名前だけ出て、まだ登場していない人もいますが、彼に関しては完全に原作のあの商人の親戚みたいな扱いで生まれました。
何れ原作の社会人の味方な栄養ドリンクな彼も出て来るでしょう。
(作者はユンケルより、一日三本のリポディーでした)
※良い子は真似してはいけません。確実に体を壊します!
「――――――ん……あれ……?」
「よう起きたか坊主、もうとっぷり陽が暮れちまってるよ」
微睡から目を覚ましたハジメ。顔を上げると紙煙草を銜えてニヤけるアゥータがいた。
机に突っ伏していた上半身を起こして、椅子に座りながら大きく背伸びをするハジメ。
この世界にも煙草はあるんだなぁ……と考えていた彼の思考は、ようやく現実に戻される。
「ッ!?すいません、僕また寝ちゃって…!」
「あ~いいって気にすんな。おやっさんから話は聞いた。錬成師ってのは本当だったみたいだな。やっぱ天職持ちってのはすげぇよな……おやっさんがあんなに喜んでたの久しぶりに見たぜ?」
そう言ってアゥータは「ふぅ」と煙草の煙を口から吐き出しながら立ち上がる。
ハジメも彼に続いて立ち上がり、ヘファイに一言謝らなければならないと周囲を見渡す。
しかし部屋には彼らだけしかおらず、ヘファイの姿はなかった。
「おやっさんなら外だ。村の奴らと一緒に宴の準備してる」
「宴…?準備って……」
「まぁ付いて来な。運が良けりゃルゥムの奴も狩りから帰ってくる頃だろ」
アゥータが外に出ていくのに続いてハジメも外へと出ていき――――そして驚かされた。
鍛冶屋の近く、凸凹道の周りにこれでもかと火のついた大きな松明が並べられている。
そして松明の囲む先で、机や椅子を運びながら和気藹々としているゲブルト村の人達がいた。
「昼間はあまり見かけなかったのに……」
「あぁ、男衆の大半は今、ハルツィナ樹海との道を開拓するための工事に昼間出てるからな。女衆も農作業とか洗濯で村を離れてっから、村には子供と老人、俺みたいなチャランポランしかいないわけよ――――――そら、ジジイんとこ挨拶にいくぜ」
ハルツィナ樹海―――その単語を聞いてハジメの脳裏にエルフ耳の二次元美少女が現れる。
しかし同時に樹海の中もモンスターがいるのではという想像力が襲われた時の恐怖を思い出す。
一人ぶるぶると肩を震わせたハジメはなるべく松明とアゥータから離れないように歩く。
「じ、じじい…?」
「俺の親父の親父。俺の親父と母さんは俺を生んで間もなく死んじまってな、婆ちゃんも同じ時期に死んで、ジジイが男手一つで俺を育ててくれたんだよ……っと、いたいた」
あっさりと告げられたアゥータの話にショックを受けるハジメ。
しかしアゥータ本人はそれが普通であるかのように気にも留めず先へ進んでいく。彼の視線の先には並べられた椅子の一つに座って杖をついた老人がいた。
「おーいジジイ、アンタのご要望通りに坊主連れてきてやったぞー」
その言葉で動き回っていたゲブルト村の住人全員の視線がハジメに集まった。
ビクッと肩を竦ませて、なるべく目立たないように今度は松明から離れて暗がりを歩こうとする。
しかしそんなハジメの気持ちを知らずに、アゥータは彼の手を取って老人の前に連れていく。
「ふんむ……おぬしが狩人の娘に助けられた……私はこのゲブルト村の村長”アボク”」
「南雲ハジメです……助けて頂いたうえに色々と、ありがとう御座います!」
「礼ならあの娘と……そこで煙吹かす不肖の孫に言っておくといい」
「は、はい…!」
ヘファイとは違って全体的にやせ細ったアボク。
そのか細い腕が握手を求めて、ハジメはそっとその手を握り返した。
皺だらけの手から伝わる、土のようなざらざらとした感触と太陽のような優しい温もり。
先ほど鍛冶屋でヘファイとも握手をしたが、その時は分厚い皮膚で覆われたゴツゴツとした感触と、人より少し熱いくらいの体温が伝わってきた。
「おいジジイ!誰が不肖の孫だこの野郎!村のためを思って出稼ぎにいった優しい孫だろ!?」
「フン――――狩人としては一人前と世間に認められていようが、私からすればおぬしなぞ赤子よ。悔しいと思うのなら、番いになる女子の一人でも私の前に紹介してみせろ」
「だぁから!ハンター稼業やってりゃ女ッ気ねえの知ってんだろ!?俺だって気になる娘の十人や二十人ばかしいたわ!けど、ハンターやってるって聞けば誰も付き合ってくれなかったんだよ!」
「それ見たことか。村で大人しく畑を耕せば、良い女の一人でも寄ってきたろうに。………はぁ……私の前でひ孫を抱えて笑うおぬしの姿が見えるのは何時になることやら」
「なんだアボクさん、またその話かい?無理無理、アゥータ坊やに嫁なんざ出来やしねえさ。
出来てるならとっくにあのハンターの嬢ちゃんを手籠めにしてるだろうさ、なぁ?」
牙を剥き出しにアボクへと抗議の声をあげるアゥータ。
そこへ横やりを挟んだのが、机に料理をおいた恰幅の良い妙齢の女性だった。
他の村人たちと同じような麻布の服に、何かの牙と爪の首飾りが特徴的な女性。
彼女は口喧嘩をする二人の傍観者になっていたハジメに同意を求めてきた。
思わず「そ、そうですね!」と返してしまったハジメ。
「ちょいちょいちょい”ニッカ”おばさん!俺とアイツはそういう関係じゃないって何度言えば――「へへっ、ニッカさんに同意見だ。それに此奴ときたらブルックの街で娼館に足繁く通ってるって”リポディー”の旦那から面白い話を聞かせて貰ってるからねえ」ちょっとぉ!”テム”さん、それいま関係ないですよね!?なんで俺の個人的な楽しみを暴露してんの!?」
「うわぁ……アゥータ君たらヤラしいんだー……」
「混ぜっ返さないでくれますかねえ”アイ”さん!」
今度は夫婦と思しき男女の二人が机に酒の入った壺を並べて口を挿んだ。
既に突っ込み役と化していたアゥータは首が右いっては左曲がって、振り返っては手振り足振り、腰振る話で根掘り葉掘りと顔が真っ赤になっていた。
状況についていけないハジメを見て苦笑したアボクが一人一人を指さして言う。
「そこで料理を並べてくれているのは”ニッカ”この村の畑を管理している女性だよ」
「よろしくねハジメの坊や。なんか色々と事情があるみたいだけど……相談には乗るから。アタシこれでも村一番の相談役として話上手なのよ?」
「よろしくお願いします。相談……もし悩んだ末に自分で解決できなかったら、そうしますね」
「ふふふっ、若い子とお喋りなんて……宴の御馳走を食べる前からお腹いっぱいになっちゃうわ。
―――――あらヤダ、私のお腹ったら食べる前からまん丸だったわね!」
恍惚の表情で腹に手を置いたかと思えば両手に口を当てるムンクの叫びみたいなポーズをするニッカ。ハジメはそれがなんだか可笑しくて「ぶふっ」と笑ってしまう。
そうしてアボクが指さすより前にアゥータを置いてきた夫婦が自己紹介をしてくれる。
「ようこそゲブルト村へ、俺はこの村で雑貨屋をやってるテム」
「私はテムの妻で雑貨屋の看板娘(自称)アイよ」
見事な連携である。
右足だけで立つテムは左足を斜め上にあげて、右手を水平に広げる。
アイが左足で立って右足を斜め上にあげて、左手を水平に広げる。
お互いに空いた手で斜めにした足を掴んで支え合う……運動会で男子がやらされる組体操のアレだ。
「あ、アハハ……よろしくお願いします」
「……うん、ハジメ君。あの二人はアゥータほどではないが少々……いやかなり馬鹿な一面もあるが、ああ見えて昔は行商人もやっていたから、そっちの腕は確かなんだ……」
流石にフォローが難しかったのか、アボクも遠い目をしてアイテム夫婦から目を逸らす。
ハジメはこの世界にもファンタジーなゲームでの呼称の定番”アイテム”という概念が存在する事とそれをネタにする文化があるんだなと微妙な表情で納得した。
ようやく突っ込み疲れたアゥータが帰ってきた、心なしかいつものように目が笑っていない。
彼に連れられるようにして現れたのはヘファイと、その足元には五匹の様々な毛並みのアイルー。
少し驚かされたハジメだが、彼らが何かを喋って両手に料理を乗せた盆を持っている微笑ましい光景を目にした途端、彼らはモンスターだが警戒しなくていいんだと一人ほっと胸を撫で下ろす。
「よう若ぇの。ワシんとこの机は寝心地がよかったかぁ?」
「あ、へふぁ―――じゃなかった……おやっさん!すいませんでした!」
「かかかっ、良いって事よ。村の若ぇ連中がお前さんがあっちゅう間に斧を治したって聞いたら、みぃんな目ん玉おっ広げてたまげてやがったぜ?がっはっはっ!」
「そ、そうですか……よかった……のかな?」
そうこうしているうちに足元までアイルーたちが集まってきた。
警戒しなくていいとは思ったが、流石に前のトラウマがあって強張るハジメ。
頭巾で耳を隠した茶色で虎のような毛並みのアイルーが一歩前に進み出て、深々とお辞儀をする。
「この度はゲブルト村にようこそですニャ。ボクはこの村のアイルーキッチンで料理長をやらせてもらってますニャ。名前を”ウマアジ”と申しますニャ。―――アゥータの旦那様から事情は知りましたニャ。野良とはいえ同胞メラルーの粗相。どうかご容赦下さいですニャ」
「「「「ごめんなさいですニャ」」」」
「あ、あぁ。いいよ、君たちが気にするような事じゃないんだし……。勝手にあのメラルーの縄張りに踏み込んだ僕にも非がある……。これからよろしくね」
「ニャ!ハジメ様の慈悲深きお心遣い痛み入りますニャ。本日はゲブルト村アイルーキッチンの者たち―――”ダシ” ”チンミ” ”カクシ” ”スパイス”の4匹とボクが振るう料理に、ご満足頂ければ此れに勝る喜びはありませんですニャ」
「「「「精一杯ご奉仕させて頂きますニャ」」」」
ウマアジが頭を下げるのに一歩遅れて頭を下げる4匹のアイルーたち。
ダシとチンミが白と橙、黒の三毛猫アイルー。
カクシが灰色、スパイスが深緑の虎模様アイルー。
あまりに丁寧過ぎる対応と言葉の所々に「ニャ」という猫らしさを隠し切れないギャップに困惑しながらもハジメは彼らに頭をあげさせて、過ぎたことは気にしなくていいと言う。
(何故だろう……この世界でこの子たちが一番礼儀正しい気がしてきた……)
「う、うん!ありがとう、美味しく戴くよ。あのさ……いきなりで悪いとは思うんだけど……」
「ニャんですか?ボクに出来ることなら何でも致しますニャ」
「そ、その……」
口を噤んだハジメは顔を赤くして視線をウマアジから逸らしてしまう。
何をしたいのか察した一部の村人たちは「分かる分かる」と頷いて笑みを浮かべる。
アゥータは「あぁ……俺も昔はやったっけ…」と遠い目をしていた。
ハジメの様子がおかしい事を心配したのか、ウマアジが顔を覗き込む。
「ご遠慮なさる事は何もありませんですニャ。些細な事でも構いませんニャ」
「「「「ニャッ」」」」
ふわふわの毛並み、小さな鼻をクンクンさせて、つぶらな瞳とピンと張った半透明の髭。
これだけ揃えば猫が好きな人は誰だってやりたくなってしまうだろう。
ハジメは意を決して顔をあげてウマアジを見つめながら口を開いた。
「そ、その嫌じゃなかったら………撫でても……いいかな、毛並み……」
「ニャ?それならお安い御用ですニャ」
ウマアジは着ているエプロンをずらして背中をさらけ出す。
「どうぞ好きにニャさって下さいですニャ」と尻尾を振るウマアジ。
ハジメの愛撫したい衝動は限界を迎えていた。
なるべく優しく―――決していやらしくない力加減で―――その毛並みを撫でた。
指先に触れる毛の波が艶やかで、奥に感じる小動物の温もりと鼓動は心を穏やかにする。
流石に尻尾と耳は嫌がるだろうと思って背中だけを撫でることに集中するハジメ。
しかしそんなハジメの心を察したのか、ウマアジが気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
「ニャ……耳も尻尾も……優しくして戴ければ触って構いませんですニャ……」
「い、いいの……?それじゃあ――――」
ゴクリと生唾を呑み込んで、ハジメの指先はウマアジの耳へと触れた。
その瞬間、ピクピクっとウマアジの三角形の耳が動いて、ハジメの心は更に高鳴る。
尻尾はウマアジが気を利かせてくれたのか、ハジメの首筋から頬にかけてなぞるように動く。
「あ……ふぁ……こ、これは……」
(ここが天国だ…もう、思い残すことないかな……)
エルフ耳への青少年的な欲望は何処に消えたのか、猫の毛並みを存分に楽しむハジメ。
一人恍惚に浸るウマアジを見て嫉妬したのか、他の4匹もハジメの周りへ集まってくる。
それからしばらくの間、宴の準備が終わるまでハジメは毛並みの天国に心踊らされた。
二本足で立って人の言葉を解する猫とか存在したら?
最初に確認するのは当然―――思う存分にモフっていいのか。
猫って触られるのを嫌がる子は威嚇までしますよね……作者は大体片思い…。
次の話は完全に食い物でネタの話に全振りします。
ついでにハジメ君にそろそろ心の毒を吐かせてやろうかと……
ため込んでるもの出さないと、リフレッシュして次には進めないからね!
感想待ってまーす!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡