モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 投稿めっちゃ遅くなって申し訳ない……
就活してたり秋アニメ見まくってたりしてたら時間があっという間に過ぎてました。
今期は個人的に豊富だなぁと思ってます(一推しはエイティシックス)


それぞれの夕食

 

 一般的に大人数での食事というものは、賑やかに進行するものだ。

しかし顔見知りな者とそうでない者、一方に対して素性を隠している者、表面上は穏やかな笑みを浮かべているが内心自分ような小市民が王族と食卓を囲んで良いのかと自問自答する者、無邪気に空腹を言葉無くして訴える者など、場は混沌を極めている。

 

「――――――とりあえずさ、この場でお互いに名乗り合った方がいいんじゃない?」

 

 一瞬の沈黙を破ったのは平然と席に着いたリンネの一言。

それにハッと我に返ったリリアーナが咳払いをして、ゆっくりと名乗り出る。

 

「ハイリヒ王国第一王女、エリヒドの子、リリアーナ・S・B・ハイリヒと申します。隣に座る彼女は私の護衛を務めている騎士のクゼリーです」

 

「ハイリヒ王国騎士団所属、クゼリー・レイルと申します。以後お見知りおきを」

 

 両者から名前を知られているこの場の主催者であるトレイシーは自ら名乗りを辞退した。

彼女に横目で見られたリンネがサラッと肩に掛かる髪を背中に払いながら名乗る。

次いでリンネの隣に行った優花、その隣にミュウを抱っこしているノイント、老人の医師、エタノ、ハジメの順で名乗った。

 

「湖の町ウルの一市民、リンネ・ユキト。元ハンターよ」

 

「え、えーっと……神の使徒の、園部優花です―――――で、いいのかな……」

 

「私はノイント、この子はミュウです」

 

「この町で医師をやっているアランだ」

 

「エタノ・ママモ、駆け出しの商人でございます」

 

 最後に残ったハジメに自然と注目が集まる。

唯一、リリアーナに事情を知られたら不味いと分かっている優花が不安そうに見ていた。

ハジメも苦虫を嚙み潰したような表情で言葉を出せないでいる。

そこへトレイシーがそっと彼の背後へ歩み寄り小さな声で囁く。

 

彼女達は私の協力者だ。―――後は分かるな?

 

「……はいっ」

 

 大きく息を吸って体の内側を巡る不安感を吐き出した後、ハジメは静かに名乗った。

 

「帝国のハンター、南雲ハジメだ」

 

「「「ッ!!!」」」

 

 リリアーナ、クゼリー、優花の三人が驚愕して息を呑み目を見開く。

前2人は同じ名前の少年が神の使徒から居なくなった最初の一人目である事を覚えていたから。

優花だけは彼が名乗った事で2人がどう反応するのか不安になっての反応だった。

弾かれたように席を立った2人とハジメの視線が交錯する。

 

「あ、貴方が――――――」

 

「リリアーナ王女、()()()()()()()。もう神の使徒ではない」

 

「し、しかし皇女様――――――」

 

「メルド・ロギンス王国騎士団長から報告は挙がっているのだろう?彼がどうして神の使徒という栄誉ある立場から逃げて、帝国へ来たのか……()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 事情を知らないノイント、ミュウ、アラン、エタノは各々首を傾げている。

彼女らの反応を見てリリアーナ、クゼリーは我に返って口を噤んだ。

 

 神の使徒がいなくなった事は国民に知らされていない。

神に遣わされた勇者の仲間から―――理由はどうあれ―――逃げ出した者がいる等と国民に伝われば教会の信用が失墜し、敵である魔人族側に付け込まれる隙を作る結果になるからだ。

 

 黙って席に着いた2人の反応を見て、ハジメは自然と興味が沸いた。

優花からある程度は聞いているが、自分がいなくなって神の使徒達がどんな反応をしているのか。

しかし自らその質問を投げかけるのはあまり良くないだろうと自重する。

 

「さて、各々思う事はあるだろうが……先に乾杯といこうか」

 

 店に来る前にトレイシーが言った通り、誰の手にも酒は渡っていない。

水の注がれたグラスが全員の座る席へと従業員から配られる。

乾杯に含めた意味は様々、不思議な縁でこの場に集った者同士が親しくなれるようにという意味、主催者であるトレイシーは自らの招待に応じてくれた者達への感謝を込めて、信心深い者は日々の糧をお恵み下さる神への感謝を、それぞれの思いを抱きながら夕食会は始まった。

 

「「「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」」」

 

 

「はむっ……んん~っ!」

 

 ノイントの膝の上で大人しくしていたミュウだが、前菜の皿が置かれると限界だった体が自然と動いてフォークを掴んでいた。

薄切り肉の盛り合わせを一口食べて頬張りながら声を上げるミュウ。

彼女の様子を見ていた老人は空腹の胃にいきなりそんなものを入れて大丈夫かと心配そうに様子を見守っていたが、人間族とは臓器の働きが多少異なるのか、ミュウは平然としている。

 

「………」

 

 そんな彼女を膝の上に乗せたままのノイントも薄切り肉を口に運んでいる。

相変わらず表情は固いままだが……そんな彼女に優花はおずおずと話しかけた。

 

「ノイントさん、ええっと……こういう場所って初めて?」

 

「ん―――肯定です。以前の記憶ではこのような栄養補給を行った事が無かったと思います。……この場には様々な人の感情が渦巻いており、少しそれが……気になりはしますが」

 

「な、成程……」

(―――どんなリアクションで返せばいいか分からないわよ!?)

 

 ノイントの言い回しに苦笑を浮かべてなんとなく同意する優花。

内心ではあまりに浮世離れした彼女にどう対応すればいいか頭を抱えている。

そこへリリアーナの隣から席を立ったクゼリーが近づいてきた。

 

「使徒様。お食事の最中を邪魔して大変申し訳ないのですが……畑山様と共に数名の使徒様を連れて彼女の護衛にと発たれた貴女が、お一人で此処に居る理由をお尋ねしても宜しいでしょうか?」

 

「あ、それは――――――」

 

 食事の手を止めて、優花はこれまでの事をクゼリーに話した。

ウルの町で起きた事を聖教教会の神殿騎士が伝えた事は彼女も知っている。

しかし優花が死にかけて、帝国の辺境にある村まで運ばれた事は初耳だった。

話の中でリンネ、ハジメが命の恩人である事も知る。

 

 現状ウルは厳戒態勢が敷かれているが、特に大きな変化はないという。

まだウルに留まっているであろう愛子達の所へ合流する旨を優花は伝えた。

 

「承知しました。――――――それで、なのですが――――――」

 

 クゼリーの視線は優花からノイントへと移る。

自分が見られていることに気づいた彼女も食事の手を止めて顔を上げた。

 

「ノイント……さん。何処かでお会いした事は……?」

 

 クゼリーはノイントを一目見て、聖教教会の関係者を思い出していた。

はっきりとした顔や名前は憶えていないが、教皇イシュタルの近くを歩いていた尼僧服姿の彼女と瓜二つの女性が居たのを覚えていたのだ。

しかしクゼリーの問いかけにノイントは首を横に振る。

 

「――――――分かりません。モンスターに襲われ、重傷を負ってアラン医師のところに運ばれる以前の私は記憶が曖昧になっていますので」

 

「ッ……そうですか。複雑な心中お察しします」

 

「?」

 

 悲痛な表情を浮かべてノイントを気遣うクゼリー。

だが当の本人は記憶が失われた事をそこまで重くは捉えていなかった。

彼女らのやり取りを見守っていたアランは静かに声を掛ける。

 

「騎士様。もしご迷惑でなければ、その彼女と瓜二つの女性について教えてくれませんか?それを聞いて彼女が何か思い出すかもしれない」

 

「……分かりました。私が見たのは――――――」

 

 それからアラン、ノイント、クゼリーは尼僧服を着ていた彼女らしき人物についての話をする。

会話に全くついていけないミュウ、エタノに続いて優花は食事を楽しんでいた。

 

「ほらミュウちゃん、口元にソースがついてますよ」

 

「んっ、狐のお姉ちゃん、ありがとうなの!」

 

「ふふっ♪どういたしまして。ささ、優花さんも」

 

「うん……そうさせて貰う」

 

 

 

 

 

 

 リリアーナ、トレイシー、リンネ、ハジメは集まって話をする。

優花の件はクゼリーに確認を任せて、リリアーナはミュウに注目した。

海人族が何故王国領内のフューレンにいるのか?

その答えは想像に難くない。リリアーナは悲しそうに目を伏せた。

 

「感傷に浸るのは後だリリアーナ、先のことを考えろ」

 

「……はい」

 

 ミュウの話を交えてトレイシーはある事を話す。

彼女が冒険者ギルドに足を運んだ理由、それが関係していた。

フューレンに来た目的はあくまでリリアーナとの情報交換だったが、調査の過程で違法な人身売買を行っている犯罪組織フリートホーフの所在を掴んだと語る。

 

 余談だがトレイシーはフリートホーフと関係のあった貴族については話さなかった。

彼や彼女らには関係のない事だし、既に終わった事だからだ。

 

「あの海人の子どもを攫ったのはフリートホーフだ。……錬成師のハンター、お前が何処で彼女を見つけたのか……正確な位置を教えてくれ」

 

「……確かあそこは――――――」

 

 商業区の端、円形広場に近い民家の真下を流れる下水道である事。

それを聞いたトレイシーは確信と共に驚くべき事実を口にした。

 

「下水道の管理は各区の貴族が表面上行っている事になっているが、実際は教会が管理を任されている。………私の部下の調査とお前達の偶然の発見が重なり、確信を得た。此処の教会とフリートホーフは裏で取引をしている」

 

「そんな………!?」

 

 ショックを受けて両手で口を覆い隠すリリアーナ。

ハジメは心の中で「文字通り生臭坊主ってか」と罵りたい気持ちを抑える。

 

「此処のトップである司祭が聖職者らしくない羽振りの良い生活をしていると報告があった。出所が不明の金を辿った先で奴らに行き当たった。恐らくは下水道で商品を管理、売買する時には商業区に隣接した森林公園にある教会を使っているのだろう」

 

 天上の主が見守る教会で、外道の犯罪行為が平然と行われている。

その事実を知ったリリアーナは愕然とした表情で俯いてしまう。

リンネはチラとミュウの方を見ながらトレイシーに聞いた。

 

「それで戦姫ちゃんは連中を潰そうと動いていると」

 

「話が早いなリンネ。その通りだ、冒険者数名を雇って私の側近と共に早朝、奴らの本拠地を襲う。あの子どもが居なくなった事で戦力も分散している今が好機だ」

 

「――――――俺達(ハンター)に出番は無さそうですね」

 

「人間相手だからね……明日はあまり出歩かない方が良いかな?」

 

「血眼になってあの子どもを探してる連中に見つかりでもしたら厄介な事になる。出来ることなら明日は私が出向くまで宿屋に身を潜めておいた方がいい」

 

 その後はミュウのこれからについてハジメは相談した。

本来であれば王国が責任を持って彼女を故郷のエリセンにまで送り届けるのだが……

聖教教会の司祭の汚職やフリートホーフの規模の大きさから考えて表立って行動するのは危険だと判断し、本人の意向も踏まえたうえで後日方針を決める事にした。

 

 




 フリートホーフ終了のお知らせ。
リリアーナさん的には「勇者様達が探していましたよ!」と言いたいんでしょうけどハジメは「もう関わらないでくれ」と言いたい(言わなくても皇女様の下に付いているので手を出される心配はありませんが……)
医師の名前は王国騎士と被ってるのは、まぁ今回だけの一発キャラになるだろうという理由も含めて作中に同名の人物が出てきてもいいかなぁと思った作者の都合です。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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