ペルソナEvolution1 ツキバネカオルの仮面   作:創作魔文書鷹剣

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 ペルソナ能力に目覚める瞬間は書くのが大変なのだ。


覚醒

《???》

 

「いったぁ・・・」

 

 謎の歪みに落っこちて、薫が着いた先は見慣れない小屋の中だった。小屋の中と言っても部屋の見た目からここは小さな家の中だと思っただけだが。

 

「ここどこ・・・?」

 

 この部屋は明らかにおかしい。窓の類は一つも無く、ただ扉が一つあるだけだった。さっきの歪みがあればそこから帰れたかもしれないが、それが無い以上出口になりそうな物はあの扉しかない。

 

「ホント勘弁してよ全く・・・」

 

 嫌々ながら扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。

 

「・・・え?」

 

 視界に飛び込んできたのは、どこまでも広がる紅い空と高くそびえる黒い塔。そしてその根本を覆い隠す黒い建造物群。先程の部屋よりも更に異常な光景に開いた口が閉じなかった。

 

「う、そ・・・何で(・・)?」

 

 こんな光景を見るのは初めてのはずだ。なのに、何故か薫はこの光景に見覚えがある気がした。いや、むしろ故郷の地に戻って来たかのような安心感を感じた気がする。何故自分がこの場所にそんな感情を抱くのか、それは全くわからないが・・・それ以外にももう一つ、感じるものがある。

 

「・・・呼んでる?」

 

 ハッキリとはわからない。だが、誰かが彼女を呼んでいる気がした。まるで吸い寄せられるように足が動き、一歩づつ黒い建造物群に向けて歩き出した。

 

「暗い・・・」

 

 中は予想通り暗く、僅かな明かりさえない暗闇に進む足が止まる。風も音も何も感じない独特の空気感を恐れながらも、それでも一歩づつ進んでいく。やがて少し明るくなると、足元に何か気配を感じた。

 

「ッ!?・・・・・・・・・・誰?」

 

「まさかこの地で人に出会うとは・・・案外わたくしも捨てたものじゃないようですね。」

 

 足元に転がっていた謎の女性、床に倒れてる割には結構元気そうな様子だ。誰かと聞いたのに答えてくれない辺りちょっと自己中かもしれないが、この状況で人に出会えるのは薫にとっても幸運だ。

 

「だから・・・アンタ誰って聞いてんの。」

 

「申し遅れました・・・わたくし、色々あってこの地にやってきたあk・・・『クリフォト』と申します。以後お見知り置きを。」

 

「クリフォトね・・・で?アンタはなんで此処にいるの?ていうか此処どこ?私早く帰りたいんだけど帰り道知ってる?」

 

「それらは順を追って説明いたします・・・今はとにかく『アレら』から逃れねばなりません。」

 

 「アレら」とは何かを聞く前に、そこら中から悍しい息遣いが聞こえてきた。やがて姿を現したのは、見た事も無い化け物達だった。

 

「何アレ!?」

 

「人の心を喰らう怪物、シャドウでございます!今はとにかく逃げますよ!!」

 

 1人と1体の周囲を囲う化け物の群れ、その隙間を縫って走り抜けるしかこの窮地を乗り切る策は無い。途中追いかけてくる化け物達に何度も捕まりそうになるが、スレスレのところで全て避けていく。

 

「はぁはぁ・・・行き止まり!?」

 

「こんな所で行き止まりとは!かくなる上は・・・」

 

 前に壁、後ろにシャドウ。絶望的な状況を前に、クリフォトは賭けの一手に出た。

 

「・・・切り裂け。」

 

 薫を背後に置いての、迎撃戦闘であった。

 

「出来れば戦闘は避けたかったのですが・・・こと此処に至っては止む無し!!」

 

 いつのまにかその手には杖が握られ、その柄は細身の刃が添え付けられていた。その細く鋭い刃でシャドウの群れを切り裂き、杖の一振りで数体のシャドウが呆気なく消滅していく様はいっそ見ていて気持ちいい程だ。呆気にとられる薫を他所に、クリフォトの斬撃でバッタバッタとシャドウが消えていく。

 

「しばしご辛抱を!今この群勢を切り裂いて活路を見出しますので!!」

 

 だが、こんな時に限って予想外はやって来る。

 

「ッ!こんな時に大型ですか・・・ッ!!」

 

 さっきまで蹂躙していた雑魚とは明らかに違う、巨大な異形の怪物が姿を現した。瞬間空気感が変わり、錆びた鉄のような匂いを漂わせるそれは巨大な肉体を揺らしながら1人と1体に牙を向いた。

 

「・・・・・・・・・・シャドウ、か・・・」

 

 薫の足が、一歩一歩大型シャドウに向かっていく。金色の瞳は光を無くし、口からは冷たい吐息が溢れ出る。

 

「逃げなさい!今あれに襲われれば命は・・・」

 

『いいよ、私がやるし。』

 

 言葉が重なった。薫と、薫ではない「誰か」の言葉が。

 

『運命は動きだした・・・』

 

『汝、破滅の運命を持つ者よ』

 

『運命への挑戦を誓うならば、汝に力を授けよう・・・』

 

 頭に声が響く。一つ一つの音が強烈な痛みを伴って聴こえてくる。だが意識が途切れる事は無く、むしろ頭は冴えわたっていた。

 

「私は・・・誓うよ。運命に挑戦する。だから、お願い・・・力を貸して!!」

 

『ならば契約を・・・』

 

『我は汝、汝は我・・・』

 

『長き苦痛と苦難の果てに・・・』

 

『必ずや、その手に真実を・・・』

 

 契約は完了し、薫は力を手に入れた。破滅の運命に抗い、真実を掴み取る力を・・・

 

「ペ・ル・ソ・ナ!!『エヘイエー』!!」

 

 自らを呼ぶ声に応え、冷気を纏う白き天使が姿を現した。冷たく、刺すような威圧感がシャドウに降り注ぐ。まさしく、絶対零度。逃げる事など不可能である。

 

「・・・消えろ。」

 

 薫の意思に呼応するように、エヘイエーがシャドウを蹂躙する。大型も小型も区別なく、極寒地獄によって粉砕されてゆく。その姿を前にクリフォトは黙って眺める事しか出来ず、同時に戦慄した。

 

(ペルソナ能力に目覚めた瞬間からこれだけの強さ・・・!恐らく半ば無自覚で力を行使しているのでしょうが・・・だとしたら、あまりにも・・・・・!)

 

 残酷過ぎる。クリフォトの胸中を支配するのは、嘆きと慚愧の念。しかし今はそれどころではない。薫の手を引き、急いでこの空間から脱出する他ない。

 

「今です!今のうちに逃げますよ!!」

 

「・・・え?ちょ、ちょっと待って!?今私何やってたの!?なんで此処こんなに冷えてるの!?」

 

(やはり無自覚での能力行使・・・ッ!これ程残酷だというのですか!?)

 

 出口を目指して突き進む1人と1体、それを包み込む暗闇はまるで2人の心境を表しているようだった。そして外に出た瞬間、クリフォトがあの「歪み」を作り出した。否、今薫に見えているのは歪みよりもハッキリとした「門」だった。

 

「コレをくぐれば貴女が元いた場所に帰れます!!さあ早く!!」

 

「え、ちょっと待ってこの門はなんなのぉあぁぁぁ・・・」

 

 門をくぐった途端に薫は白い光の中に落ちていき、それに続いてクリフォトもくぐると門は消えた。後に残されたのは、静寂と異様な光景だけ・・・

 

 かくして、彼女の運命は始まりを迎えた。だがそれは決して幸福では終わらない。彼女が生きている限り、その側には破滅があるのだから。

 




 薫の立ち絵、誠意製作中・・・
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