日本神話「遺憾の意」三大勢力「へ?」   作:凧の糸

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 それではどうぞ


秘密

 

 

 

「ようやく来たか……十蔵……」

 

「そりゃ来るさ、真白」

 当主の部屋に士郎の秘密を知る為十蔵は招かれた。昔から仲の良い彼らは二人だけの時に限り砕けた調子で喋っていた。

 

 

 

「丸わかりだ、お前が考えることなどな」

 パキンと弾けるような音がして身につけている超小型レコーダーを霊力によって全て破壊された。

 

「ちぇ、それくらいも駄目かよ。力の方は相変わらずだな」

 

「舐めないで貰おうか……」

 真面目な委員長タイプの真白は額に青筋を立てるが、これはいつものじゃれあいに過ぎなかった。

 

 

「そんな顔するなよ、さあ本題だ。士郎、いや、二百年前の真羅家で何があった?」

 一転して当主は顔を険しくした。何かを躊躇っている様子だった。

 

「そのことだが、やはり辞めておこう……」

 だがそれに待ったをかける。

 

「俺の命と霊力を賭ける。なんなら持ってる物全部もだ」

 自分の命以上に大切なものを差し出した。これには当主も面食らってしまう。

 

「! 本気か……?」

 

「ああ、霊力まで賭ける。その意味分かってるよな?」

 

「……分かった、そこまで言うならだ。絶対本人やお前以外のあらゆるモノに教えてはならないぞ……」

 かなりの念の入れようで、重厚な契約書を書かされ、血による母印も押した。

 

「了解だ、早く教えろ」

 

「何から話そうか……二百年前、真羅家が危機に陥っていたのは知っているな?」

 

「知っている。有名だからな」

 二百年前は真羅家屈指の暗黒時代でとにかくいろいろな不幸が続き、著しく弱体化をした年なのだ。

 

「当時の当主……士郎の祖父に当たる人物が全ての発端だった……」

 どこか遠くを眺めるように語り始めた。

 

 

 

 

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「本当に……いいのですか?」

 当主を補佐する役目を負った蓼丸は初めてその計画を聴いた時に当主が乱心したとさえ思った。明らかに生者に対して行うべきではない痛ましい物。いくら打開策とは言え生命を冒涜して、この日の本を危機に陥らせる可能性のある計画を即刻中止させたかった。

 

 

 しかし、当主は歴代でも屈指の知恵者で、何十年とかけて練り上げられた計画は思わず唸ってしまう程に欠け一つない完璧な内容だった。

 

 

「私が建てた計画だ。完璧に決まっている」

 彼の言葉は慢心のひとかけらもないごく当たり前の、空気を吸うが如く。

 

 その目は既に狂気と妄執に取り憑かれていたが、蓼丸や他の者は見た瞬間に自分も塗りつぶされそうな黒い瞳を直視する事は出来なくなっていた。

 

 

「では、よろしいのですね」

 

「早くしろ」

 

 真羅の力をもって、真羅の血を受け継ぐ八〜十三歳までの百人の男児を短期間で集めた。

 

 

 

「壺も完成か……」

 かなり前から計画的に真羅家当主は巨大な壺型の施設を作り出した。当時としては個人が持つには有り得ないくらいの広さで東京ドームより少し大きいくらいの広さを有していた。

 

 

 

「蓼丸、用意はできたな」

 

「はい」

 

「では、開始だ」

 当主の言葉とともに鐘の音が一帯に響く。役員たちは百人の男児を壺に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

「うわっ、出して!」

 突然集められてかなりいい暮らしをしていると、馬鹿でかい壺に放り込まれたのだからとても最悪な気分だった。その上、最近腕に針ーー注射を刺されてから体調が常にちょっとだけ悪く、余計に暗い気分にさせられた。

 

 

「聞こえているかーー」

 壺内の百人は響いている声を嫌でも耳にする。

 

 

「殺し合え、残り一人だけが……ここから出られる」

 

 

 意味不明だ。放り込まれた上に殺し合え、頭が逝かれてるとしか言いようがない。ほんの一部の者はそう思っただろうが、殆どの壺内の少年はその言葉を聞いた時からある感情が純粋な心の底から湧き出してくる。

 

 

 

 相手を殺せ、相手を喰らえ

 

 

 

 まず、拳での殴り合いが始まった。だが、柔らかい手はすぐにボロボロになる。

 

 どう殺そうかと考える。

 

 周りを見渡すとそこには武器があるではないか。

 

 

 

 

 目の前の人間をより多く殺し、ここから出る為に彼らが剣を取るのはそう遅い事ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「器の少女は確保したな……」

 

「予定通りに事は進んでおります……」

 

「ならば、誘導を忘れるな」

 当主の予想より時間はかからず、一ヶ月で最後の一人が決まった。

 

 

 

 獣の目をして、血の匂いが身体に染み込んだ少年は壺から出てきた。力尽きた様子ですぐに倒れたが。身体は傷だらけで不気味な雰囲気は近寄りがたいものである。

 

 

「おめでとう、少年。私の計画がとても良い流れで進んでいる。」

 究極の善意(やさしさ)に満ちた純粋な顔を覗かせ、それを直視してしまった哀れな役人が一人、発狂した。

 

 

 

 

 そこからコドクの少年は真羅家当主に引き取られ、恵まれた人間らしい生活を送り、一人の少女と恋をした。

 

 

 

 

「父上、実は……」

 当時としてはかなり立派な体格に成長し、真羅家中でも屈指の強さを持ったコドクの少年は青年になり、勿論の事ながら縁談がいくつも来ていたが、本人の意志と誰も知る由もなかったが、父親である当主によって全て断られていた。

 

 

 その事がひんしゅくを買っていたのは事実だが、あまり強く言い出す者がいなかったのもまた、事実であった。

 

 

 

 彼は近くの村に住む、一人の同い年の女性に恋をしていて、また女性も彼を愛していた。

 

 

 先行きが不安な彼はいち早く結婚したかったが、それよりも当主である父に認められるかがなにより不安であった。

 

 

 

 

 ようやく決心してどうにか認めてもらおうとすると、彼の予想を超えた答えが返ってきた。

 

 

「ふむ……子供は出来ていないのか?」

 度肝を抜かれた。それは実質的に認めると同義であったからだ。

 

「い、いいのですか……」

 

「子供を早く作れ」

 

 

 それから一年後に結婚をして、男の子が一人生まれた。

 

 

 

 士郎と名づけられたその子が成長するのと入れ替わるように、コドクの少年は死んだ。

 

 

 

 

 

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「つまり……蠱毒によって一人の少年を創り出した後、器の少女である意味の蠱毒を行い、真羅士郎(呪いの塊)を生み出した、ということか」

 

「毒の塊の種なのだからその種さえも毒物。それを母親の胎内という壺の中で約七十億分の一の結果を引き出した。士郎の親は何も知らないのだからある意味幸せだったかもしれないな……」

 

「呪いで当時の当主は何がしたかったんだ?」

 

「何者にも屈することない力、だろうな。彼は幼い頃は真羅家の人間ではなく真羅家の誰かの種でできた子供だったらしい」

 

「うわ、相当捻くれてるだろ」

 捻くれ者がそう言った。

 

「これ以外にも禁術やかなりの違法行為に手を出していたみたいだ。察しろ」

 

「めんどーだな。帰って寝るわ」

 

「……茶くらい飲んでいけ」

 緑茶はほんのりと暖かみがあるだけで、温かった。

 

 

 

 

 

 

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「どうして……どうして三大勢力に強く出ないのですか!!」

 ある神に対して一人の使者が訴えていた。使者はデータや現場を伝える事でなんとか神々を動かせないか、何度も何度も訴えていた。

 

「申し訳ない。我々としても歯痒いのだ、人間に葦原中国を任せたのにそれを他人に土足で踏みにじられるのは……」

 自らの子に等しい日本に住む民が、神器やなんやらで随分と酷い目に遭い、土着の者や精霊たち、神々でさえ困り果てていた。

 

 

 

「ならなぜ!」

 

「人間に任せると決められた以上、手が出しづらい。それに厄介な事を結んでいてな……」

 

 神は肝を舐めたような苦い顔になる。

 

 

 

「大戦時やそれよりも遥か昔に結んだ約定が足枷となっている。駒王という町や他の大都市にも根を張ってすっかり空気がおかしくなってしまっているし……頭が痛いどころではない……」 

 

 現に駒王町の土地神は信仰を奪われて消えかけているらしい。らしいとあるのは、神々は約束事で駒王には手を出す事が出来なかったからだ。

最近では京都の方にも魔の手が伸びているらしい。

 

 

 ここ10年程で日本から神器を持った者が生まれる確率がそこそこ上昇している。それを知ってか知らずか悪魔は神器持ちや裏と関係無い人間に手を出し、堕天使は勝手に危険と認定した神器持ちを殺し、天使は信徒がのさばり、狂った者による被害が続出していた。

 

 

 

 邪智暴虐の者どもを許さず、己が拳でぶっ飛ばせたらどれほど良かっただろうか。足枷は行動を制限し、傍観者である事をいつでも強制した。

 

「使者よ、そこまで大きく事が変わっていては見過ごせない。時期を待て。そう伝えるがいい」

 

「ありがとうございます……」

 深々と一礼した後に使者は帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
・用語説明

 ・霊力を賭ける
 異能者の生命線とも言える霊力。これをかけるという事は自分の術者としての命以上の物をかけるとも同然で、軽々しく言うと殴られる。もし、霊力が無くなった場合には家の追放や、最悪死すら生温く思える末路を辿る場合さえある。

・霊力
 異能者の力の素。多ければ単純に強いが、多ければいいと言う物でもないらしい。食べると人によって味が違うそう。(士郎の百足談)

・蓼丸
 当時の当主の補佐をしていた者の名前だが、のちに士郎の世話係の役職名に変わった。物好きな性格の者が多いらしい。

・二百年前の当主
 底から頂点まで上り詰めた傑物でマジキチスマイルジジイ。真羅家に入る前はそれなりに真っ直ぐだったが、曲がりきってしまった。研究は現代に役立てられており、制御用の腕輪もその一つ。海外から新しい物を取り入れるなど、意外とミーハーな面があり、その一つには拳銃のコレクションがある。

・壺
 デカい。階層があるらしく、武器がそこらに転がっている。謎技術で出来ており、壺としか言いようがない見た目をしている。

・コドクの少年
 真羅家の血を持つ少年。運良く生き残ったが、ショックで蠱毒内や今までの記憶を失っている。一人の少女に恋をして、結婚し、子供も生まれるがそれさえも計画の一部だった。本人自体は呪いの力をそこまで使える訳ではなく、刀剣に帯びさせたり、身体強化したりして使用する。

・器の少女
 器として何処かから連れてこられた。彼女の胎内で生命誕生のプロセスを利用したさらなる蠱毒が行われたが、母体や卵子に無害であり、気がつかなかった。近くの村に引き取られて義理の両親と知らずに育てられたが、薄々気が付いており、感の鋭さを窺える。

・約定
 日本神話と神がいた頃の三大勢力とで結ばれた。結局不平等でも受け入れざるを得なかったあくどい物。悪魔などが街に取り憑いて良くない事が起きていても、手を出す事は出来ない。

・信仰
 一種のエネルギーのようなもの。神々は全ての信仰を奪われてしまうと消滅か、弱体化の道を辿る。もっとも現代は「科学教」の信仰で等しく弱体化している。

・呪い
 過去の当主が追い求めた結果。強力な反面、強すぎる力のために封印されていた。普段はタトゥーのように刻まれていて、士郎は長袖をよく着ている。戦力は今のところ百足を作って使役したり、呪いを伝染させて相手を殺したりする事もできるが、抵抗力が有れば弾かれてしまう。

・機怪
 過去の当主が作ったらしい。サポートもアタックもなんでもござれの便利マン。設計図だけで実物は既に廃棄されたそうだ。





三大勢力をどれくらいボコるか

  • ほどほど
  • 遠慮なく
  • ひかえめ
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