「ゆ~ちゃんひどいよぉ~。せっかくお昼寝してたのに~」
「あー、ごめんねプル。ちょっと話が長くなっちゃって。んー、ねぇプル。お昼寝を邪魔したお詫びと言ってはなんだけどさ、ノワールさんに会いに行かない?」
「ほえ~?ノワールちゃんに~?」
「うん。会いたい?」
「会いたい~!だってもうしばらく会ってないもん~」
「よし!そうと決まれば!行くよ!」
「わわわ、ゆ~ちゃん、引っ張らないで~」
思ったより不機嫌じゃなくて助かった。でも、これでラステイションで鉱石採取ができる!あわよくばルウィーでもやるぞ!目指せ鉱石マスター!
「あれれ~?」
「どしたのプル。」
「ゆ~ちゃん、お仕事やらなくていいの~?」
「……ボクのセリフだよ!」
なーんて夢と希望をだんだん大きくなっていくであろうこの胸に抱えていたのに!いたのに!仕事の話!よりにもよって一番してない人から!
「ほえ?」
「……ノワールさんに、教えてもらおっか、女神の仕事ってやつを、さ。」
「ゆ~ちゃん、目が怖いよ~?」
「うん、まさかプルにこんな怒りたくなる日がくるなんて思わなかったよ。」
「ぷるーん……」
お父さんが言ってたことがわかったよ。「可愛いから許すけど可愛くても許されないことはあることを覚えて欲しい」って、こういうことだったんだね。
次回、第九話「ブラックハート 仕事の流儀」
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