モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 日常会話とか挿んだら長くなってしまう…これが無いと何か落ち着かない作者であった。
感想でも言われてますが、アンケートの殺意高すぎて変な笑いが出ましたね。
次点で作者の匙加減に投票入ってたのは驚きです。
狂信者お爺ちゃんストレスぶっちし過ぎて血管切れなきゃいいけど…


目指すは宿場町ホルアド

 

 ハイリヒ王国の街道はライセンの荒野に比べて穏やかなものだった。

アプトノス等の草食竜と遭遇したのはフューレンを出て半日経ってからのこと。

王女の護衛達は向こうに敵意がなかったとしても、相手がモンスターというだけあって警戒して足を止めてしまうのだが、ハジメは―――――

 

「ほーれ、ほれほれ…そうそう、こっちだこっち」

 

 見るに見かねて王女の護衛の前に出て、手にした果物を餌にアプトノスを誘導する。

ブモッ、ブモッと独特な鳴き声で果物に追いすがるアプトノスを見て兵士達が動揺しているのを耳にして、ハジメは「この国、本当に大丈夫なのか…」と呆れてしまう。

 

 これがアプトノスではなく、ドスランポスやアンジャナフなら動揺するのも頷ける。

しかし彼の眼前にいるのは大人しいアプトノスだ。

もし彼らが昨日のバルファルクなど目にしたら卒倒するのではないかと心配になる。

 

(まぁ別にこの国に何かあったとしても俺には関係ない事か…)

 

「ほーれっ、よぉし――――――よっと!」

 

 街道から1キロも離れた所で小さな森を見つけたハジメ。

同じような草食のモンスター…ケルビやガーグァがいるのを確認してから、アプトノスの視線が釘付けになった果物を小さな森に向かって放り投げた。

アプトノスが森の中に入っていくのを見届けてからハジメは街道に戻る。

彼が戻ってくると馬車から降りてきた王女リリアーナが頭を下げに来た。

 

「助けて頂き…ありがとう御座います」

 

「…こっちも仕事だしな。金はとらねえよ」

(この程度の事でお礼を言われるって…なんかアレだな)

 

 ハジメは違和感を覚えつつリンネ達がいるところの荷馬車へ歩いて行こうとする。

すると馬車へ戻っていくリリアーナと彼の耳に兵士達の小声が聞こえた。

 

「どうして魔物を始末しない…ハンターだろう」

「姫様も物好きな…あのような者に頭を下げるなど」

「シッ!聞こえるぞ」

 

「………」

「……ハァ」

 

 それを聞いてリリアーナは申し訳なさそうに目を伏せて俯いている。

ハジメはそういう声を聞いて、ようやくここが王国領内だと認識出来た。

理由が理由なだけに怒る気にはなれず、溜息を吐いてさっさと荷馬車へ戻る。

 

「やっおつかれ~……っておろろ?随分とご機嫌斜めだねえ、ハジメ君」

 

「―――何かありましたか?ハジメ」

 

 リンネの言葉に続いて、荷馬車の奥から顔を出したノイントにも聞かれる。

荷台の中で優花は治りかけた腕の感覚を取り戻そうと色々な事を試し、それを傍らにぺたんと女の子座りしたミュウが興味津々といった様子で見ていた。

ティオはそんな彼女達を微笑ましく見守り、時々フードを深く被り直している。

ハジメは「何にも…」と投げやりに答えて荷台に足をかけて中に入った。

 

「フフン、当ててみよっか?あのお姫様の兵士達に何か言われたんでしょ」

 

 見事に理由を言い当てられて、ハジメは「まぁ、そんなところです」と答える。

ノイントはいまいち理由が分からず小首を傾げているが、ティオは女王だった頃にハンターがどういう扱いを受けているのかという話も聞いているからか、納得した様子でこくこくと頷いていた。

 

「―――なんでその御者席に座ってて、あそこの様子が分かるんですか」

 

「あっはっはっ!昔似たような事をアタシもしてきたからさ~。―――懐かしいな、仲間達と帝国から飛び出して…当時は今より風当たりが酷かったし、アタシも皆も血の気が多かったもんだから…リーダーに止めて貰わなかったら、何度か牢にぶち込まれそうになった事もあったわ~!」

 

「…牢にぶち込まれるって、何をやったんですか…」

 

「ふふっ、内緒♪ウルに着いたらアタシの働いてる宿屋で秘蔵のお酒を振る舞ってあげる。その時が来たら酒の肴代わりにありがたーい先輩のお話とセットで、教えてあげる♡」

 

「―――俺あんまり飲めないんですけど」

 

「大丈夫よ~!ワインとかビールを樽で呑ませようなんて考えてないから。―――そんなものより最っ高に美味い酒が、そろそろ呑むには良い時期なのよ~」

 

(ビールでもワインでもない……寝かせた蒸留酒(ウイスキー)とかか?)

 

「飲める日を楽しみにしておきます」

 

「そうそう!楽しみにしておれ~!」

 

 リンネはガハハ!と笑いながら前の馬車が動き出したのを確認して馬の尻を手綱で叩く。

彼女のお陰で胸につっかえていたモヤモヤが解ける気がして、ハジメは感謝していた。

彼の隣に座ったノイントがくいっとアロイアームの袖を引っ張りながら話しかける。

 

「ハジメ。ビールやワインとは…どういった味なのでしょう?」

「あっ!私も気になるの!ハジメお兄ちゃん教えて~!」

 

 ノイントの質問は子どもであるミュウも気になったらしい。

リハビリ中の優花の横から顔を出してハジメの方に期待の目を向ける。

ハジメは「まだミュウは飲んじゃダメだからな」と前置きを告げて話す。

 

「どういう味か…まぁ、俺も呑み始めて半年経ってないからな。―――酒それぞれの具体的な味わいとか語れるほど通じゃないし、一言で酒を例えるなら、最初は咽る。…だな」

 

「咽る…ですか?」

「咽るってなぁに?」

 

 前者は言葉の意味を理解しているものの、どういった理由でそうなるのか。

後者はそもそもまだ五歳児、言葉の意味を理解してないという。

ハジメは苦笑して身振り手振り説明を始める。

 

「咽るってのは飲み物とか食い物とか…あぁ、あと煙吸った時なんかに使う言葉だ、ミュウ。要はこんな風に―――ケホッ!―――ってなる時があるだろ、こういう息が詰まる瞬間を咽るって言うんだ。――――――んで話を戻すけど、酒ってのは飲むのがキッツくてな。最初の一口は飲み込んでから咽るまでがワンセットなんだ」

 

「それは…興味深いですね…是非、私も呑んでみたいものです」

 

「ミュウも呑んでみたいの~!」

 

「ミュウはまだ子どもだからな、もう少し大きくなったらだ」

 

 ハジメはそう言って、アロイアームを一旦外した手でミュウの頭を撫でる。

狩りがない時はこうして腕防具を外していないと汗で蒸れて痒くなるのだ。

老山龍砲も背中から手に届く荷台の端へ置いていた。

 

「………」

 

 ふとハジメは視界の端でそわそわしているティオに気が付く。

今までは黙っていても気にならなかったが、どうやら会話に混ざりたいようだ。

自分から積極的に話す事がなかった彼にはその気持ちが少し分かって、年長者だからと遠慮する必要はないかと顔を向けて話しかける。

 

「ティオは?酒を飲んだりした経験はあるのか?」

 

「―――わ、妾か?」

 

「そうですね、是非聞かせてください」

「ミュウも聞きたいのー!」

 

 そんな二人の声もあって、唐突に話題を振られたティオは咳払い一つして話し出す。

 

「…そ、そうじゃのう…竜人は()()()()が多く、妾もそこそこいける口じゃ。―――酒を嗜むようになったのは、丁度100歳になった頃じゃな。ハンターも嗜んでいる竜酒や竜ノコハク酒などが宴の席では振る舞われていた…最初は顔から火が出そうになって半泣きじゃった」

 

「ハハハッ!俺もそんな反応だったな!」

 

「…顔から火が出たんですか?」

「お姉ちゃん顔から火が出せるの?見てみたいのー!」

 

「―――いや、顔から火が出そうにというのは比喩でな―――」

 

 リハビリを終えた優花は和気藹々と話す彼女達とハジメを見る。

彼女も話題に混ざりたいところだが、どうにも酒の話題にはついていき辛い。

そもそも異世界の常識に照らし合わせてハジメは未成年飲酒なのだが…

本人はあまりその事を気にしていないようだ。

 

 揺れる荷台の縁を掴んで中腰で立った優花は御者席の隣に座る。

リンネはニコリと笑いながら手綱はしっかりと握って前を向いたまま話した。

 

「ハジメ君。ああして見ると悪ぶってる高校生そのものね」

 

「―――ふふっ!確かに…そうですね」

 

 見た目が成人男性のそれを遥かに超えているのだが、中身はまだ普通の男子高校生だ。

ティオと一緒になって物を知らないミュウに色々な事を教えてる彼の横顔を見て、優花はまた少し普段と違った顔をしているなぁと思う。

彼がまるで親戚の集まりで楽しそうに話すお兄さんのように見えた。

リンネは意地悪な笑みを浮かべてきらりと目を輝かせながら言った。

 

「そういえば優花ちゃーん?蜂蜜酒のこんな話をしってるかしら」

 

「何ですか?」

 

「蜂蜜ってね、とっても強壮作用が高いものなのよ」

 

「…それなら知ってますよ。母から聞いた事があります」

 

 蜂蜜の歴史は人間の歴史という諺があるように、人間の生活に関わりがある蜂蜜。

人類が初めて甘味料にしたのが蜂蜜であるという話もある。

 

 優花は故郷にある両親が営む喫茶店の一人娘なだけあって、そういった豆知識を母から教わったのをなんとなく覚えているのだ。

彼女は記憶を手繰り寄せながら、そういえばリンネの買い物の中にも蜂蜜らしき甘味料が大量にあったのを思い出す。

 

「私達ハンターの常備品、回復薬にも使われるくらい凄いのよ蜂蜜って」

 

「…回復薬ってあの緑の液体ですよね…瓶に入ってる」

 

「そそ。―――んで、蜂蜜酒の話になるんだけどね―――」

 

 蜂蜜酒は蜂蜜と水を合わせてアルコール発酵させて作るものだ。

古い時代には一般的な酒の一つだったが、麦や葡萄が酒に使われるようになってから蜂蜜酒は滅多に市場では見られなくなったという。

そんな話をしていると荷馬車の脇を一匹の蜂が飛んでいった。

自然とそれを目で追いかける優花にリンネはにんまり笑って言う。

 

「新婚直後の新婦は一か月、蜂蜜酒を作って夫に飲ませる風習があったのよ。――――――ねえ…優花ちゃん、どうして新婦は蜂蜜酒を一か月も夫に飲ませると思う?」

 

「どうしてって……健康の為とか?」

 

「ブッブー!こ、た、え、はぁ…」

 

 とリンネは手綱を握った手でチョイチョイと手招きをする。

優花はどうしてわざわざ近くに寄る必要があるのか、疑問を抱きつつ言うとおりに彼女の傍に体ごと寄せて、リンネに言われて後ろを向く。

視線の先に丁度ハジメの姿を彼女が捉えた時、リンネは耳元で囁いた。

 

「子・づ・く・り・♡」

 

「――――――はぁっ!?」

 

 顔を真っ赤にして素っ頓狂な声を上げる優花。

突然の酒の話から、まさかそんな風習の話に繋げられるとは誰が予想出来るか。

動揺する彼女の反応を見て満足気に笑いながらリンネは続ける。

 

「蜂蜜の強壮作用と、蜂が多産っていうのに肖ってるんだってえ~。…その一か月間のことを蜂蜜の一か月…蜜月って言うらしいんだけど、優花ちゃん知ってた~?」

 

「し、知りませんよ!そんな話っ」

 

 リンネの視線が優花にハジメを見ろと無言で促している。

それもあって優花は彼に振り向かれないよう心で祈るばかりだった。

幸いにも彼はティオ達との話に夢中で気づいていないようだが…

 

「ふふふっ♪それで蜜月って英語で発音するとハニームーンなのよ。これが所謂、新婚旅行(ハネムーン)の語源になったって話なんだけど?優花ちゃんはそんなに顔を赤くしてどうしたのかなぁ~?」

 

「~~~っ!!リンネさんっっ揶揄わないで下さい!」

 

「あっははは!!!」

 

 御者席でも荷台でも、笑いあう声が響いている。

そんな一行の様子から前を行く馬車の中から見つめる人影が一つ。

リンネは視線に気づいていたが、特に反応はしなかったという。

 

 

「今日はこの辺りで一夜を過ごし、早朝に動く」

 

「はいはーい、私達もそうさせて貰いますよ~っと」

 

 あっという間に昼が過ぎ、空が茜色に染まって太陽が姿を隠そうとする時間。

見渡しの良い丘の上で一行は野営の準備を始める。

明日の朝にはリリアーナと護衛達、アレックス、レガニド達とも別れてホルアドに着く。

 

 兵士達がせっせと水汲みや王女の為に天幕を設置しようと動き出す。

あまり近くないところでリンネも荷馬車を止めて寝場所を確保する。

 

「リンネさん、念のために周囲の様子を見てきます」

 

「ええ~この辺の街道は大丈夫だと思うけどぉ?…まぁ、それでも…()()()()()()()()()()()…。―――うん!それじゃ、()()()()()()()、お願いしようかな。ハジメ君」

 

「はいっ!」

 

 そんな会話をして荷台からハジメはアイテムを取り出して準備を始めた。

”ピッケル””虫あみ””釣りミミズ”など、ハンターの採集道具を老山龍砲とは別の形で背負い、アイテムポーチの中を出来るだけ軽くしてからハジメは荷馬車を離れようとする。

すると彼のところにミュウが駆け寄ってきて呼び止める。

 

「ハジメお兄ちゃんどこいくの~?」

「この辺りに危ないモンスターがいないか見て来るんだよ」

 

「ミュウもついてくのー!」

「ダメだ、危ないから。ミュウは優花達の手伝いをしてくれ」

 

「え~っ」

「なんか面白いもん採ってきてやるから……なっ?」

「むぅ…分かったの~」

 

 渋々といった様子で頷くミュウを、ハジメは頭を撫でる。

すると彼女はあっさり機嫌を直して、彼に言われた通り優花とリンネのいる方へ走っていった。

 

「よし、良い子だミュウ。ノイント、ティオも此処で待っててくれ」

 

「了解です」

「了解じゃ」

 

 こうしてハジメは丘を離れて、辺りを見て回ることになった。

その理由は勿論、彼がミュウに話した通りモンスターが周りにいないかを確かめて、場合によっては追い払う役割もあるのだが…それ以外に大事な目的がある。

それは――――――

 

「……おっ、発見発見」

 

 街道を通ってる時に見かけた大きな岩が幾つも露出している草原にて…

岩と岩の間から顔を出す鉱石類を見て、ニヤリと笑ったハジメはピッケルを取った。

それから両手で持ったピッケルを振り被ってから、狙った所に向けて振り下ろす。

 

 ガツン!と岩の表面を削って小さく火花が散る。

弾かれて両足で踏み止まり、またハジメはピッケルを振り被って岩を砕いていく。

それから15分かけて、辺りの岩を見て回ってはピッケルを振って、彼は目的の一つである鉱石類の採集を終えた。

 

(どれどれ……マカライト鉱石5個、ドラグライト鉱石2個、鉄鉱石2個、大地の結晶3個――――――うん、この時間でこれは悪くない量だな!ツイてるぜ、俺!)

 

 リンネが言っていた必要な時間とはまさに、この採取の時間だったのだ。

ハンターの武器と防具はモンスターの素材が必要不可欠。

しかしそれよりも、ハンターが必要としているのは鉱石、虫、魚といった素材である。

 

 駆け出しのハンターは素材不足に悩んで、クエストを受けるだけではどうにもならない事を察して、多くの素材を求めて採取ツアーに向かう。

ハジメはそんな事をする余裕がなく、こうして特別任務の合間に採取をしなければならないのだ。

全ては強い武器(老山龍砲)に見合った、強い防具を作る為…!

…あと出来れば他の種類の武器も何か作りたいとハジメは思っていたのだ。

 

 空が明るいうちに、ハジメは草原の中で目を凝らして虫が多く集まる場所を見つけた。

そこにゆっくりと近づいて、今度は虫あみを構えてぱさっと縦振りにして虫を捕まえる。

虫あみ片手に草原を彼には縁のなかった小学生の気分を堪能すること15分…

 

(雷光虫5匹、セッチャクロアリ2匹、にが虫2匹、光蟲3匹……よし、オッケイ!)

 

 まだどんな防具を作るか、ハジメはそれを考えていない。

しかしこの先、必ずこれらの虫や鉱石が必要となる。

 

(蓄えられる時はひたすら蓄えておけ……言われた通りだ……!)

 

 ブルックの町で老山龍砲を作製する時、足りない素材を提供して貰ったハジメが、先輩ハンターの三人から教わった大切な事だ。

その場の生態系を乱さない為に採れる虫や鉱石の数には限りがある。

だから行く先々で、コツコツと採取をしなければならない。

小さなことからコツコツと、積み重ねていった先に…望んだものが手に入る。

 

(まるでゲームの周回イベントみたいだぁ…)

 

 いつの間にか場所を移し、ハジメは小さな川で釣り糸を垂らしていた。

ポチャン!と水面から釣り糸の途中に括りつけていた浮が沈んだのを見て、ハジメは魚が餌に食いついたと確信して「よっしゃぁ!」と声を上げ、両足で踏ん張りながら力強く竿を引っ張る。

 

 バシャバシャと暴れる魚の姿が水面に見えた段階で、身体ごと仰け反った。

現れたのは鋼のように硬い背ビレと持つことで砥石の代わりにもなるキレアジ。

 

「おし、うおっし!」

 

 達成感で謎の歓声を上げながら、ハジメは地面でビチビチ跳ねるキレアジを鷲掴みにして、釣り針を外してからアイテムポーチの中へと突っ込んだ。

実はこれまでに鉱石類や虫達もこのアイテムポーチに突っ込んでいるのだが、これで生物に変な傷がついたり死んだりしていないのが不思議である。

移動の時間を含めて、釣りだけは三十分ほどかかった。

 

(キレアジ3匹、サシミウオ6匹、カクサンデメキン2匹……サシミウオは今日の晩飯だな)

 

 すっかり上機嫌になって、釣竿を畳みながらハジメは辺りを見渡した。

茜色だった空は藍色に侵食されて、今にも辺りは真っ暗闇に包まれそうだった。

そろそろ丘に戻らなくてはミュウ達が心配するだろう。

 

「帰りた~い、帰りた~い♪」

 

 某テレビCMを思い出して口ずさみ、ハジメは目に映る丘の焚火を目印に歩き出した。

しかし丘の手前、街道に人影が二人立っているのを見て思わず足を止める。

 

(誰だ?―――んん、あれは……)

 

 暗い街道を吹き抜けた風が金色の髪を波打たせる。

夜の中でひと際目立つその髪色は、ハジメの記憶にある人物だった。

そして…出来れば一人で会う事は避けたい人物でもあった。

傍らに立っているのはその人物の身辺警護を任されている女騎士。

 

 ハジメは記憶を手繰り寄せて、彼女らの名前を口に出す。

 

「―――ん、誰だ!?」

 

「……貴方は―――」

 

「リリアーナ王女に騎士のクゼリー……さん」

 

 さっきまでの浮かれたハジメの熱が、急に冷めていくのを感じる。

何とも言えない表情で振り返ったリリアーナと目が合った彼は心で静かに呟く。

 

(……あ、これ絶対めんどいパターン入った……)

 

 元はハジメも神の使徒、リリアーナとは当然面識があった。

フューレンで開かれた夕食会で偶然再会した時、彼女は何か言いたげだったが、トレイシーが言葉で圧をかけて無理やり黙らせて、その場では事無きを得た。

しかし今ここにトレイシーはいない……すると、どうなるか?

 

(……勘弁して……勘弁して……スルー、絶対にスルー!)

 

 挨拶のつもりでスッと頭を下げて、ハジメはそそくさ横を通り過ぎようとする。

しかし、そんな彼の心の声を嘲笑うかのように、リリアーナは彼を呼び止めた。

 

「―――ッ!待って下さいッ」

 

(――――――オワタ)

 

 ハジメは死んだ魚のような目になり、口角がゆっくり下がった。

驚いた様子で目を丸くしたクゼリーの横で、リリアーナはキュッと口を結んで、胸の前で両手を組んで懇願するような形で、ハジメに向かってゆっくりと口を開く。

 

「―――話が…あるんです…」

 

 絶対にロクな話じゃない、ハジメはそう思った。

しかし彼に断る選択肢はなく―――トレイシーの協力者であるという事も含め―――奥歯を噛み締めながら、振り返って話に応じる事しか出来ない。

胸中の不安がジクジクと彼を蝕み、ドス黒い心を煽っていた。

 

 




 下げて、上げて、突き落とす(精神的に)
最後にあるドス黒い心ってのはいわゆる悪意とかそんな感じのアレです(このハジメ君は奈落落ちしなかったとはいえ、クラスメイトの件で初期の頃はかなりメンタルがやられていたので…それに関係する事となると、メンタルが初期の頃に逆戻りしてしまうという…)

 本人曰く克服した…ように見せてるだけで、実際はズルズル引き摺っていたのかも。
奈落で味わったガチ発狂するくらいの痛みか、記憶が飛ぶくらい頭を殴れば乗り越えられるかもしれませんね(完全な克服が出来るとは言っていない)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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