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それではどうぞ
「進行開始です」
一人の少女が宣言すると、歪で巨大な螺貝の芯から震える音が天界全土に響き渡った。
「な、なんだ?」
未だに事情の伝達が終わっていない天使たちは混乱の極みにいる。
「放射、開始」
分厚すぎる防護服を来た者たちは背中のタンクから、光を吸い込むほど真っ黒でこの世にこれ以上なく醜悪な物体を流し始めた。
どぼどほどぽ……どぼぼっ
ゆっくりと流れる音がするが、暴れ川の速さで天界を侵食していく。
「うわあぁぁァ……」
位の低い天使は黒い物体が発する気体を吸い込んだ瞬間に、身体のあちこちが黒く染まり、グズグズの小さなカスになってしまった。
「な、何だこの重さは……」
「動けん……」
中級や上位の天使ともなれば、一瞬でカスになることは避けられたが、それでも身体にはべったりと悪意の塊がついて動きを制限し、精神を汚染していく。
「うひhhgm@&#/x……!」
「止めろ、貴様!」
「ギベベベベベベベベベベ」
「クソッ、何なんだよ!!」
まだらの翼に変化した天使は精神に重篤な異常をきたし、プログラムに従って仲間だった天使を殺害していく。
「やめ、やめて下さい! ごほっ……」
「誰かあ〜!! 神様ぁ!」
ダンテの神曲にあるような地獄が、よりにもよって天使の住まう天界で行われている。
第一天から侵入した毒は今や第四天を犯している。
「は! 哀れなことで。 神はとうに隠れているのに、助けを求めるとは……」
「……蓼丸、いいな。ひたすらにお前たちで楔を打て。それで楽になる。」
ここまで饒舌な蓼丸は見た事が無いなと士郎は思った。
「承知しました……」
蓼丸の部下たちが楔を打ちに散会した。楔を全て打ち終わればセラフを圧殺できる。
「さて、撒きますか」
第四天までの毒よりも濃度が格別に高い呪いを撒き散らす。
「とぅとぅっとぅ〜とぅとぅとぅ〜!」
ヘンテコなリズム感で美しい楽園を枯れた地獄に変えていく。
「そこまでだ! 侵入者よ!!」
剣と輝く聖なる炎を携えて、セラフの一人ーウリエルが現れた。
「どうも、どうも。出会って矢先に何だが……邪魔しないで貰えるか」
「このっ!」
聖なる炎と呪いはそこそこ相性が悪く、浄化されてしまうので、不意打ちに放った呪いは消されてしまった。
「この、悪魔め! 我が炎によって浄化されるが良い!!」
「ああ! 鬱陶しい……」
躱してはいるものの、呪い=俺なのでそこそこのダメージを見た目以上に喰らっている。相手に呪いが付着しても流石は高位の天使。侵食されない上に火の粉だけで全て無に帰す。
「おら、食らえっ……」
バンバン!!と銃声が響く。過剰なほどに改造されたコルトパイソン357マグナムが火を噴く。
「くっ……人間の道具如きがこの神の炎に通じるとでも?」
「チッ、足りんな」
聖書の神が真面目に造った炎は面倒くさい。並の天使なら吹き飛ばせる弾丸でも、内部に仕込まれた術ごと燃やし尽くしてしまう。
まあ、燃やされるのが前提なのだが。
「何……」
白い気体がみるみる炎にまとわりついて、勢いを消していく。
「水冷弾。水神や氷神の加護をかけまくってる。神様謹製のあつあつの炎には効果的面だな」
「人間め、小癪な……」
強力な飛び道具を無効化し、俺は抜刀して鍔迫り合いに持ち込んだ。
キン! キンっ!
キリキリキリ……ピシピシッ
甲高い音が鳴り、互いの剣で切り結んでいく。俺は負けじと筋力を呪力で強化する事で立ち向かう。
「なあ、ウリエル」
「懺悔をするか? 勿論、懺悔が終われば貴様を一瞬で葬ってやろう」
7割ほど身体能力を強化しているはずなのだが、相手はまだまだ余力がありそうだ。
「天使どのが傲慢でございますよ。やはり堕天使ですなあ」
「くっ、我を侮辱するか!!」
頭に血が上るのが早いのは事前に知っていたので、軽く煽ってやると、この通り。顔を真っ赤にしてより一層力を込めてくる。
「食らえよ、クソ天使」
刀には呪力を充満させている。鍔迫り合いや剣撃でダメージが蓄積されていた刀は濃い呪力を纏った金属片として飛び散った。
「痛ってえ……」
こちらもただでは済まない。ある程度ガードをしたとは言え、貫通した破片が顔や衣装を切り裂いていく。
「くく……良くやってくれたなあ……人間。わ私のう美しい顔を、きききき傷つけやがってて……………」
精神汚染による軽度の言語障害を受けながらも、ますます敵意は高まっている。
「あーあ、気付いてないの?」
「は?」
どうやら目の前のマヌケは彼自身にとって一番大切な事を失念しているらしい。簡易に作った鏡で自分自身の身体がどうなっているかを認識させた。
「嘘だ……うそだ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」
「お前、羽根が真っ黒だぜ?」
ココロが破れる音がした。
「デマカセヲッッッッッッッ!!!!」
剣で切り掛かってきたが、なにより単調で見切りやすい。呪いとは関係なく、身体のあちこちのパーツがボロボロと堕ちて逝く。
「コンナ……イヤダ……トウサン……」
そこには天界とは思えない腐った臭いが充満していた。
「ざまあみろ、堕天使」
手を下す間も無く、ウリエルは惨めに真っ黒な気持ちの悪い塊になり、暫くすると水冷弾の効果が切れて、復活した炎によって完全に消滅した。
一方、第六天にてーー
「はい、さようなら」
天界1の美女と呼ばれたガブリエルの首がごろん、と転がっていた。
何が起きたか理解出来ず、今も生きているような目の開き方だ。
「ウリエルッ、ど、ど、何処だ? 何故だッ、ラファエル!早くしろ!!」
ミカエルは信じられないくらいに狼狽えている。
「もう、どちらも死んでますよ。残りは貴方だけ。」
「……ふふふ、ははは!!! 雑魚どもで粋がってるなよ?クズどもが……こちらにはシステムがある! さあ、動け! システムよ!!!」
シーン……
「う、動け、動けったら!」
やはり、動かない。
「まあ、それもそうでしょうね。ここは幻覚ですし」
「!? まさか、そんな」
背景がバラバラと崩れていき、あまりにも退屈で苦痛な世界が無限に広がっている。ミカエルはここから出ることも出来ないし、外と連絡すら取れない。ただ永い時間だけを過ごす、牢獄の役割しか無い場所だ。
「貴方が幻覚を破れなかった時点で詰みです。それでは、良い夢を」
「ま、待て、嫌だ、こんなところ……」
絶望に染まる顔。少女はそこからいなくなった。
少女が現実に戻ってくると、ガブリエルの首に胴体、ミカエルが転がっていた。
「気持ち悪い……」
白目を向いて、ピクピクと痙攣しているミカエルを心の底から気持ち悪いと断言した。
「消してください。見苦しいので」
少女の従者が手早く汚物を処理してくれた。そこにはミカエルなんていう天使はどこにも居なかった。
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「という事です。天界は壊滅しました」
「なん……だと……」
数多の天使たちの生首を引っさげて、
元は同胞の天使があまりに無残な状態になり、気の弱い堕天使や堕天使に与する生物は泡を吹いて気絶したり、みるみる精神が薄弱になっていった。
「おら、貴様は斬首だ」
「耳を取れえ!!!」
「一番槍は俺だぁ!!!」
「あ……あくま……だ」
血塗れになっても攻撃をやめず、生物の脂で切れ味が悪くなった刀でも異常な筋力と技術で無理やり切断してくる。
「死ねって、バケモノ」
ある堕天使は光の槍を投擲し、敵の身体を貫いた。バケモノの一匹は倒れる。
「ふっ、所詮は…………は?」
自分の胸から生える金属塊と痛みはバケモノが死んでいない事を意味する。
「な……何故……」
心臓を破壊され、力が一気に抜ける。後から来たバケモノたちに身体を切断される中、悪夢が覚めたらいいのに。そう思った。
ますます混沌と化していく戦場。もう少し前に、思わぬ出来事が起きた。
「日本神話よ、我々も参戦させてもらおうか……」
「オイラたちだって、さんざん煮湯を呑まされてきたからねえ。お宅らもそうだろ?」
「そうだ、貴公らの行動でようやく勇気が出たようでな」
三大勢力は世界中のあちこちからそれはもう、怨みを買っている。
彼らも隙あらば、三大勢力に復讐をしたかった。しかし、いかんせん勢力の大きさのケタが違う。ひたすらに我慢をする日がずっと続いていた。
ある日に日本神話が三大勢力を攻撃している話を聞いて、正にチャンスと思った。何勢力も合わされば打ち倒す事が出来ると。
こうして、続々と天界や冥界、グリゴリ本部に壊滅させようと新手がやって来ているのだ。
「誰だ?」
戦う者たちに彼らは行動で自分たちのスタンスを示した。
「こちら側か!」
戦力がより増えたことにより、殲滅するスピードは倍以上になった。やってきた者たちは臨時で同盟を組み、連携や連絡を簡単に取れるようになった。
「何故……何故なんだ! 日本神話にはメリットなんてほとんど無いはずだ!!」
「煩いぞ、アザゼル。こんなにも怒らせてしまったのは、ほかならぬお前たち三大勢力ではないか。メリットとかデメリットの問題じゃあないことくらい分かっているだろう?」
男とアザゼルは向かいあって、話をしている。
「俺たちは和平を結べる筈だったのに……」
「面白いな、そのギャグ。 ハハハハ!最高だ」
男は真顔で嗤っている。
「何が……おかしい」
「そのままさ。面白いじゃないか、哀れを通り越して滑稽だ。まあ、茶番は置いておこう。お互いに困った時は暴力だ。こんなにも分かりやすい解決方法は無い」
「避けられないのか……」
「今更そんな事を言うのか? 争いの味なんて、お前らがよく知っているだろうに」
「
アザゼルは人工神器を取り出して、禁手へと至る。
「ほぉ……」
感心したようで男は神器を褒め称えた。
「|堕天龍の鎧《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》。悪いが早めにケリを付けさせてもらう」
攻撃を仕掛けようとすると、グニャリと彼の口角が不気味に上がった。
そして、ただ指をパチンとだけ鳴らした。
「何!?」
音が一帯に響くと同時に堕天龍の鎧は瞬く間に砕け散って、元の人工神器に戻ってしまった。追い討ちを掛けるかのように7割に重大な亀裂が入っており、使い物になりそうに無い。
「俺には朝飯前だな……さて、アザゼル。もうおやすみ」
目の前の色のない球体を辛うじて認識できたが、アザゼルが何かしらの行動を起こす前に、長い眠りが訪れた。
約五十二時間後、三大勢力は一部の残党を残して完全にこの世から消え去った。
次回は……多分駒王学園勢。
三大勢力をどれくらいボコるか
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ほどほど
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遠慮なく
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ひかえめ