ペルソナEvolution1 ツキバネカオルの仮面 作:創作魔文書鷹剣
《5月2日(水)晴れ 月羽宅》
昨日の会話(?)から1日が経ち、まだ薫はその事ばっかり考えていた。元々コミュ症過ぎて他人と会話が出来ない彼女にとって「向こうから話しかけて来た」というのは大きなチャンスだった。即ち「友達1人目」になってくれるかもしれない可能性が出てきたのだ。だが問題が一つ。
(友達になるには話さなきゃいけない。でも、何をどうやって・・・?)
会話というものが極端に苦手な薫にとって「何を話せばいいか」、「どうやって話しかければいいか」が全くわからないのだ。よって件の男子生徒と会話をするどころか、話しかけることさえ出来ない。つまり詰みである。
(どうしよ・・・?)
「なんだかお困りのようですねぇ、よろしければお悩み相談の方をわたくしが・・・」
そう言われて一回振り返った後、クリフォトを視界に収めた途端首を正面に戻し・・・
(どうしよ・・・?)
「藁にも縋らない上に見なかったふりをされるのは辛すぎるんですが?」
どうやら自分が藁のようなレベルである自覚はあるようだ。
「・・・何も知らないくせに・・・。」
「貴女に話しかけてきたという男子生徒の話でしょう?どう話しかけたらいいか分からないとかで・・・」
「・・・ッ!?」
自分が抱えてる悩みをズバリ言い当てられて露骨に動揺する。
「何で、知って・・・ッ?」
「だって貴女、昨日からずっとその事ブツブツ言ってるじゃないですか。」
確かに薫は昨日からその事ばっかり考えていたが、あろうことか声に出ていたようだ。そう告げられた薫はクリフォトに背を向けたっきり動かなくなったが、髪の隙間から覗く耳は真っ赤だった。
「・・・・・・・・・・///」
「貴女のお好きなように・・・とはどう考えてもいきませんので、わたくしから一つ。『取り敢えず、話しかけてから考える。』です。」
(それが出来ないんだって・・・)
何気に難しい事をやらせようとするあたりクリフォトは鬼畜かもしれない。或いは裏世界でぞんざいに扱われてるから、表の方でやり返そうとしているのかも。テンパった時の薫はリアクションが激しいし。
(ど、どうしよう・・・?)
《5月3日(木)曇り 翠蓮学園2-1教室》
結局昨日は有効な作戦が思いつかないまま1日が経ってしまった。
「・・・はぁ」
ついつい件の男子生徒を目で追ってしまうが、これは向こうから話しかけてくるかもと期待半分もしそうなったらどうしようという不安半分の眼差しなので恋ではない・・・ハズ。
(・・・来ない、か。)
期待とは裏腹に、男子生徒は薫に話しかけては来なかった。その代わりといってはなんだが、たまに目が合う事はあるが薫の方がすぐ目線を逸らしてるから意味は無い。無念。
(うーん・・・話しかけて来ないのか・・・)
薫的には対応に困るから来なくて助かった反面、話しかけてほしい願望もある。つまり、どっちにしろそこそこ困るのだ。結局今日1日男子生徒は話しかけてこず、薫を多少ヤキモキさせるだけに終わった。思い通りにいかなかった薫の足取りは思い。
「ただいま・・・何コレ?」
家に帰った彼女を待っていたのは、白装束に身を包み頭に蝋燭を括り付けたクリフォトが水晶玉に向かって念じている姿だった。
「ハァァァアァァ・・・おや、おかえりなさいませ。」
「・・・そんな急に変えないで、意識。」
謎過ぎる景色とクリフォトの態度に一瞬思考が停止しかけるが、コイツの奇行は今に始まった事じゃないとスルーする。
「フゥゥゥウゥゥ・・・」
「・・・何やってるの?」
だが再び始まった奇行を前にスルースキルの限界が来た。
「見てわかるとおり、呪術です。」
「・・・何で?」
「わたくしこのタイプの呪術でしか裏世界を覗き見できませんので。」
なんて面倒くさいんだろう、そう薫は思ってしまった。ちょっと裏世界を覗くためにあんな奇声を発したら誰だって面倒くさいと思うだろう。
「・・・見て何がわかるの?」
「まあちょっとした偵察程度しか見えませんし、何か異変が起きてないかチェックするぐらいですね。裏世界は何が起きても不思議じゃありませんし。」
「・・・そう。」
「ふっふーん、さてさて裏世界の様子は・・・バベルスの外観に変化は無し、中身は・・・ッ!?人間!?」
「え、人間!?」
裏世界にいるはずが無い人間の姿が見えたと聞き薫も慌てて水晶玉を覗きこむ。そこにはバベルスを彷徨い歩く例の男子生徒が映し出されていた。
「・・・あの時の!」
「例のお相手ですか・・・助けに行きますよ!!」
クリフォトは急いでポータルを開いて飛び込み、薫もすぐに飛び込む。飛び込んだ先ではシャドウの気配を強く感じるが、だからといって助けるのを止める事は無い。
「人間の気配は・・・こっちです!!」
「わかった!」
武器を手にひた走る1人と1体。全ては手の届くところにいる、顔見知りの彼を助けるために。