次で商業都市フューレンとは暫しの別れになるでしょう。
そろそろ空気になってた方々に色んな意味で火をつけねば…
千年以上前の話、解放者が反逆者の汚名を着せられて、偽りの神との戦いに敗れたこと。
生き残りの反逆者達が身を潜めるために作ったのが大迷宮。
その最奥に神代魔法と世界の真実を記す記録や彼らの財産等が眠っているという話。
更にハジメは幸利から聞きだした最も有益な情報として、支配種を生み出しているのが変成魔法であることを話し、幸利がその使い手の一人になった事を告げる。
湖の町で逃げる彼を追って言い争いをしてしまった優花は恐る恐る聞いた。
「―――清水は…何て言ってたの?」
「…元の世界に帰るつもりはない。今まで俺を見下してきた連中を…見返してやるとさ」
「……っ」
どうしてあの時、彼が必死になって逃げだそうとしているのか…今の優花なら理解出来る。
同時に、きっと彼の言う見下してきた連中に自分が入っているのだろうと怖くなった。
ふとハジメの様子が気になったリンネが彼に尋ねる。
「…つまりはその清水って子は人間族と敵対する関係になったって事でしょ?…その割にはハジメ君、さっきから話を聞く限りだと彼と確執があったようには思えないんだけど…」
「…それは…まぁ、なんといいますか…」
ハジメは一部の者に誤魔化した通じないだろうと素直に白状した。
彼と幸利が似た者同士だと共感した事、彼に魔人族側に来ないかと勧誘を受けた事。
それを断ったうえで、ハジメが彼と友人なると言い切った事。
最後の話を聞いた時、誰もが唖然とする中リンネだけがケラケラ笑っていた。
「あっはっはっ!いいねそれ!殺し愛って奴かな?ウンウン、若い若い。――――――あぁ、誤解されないよう念のために言っておくけど、この場合の愛ってのは友愛って意味を含めてるから、違う意味で捉えちゃダメだよハジメ君」
「心配しなくても俺にそっちの気はありませんよリンネさん…」
二人のやり取りを聞いて優花が急にぼっと顔を赤くして俯いた。
リンネの向かいにいるミュウは物騒だったり下品だったりな単語が会話の中に飛び交っていることに気づかず、その言葉の意味を傍らにいるノイントを見上げて尋ねる。
しかし彼女も困惑して首を傾げるばかりで、隣ではトレイシーが呆れていた。
「ころしあい…ゆうあいってなぁに?」
「…違う意味?そっちの気…?私には少し…理解出来ません」
「―――やれやれ、つくづくハンターになる者はマトモじゃない奴ばかりだな」
「あーっ、しれっと言ってるけど、それ何気に酷くない戦姫ちゃん!?元ハンターであるアタシも含めて、ハジメ君とそこの竜人の小父様がマトモじゃないっていうの~!?」
「ハハッ!錬成師の小僧はこの短期間で必ずと言っていい程に問題事に関わっている、カルトゥスめは竜人の間者だった、そしてお前は今までの経歴と今日の騒ぎで最も
「「ぐっ…!?」」
反論の余地もないトレイシーの言葉がハジメとリンネの心にグサッと刺さる。
彼女は口にしなかったが、身贔屓に本音の一部を晒すのであれば、三人とも過程はどうあれ結果的に有形無形の利益を帝国に齎しているのだから褒めたいという気持ちもあった。
カルトゥスが間者だった事は、以前から帝国は流浪の民である竜人族を怪しんでいた。
どちらに転んだとしても彼らの間諜行為で損をすることもなかったから泳がせていたのだ。
最終的には帝国と交誼を結べるかもしれない機会を向こうが作り、帝国は得をしている。
「―――それで、話を戻そうか」
騒がしくなった席でカルトゥスがそう呟くように言って、場は静まり返る。
ハジメは何となく今まで彼は不思議な言い回しやその出自から遠い存在のように感じていたが、今は内心、親戚のおじさんくらいに思っていた。
「君は…ホルアドにあるオルクス大迷宮に挑むつもりか?」
「まだ先の話ですけどね、今の俺はリンネさん達の依頼を受けている身です。ウルの町までいってから、近くの雪山とかまだ足を運んでないところを見て回って、それから挑むつもりですよ」
「フム……それなら一つ、私から警告しておこう」
ハジメの話でオルクス大迷宮の謎だった最奥の存在が明らかになった。
しかしカルトゥスは行く手を阻む最も恐るべきモンスターの名を口に出す。
「私が調べた限り、人間で到達できたのはオルクス大迷宮の65階層までだ…。…その60階層には伝説の魔獣ベヒーモスが居座っている」
「…っ!」
その名前を聞いて、優花は黒々とした恐ろしい巨獣が脳裏にフラッシュバックする。
小刻みに震える彼女を見てカルトゥスが「すまない」と謝ってから話を続けた。
「ベヒーモスは古より生きるもの…闘技場で君が敗れた相手、あのバルファルクと同等の存在と言っても過言ではない。…君は、それを討って先へ進む事が出来るか?」
「…あいつと…同じくらい強い…ですか」
「――――――ちょっと待って、南雲…今カルトゥスさんが…敗れたって言ったよね…?……どういう意味よ、それ……まさか、あんた…!」
(――――――あ、やべっバレた!?おのれカルトゥスさん、何バラしてんだ!)
自然な流れで会話をしてハジメは気づくのが遅れた。
実はリンネがバルファルク乱入の下りで「ははぁん」と意味深な笑みを浮かべて黙っていたから、彼女には気づかれたけど、一乙した事は黙っていてくれたと安心したのが運の尽きだった。
結局ハジメは自分が一度闘技場で意識を飛ばしてネコタクの世話になった事を白状した。
優花には「そんな無茶して…!」と泣かれ、ノイントやミュウにまで心配されてしまった。
ハンターの事情をよく知っているリンネ、トレイシーの2人からは「そう気を落とすな、ハンターなら一乙くらいこの先何度でもあるある」と肩を叩かれて同情される。
「…と、とりあえず!俺が負けた話は置いといてッ!!…その、ベヒーモスはあいつと同じくらい強いって話ですよね?…それなら、次はもっとちゃんとした装備を整えて、対策とか考えてから、途中で逃げる事も視野に入れて挑むだけですよ。たとえ何度ぶっ倒されようが―――」
「――――――ごめんなさい、リンネさん…私、ちょっと席外しますね」
突然、優花が顔を手で覆いながら立ち上がって集会所の外へ出て行った。
ハジメも弾かれたように席を立って、彼女の後を追おうとするが―――
「少し、一人で心を整理させてあげる時間も必要なんじゃない?」
とリンネに止められてバツが悪そうな顔で席に座り直した。
カルトゥスが「…彼女を悲しませるような事を言い出したのは私だ…すまない」と謝るが、元はと言えばハジメが自分の失敗を誤魔化そうとしたのが原因だと言って謝罪を断った。
「さて…
「…妾とカルトゥスの…いや、竜人族のこれからじゃな。―――それで…なのだが…帝国の皇女よ…妾は一つ、そこの者に頼みたいことがあるのじゃ。…妾にそのような権利は無いと承知の上で…聞いて貰えるかの」
話し合いも終わりが近づいてきた時、意を決した表情でティオが口を開いた。
彼女の目線はトレイシーからハジメへと移り、それからずっと彼を見つめている。
あまり人に見つめられることに慣れていない彼は思わずたじろぐ。
「むっ、何だ?聞くのは構わないが…錬成師の小僧に頼み事とは」
「……俺ですか?」
「――――――妾を、おぬしの旅に…同行させて貰いたいのじゃ…」
*
集会所の外はすっかり暗くなっている。
建物の壁を背にしゃがんでいた優花をハジメはすぐに見つけた。
しかし俯いて泣いている様子の彼女に、何も考えてこなかった彼はなんて声を掛ければいいのか分からなかった。
「………」
結局ハジメは自分の言葉では何を伝えればいいか分からなくなると思い、無言で彼女の脇に立って夜空を見上げる。
満点の星空に浮かぶ大きな月が綺麗で、彼は意図せずある言葉を口にした。
「月が綺麗だな…園部」
「……っ!?」
バッと顔を上げた優花は涙目のままドキッとする。
彼女は勉強は人並みにしかしていないが、花の女子高生だ。
ハジメが言った事が男女の間で交わされる瞬間、言葉の意味が少し変わってくるというのは知っていた。
当然、彼もそれくらいの教養はある。
直後ハッとした表情で焦り、早口になりながら彼女に弁明した。
「あ゛っ!いや、違うぞ!?夏目漱石の文学的なロマンチストっぽい意味で言ったんじゃなくて、あくまで故郷の月と比較してデカくて綺麗だなぁって見たままの感想を言ったんであって、そういうつもりは―――」
「…分かってるわよ、それくらいっ」
拗ねた様子でハジメにそう言い返した優花は立ち上がる。
彼は誤解させたことを申し訳ないと思いつつ、彼女が少し元気になったのを見て内心ホッとする。
それからまた会話は途切れてしまうが、優花から口を開いた。
「…私、ブルックの町で南雲が死にかけた時、取り乱しちゃったの…南雲はまだ覚えてるよね?」
「…そりゃ…な」
轟竜ティガレックスとの戦い、ハジメの実質的な一乙はアレが最初である。
しかしネコタクが到着するより先にテレサベルが到着した事で助かった。
あの時、優花に泣かれたことをハジメはずっと忘れていない。
「南雲は死ぬかもしれない戦いに挑むのは、ハンターだからって答えた。…あの時はそれが、ハンターって名乗る人達にとって当たり前なんだって…納得してた。…………けどッ!」
そこで言葉をきって、ハジメの方に顔を向ける優花。
彼も視線に気づいて夜空から彼女の方を向いて…固まった。彼女は目から大粒の涙を零し、唇を震わせながら笑っているように泣いている。
「やっぱり怖いよ…!私に止める権利なんてないって分かっても…南雲にも、清水にも、クラスのみんなにも、愛ちゃんにも…危ない目に、遭って欲しくないって…思って…ッ!」
言葉はそれで途切れ、また彼女は堰を切ったように泣き出す。
口には出していないけれど、彼女が怖いと思っているのは、周りが死の危険を冒そうとするのに対して、理由はどうあれ
彼女が周りのことで、そこまで悩みを抱えて責任を感じる必要はない。
以前ゲブルト村でリンネが彼女に言ってくれていた言葉だ。
しかし言葉一つであっさりと今までの考え方が変わるなんて事はなく…
また自分は何も出来なかった、自分が止めていれば彼や彼女が大怪我をしなくて済んだかも、あの時ああしていれば…等という後悔ばかりが彼女の内に押し寄せていたのだ。
この世界の事、幸利の事、ミュウの事、ハジメの事、自分が口にした言葉。
怒涛の勢いで押し寄せた衝撃が、彼女の治りかかっていた心に罅を入れてしまった。
それから何分か経って涙が止まった彼女は、感情の整理がついたフリをする。
ぎこちない笑みを浮かべ、スッキリしたと言わんばかりの顔でハジメに話しかけた。
「――――――ごめんね南雲!私、色んな事が起こり過ぎて混乱しちゃったのかも。……今ここで泣いた事とか話した事は……全部、忘れてっ」
「………」
彼女の言葉にハジメは首を縦に振らなかった。
ゲブルト村からフューレンまで、彼はずっと彼女の知らなかった顔を見てきた。
笑う顔、怒った顔、泣いた顔、困った顔、焦った顔、拗ねた顔…
彼にとって本音を話せるくらい心の距離が縮まったクラスメイトでもある。
そんな相手が、自分に本心とは真逆の事を言っているとすぐに気づいた。
「―――さっ、中に入ろ?皆待ってるし「園部」…なに?」
突然、顔を上げたハジメは彼女の両肩をガシッと掴んだ。
いきなりの事で驚いた彼女は力の差もあって彼の手を振り解けない。
「……た、頼れ……!」
「……な、何を……?」
「~っ!悩んでる事があるなら、すぐに言え!辛いと思ったら一人で抱え込むな!俺ッ……だけじゃねえ!リンネさんでも、畑山先生でもいい!とにかく頼れると思う人に頼れっ!!!」
「………ッ」
普段より声が上ずっているが、彼の目は真剣そのものである。
言い終えた直後、優花の肩から手を離してハジメは早々にそっぽを向いた。
本当はもっと彼女の心が抱えた重みを減らしてあげられるような優しい言葉を掛けるべきなのだが、残念な事に今のハジメにそこまで気の利いた紳士の真似は出来ない。
だからこうして、熱血教師が言いそうな台詞を真正面からぶつけるしかなかった。
フンスフンスと鼻を鳴らしながら、ハジメは足早に集会所の中へ入る。
優花は暫く呆然として、彼の言葉の意味を理解しようと頭の中で繰り返していた。
少しだけ彼女の心の中で、いつか聞いた優しい鼓動が響いたのは言うまでもない。
その鼓動の意味を彼女が自覚するのは…もう少し、先になるかもしれない。
本当は優花さんを泣かせる予定は無かったんですが…
つい泣き顔が見たいと魔が差してしまい…申し訳ない…!
反省はしている(だが後悔はしていないと開き直るド畜生作者)
ゲブルト村に来た時からの癖みたいになってますが、原作よりも責任感クソつよになってしまったせいで自責の念に駆られる事が多いとかいう(人によっては面倒臭ぇコイツ!とか思ってしまう性格の女の子に)一体誰がこんな酷い事を…(鏡から目を逸らし)ぶっちゃけた話、ハジメと優花を喧嘩させてから離そうかな~とか作者の悪意100%の没案があったりなかったり…
これ、場合によっては畑山先生も優花の状態知ったら自責の念で…
また周りがそれを見て更にとかいう阿鼻叫喚の永久機関が完成しちまったなぁ~!
後は頼んだぜ、行き遅れ剣聖兄貴姉貴!(作者は飛竜刀で真っ二つにされました)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡