モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 最初は幕間の物語にする予定でしたが、ハジメ(主人公)が関わってくる話の流れだと本編の方に入れた方がいいかなーと思い、こっちにしました。
今回の話はノイント視点になります。


小さな愛が芽吹き、大きな過ちが刻まれる

 

 黒い竜(ティオ)は私に向かって、竜人の時に使っていた火球とは比べ物にならない炎の吐息(ブレス)を吐き出しながら、ごう!と翼を羽ばたかせて迫ってくる。

ズキッという痛みが脳髄の奥が疼いて…私の脳裏にいつかの記憶が過ぎった。

 

「竜人族が余計なことを知った、滅ぼさなければならない。人間共を煽動するのはアインスに任せた。お前は逃げようとする奴を追いかけて殺せ、ノイント」

「了解しました、我が主」

 

 ズキズキ…一瞬で終わった筈の痛みは私の頭の中でまだ続いている。

違う…これは私の意志じゃない…誰かに指示された事だ。

()()()()()()…なんて言う権利は、きっと私に無いのだろう。

 

―――グルォオオオ!!

 

「あぐ、っ!?」

 

 私の翼より巨大な黒い竜の加速が勝った。

四本の鋭利な爪が私の背中を切り裂いて、鮮血と共に私は宙を無様に転げ回る。

態勢を整える私の脳裏に、またいつかの記憶が蘇った。

 

 燃え盛る何処かの里、逃げ惑う耳の尖る竜人を殺す人間の怒号、神を賛美する声。

()()()()()()()()()()…神を建前にして、お前(人間)達は生き物を殺したいだけだろう。

姿形は似ているけれど、お前達の目には竜人が足元で踏み潰す虫のように見えているんだろう。

 

―――けれども、嗚呼、私がそれを言うのは全く矛盾しているじゃないか。

記憶の中で血に濡れた自分が顔色一つ変えずに大剣を振り下ろすのが見えた。

刃に貫かれたのは子供と、子供を抱えて命乞いをした母親。

顔から縦に真っ二つで切り裂かれ、子供は大剣の重みで頭からぐちゃりと潰される。

 

 鼻の奥をツンと刺す血の臭いは記憶の中だけのものだった。

けれども私は鮮明にその光景を思い出して、空中にも関わらず吐き気がこみ上げて…

 

「お、げっ…ぅぇぇ…」

 

 勿体ない…昨日みんなと一緒に食べた夜ご飯だったものが吐瀉物となって体外に出て行く。

動きを止めた私を見逃すはずもなく、黒い竜は尻尾で横から打ち付けてきた。

 

「ごぁ、っかはっ……!」

 

…嗚呼…あの人に買って貰った服が吐瀉物と血で汚れるだけじゃなく、裂けてしまった。

こんな惨めな私の姿を、()()()()を見たら…彼は私を嫌ってしまうだろう。

そう思うだけで、頭痛よりも強烈な胸の痛みが襲ってくる。

 

―――ガアアアアアアアァァァァァ!

 

 この期に及んで、私は何を莫迦な事を考えているのか、自分で自分を笑ってしまう。

私の頬が釣り上がったのを見て、黒い竜は勘違いして更に怒りで吼える。

 

 貴女のその反応は、私には理解出来ないけれど、正しいのだと思う。

私が同じような事を貴女にされたら、きっと私も貴女のようになっていたと思うから。

 

 だから…どうか、この願いだけは聞き届けて下さい…

この体と魂が貴女の業火に焼かれるのは構いません…けれども…

少しだけの時間でも、私を()()()()()()として見てくれた彼らは…見逃して下さい。

 

…これでいい、これでが正しいということなんだ……

 

……そう思っている筈なのに……

 

「…くっ!」

 

 どうして()()()()()()()()とするのか…追撃で放たれた炎の吐息を躱した。

黒い竜は羽ばたき、頭上の雲海へと隠れる。…今度こそ、私は終わるのだろう。

 

 数秒の後、雲が裂けて黒い竜が紫炎を自身の体に纏って姿を現した。

自らの炎で傷を負うのも厭わない、捨て身に等しい当身の攻撃。

私は両手を横に広げて、彼女の気が済むように、わざと微笑んでみせる。

 

―――嗚呼、なくなった筈の右目が、痛いなぁ――――

 

 ドッ!と体に伝わる衝撃、衣服と肌を焼く炎の熱と痛みに、私は声を上げなかった。

受け身も取らず…後はただ地面に叩きつけられて無様に死を晒して終わる筈だ。

 

「―――ォォォォォ…」

 

―――死の寸前、一生の記憶が脳裏に過ぎるというらしいが…

 

 彼女の耳に聞こえる幻聴は、真新しい記憶に残っている人の声。

何十年、何百年、何千年もの歳の差が開いている私に向かって、タメ口で話す(ヒト)

でも悪い気はしなかった…あの時、私の胸は確かに喜び、高鳴っていたのだから。

 

―――嗚呼、今更そんな事に気が付くなんて…やっぱり私は愚かだ…

 

 気付かなければ後悔なんて感情が胸中に渦巻くことなんてなかったのに。

踊り子の舞台を並んで見たとき、彼はきっと気づいていなかっただろうけど…

感動の共感を求めるように、私の手を、貴方は自然と握っていたんですよ?

 

―――これではまるで、私が初恋を知った乙女みたいだ…

 

「―――――――トオォ!」

 

――――――やめてください、私にこれ以上、幻聴を聞かせないで……

 

 貴方に手を握られた時、私は静かに貴方の手を握り返したんです。

踊り子の舞台の内容は半分も頭に入ってこなかったけれど、貴方に共感したフリをした。

 

…おかしくなった私の懺悔を聞く人は誰もいない…死の間際だから言ってしまおうか…

私は、彼を…ハジメを…この世界でただ一人だけ、私に手を差し伸べた彼を愛してしまいました。

…ふふっ…口に出さない言葉にするだけでも、恥ずかしいものですね。

 

 

 

「ノイントォォォォォォ!」

 

 

 

 背中から地面に落ちようとする私に向かって叫び声を上げる人の声。

それを聞いて私は、無意識で技能にない自身の再生機能を発動させてしまった。

結果から言うと、命の母である大地と、形だけの創られた命の私がぶつかることはなかった。

 

「ぬぉ、おおりゃあああああ!」

 

 まだ炎に包まれた私の体を、ガシッ!と彼の逞しい両腕が抱えてくれたから。

かなりの前傾姿勢で走ってきたであろう彼は、直後にバランスを崩して転倒した。

けれども腕の中にいる私を守るように、大きな体の全てで覆ってくれる。

 

「~~~っっぎりっぎりっ!セェーッフ!」

 

…嗚呼、駄目です…ハジメ…そんな事をしては…貴方が怪我をしてしまう。

私は貴方が怪我をするところを見たくない…だから(けれど)、私を離して下さい(離さないで)

 

 スンと鼻で空気を吸うと、焦げた自分の臭いとは違う、別の匂いが感じられる。

ちょっと酸っぱくて(愛おしくて)温かみがあって(とても愛おしくて)、私が遠ざけなければならない(愛おしくて堪らない)ヒト()の匂いだ。

 

「…ハジメ…」

 

「大丈夫か!?もう心配すんな、後は俺に任せろ…!」

 

…嗚呼、駄目です…貴方は彼女と戦ってはいけない。

私は、私が知らないかつての私の犯した過ちを償う必要があるんです。

それはきっと貴方に関係ない事だから、貴方を巻き込んではいけないことだから。

 

「…ハジメ、わたし…は――――――」

 

「今は何も喋るんじゃねえ。休んでろ」

 

「…ダメ…です、伝えなくては…私の―――」

 

「なんかすげぇヤベー事情あんだろ、()()()()()()()だ。それは後で聞いてやる」

 

 私の死を確認しようと空の上から黒い竜が下りてこようとする。

ハジメは私に向かって微笑みかけていた表情が一転して、険しいものに変わった。

…嗚呼、駄目…そんな顔をしないで…貴方は笑っている顔が一番素敵なんです…

そこで辛うじて保っていた私の意識はプッツリ途切れた。

 

「コイツの幸せの邪魔ァすんなら容赦しねェ…!…ブッ倒す!!!

 

 




 読み返した作者が思ったこと。
これ絶対に書く前に読んでたチェンソーマンの影響モロ受けてんじゃん。
具体的に言うならハジメの口調がなんかデンジっぽさ入ってるし……
(デンジはもっと野生児だとは思いますが)

 日本酒で酔ったところに知的炭酸飲料(ドクターペッパー)入れたのがマズかったか…
どうかアルコールの勢いによる一時の過ちという事で、藤本タツキ大明神先生、お許しください!

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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