決死の演技(偽) 作:ムラサコ
勢いでどこまで行けるか……(-_-;)
モジャモジャが叫ぶ。
「いや、あれはヤバいですって!」
冷や汗が止まらない彼は私に警告する。服を掴み力は中々、やっぱり男の子。
「でも、先に進まないと。訳を話せば道を譲ってくれるかもしれないわ」
「いやいや! あれは絶対ヤバいんですって!」
口を開くたびに雑魚っぽさが出て来るので、面白い。
「そのヤバいってどれぐらいヤバいの?」
よっぽど頓珍漢なことを言ってしまったのか、彼はカクカクしたドットのように止まった。
漫画でも、こんな感じで彼らは固まっていたことを覚えてる。
「……仕方がないんで見せますけど。恨まないで下さいよ。」
説明しても理解してくれないと判断し、本当にいいのかと真剣な目で私を問う。
事前知識があった。今思えば、驚くのを楽しむジェットコースーターの気分で彼の提案の呑んでしまったのが間違いだった。
彼とリンクしたその目で見てしまった。
パチリと、私の夢は終わり目を覚ます。
あれを見た後、震える私をレオナルド・ウォッチが支えてくれた。やってしまったと嘆く彼が可哀そうで、私は強気で大丈夫だと言ったのを覚えている。
あれを見たおかげで、マフィアの銃口が酷く旧態依然の玩具にしか見えなく、演技することが出来た。
あの恐怖は、今でも私の中に残り生きている。そして、何故か私の一部となり埋没している。
夜凪景としての才能がさせた妙技か、前世と今世合わせて100年生きていた人生観が生み出す適応能力か。
どちらにしても、ルイとレイに余計な心配をかける必要がなくて安心である。
しかし、問題が何もないではない。
あのとき、血界の眷属をモデルに演技した瞬間。
私は生の実感を得てしまった。
あれ以降、私は演技欲に苛まれてしまっている。
それも血界の眷属を。
「…………どうしよう」
夜凪景、新たな自分に気付く。
「成程成程。それで、どうして僕のところへ来るということになったんだ?」
「分かっている癖にそういう事を言うのね。意地悪だわ」
「僕ももうお爺ちゃんだからね。若い娘と喋るチャンスは滅多になんだ。それも異世界からの来客なんてかなりのレアケース。君を含めてまだ三回だよ」
二回もあったんだ、と私は俗にいうげんなりとした表情を見せ、その反応に彼は無邪気にケラケラ笑う。
「それで? その異世界に渡れる超アイテムを使ってまで僕のところへ来た理由はなんだい?」
「私のことを推理して欲しいの。自分が何をしたのか、何をすべきなのかも分からないの」
「若者は悩むものだけど、君の場合は悩むことそのものが悩みという感じだね」
これまでのことを一字一句説明した。小説家が一冊の本を書くように読む人に配慮したものではない、ただ主観と感情のみで全てを吐いた。
それを呑んでの彼の言葉は、泣きたいぐらいに酷く単純であった。
「君の言う、本物の夜凪景と話してみたら?」
目から鱗であり、鉄で殴られたような衝撃だった。
『乱歩さん、最近何かいいことあったでしょ』
「いや、何もないよ」
僕のことを尊敬する奴が電話口から嬉しそうな声で言う。
さすがは僕が教えただけに良い冴えをしている。でも、説明してあげない。
説明しても信じてくれないことは分かっているし、なんとなく口にするのはもったいない気がする。
開くにしてももっといいタイミングがあるはずだ。
……彼女は物語が遥か終わった後に来たのは、間違いでも自分が巻き込まれるのが嫌だったからだと言った。
彼女の勘は大当たりだろう。それほど、彼女の知識と持つアイテム、そして人間性に魅力があるからだ。
ぜひとも、波乱の時代に出会い巻き込み巻き込まれた欲しかった。
まあ出会えただけでも儲けものだろう。最近、退屈していたし。
電話で近況を話し合い、奴との電話を終え――――僕は社長から貰った眼鏡をかける。
久しぶりだし、少し気合入れてやってみるか。
「異能力――――『超推理』――――」
へえ~。
分かっていたけど、面白いことになっているみたいだ。
レオナルド・ウォッチやラインハルツの反応からして、血界の眷属はかなりの雰囲気、オーラを持っていると思います。
その彼らからの混じりけの無い殺気というのは、常人が失神出来るレベルではないかと考えており、夜凪景(偽)も相当の衝撃を受けました。
全てを破壊する恐怖を目にした人間に、これまでの日常を送れというのは、余りに幸い過ぎる。
幸せではない何かを求めるとき、私は第一に正しさを問う。