日本神話「遺憾の意」三大勢力「へ?」   作:凧の糸

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蠱毒(こどく)とは、古代中国において用いられた呪術を言う。 動物を使うもので、中国華南の少数民族の間で受け継がれている。 蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などともいう。(Wikipediaより)


それではどうぞ




悪魔との邂逅

 

 

 

 厳しい修行の日々だ。

 

 荒れ狂う呪いが身体から吹き出してくる。

 

 どれだけ苦しみを叫ぼうとも、どれだけ悲しみが溢れても呪いを閉じ込めておく密閉空間(カンズメ)は開かない。

 

 

 人を呪えと、人を壊せと、人を憎めと、人を僻めとあらゆる負の感情が実態化して百足のように身体を走り回る。

 

 どれだけ痛みを発してもショック死することも出来ない。どれだけ身体をズタズタにされたとしても紋様が黒い液体とゲル状の物体を分泌して、身体の隙間を埋めて無理やりかつ急速に元の形に戻していく。

 

 

 

 何度続いただろうか。心が折れたとしてもまた強固に治って壊れての無限ループが続くだけで、進歩の一つもないように感じられたが確実に耐えられる時間が延びている。耐えられるということは苦痛を感じる時間が増えることと同義であり、正しく進歩とは痛みであった。

 

 

 

 

 肉体も破壊と再生のループで、一滴の水が大河へ変貌を遂げるように太く、頑丈に替わっていく。

 

 

 

二ヶ月後、叫び声ばかりだった密閉空間(カンズメ)から声が消えた。身体に刻まれた力で死ぬことはないにしても、ずっと続いていたものが突然として忽然と消えてしまうのは周囲の者を怖がらせる。

 

 

 

 

 

 

 

 彼の事情をよく知らない者が術者を雇って中の調査をさせようとした。上層部が気づいて、術者を殺害してでも止めようとしたが雇われ術者は何も知らないままに深淵に式神を打ってしまった。

 

 

 

「では、確認しますが中の調査をすれば一億で?」

 

「当然だ。既に前金の二千万を払っているだろう?」

 

「なるほど、承りました。この北条、暗室を検めさせていただく。」

 

ぶつぶつと呪文を呟くと、鹿や鳥の形をした式神がするりと部屋に侵入した。

 

 

「ん?やめ、ああああああああああああああああああああああ!!」

 

 身体中に黒い紋様が濁流のように押し寄せ、全身タトゥーの男が出来上がる。

 

 

 それだけならどれだけ良かったのだろうか。四肢が異常な回転をして骨と筋肉ごとすり潰して搾りたての雑巾四つに変えると、頭がどんどんと肥大化して脳みそと血の混ざり物を雇い主と周囲の人間に撒き散らした。

 

 

「うわああっ、汚ないなあ」

 ある程度の荒事に慣れているのでちょっとだけ驚くだけに留まったが、彼らは直ぐにでも飛び散った赤黒い物体を別のもので拭き取るか、浄化するべきだった。

 

 

 

 

「い、痛い痛ああーー」

 突然叫ぶちょうど居合わせた一人の女性。時間が止まったかのようにピタリと硬直すると、口からだらだらと血が流れてきた。

 

 

 

 

 

「ま、まずいぞ」

 

 誰かが言っても遅かった。紋様が身体を覆うと口や耳、穴という穴から黒い百足や蛾、蛇などあらゆる害虫がぬるり、と這い出てきたのだ。

 

 

「殺せっ!殺さなければ、終わりだ!!」

 焦って火炎の術や氷結の術、手待ちの武器で殺していくが次々に人間の肉を食い散らかして数を増やしていく。

 

「いやだ、しにたぐっえッッー」

 

「クソが、忌み子めっ……」

 奮闘も虚しくそこにいた人間は軒並み黒い虫たちのお腹に収められてしまった。

 

 

 

「止めろ、帰ってこい」

 自分に危害を加えそうな者をきれいに片付けた士郎はより増殖しようとする呪いに戻ってくるように言った。

 

 

 時間が遡るかのように暗い部屋に黒い塊が戻っていく。気がつけば飛び散った肉片や血はキレイさっぱり消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああ……どうすりゃいいんだ……」

 『呪いの子』対策本部長に任命された真羅十蔵。長と聞けば外聞はいいものの、真羅家当主による厄介事の押し付けに過ぎない。

 

「悪魔や堕天使どもへの対策も立てねえといかんのによ……」

 ここ最近、活動が活発化してきており、日本でも大陸のように悪魔が人間や妖怪に対して悪魔の駒(イーヴィル・ピース)による合意なき転生や殺害を行なったり、堕天使の神器回収で人間たちを殺す事が水面下での増加率が過去最高となっている。

 

 

 日本神話からは『見極めがもう少しかかる』と言葉を濁されて進まないし、他の宗家もなんだかんだと騒動が起きているようでとてもじゃないが歩を揃える事は無理としか言いようが無かった。

 

 

「そうだ……あいつにも手伝ってもらうか……」

 一か八かの妙案を考えついた。訓練にもなっていいだろうとさえ思えた。

 

 

 

 

「士郎、だな。俺は真羅十蔵。お前が力を制御したと俺は見た。是非とも手を貸してくれ」

 

「……制御は完璧ではないが、いいだろう」

 叔父上(過去の当主)に似た雰囲気の男に頼まれた。期待に応えられるか分からないが、とりあえず手を貸してみようと思った。

 

 

 

「まずは、この時代のことから……」

 

 

 

 

 

   @

 

 

 

 

 

「なるほど、俺は悪魔とやらを始末すれば良いのだな」

 

「概ねそんな具合だ、お前なら赤子の手をひねるより簡単なはずだからな、一応気を付けろと言っておこう」

 

「善処する」

 士郎はその場から、自分にあてがわれた部屋に行こうとするとふと思い出して十蔵に聞いた。

 

 

「椿姫という女子を知らないか?」

 

「ほう……椿姫とな」

 

「教えてくれないか」

 士郎は明らかにソワソワしていた。

 

 

「そうだな、初仕事を終えれば教えよう」

 当たり前だが、何もなしに報酬(エサ)が与えられる事は無い。

 

「……約束だぞ」

 

 

 そう言って去る士郎に若さを感じながら、手元の煙草を一つふかした。

 

 

「呪いの子といえど、まだまだ子供だな」

 つい先日解放された一人の真羅の者の書類をちら、と眺めた。

 

 

 

 そこには『真羅椿姫』と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、士郎は十蔵に指定されたポイントへと急行した。

 

 既に数人の人間を眷属化、および殺害している悪魔はこの町によく出没するらしい。

 

 町をふらふらと、お登りさんになっていると突然周りから人間や雑踏の気配が消えた。冷たい空気が頬を撫でる。

 

 

 

「なあなあ、君? 僕の眷属にならない?」

 かれは歪みきった笑みを友好の印と勘違いしているのだろうか?

 

「嫌だ、と言ったらーー」

 

「……僕の思い通りにならないものなんて全部死ねばいいさ!!」

 右手を突き出すと魔法陣が広がり、魔力を吸い上げて、魔法を発動させる。

 

 魔力弾が雨のように一気に降り注いでくる。

 

 

 

 

「うおっと!やっぱり慣れないな……」

 短期間で無理やり強化された肉体は敵の攻撃を自分の思い描く形で回避してくれるが、パワー系統の調整がまだ完璧ではなくて、振り回されてしまう。 

 

 

 任務を果たす為にも、周囲に影響を与えすぎないように自らの力の一端を丁寧に練り込んでいく。

 

 

 

「ふははっ!大口を叩いた割にはその程度じゃないか、クソ人間がぁ!!」

 返す言葉も無い。しかし、魔力弾は殆ど当たっておらずそれが余計に悪魔の感情を逆撫でする。

 

 

 

「しまっ!」

 肉体の制御と能力の制御を同時に行っていた士郎は相手の魔力弾で散らかされた瓦礫に躓いてしまった。

 

 彼自身は不器用では無いものの、前回の件で口を酸っぱくして言われた事が余程効いているのか能力の制御を普段の3倍程の集中力で行ってしまったが為の事故だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「畜生が……大人しく死ねばいいのによ!!!」

 魔力を大量にチャージした強烈な一撃が絶対に回避できないタイミングで放たれる。

 

 

 若手悪魔の中でもそこそこ強い部類に入る彼は、同格くらいのものならば確実に殺害出来る一撃を目の前の矮小な人間に、確実に直撃させた。

 

 

 

 直撃の余波で周囲の建物はガラガラと瓦礫に変わり、凄まじい熱がコンクリートの一部を融解させている。

 

 

「チッ!イライラさせやがって……」

 癇癪持ちの彼はこの間ようやくできた眷属の一人を殺してしまったばかりだった。

 

 その補充も兼ねてわざわざ人間の世界に来ていたというのに5人目の被害者を作ってしまうとはなんとも間抜けな話であるが、それを指摘してくれる者は消炭に変わっていたし、最も彼自身は激情に支配されてしまう事を大した事とは考えていなかったので反省もせず、眷属集めという名の狩りを繰り返していた。

 

 

 

カラカラっ

 

 

「あ"あん?」

 瓦礫が崩れる音がして振り向くが何もない訳ではない。

 

 

「何だ……あれ」

 暴力的な悪魔でさえも、思わずたじろいでしまいそうな皮膚の爛れ方。髪の毛はほぼ炭化し、その場に一本の炭が立っているように思えた。シュウウウウ……と意味不明な音がそれから出ている事もより恐怖を掻き立てる。

 

 

 

「お"お"む"が"て"」

 辛うじて残っている声帯から金属を擦り合わせるような不快音がギシギシと鳴った。

 

 

「死に損ないが!」

 『こいつは危険』と悪魔的本能が煩いくらいに警報を出してくる。全力中の全力、2.2秒のタメで目の前の炭をこの世から確実に消滅させられる……はずだった。

 

 

 

 

「あ、」

 

 

 黒々とした炭から泥のように現れた大百足。

 

 

 1秒だけ呆気に取られた事が彼の敗北だった。

 

 

 

 

「ぐわ」

 悪魔はガジリと脛から下だけを残して喰われてしまう。

 

 

 

 

 

 その大百足は将来有望な悪魔(おいしいえさ)に満足していた。主の下にゴソゴソと足をせわしなく動かして還っていく。

 

 

 シュュウという音と黒々とした煙が現れて、身体を覆っていく。

 

 

 

 晴れた煙の中からは、悪魔の必殺の一撃を食らった真羅士郎が全裸で立っていた。

 

 

「いててて、まさかこけるとは思わなかった……」

 通信用に渡された通信機ごと焼けてしまったがためにしばらく全裸である事が確定的になってしまった。

 

 

「誰か助けに来ないかな……」

 結局助けがやって来たのは半日後だった。裸の男一匹がいたのだから救出部隊もさぞ驚いたであろう。

 

 

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「まったく……真羅殿は自分から言い出して置いてまだ来ないのか……」

 

 お互いに秘密にはしているもののそれぞれ騒動が起きている五大宗家の家中。

 

 真羅家が突然の会議をしようと言い出した理由はさっぱり思いつかないが、緊急と必要を意味する印が手紙に記されていた事を見て当主とその護衛だけがひっそりと参加したのである。

 

 

「いやいや、遅れて申し訳ない」

 

 

 

「では、本題だ」

 

『呪いの子』が目覚めてしまったのだ。

 

画面に投射された真羅士郎の情報には驚くべきことばかりが書かれている。

 

 

 

「「「「!!」」」」

 四人は衝撃に見舞われた。二百年も真羅家が隠していたことに加え、下手をすれば五大宗家が全滅しかねない劇物に表情を変えないながらも背中は汗まみれになってしまう。

 

「蠱毒か……」

 

「何故……隠していた」

 

「封印するしか、道は無かった。それに我々の自衛のためでもある」

 

 

「まあまあ、そこは置いておこうではないか。我々にも暗黒の歴史というものはある。それが今回偶々こういうのだっただけ。今は違う道を考えているのであろう、真羅殿?」

 

「ええ、例の件ーー三大勢力への抵抗に利用します」

 

「……私はそれに賛成であるが、かなり面倒ではないのか?」

 

「最近の彼らの行動には目に余るものがあり、日の本を護る一員の我々としても灸をすえる必要がある」

 

「日本神話の方からは……どうなっている?」

 

「『時期まで待て』だそうだ」

 

「……!!それは良かった」

 

 

 

 

「それではもう一つの議題に移ろう」

 

「何だ?」

 

「機怪の開発についてだが……」

 

「機怪だと?」

 

「どういう……つもりかね?」

 

 

「我々は戦力増強を必要としているが、いかんせん上手くいっていないのは十分承知しているだろう。」

 

「説明を求める」

 

「機怪は群体で活動し、敵を迎撃する事が出来る。完成予想では並の神器持ち以上の戦力になるだろう」

 

「そうか、なら私は少し検討させてもらう」

 

「私は反対だ、断じて認められん」

 

「……」

 

「それでは皆さんに設計図等の情報は配っておきましょう」

 情報が公開され、多少の世間話の後で解散された。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「椿姫が……もういない!?」

 十蔵に詰め寄り、そう言った。

 

「仕方ないのだ、悪魔の誘惑を受けてしまった。それを分かっているだろう……」

 

「何でだ……」

 

「まあ、幽閉に迫害もされれば甘い毒にクラッとしてしまうのも無理は無い。諦めろ」

 十蔵は興味なさそうに手元のコーヒーを飲んでいる。

 

 

「分かっている……真羅士郎(オレ)は脳で理解しているが、心が……拒否するなんてな」

 

「これが悪魔のやり方だ。弱みに漬け込み、誘惑して、別の生物を悪魔に変えてしまう。実に卑劣だ」

 

「……そうですか」

 

「また彼女に会えたとしても……期待しない方がいい」

 

「……」

 士郎は無言のままに部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がちゃりとドアを開けて、当主は十蔵の部屋に堂々と入って来た。

 

 

「これで、いいですね?」

 念を押すように、彼の本意を確かめるために十蔵はそう言った。

 

「ああ、これでいい」

 真羅家当主の計画はゆっくりと三大勢力に忍び寄っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 





感想や評価を頂けるととても嬉しいです……単純に執筆意欲が湧きます。

三大勢力をどれくらいボコるか

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