「ラステイション到着……いやはやまさかダンジョンを通るまではよかったけど強敵に遭遇するとはね。」
「つ〜か〜れ〜たぁ〜」
そこそこ勢いでプラネテューヌを出発したボクたちは道中にいたそこそこ強めのモンスターを撃退し、どうにか着いたラステイションの教会。
「プルルート、夕!久しぶりね!」
「わぁ~、ノワールちゃんだ~。ひさしぶり~」
「お久しぶりです、ノワールさん。」
「しばらく見てない間におっきくなったわね、夕。もうプルルートを追い越してるわね。」
「えへへ、さっきお父さんにも言われました。」
ノワールさんの国、ラステイションの教会はどことなく近未来的で無機質。プルのファンシーな感じに慣れてたせいか、妙にかっちりしてて……なんだか懐かしい。
「イストワールから聞いてるわ。夕は休暇のため、プルルートは仕事とは何かを教えてもらうために来たのよね。」
「ほえ~?お仕事のお話~?」
「イストワールも夕も、プルルートが仕事しないからへとへとになってるのよ?」
「だって~、あたしがお仕事しなくてもぉ~、ゆーちゃんといすとわ~るががんばってくれるからいいかなぁ~って……」
「それがダメなのよ!甘やかされすぎよ!」
「そうなんです、甘やかしすぎました……」
やっちまった……みたいな表情を浮かべてみる。
「苦労してるのね、夕もイストワールも……あぁそうだ、プルルート。イストワールからの言伝よ。」
「なぁに~?」
「プルルートがちゃんと自力で仕事をできるようにならない限り、教会に帰ってきても突き返すだって。」
「ぷる~ん……」
イストワールさんも本気、か。
「じゃあノワールさん、とりあえずボクはゆっくりしていい?」
「えぇ。羽を伸ばすことに我がラステイションを選んだこと、光栄に思うわ。」
「え~、ゆ~ちゃんずるい~」
「プルも少し休んでからでいいよ、さっき大物を倒したばっかりだし……」
「言ったそばからまた甘やかさない!プルルート!せっかくだし二人で出かけましょ?」
「わぁい、ノワールちゃんと~、おでかけ~♪」
そんなこんなでラステイションの教会でゆったりしていたボク。地図を見ながら山の近くへどう行こうか考えたり、地質がプラネテューヌと違うのか調べたり……さて、どこから採取し始めようか。
「夕!プルルート!二人とも起きて!」
「ふみゅ~、あと五時間~」
「そんな長い時間待てないわよ!ってか夕までぐっすりなのは何よ!?」
「ん~……ふぁぁぁ……あれ、お母さん……?」
「なーに寝ぼけてるのよ夕。あなたを抱きしめてるのはプルルートよ。」
いつの間にか寝ていたボクはプルに抱きしめられてて……暖かさや感触でまるでお母さんと一緒にお昼寝してたことを思い出す。もう、三年も会ってないのはさみしいなぁ……
「あれ~、ゆ~ちゃん、今あたしのことお母さんって呼んだ~?」
「うっ……呼んだけど寝ぼけ眼の不可抗力だよ……でも久しぶりに人肌に触れながら昼寝を……というか昼寝自体が久々だよ。」
「えへへ~、お母さん、だって~♪」
「だーかーらー……はぁ……」
とんでもない言い間違いをしたものの、のらりくらりと回避する。さてはて、じゃあ結構休んだことだし、仕事を……
「ずいぶんと大きい溜息ね。そんなに言い間違いが恥ずかしかった?まぁ夕がそんな間違え方をするなんて可愛いなーっとは思ったけど。」
「その話はもういいです!いや、今さっき結構休んだから仕事しよっかなーって思ったんですけど……我ながら、仕事に毒されてるなぁって……そもそもボク、思い返せば仕事して勉強して仕事して……」
「聞けば聞くほど悲しくなりそうな話ね……」
「そんな悲しい顔しないで~、ゆ~ちゃん~、これあげるからぁ~」
プルのポケットから出てきたのは、少し黒みがかった光り方をする手のひらサイズより小さめの石。これは……
「ちょっと待ってね、よいしょっと。」
「本格的な装備が出てきたわね!?えっと、ルーペにハンマーに石ノミに標本箱……いつもこれを持ち歩いてるの?」
「当然!えっと、これは……プル、行ったのは洞窟っぽいダンジョンだね。しかも奥の方、水が流れていて……で、この傷の付きようは……戦闘中に何かがぶつかって、砕けた破片といったところかな?」
「すご~い、百点満点~」
「まぁね。ありがとう、プル。これはコレクションとして保存しなきゃだね。えーっと、採取場所の情報は入れなきゃ……」
紙にペンを走らせて情報を記録して箱の中に入れる。結構多くなってきたかな……
とまぁ、無事に標本を入れてボクの採取キットもしまったところでふと考える。ルウィーの動向はどうなのだろう。あのモンスター、明らかに生態系から浮いていた。あの違和感のあるモンスターとその場所……プラネテューヌとラステイションの接触を断つためとしか考えられない……
「また難しい顔しているわね。夕、あなた休暇ってわかる?」
「あはは……ほんとにその通りですよ……」
「苦労かけるわね、夕にもイストワールにも……まぁプルルートをちゃんと使えるようにしてあげるから、夕はゆっくりしていなさい。まぁ、その……それでもメリハリは必要だし、少し待ってて、お茶を出させるわ。」
さらっと権力者みたいなことを言って職員の人に「私よ。忙しいとこ悪いけど、三人分のお茶を用意してくれるかしら?うん、急ぎはしないから。」って言ってこっちに戻ってくる。
「ノワールさん、女神なんですね。」
「いきなり何よ。まぁ、これが私のなりたかったものだもの。」
「いや、プルとは何もかもが違うなぁって。」
「そりゃそうよ。」
「あたし、ノワールちゃんじゃないからね~」
「それもそっか。」
思えば、ネプギアさんも多分ノワールさんみたいにかなり仕事している。でもお父さんが手伝ってるし、職員さんも忙しさにやりがいを感じてる。国の様子は少しだけ寂しさがあるけれど、それでも頑張ってる。でも、プルみたいに自分のことは自分でやるし、ちっちゃい頃のボクとよくネプギアさんは遊んでくれたし……今どうしてるのかな。
「大変です!ブラックハート様!一大事です!」
「何事!?」
なーんて、ボクの思索を遮るようにあわただしい足音がお茶より早くやってくる。
「こここ国家存亡の危機です!ルルル、ルウィーの女神が、ここ、国境警備隊の隊舎付近に現れました!」
「なんですって!?」
「現在、国境は越えないように通達しながらお待たせしておりますが……」
「……わかった、すぐ向かうわ。移動手段を用意して。ここから国境はかなりあるし……律儀に待っていてくれることを祈るわ。」
「ボクも行くよ。なんでも嫌な予感がするから……」
「ゆ~ちゃんも行くなら~、あたしも行く~」
「あなたたち……わかったわ。すぐ支度して!」
全く休めない。でもお父さんの読み通りだから……状況はまだ読める。
「お父さん、怖いなぁ……」
口角が上がりながらぼそっと零れた言葉を誰も聞いてはいなかった。
次回、第十話「仕組まれた陽動」
感想、評価等、お待ちしております。
最近創作意欲がすごいことになってる……