ペルソナEvolution1 ツキバネカオルの仮面   作:創作魔文書鷹剣

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世界の真実

 あの遭遇を経て、薫はクリフォトと共に東尽町に帰還した。正直急展開に次ぐ急展開で精神と寿命がすり減った気がしてならない薫は今すぐにでもコイツ(クリフォト)を締めあげてやりたい感情に駆られるが、今はそんな事をしている場合じゃないと自分を抑制して冷静に話を進める。

 

「それで・・・?アンタは、なんなの?」

 

「そのあたりも順を追って説明せねばなりませんね、一度貴女のご自宅でみっちりお教えしたいのですが・・・わたくしの格好は目立ちます故・・・これでどうでしょう?」

 

 ボンッ、という音と同時に白煙に包まれたクリフォト。数秒の後に煙が晴れたと思ったら、そこにいたのは彼女をそのままデフォルメしたような外観のぬいぐるみだった。

 

「これなら大丈夫でしょう。さあ、ご自宅に向かいましょうか?」

 

「はぁ・・・。」

 

 面倒くさい輩と知り合ってしまった事に溜息をつきつつも、しょうがないから自宅への帰路を進む。クリフォトの態度次第では手やら足やらが飛んできそうな程に薫は苛立っていたが、そうはならない事を祈るばかりである・・・

 

《月羽宅》

 

「それでは1から説明いたします。先程わたくし達がいたあの空間、あれは『裏世界』と呼称される異空間にございます。裏世界とこの場所・・・『表世界』はコインのように表裏一体の存在であり、互いに影響し合う関係なのです。」

 

「なるほど・・・なるほどね・・・」

 

「そして裏世界に巣喰い、わたくし達を襲った怪物が『シャドウ』・・・人の心を食らって育つ凶悪な存在です。そのシャドウに唯一立ち向かえるのが、貴女が目覚めた『ペルソナ能力』を持つ者なのです・・・ご理解いただけましたか?」

 

「うん、わかった・・・とりあえず・・・」

 

 薫は立ち上がり、クリフォトの懐に潜りこんで・・・

 

「長いわぁぁーーーーーッ!!」

 

「みぎゃあぁぁーーーーーッ!?」

 

 ・・・強烈なアッパーカットをお見舞いした。

 

「さっきから黙って聞いてればッ!!延々と一方的な話をッ!!かれこれ30分ッ!!いい加減にとっとと終わらせろーーーーーッ!!」

 

 続く2発の腹パンと1発の蹴りを受け、とどめの胴回し回転蹴りが脳天を直撃したクリフォトは血反吐を吐いて床に倒れこんだ・・・念のために言っておくが、薫は決して暴力的な側面を持ち合わせているわけではない。ただ溜まりに溜まったストレスが全部クリフォトに降り注いだだけなのだ。

 

「ごふっ・・・っ!!なんて強力な胴回し回転蹴り・・・」

 

《仕切り直し中です、もう暫くお待ちください・・・》

 

 なんか無視できない大事件が起きた気がするが、そんな事は気にしないで話を続けよう。何故かクリフォトがボロ雑巾みたいになってるけど気にしてはいけない。

 

「貴女が目覚めた力・・・ペルソナ能力はシャドウを打ち倒す唯一の手段、裏と表の調和を保つための力なのです・・・お願いします。どうか、わたくしと共に戦っていただけますか?」

 

「ヤダ」

 

「即決ッ!?」

 

「・・・なんでアンタのために戦わなくちゃいけないの?」

 

「うぐっ・・・地味に痛いところを突いてきますね・・・」

 

 というか、そんだけの理由で戦ってくれるのは聖人君子とかそういう部類だけだろう。何故今の言い方で一緒に戦ってくれると思ったのだろうか・・・

 

他はともかく(・・・・・・)・・・貴女は、どのみち戦うしか道は無いと思いますけどね。」

 

「・・・どういう事?」

 

「貴女の・・・『失われた記憶』について。」

 

 クリフォトが何を言っているのか、薫には全くわからなかった。失われた記憶?彼女の記憶には目立った欠落はない。あったとしても大した内容の記憶ではない筈だ。

 

「記憶・・・別に、失ってないけど。」

 

「では覚えていますか?貴女が・・・何故1人なのか。」

 

 何故かと聞かれても大した理由は無い。ただ1人だから1人なのだ。彼女には何もないしその側には誰もいない。友人も、家族も・・・

 

「・・・家族?」

 

 おかしい、人は誰しもが母親から産まれてくるはずだ。なのに、何故自分には家族がいないのか。誰にでも父親と母親がいるはずなのに、自分の親が分からない。顔も名前も知らない。

 

「家族・・・家族って・・・誰なの?」

 

 考えれば考える程疑問符が湧いてくる。理解ができない。

 

「私の・・・家族・・・」

 

 唯一理解できたのは、クリフォトの言う「失われた記憶」とやらがそれであるかもしれない事。

 

「家族・・・」

 

 視界が濡れる。歪んで色彩が抜け落ちていく。今まで考えた事も無かった、自分にだけ家族がいない理由、自分がひとりぼっちな理由・・・

 

「貴女の記憶は欠落しています。それを取り戻す鍵は、裏世界にある筈です。彼の地は人々の精神と記憶の集合体、恐らく貴女の記憶も彼処に・・・」

 

 クリフォトの声が耳に入らない。ただひたすらに、怖かった。

 

『恐ろしいのか?』

 

 ・・・頭の中に声が響いてくる。今朝学校にいた「薫」の声だ。

 

『自分の中にいる本当の自分を、お前は自ら閉ざした。幼い自己防衛本能によってな。それが真実だ。』

 

『違う・・・そうじゃない・・・』

 

『否定したいなら好きにすればいい・・・だが、いずれ真実を知る時が来る。その時までにハッキリさせておけ・・・』

 

 ・・・視界が晴れる。ノイズまみれの音が次第に元に戻っていく。クリフォトの声が聞こえる。

 

「どうなさいました?意識があらぬ方向へ飛んで行ったようですが。」

 

「・・・なんでもない。」

 

 なんでもないわけがない。見るからに泣くのを我慢してる時の目だし、顔は俯いたまま上を向かない。明らかに感情が激しく揺れ動いている。だが悲しきかな、クリフォトにそれが伝わる事は無いのだ。

 

「・・・わたくしの言葉に衝撃を覚えたようでしたら、ご協力頂けるか否かお考えください。貴女のご決断が大事ですので・・・」

 

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