ペルソナEvolution1 ツキバネカオルの仮面   作:創作魔文書鷹剣

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実戦、即改善

《4月22日(日)晴れ》

 

 今日は日曜日。世間一般では日曜日は休みになりがちなのだが、薫にはその概念は無いようだ。

 

「今日からは実戦に移りましょうか。漸く貴女の体も戦えるぐらいにさ慣れたみたいですし。」

 

「実戦ねぇ・・・」

 

 小さくボヤきながら左手の剣を見る。水色の刃が光るこの剣は薫も結構気に入っているのだが、だからと言ってこれを使って戦いたいと思えるかは別問題だ。

 

(私、戦えるのかなぁ・・・)

 

 つい先週までは普通・・・いや、外見だけ普通に見えて中身は普通じゃない女子高生だったのに、いきなり剣を握って戦えと言う方がおかしいはずだ。なのに目の前にいるクリフォトはそれをやれと言ってくる。倫理観だか社会的常識だかが欠如しているのだろうか。

 

「そもそも私って戦えるの?なんか騙してない?」

 

「少なくとも以前のように気絶したりはしないはずですよ、大幅にレベルアップしているでしょうから。」

 

「レベルアップねぇ・・・なんかメタい感じ。」

 

「それは言っちゃいけない約束でしょう・・・」

 

 いつかの誰かはレベルアップがどうとか言っていたが、少なくとも触れている話じゃないのでこの話は終わりにしよう。そして1人と1体は、バベルスの中へと足を踏み入れた・・・

 

「・・・わたくしは以前からこのバベルスに足を運んでこの地を観察してきましたが、それでも判明している事は僅かです。シャドウを生み出す機能を有している事、稀に大型のシャドウが産み落とされる事、そして・・・人々の感情が、この地を形成している事。」

 

「結構わかってんじゃん。」

 

「これで『結構』ならいいんですけどね・・・いかんせんこの地に関する疑問は湯水のように沸いて出てきますので、いくら調査を重ねても無駄な気がしますけどね。」

 

 若干自虐ネタ風の会話を交えながら1人と1体は歩みを進めていく、冷たい空気を肌で感じながら暗い道のりを先へ先へと進んだその時、頭上から気配を感じた。

 

「ッ!上ですッ!!」

 

 奇襲を仕掛けるシャドウに対して、薫がとった行動は一切の無駄が無い完璧な回避行動だった。奇襲攻撃を紙一重で避け、空振りして隙だらけなシャドウを剣撃で捌いていく。ペルソナを使わなくとも既に凍りついている剣による斬撃は雑魚シャドウが耐えられる威力ではなく、僅か3回の斬撃でシャドウは切り捨てられた。

 

「お見事・・・素晴らしい実力でございますね。」

 

「ん・・・今私何かしてた?体の違和感がすごいんだけど。」

 

「ええ、貴女がその手でシャドウを粉砕しておりました。」

 

「粉砕ねぇ・・・」

 

 薫は自分の剣をまじまじと眺めた。血飛沫のような物は何も無いが確かに何かを切ったような感じが残っている。知らない間に自分の体が勝手に動いている感覚を理解する事はできなかったが、それでも自分が戦っているという事に変わりはない。

 

「何も覚えてないんだけど・・・」

 

「それで正しいのです。ペルソナ能力者は十分な練習を積むまで無意識下で戦うのが常であり、人間の体でペルソナ能力を行使するための「適切な処置」なのですよ。」

 

「適切な処置って言われても・・・」

 

 そもそも適切じゃない処置という物が分からんから適切な処置とか言われても理解はできない。というかクリフォトに関しては口から出る言葉の一つ一つが胡散臭い、薫に信用されていないのも納得である。

 

「貴女の力は他の能力者と比べて強力な代物のようですね。練習量以上の力を引き出せる可能性を有しているものの、逆にその力が貴女自身に牙を剥く可能性もある・・・決してコントロールを誤ってはなりませんよ?」

 

「フラグ?」

 

「おやめなさい、どこぞの芸人みたいな手口は。」

 

「ていうかアンタ色々わけ分かんない事言ってるけどさ、アンタが言ってる事ちっとも理解できないんだけど。」

 

「相変わらず裏世界(こっち)では饒舌ですね・・・」

 

 薫は何故か裏世界に来るとよく喋る。でもそれは一回置いておいて、まずは説明からだ。

 

「つまりペルソナ能力は〜・・・《省略》・・・以上になります。これで理解できたかと・・・」

 

「・・・・・・・・・・。」zzz...

 

「起きなさーーーい!!」

 

「・・・ふにゃあ。」

 

 説明を求めた相手に一から説明して結果、長話が過ぎてあっさり居眠りされてしまった。まるで授業がつまらん先生だ。

 

「説明を要求しておいて勝手に眠るとはどういう了見ですかーッ!?早く起きなさーーーい!!」

 

「・・・だってぇ、話つまんないし長いし・・・」

 

「ああハイハイ分かりました!後でちょっとずつ教えますから、せめてこんな場所で居眠りはやめてください!何かの拍子に永眠しても知りませんからね!!」

 

「はーい。」

 

 不服そうながらも眠気を振り払って意識を覚醒させ、またバベルス探索を開始した。相変わらず行手は暗くて冷たい空気が流れてくる。少々着込んでる薫はともかく薄着でやたら肌が露出しているクリフォトが心配になってくるぐらい冷たい。

 

「・・・寒くないの?」

 

「え?」

 

「いや、アンタ明らかに寒そうなんだけど。」

 

 実際誰がどう見ても寒そうだった。そもそもクリフォトの服装は谷間(・・)やら膝やら肩やらが見せつけるように剥き出しになっている。いくらマントがあるとはいえ、そんな小細工でどうにかなっているとは到底思えない。

 

「絶対寒いでしょ。」

 

「いえいえお構いなく、まあ気にかけていただけるのは有り難い事ですが。

 

「見てるこっちが寒くなるんだけど。」

 

 しかも道を奥に行けば行くほどより一層寒さは酷くなっていく。薫は少々着込んでるとはいえ流石に指先が寒くなってきた。ていうか隣にいるクリフォトが見るからに震え出してるのが気になって仕方がない。

 

「ホントに大丈夫、なんなら・・・」

 

 もう一度同じくだりをやろうとした時、前方から僅かに気配を察知した。両者共武器を構えて臨戦体制をとる。前方から現れたシャドウは口から冷気を発し、鋭い爪を煌めかせて両者に襲いかかろうとしている。

 

「・・・ッ!?」

 

 また薫の体は勝手に動き出した。本人の意思による制御から離れた体は剣を強く握り、シャドウの脳天(らしき場所)に一撃を加えた。冷気を纏わせた剣に脳天を斬り裂かれよう物ならシャドウも致命傷は免れない・・・だが、このシャドウは少々勝手が違った。薫の一撃を受けても倒れず、逆に彼女を振り払って投げ飛ばす強さを見せたのだ。

 

「おや、恐らくあのシャドウは冷気と斬撃に耐性を持っているようですね・・・」

 

 クリフォトが呟いた事は正しかった。このシャドウは薫のペルソナ「エヘイエー」が得意とする「氷結属性により発生する冷気」と、彼女が左手に握る剣による「斬撃」に耐性を持っていたのだ。薫にとっては相性が悪い事この上ない。

 

「仕方ないですねぇ、ここは一つ・・・」

 

 クリフォトは手にした杖を掲げ、更にその先端にある宝玉をシャドウに向けた。その瞬間、辺り一帯は灼熱地獄となった。

 

「わたくしがお相手いたします。薫、貴女は下がってください。」

 

「はいはい・・・後、この炎そこら中で燃えてるけど大丈夫なの?さっきからスカート燃えそうで気が気じゃないんだけど。」

 

「ご安心を、わたくしの炎はシャドウの身だけを焼く炎ですので・・・さてと、そちらのシャドウは冷気と斬撃に耐性があるようですが・・・」

 

 クリフォトは不敵な笑みを浮かべ、横向きに持った杖に自分の尻を乗せると・・・何故かクリフォトの体が浮かび上がった。

 

「果たして、わたくしの炎に耐えられますか?」

 

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