ペルソナEvolution1 ツキバネカオルの仮面   作:創作魔文書鷹剣

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イン・ザ・ハート

 ・・・夢を見ているような気がする。まるで冷たい水に浸かっているような、心地よくてどこか寂しい風景。いつか感じた筈の指先の温かさ、心臓の鼓動、吐く息の感触・・・

 

『・・・薫、薫・・・起きろオイコラ。』

 

 自分を呼ぶ声に起こされて薫は飛び起きた。目の前にいたのは自分と似た顔、正真正銘の「カオル」だった。

 

『やっと目が覚めたか、あまりにも寝坊が過ぎるから尻を蹴ってやろうと思ったが・・・』

 

「余計なお世話。アンタが誰だか知らないけど、口出しはさせないからね・・・」

 

 あまりにも自分とそっくり過ぎる顔・・・正確には眼だけが違う。薫が輝きの無い金色であるのに対し、「カオル」は燃えるような紅色。たった一つだけの違いが、より一層カオルの異色さを際立てている。

 

『俺が誰であるか、か・・・それはいずれ理解できるさ、お前が運命に挑み続けるならな。』

 

 視界が薄れる。

 

「運命って・・・ホントにそんなのあるの?」

 

 指先の感覚が無くなる。

 

『あるさ。』

 

 そして、彼女の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

《4月18日(水)晴れ 月羽宅》

 

 布団の上で目が覚めた。時刻は午前5時36分、汗だくでこれまでの事を思い出した。自分と同じ顔の奴がいた事と、そいつが意味深な事を言っていた事。そして「運命はある」って・・・

 

 (ダメだ。全然頭回らない・・・)

 

 せめてパジャマだけでも着替えようと部屋を漁り、制服一式を引っ張りだした。まだ学校に行くには早すぎるが、一回私服を着てから制服に着替えるのも面倒くさいからこれでいい。何より私服のバリエーション少なすぎるし。

 

「・・・・・・。」

 

「おや、お目覚めですか。」

 

 起床してすぐに厄介者(クリフォト)の姿を目に収めねばならない不条理は置いておいて、冷蔵庫の中から引っ張りだした朝食を食べているうちに昨日の事を思い出してきた。

 ペルソナ能力・・・「エヘイエー」が持つ力、そしてシャドウを無意識に倒した事。あの後急に意識が途切れて、気がついたら今朝の「夢らしきもの」を見ていた事も・・・少しずつ記憶がハッキリしていく中で、気になる事が一つだけあった。

 

(何で私、気絶したの・・・?)

 

 ペルソナ能力を使った後の急な気絶、明らかに関係がある。だとしたら自分はあの力を使ってはいけなかったのか、だとしたら何故クリフォトはそれについて言及しないのか・・・

 

「・・・・・・。」

 

「・・・ん、どうかいたしましたか?」

 

「・・・何も。」

 

 ・・・そもそもコイツが包み隠さず話していれば何の問題も無い筈なのだが、何故か重要な情報を小出しにして少しずつ話し出してくるあたり信用できる相手とは言えない。薫にとって有益な情報だろうがお構いなしに秘密主義を貫くんだから反感を買われても文句は言えないだろう。

 

「ハァ・・・」

 

《数時間後・・・翠蓮学園高校2-A》

 

(・・・うるさいなぁ。)

 

 ここでも彼女は1人。正確には心の中にもう1人自分がいるから2人きりなのだが、一般的にそれは2人と言わないため実質1人である。ひとりぼっちで感傷に浸る彼女の耳に入ってくるのは、耳を塞ぎたくなるような言葉の数々。

 

「アイツ今日もボッチだぜ、やっぱ友達いねーんだな。」

 

「ナンパしたらすんなり堕ちるんじゃね?話しかけられた事さえなさそうだぜ。」

 

「きっと泣いて喜ぶぜ、まあ体だけ貰えりゃいいけどよぉ。」

 

 気持ち悪い、汚らしい、虫唾が走るのトリプルコンボ。聞いてて吐き気を催すような汚い会話が聞こえてくる。薫が他人と距離をとるのはあの手の輩が原因・・・ハッキリ言えば、自分の事を怪訝な目で見るような奴と欲望を包み隠さないクズが嫌いなのである。

 

(はぁ・・・ホントやだ。)

 

 因みにボッチだなんだと言われているが薫は相手がいないだけで友達は欲しいのである。ただ他人に話しかける勇気とコミュ力が足りないから友達は1人もいないが・・・え、クリフォト?いや、うん・・・

 

《月羽宅》

 

 漸く帰ってこれた。帰ったところで何も無いどころか面倒くさい輩の相手をしなければならないから別の意味でストレスが溜まる。胃薬が必要にならないかちょっと心配である・・・

 

「おかえりなさいませ、お疲れでしょうから今日はゆっくりしていただいて結構でございます。」

 

「・・・そうする。」

 

 言われなくても分かっている。ペルソナ能力の弊害なのかいつもより疲れた様子の薫は、寝床につくや否や制服を脱ぎ捨てて即座に寝落ちした。華の女子高生が帰宅した直後に半裸で昼寝するのはどうなんだろう・・・

 

《???》

 

 海と桜の景色が美しい街並み、絶え間なくそこに有り続ける人々の雑踏。その中にいた1人の少女、彼女は両手を両親に引かれて街を歩く。小さな彼女には大き過ぎる街、浮かれて両親の手を離れ勝手に走りだす・・・それが永遠の別れだと知らずに。

 

 炎の中、逃げ惑う人々の恐怖に怯えた声が聞こえる。少女はただ座り込んで泣くことしか出来なかった。いなくなった両親を悲しみ、目の前まで迫り来る死に怯え、何もかもが怖くて仕方なかった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 声が聞こえる。女性の声だ。少女が炎に呑まれるより早く現れた女性は、宙を舞い少女を救い出した。だがその顔が後悔の念に悩まされているように見える気がする・・・

 

《月羽宅》

 

(また酷い夢を見た気がする・・・)

 

 今日は厄日かもしれない。朝にもう1人の薫と対話する夢を見たかと思ったら、今度は変な光景を見せられて余計に疲れた。もう普通にしていようと思い、脱ぎっぱなしだった制服を仕舞って私服を引っ張りだした。でも寝室を一歩出れば・・・

 

「おや、お早いお目覚めで。」

 

 当然視界に入るウザい奴、薫はそっとドアを閉めて寝室に引き篭もった・・・




 書き終わったら明日まで待ってから投稿する謎ルール。
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