フューレンには主人公含めてハンターが2人しかいません(引退したリンネ除く)
―――オオオオォォォォ……!
「――――――ッ!?」
陽が昇り始めて間もない頃、建物の外から聞こえる微かな人の悲鳴でハジメは飛び起きる。
ベッド脇に立て掛けてあった老山龍砲を手に周囲に目を向けると、既にリンネが起きていた。
「リンネさん」
「……あまり聞きたくない声ほど、
開け放った窓の外、建物の屋根を越えた先の遠くで
木々が生い茂る方角は昨夜トレイシーが話していたフリートホーフの潜伏場所で間違いない。
しかしそれ以外、一方はハジメ達が入ってきた街道側の門の近くから。
もう一方は市内から離れたところにある建物のない未開発地域だった。
人の悲鳴が多く聞こえてくるのは門の方である。
ハジメはフューレンにいるハンターの数が限りなくゼロに近いことを思い出す。
昨日あったフードの男、カルトゥスが動くのであれば恐らく門の方だろう。
ともすれば、何が起きているか分からない未開発地域の方にハジメが向かうのが妥当なところか。
忙しなく動き回り、着替えを済ませる二人の様子に優花とノイントも目を覚ます。
ミュウただ一人だけがまだ朝早い時間帯だった為にスヤスヤと眠っている。
老山龍砲を担ぎ、防具を装着しながらハジメは的確に指示を出した。
「リンネさんは
「了解よ」
「な、南雲……ッ?」
「ハジメ、これは一体……」
「悪いな二人とも、絶対に守ってやると言いたいところだがそういう訳にもいかなくなった。……俺がいない間、ミュウのことを頼んだぞ!」
言うや否や、ハジメは建物の出入り口に向かうのも煩わしいと、部屋の窓から飛び降りる。
何が起きているのか反応が追いつかない2人に対して、リンネは無言で自身の耳に手を当てた。
意味は「音を聞け」それを理解した2人が目を閉じて耳に聞こえる声に集中すると――――――
「―――ッ!?これって―――」
「大型の、極めて特殊な声帯を持つ生き物の声を三方向から複数検知」
「……最悪の可能性ほど、よく当たっちゃうのよね……気持ち悪いくらい」
「で、でも!王国内には結界のアーティファクトがあるんじゃ――――――」
「そんなもの、気休め程度に決まってるでしょ。今までモンスターがそんなに王国内で暴れなかったのは、大人数の都市が密集してるところを
事後承諾にはなるが、ハジメのアイテムボックスを漁って一振りの太刀を取り出すリンネ。
”鉄刀Ⅱ”の鞘を抜き捨てて刀身の後ろ側を肩に乗せて空を睨んでいる。
衝撃的な事実を知って、優花は恐怖と不安と唾と共に飲み込む。
冷静に状況把握をしたノイントが更なる質問を投げかけた。
「このまま室内で待機するのが現状、最善の選択と考えても?」
「今のところはね。市内にモンスターが入り込めば大混乱が起こるのは目に見えてる。私達がこの場から動けば、混乱に乗じてフリートホーフの奴らがミュウちゃんを攫いに来る。こっちが一箇所に留まって構えていれば、迎え撃つくらいの事は出来る筈よ」
「……分かりました!」
優花も折れた腕で四苦八苦しながらも服を着替えて武装する。
ブルックの町で買ったはいいが、使う事はないと思っていたダガーとスティレット。
使える方の手を強く握り締めながら、ハジメに言われた事を頭の中で繰り返す。
(ミュウちゃんを守ってみせる……!)
*
ドスン!と高さ15~16mはある建物の窓から道の端へと両足で着地を決めたハジメ。
騒ぎに気付いた住民達が何事かと窓を開き、突然上から降ってきたハジメに驚いている。
駆けだした彼は建物の間、狭い路地裏や人通りの少ない道を使って目指す方へ走った。
―――ヴオオォォッ!
(鳴き声のデカさからして……鳥竜種か……)
走っている最中に再び聞こえてきた鳴き声は、独特な喉の震わせ方をしている。
例えるなら真横を低いエンジン音で通過する大型二輪のような、或いはモーターが回転し始めたばかりの電動鋸のような……やや不気味な声だった。
その重低音に混じって、小さな甲高い叫び声も複数聞こえてきた。
(子分付き……数は………4か5ってところだな)
以前ブルックで戦ったドスゲネポスに近いモンスターだろうとハジメは想定する。
フューレン市内にいるハンターの数は少ないが、代わりに駐屯兵の数はブルックよりも多い。
冒険者もいる事から目立つ方の対応はそっちに任せても問題ないだろうと判断した。
やがて住宅街を抜けて市内を流れる川に架かった木の橋を越えて先へ進むと――――――
「……あれは……闘技場……か?」
木の丸太を何本も建てて紐で何重にも縛り、それを更に根本で斜めに刺した丸太で固定する。
屋根がない代わりにモンスターが逃げ出さない為の鉄格子が四角く囲った丸太の上に張り巡らされていた。雨で赤茶色に錆びついたところを見る限りその建物が今は使われている形跡がなかった。
帝都やブルックの近郊にも同じような建物がある。
それはハンターズギルドが設置した”闘技場クエスト”の為の施設だった。
宿屋の窓から見えていた黒煙の場所は闘技場の裏手から立ち昇っている。
中からは明らかに複数の小型モンスターと思われる鳴き声が何十匹も聞こえていた。
ハジメは老山龍砲の銃身を後ろに回した手で触れながら、警戒して進んだ。
ふと闘技場入り口の前に、誰かが立っているのが見える。
一瞬ハジメは「逃げ遅れた民間人か?」と思ったが、その可能性をすぐに否定する。
未開発地域に民間人が立ち入ることはまずあり得ない。であれば残りの可能性として挙げられるのは後ろで暴れるモンスターを狩猟しに来たであろう同業者か駐屯兵か或いは……良い意味でも悪い意味でも
頭からすっぽりフードを被って外套で全身を隠しているが背丈はハジメよりやや低い。
例えるなら
近づいて来る彼に気づいたのか、フードのそれはゆっくり顔を上げる。
少し手前で立ち止まり、息を整えながらハジメは彼に問いかけた。
「こんな所で何してんだ……後ろの鳴き声が聞こえない訳じゃないだろ?」
「……あぁ」
「此処は危険だ、今すぐ町に――――――」
そう言いかけたハジメの前でフードを取って中の少年は素顔を露わにする。
彼はすぐにその顔を見て誰なのか気づき、言いかけた言葉を失って驚き目を見開いた。
「ッ……お前……!?」
「久しぶりだな……つーかお前変わり過ぎだろ、
「お前………
闘技場の入り口前で立っていたのは嘗てのクラスメイト、清水幸利である。
優花から彼が逃げ出した事を知っていたハジメは、突然の再会に多くの言葉が出てこなかった。
*
「――――――それではな、竜人の姫」
「……あぁ……」
騒ぎが起こるフューレン市内の某所にて、男女が密かに言葉を交わしている。
互いの種族の長たる立場でありながら、個々の思惑で此処に来て、偶然の出会いを果たした。
「貴様の仇討ちは好きにするがいい、俺は俺の目的で動く」
「分かっておる……妾はそれさえ果たせれば、
片や魔王アダム、普段は絶対に着ないようなボロボロのやつれた外套に身を包んで顔を隠し、あたかも物乞いの浮浪者であるかのように口調以外は振る舞っている。
片や竜人の女王ティオ、人の状態で黒い花柄の着物のまま、竜人の特徴である耳や手元を隠そうともせず、ただ胸に秘めた泥のような感情を静かに膨らませていた。
両者が接触したのはつい数時間ほど前、まだ陽も昇っていない真夜中のことだった。
フューレン近郊に竜の姿で身を潜め、真・神の使徒が再び姿を現したところを強襲しようと画策していたティオの下に、魔王アダムが現れたのである。
しかし彼にティオを害する意思はなく、彼女の復讐に協力するという提案を持ち掛けたのだ。
あの赤い龍気を纏う古龍から受けた傷は癒えた。
力を十全に発揮できるとは思っていないが、使徒の一人くらい刺し違えて殺すくらいは容易い。
今のティオに立場やしがらみ、理性という楔は存在していなかった。
出会って追いかけ回した時から、ずっと脳裏に再生されるのだ。
燃え盛るかつての竜人が暮らした里が、慰み者にされて嬲り殺された母の最期が、力尽きる瞬間に何かを伝えて頭を撫でてくれた父の最期が、目を閉じる度に思い出してしまう。
(もう……妾は無力な小娘ではない……この時を、ずっと待っていたのじゃ……!)
きっと神は、両親を殺して竜人族を滅ぼした時も当たり前の事のように笑っていたのだろう。
人間共もそれが正しい事と信じて疑わず、神の膝下で欲に溺れ、魂すら腐れ果てたのだろう。
「――――――クククッ!まるで飢えた痩せ狗だな……と言っても、聞こえてはいないか……」
そんな事を呟いたアダムの姿はスッと影の中に消えていく。
荒ぶる感情を抑えたティオが、それを確認して動き出すのは、それから数十分後の事。
彼女が脚をつけて立っていた地面には、火種を残して焼け焦げた三本爪の足跡が残っていた。
主人公より復讐に燃えてる人がいらっしゃる。
余談ですが太刀の重量を歴史上の野太刀を参考にしてガバ計算したところ……最小でも10㎏は確実に超えてる筈なんですよね……それを片手で肩に担ぐリンネ……
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡