日本神話「遺憾の意」三大勢力「へ?」   作:凧の糸

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当たり前の願い

 

 

 

 真羅家を中心として五大宗家は悪魔を排除する機関を設立して日本における三大勢力の被害を少しでも避けていた。

 

 

「リーダー、はぐれ悪魔のタイプAだ」

 

「了解です、そちらは頼みます。こちらは私が引き受けるので」

 真羅士郎は成長して十五歳、当時なら元服してもいいくらいの年になっていた。時雨部隊の隊長として指示を行いつつ、硬い外殻を持つ敵の攻撃を躱す。

 

 

「人間がああああああ!!!」

 

「あまり人間を舐めないで頂きたいな」

 黒色の日本刀を、一閃。

 

 

 

「ふばっ!」

 上半身と下半身とを真っ二つにした後、呪いが侵食してはぐれ悪魔タイプAは消滅する。

 

 

「リーダー、こっちも片付いた」

 

「リーダーちゃん、任務達成したよー」

 

「3人のバイタルが正常である事を確認。帰還してください」

 

「了解」

 

「りょうかいー」

 

「了解です」

 

 各自で基地に帰還した。

 

 

 

 

 

_________________________________

 

 

ん"んっ

 

 

 

よく分からない方のために説明を入れておこう。

 

 士郎は弛まぬ訓練をして完全とは言えないがコントロールを得る事ができ、少なくとも普通の生活を送れるようになった。

 

 一部から「士郎君を学校に通わせてどうか」と意見が出たがまだ現代に適応し切れたと言い難く、あまりにも価値観が異なりすぎる上に一般人を危険に巻き込む恐れがあるために教師をつけて学ばせることにした。

 

 幸い士郎は封印前は勉学に励んでいたことや、持ち前の賢さであっという間に高等教育レベルは修める事が出来た。ただ、英語だけは中々上手くいかないんだ、これが。

 

 

 士郎が人間らしく、新しい生活に馴染んでいる傍、三大勢力に対抗する機関が秘密裏にできた。名前を破魔機関と云う。

 

 設立の際、とある日本神話の何柱かが援助したそうだが、彼らや五大宗家、日本のためにも敢えて名前は伏せておこう。密かな反撃が開始したのだ。機関の設立後、当主の意向と本人の希望から機関入りを果たした士郎。コントロールされた呪いの力は凄まじく、彼をリーダーとする新部隊の設立が考えられる程の戦果を齢十三で挙げた。

 

 

 それこそが前述されている時雨部隊の事で、主に若く優秀な人物で構成されているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、しろー」

 

「浅見さん、こんにちは。靴下の色が左右バラバラですよ?」

 

「うわ、しまった」

 この間抜けな奴は浅見(まどか)。士郎を抑えて機関最強の人物だ。靴下の色を間違えてたり、水と酒を間違えてガブ飲みして気絶したりととにかく運が悪く、近所の子供からもあほ間抜けと陰で言われているが、戦闘になると一騎当千。異常な運の良さを誇り、神器無しとは思えない程のパワーと速さを発揮する。

 

 

 彼の強さを代表する例といえば「手拭い事件」だろう。彼が機関に入るきっかけとなった事件でもあると聞いた。

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜風呂きもちーー」

 銭湯から家に帰っている大学生の浅見円。呑気に歩いていると、運悪く機関と堕天使の戦いに巻き込まれた。

 

 

「人間が我らの崇高なる翼を……許せんッ!!!!」

 機関の人間が翼を切り落とした結果、地上で激しい近接戦闘を行っていると、人避けの結界を張っているはずなのに浅見円が入り込み、戦闘を目撃してしまったのだ。

 

 

「な……なんだ……」

 もしここで洗面用具を落とさず、ゆっくりと離れていれば見つからずに済んだのに音を盛大に立ててしまった。

 

 

「好機!」

 堕天使は彼を使って腹立たしい機関の人間を殺そうとした。機関の人間、加茂茂雄は強いとはいえ、けつの青い新入りだった。人質を取られたと同然の状況で円を庇い、吹き飛ばされて気絶してしまった。

 

 

 当然円も吹き飛ばされて、運悪く頭を強打した。

 

 

 

 運良く人間がやって来て、忌々しい加茂茂雄を殺す事が出来た事に多少の感謝はあったのだろう、処刑の順番が2番になっただけだが。

 

 

 

 

 さあ、ヤツにトドメを刺してやる。

 

 

 

 慢心に支配されて、背後のちょっとした動きにも気づかず、光の槍を振り上げてしまった。

 

「うぐっ……なん、だ!」

 眼中にすらなかった一般人が手拭いでぎゅうぎゅうと首を締め上げた。いくら堕天使が頑丈とは言え、基本的肉体構造は人間とさしたる代わりはない。

 

 つまり、この場合で一番有効的な手段は相手を窒息させる事だった。

 

 

 

 

「か、かは……」

 人間とは思えない程の力で、手拭いと円の肉体が万力のように首と堕天使の身体をガッチリと絞めていた。この時、運良く手拭いが破れる事は無かった。

 

 

「あ……しぬ」

 バタつかせていた腕と足が、ぶらん……と崩れる。同時にスイッチが切れるようにして円は気絶した。

 

 

 

 

 1時間後、目覚めた機関の人間(加茂茂雄)が気絶した一般人と窒息死している堕天使を見つけた。

 

 

 これが手拭い事件の端末である。彼は頭を打った瞬間に、何かのスイッチが起動したのだろう。日常の運の悪さやぼんやりしている事の等価交換で凄まじい強さを得る。人間の隠された機能なのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……おっと、話が逸れてしまったね。どうも私は彼のファンと云う奴なのだ。許してくれ。

 

 

 士郎は仲良くなった友達がいるんだ。姫島家の次期当主や櫛橋、百鬼の子らとも友達なんだ。普通の子供みたいに鬼ごっこや隠れんぼをしてた。身体能力が優れすぎてるのには私も苦笑いしてしまったけど。

 

 

 友達を得てから更に精神の安定が良くなった。あの呪いの子を制御して、友好的に過ごそうとした上の企みで色んな子供が来たけど、士郎は仲良くなったりそうでもなかったりだった。

 

 

 まあ、自分のペースで友達は作っていって欲しいと思ったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

私が誰かって?

 

 

 そうだった、説明をすっかり忘れてた。私は士郎が呪いをある程度コントロール出来る様になってから出てきた、彼の父親の残留思念のようなモノさ。

 

 こちらからは見るだけ、勿論向こうからの干渉も出来ない。子供の成長を殆ど見られなかったから、元気に成長してくれて私自身かなり嬉しい。

 

 

 そうそう、どうして君と意思疎通じみた事が出来るのか原理は分からない。ただ一つだけ分かる事は、私がこの後に完全消滅する事だ。親離れの時期なのかね……寂しいけどさ、これもまた運命だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 士郎は、今度駒王高校って悪魔の巣窟みたいなところに潜入とか含めて入学するんだ。入学という行為は……君からすれば当たり前かも知れないが、私たちからすれば奇跡の連続なんだ。

 

 一人の親として涙が出そう、涙腺は無いけどね。

 

 

 

 

 

 私は祝ってやれずにこれから消滅する。君ができればでいいんだ。

 

 

 士郎をどうかーー祝って下さい。

 

 

 祝福は何より素晴らしい物だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

真羅士郎は当主の部屋に一人呼び出されていた。

 

「士郎……当主としてのお願いだ。」

 

「なんでしょう」

 

「駒王学園に潜入をお願いしたい……」

 

「はあ……私が学園生活ですか?」

 

「頼んだぞ……」

 

「はっ!」

 

 

 当主から新たな任務を受けた真羅士郎。当主には、ささやかな当たり前の学園生活を送って欲しい願いもあったが、敵地について調べる必要もまたあった。そこで特に優秀な士郎と数名を送り込む事の運びとなった。そこで運命の再会がある事は……まだ神さえ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

「これで良し」

 下手すれば通常任務よりも緊張している士郎。カバンの中身はきっちりと詰められている。

 

 

 

「では、行ってきます」

 駒王町から、関係者の方の家に居候させて貰って通う。先日取り出したばかりのピカピカの制服はなんだか着心地悪く感じてしまった。

 

「行ってらっしゃい」

 暖かい声は心をくすぐらせる。これはきっと春風のせいだ。士郎は頬を少し染めてそう思う事にした。

 

 

 

 

 ゆっくり歩いて十分。臭いだ。悪魔特有のあの臭い。バレないように鼻をガードして入る。

 

 

 

 やけに女生徒が多いな。多くの視線を感じながらそう思った。

 

 

 これはある意味彼への説明不足で、駒王学園は最近男女共学となったので女子校イメージの強さから駒王一帯の男はあまり通わなかったのだ。

 

 

 そんな事も露知らず、多くの視線は敵なのかと疑念を抱いて自分のクラスに入るが別にそんな事は一ミリも無かった。そこそこガタイの良い彼は女生徒が多いなかではどうしても目を引くのだ。

 

 

 

 

 

 

 先生が入ってきて、説明を行った後のクラスのメンバー紹介で、サ行の時に目が飛び出るかと思った。

 

「真羅椿姫です。どうぞ、よろしく」

 雰囲気が変わっているが、たしかにあの時あった椿姫だ。それに……新羅だと?

 

 複雑な思いが渦巻くが、訓練された彼は表情一つ変わらない。

 

 

 ここでは真壁という名字なのでハ行の最初は私だった。

 

「真壁士郎。どうぞよろしくお願いします。」

 

 

 

 

 つつがなく式も終わり、まだ顔見知り程度だが男や女の友達も出来た。

 

 

 向こうを見ると、何やら人が集まっている。一際強い、純血悪魔特有の臭いだ。

 

 

 

「おい、士郎。あの人だかり知ってるか?」

 

「知ってるのか?」

 同じクラスの井上君。なかなか気さくな野郎だ。

 

「同じ学年のリアス・グレモリーさんと、姫島朱乃さん。入学1日目で上級生までがお姉様!おねいさま!だってよ、アホらし。でも、美人だなーってのは俺も同意」

 

 

「……!」

 この学園の結界は悪魔に有利になる影響があるのにあまり受けていない。だから井上君に対する純粋な驚きがあった。

 

「タイプなんか?士郎は」

 思索にふけっていると、よく分からない事を井上君は言った。

 

「タイプ?」

 型がなんだというのだろうか?

 

 

「自分の女にしてーかって事だよ」

 なるほど、現代語は複雑化しているのか……時代の流れを感じる。

 

「ふむ……無いな」

 即答に彼は意外そうな表情を見せた。

 

「へー、そっか……まあ、鋭い俺の感はあいつらヤベーって言ってる。彼女らを悪く言いたい訳じゃあないが、士郎がそう言っててちょっとホッとしたわ。」

 

 

「じゃ、俺帰る。また明日」

 

「また明日」

 ぴょんぴょんと飛ぶようにして彼は走って帰宅した。

 

 

 

 

「前途多難か……」

 ぼんやりと雲の浮かぶ様が、羨ましく思えた。 

 

 

 

 

「すみません、真壁士郎でよろしいですか?」

 彼女に呼び止められた。

 

「はい、何でしょうか?えっと……しんらさん?」

 

「どこかで……会ったことないですか?」

 

「……すみません。私は貴方に会った事が無いですね……」

 嘘をついた。

 

「い、いえ。昔の友達に似ていたもので……」

 

「……それじゃあ、また明日」

 

「また……明日」

 振り返らずに真っ直ぐ帰る。家に着いたら十蔵に聞かなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

運命の鎖は未だ遠く……

 

 

 

 

 

 





補足

・はぐれ悪魔タイプA
 はぐれ悪魔の研究でいくつかのタイプに分けられる事が判明した。現在はA〜Eまで確認されている。Aは人型で、はぐれ初期段階か相当の実力を持つ者かの二択が多い。



三大勢力をどれくらいボコるか

  • ほどほど
  • 遠慮なく
  • ひかえめ
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