決死の演技(偽) 作:ムラサコ
ただ、遊びの種としていじられたりスパルタされたり……。
とにかく、命は大丈夫です!
幇助器具を私から奪い取った暴君、絹旗最愛の願いは成就した。
かの、傲慢不遜にして英雄像の最先端に位置する、最強のサーヴァントとして名高い――――英雄王ギルガメッシュ。
「この、身の程知らずの極致かーー!!?」
本気と書いてマジの私の叫びには彼の耳にもしっかりと届いていた。
そして超敏腕プロデューサー、ギルガメッシュPによる英雄王流演技指導は、彼の愉悦を満たすまで続いた。
「……闇堕ちしたわ」
「……超、真っ黒になりましたね」
Fateの世界にい渡ってから、この時間軸では時間のずれはない。
けれど、体感の時間は一か月である。
「というか、実際ウルクで一か月のスパルタ指導だったわ。あれ、私ウルクじゃなくスパルタスにいた?」
「私もエルキドゥからカメラワークを超叩きこまれました。専門はB級映画だというのに……」
「……カメラないでしょ、ウルクに」
メソポタミア文明に、ないでしょ。
「なんだと思いますか?」
「……人類最古のカメラ?」
「超、イメージ補填です」
見様見真似のカメラワーク。成程、人類最古のカメラワークだわ。カメラを必要としないなんて、原点にして究極ね。
「……エルキドゥさんも同じように?」
二人でパントマイムしている不思議構図が浮かんでしまい、そのせいで気になって訊ねてしまった。
「いかに自然と同期して動植物と触れ合うことが出来るか、です」
動物園の職員さん? それとも植物園?
「超頑張りましたが、エルキドゥさんのレベルまでには滔々、届かなかったです。あれは『鬼滅の刃』の縁壱さんレベルですね」
「日の呼吸なの!?」
「あ、そういう意味ではないです。まるで希薄というか、必殺の一撃を入れる前や気合を入れる前の緩みのレベルが超高いという意味です」
「聞いたことがあるわ。ええ、バネの関係なのよね?」
「リラックスの仕方が上手い人は、超パフォーマンスしている感じです」
そんな感じでグダグダと私たちは話し、ふーと揃ってため息を吐く。
「……私たち、リラックス出来ているかしら?」
「……超、頑張っているとしか」
「いや、ガス抜きが下手でしょう」
ひょっこりと、傍で私たちの話を聞いていた少年が口を開く。
「……志貴」
「いや、そんな恨み染みた顔で見ないでよ」
原作『月姫』の主人公、遠野志貴。
私たちの顔を見てかわ笑いする彼は、この世界『アクタージュ』での転生者である。
ウルクでの演技指導の際、稽古相手としてギルガメッシュが世界を飛び越え彼を召喚したときには驚いてしまったわ。
彼は『原作』のような『直死の魔眼』は持っていない。
だけれど、人とは一線を介した、健やかな赤子の匂いと穏やかな死のような雰囲気を纏っている彼は間違いなく遠野志貴の一部を持っている。
「それで? どうしてそこまで気落ちしているの?」
「……自分で言うのもなんだけでど、私はかなり成長出来たわ。してしまったわ。だから、原作会合した際の絶望を今から感じているのよ」
する気がない癖に、という絹旗の言葉は無視する。
「ポケモンでレベルを上げ過ぎてしまったせいでジム戦を楽しめない、アレみたいな」
「そう、それ」
「……改めてポケモンの認知性が超分かりますね。感動を覚えます」
茶々を入れないと私は絹旗の頭をポカリと叩く。
「若気の至りと思いのまま冒険したおかげじゃないか。確かに、レベルを上げ過ぎたせいでつまらなくなったのかもしれないけど、レベルを下げることも出来ないし仕方がないじゃないか」
「いえ。それでは駄目よ。私たちには敗北が必要なのよ」
全力を出して、あらゆる勝利の可能性を実行したうえでの完全なる敗北。
「『バキ』ではないけど、敗北を知らなくちゃ次のステージには進めない。夜凪景による始まりの戦線を作れない。今の私にはそう確信できる経験があるの」
遠野は私の話を真摯に聞き、絹旗は真剣な目で水面を見つめる。
「それで、どうするんだい?」
「未来に託すのよ」
「未来に?」
遠野、絹旗に私の計画を話す。
「……話は分かったけど、それって芝居と関係あるかい?」
「? 芝居に勝ち負けなんてあるわけないじゃない」
「おい」
「それでも、ぶつかる限り勝者と敗者に別れるものなのよ。試合の内容よりも気持で勝っていたかどうかなのよ」
私は決意表明とも取れる覚悟の言葉を二人に送り、計画実行のため仲間を集める。
そして、計画は100年後――私たちは敗北した。
望みとはかけ離れた、屈辱に塗れた敗北だった。
SF感が強くなって来ます。
今話もそうですが、次回はさらに暴走をします。
温かい目で見てくれると幸いです!
人の多くは勝利よりも先に敗北を知る。
だから、勝利を渇望する人の気持ちが分からない。