蛇足かもしれませんが優花の心情の変化を軽くここに書いておきます。
召喚初期「なんか異世界来て凄いことになったけど、天之河が何とかしてくれるでしょ。それはそうと檜山達ちょっとやり過ぎでしょ…あれ、南雲大丈夫かな…」
敗北後「魔物怖すぎ、大好きな先生が落ち込んでるし、私が何とかしなきゃ…!」
再会後①「南雲に迷惑かけちゃったし、助けられた分は恩返ししなきゃ…それはそうと、なんかアイツ、見ない内にカッコよくなったなぁ…」
世界の真実知った時「色んなことあり過ぎて訳分かんないよ…全部神様が悪いとかあの場で言っちゃったけど、馬鹿だな…私がしっかりしなきゃいけないのに…戦うのも人が死ぬのも怖い。人が死ににいこうとするのを言い訳して止められない私は最低だ…」
幕間の回想①・②を知る「(自分を屑と思うレベルで自己嫌悪+罪悪感)」←いま此処
「ウマい!!」
サシミウオの塩焼きを頬張ったハジメの第一声がそれだった。
焚火で加熱した鍋の中で、スープの野菜には野菜の旨味が染み出している。
「ふふっ、そうでしょうそうでしょう!私の焼き魚は絶品でしょう!なんたって湖の町ウル一番の高級宿の何でも出来ちゃう有能従業員ですからねえ!味わって食べるがよい~!」
「ミュウもいっぱいリンネお姉ちゃんのお手伝いしたの!」
「そうか、偉いぞミュウ!――――――むぐっ、うん、ウマい!!」
「えへへ~!」
フン!と鼻を鳴らして焚火の前でふんぞり返るリンネ。
サシミウオの下処理を手伝ったミュウが褒めて欲しそうにしているのを察して、ハジメはよしよしと空いた手で頭を撫でる。
ミュウの隣に座って黙々と魚を食べながら、優花はチラと彼の表情を窺う。
リリアーナとクゼリーに彼が神の使徒を抜けるまでの経緯を話した時、優花、ティオ、ノイントの三人は彼の話す苦しかった日々を一部始終聞いていた。
聞き終えた後、呆然とした二人を半ば強引に追い返してハジメは無言で焚火の前に座っていたが、その時と食事中の今とでは表情がまるで別人のようだった。
過去を話す時のハジメは、何もかもに絶望したかのような悲壮感漂う少年だった。
それが今、ミュウの頭を撫でて笑顔を浮かべる彼は爽やかな好青年にしか見えない。
無理に明るく振る舞っているようには見えない…彼の中で気持ちを切り替えられたのだろうか?
ハジメの話を聞き終えたリリアーナ、クゼリーは唖然とした表情を浮かべ、最後に彼が「これで十分だろう?」と促して、何とも言えない表情のまま二人は去っていった。
優花は盗み聞きしてしまった罪悪感に包まれながら、今も心ここにあらずという様子である。
サシミウオをあっという間に骨までバリバリかみ砕いて食べたハジメは改まってリンネに尋ねた。
「…それでリンネさん。明日の予定は?」
「ん、多分昼前にはホルアドに着くかな。そんで一泊してからまた夜明けに出発、そこから何事もなくノンストップでいけば夕方には湖の町まで辿り着くかなぁ~」
「実質、あと二日ですか…この旅も」
「そうだねえ、あと二日でアタシと優花ちゃんはお別れだねえ」
(………っ)
リンネとハジメのやり取りを聞いていた優花の胸にチクリとした痛みが走る。
このまま彼の話を聞くだけ聞いて、彼女は元の居場所に戻るだけでいいのか?
(――――――私は)
ハジメに何かを伝えるべきじゃないのかと、優花の心の中で言葉が出かかっている。
しかし彼女の理性が口を開きかけた体に対して今じゃないと理性が引き止めた。
それを誤魔化すためにサシミウオの串焼きを頬張り、ゆっくりと頭を整理して考える。
彼の話を聞いて、どう思い、なんて言えばいいのか。
この時、優花は自分の事に集中して気づいていなかった。
彼女と同じように無言で似たようなことを考える女が、この場にあと二人いたのだ。
幸運なことに、彼女達の行動を起こすタイミングは重ならなかったが…
*
「ねえ、南雲……ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
「ん?あぁ…いいぜ、此処で話せることか?」
食後の休憩中、焚火の前で道具の手入れをしていた南雲に私は話しかける。
お腹いっぱいにご飯を食べて眠くなったのかな、ミュウちゃんはリンネさんの横でこくりこくりと眠そうに首を揺らしている。
私は自分の癖毛を指に絡めて、ちょっと声のトーンを落として言った。
「……向こうで話せる?……あんまり人に聞かれたくないから」
「おう、了解だ」
私の様子で南雲が何かを察して真剣な表情で笑いかけてくる。
多分、フューレンの集会所の時に言ってた相談と思われたのかもしれない。
でも…違うよ、南雲……私がこれから伝えたいのはね。
私が先導してきたのは丘を少し下ったところの斜面。
地中から顔を出した岩が二つあったから、それを椅子代わりに腰掛ける。
意図せず向き合う形になった私と南雲が向かいあう形になった。
「―――この辺で、いいかな」
「おう。……んで、どうしたんだ園部」
……どうしよう……決意して此処まで南雲を連れてきたというのに。
私は南雲の真っ直ぐとした赤い目を見た途端、何も言えなくなってしまった。
言いたかった筈の言葉がストンと頭から抜け落ちて、口を半開きにする。
「……っ…ぁ、の…私ね…」
「―――落ち着け、ゆっくりでいいぞ」
……ダメだよ、南雲……アンタは私に、そんな優しくしないでいいんだよ…?
あの話を聞いた時点で、私にそんな資格は無いんだって分かったから。
「…あの、ね…南雲…私…」
「………」
心配そうにな表情で、真剣に私の言葉を待っていてくれる南雲。
……もう何を言えばいいのか分からなくなって、頭の中がぐちゃぐちゃで私は―――
「―――っ!…ごめん…南雲!」
「ど、どうした急に!?お前に謝られるような事、俺は覚えがないんだが…?」
「私……さっきの、ハジメが王女様に話してたこと、聞いてっ…!」
「―――――――――!」
一瞬、南雲の息が止まるのを聞いて、私は嫌われる覚悟をした。
態々リンネさんが話し辛い事だからって察してあの場を離れたのに、私だけこっそり戻って盗み聞きしていたなんて知ったら、当然南雲は私を嫌いに―――
(……あれ……私、何考えてるんだろ…)
これじゃあまるで、
…馬鹿だなぁ…私、南雲はずっと私含めてクラスの皆が嫌いになってるのに。
そんなの、ずっと前から分かってたことじゃん。
なんで、今更…あんな事があって…南雲と仲良く…なんて思ってるのかなぁ…
視界が滲んで、私は手でそれを拭った…涙だ。
「―――っ、ぅ……ぁぅっ…」
「園部…」
私の様子を見て、怒る筈だった南雲が慌てて心配そうに近づいて来る。
…やめて…ダメ…南雲。今、私に近付いたら……また貴方に迷惑を掛けちゃうよ。
それだけは絶対に嫌…あんなこと聞いて、私にそんな権利ないって分かってるから。
「ご、ごめんね…ちょっと待って私…これ、止まってから!ちゃんと話す…からっ」
「………っ!これ、嫌じゃなったら…使えよ」
不意に南雲から何かが差し出されて、私は涙で濡れた顔を上げた。
差し出されたものはハンカチだった。
その意図を理解して、私は受け取れないと首を横に振る。
「………そうか」
拒絶された南雲は何も言わず、ハンカチを握った手を引っ込めた。
…また貴方の好意を踏み躙った……私、最低だよね……ごめん、南雲。
あんまり長時間付き合わせるのは悪いし…早く、言わなきゃ…
私なんかと違って、南雲には先の事を考える時間が必要なんだ。
今まで辛い目に遭ってきた南雲は、これからは幸せにならなきゃいけない。
それを…私みたいな卑怯者の為に使わせちゃったら悪い…から…
「―――っ南雲、今までのこと…ずっと謝れなかったから…謝りたくて…さ…。私、ずっと南雲が辛い目に遭ってきたのに、それを他人のフリで無視して…話聞いて、謝らなきゃって思ってさ。…アハハッ、笑っちゃうよね…散々何もしてこなかった私が、南雲に助けられて…現在進行形で迷惑かけてるのに…。この旅が終わったら、やっぱり私、南雲の事は誰にも言わない…言えないよ」
「おい、園部…それは―――」
お願い…何も言わないで、南雲…私の言葉に頷いて…それで終わりにして。
私の我儘な贖罪を…受け入れてなんて傲慢なことは言わない。
ずっと許されなくていい……ずっと恨まれたままでいい……だから……!
「あっ、愛ちゃんには悪いと思うけどさ!もし、南雲を連れ戻そうとしてきたらって考えると…やっぱり言わない方がいいじゃん?愛ちゃんって真面目すぎる部分あるしさ、もし喧嘩とかになっちゃったら嫌だし、南雲もクラスの皆とか愛ちゃんに追いかけ回されちゃ迷惑だろうしさ…!うん…やっぱ、そうしないと…!私、助けられた恩返しにならないし…さ…」
「っ…いや、ちょっと待て!いったん落ち着け…!お前、急に謝ったかと思えば早口だし、何を言ってるか全然わかんねえぞ…?さっきの話のこと、気にしてんのか?」
…ダメだよ、南雲…そんな訳が分からないなんて顔しないで…!
貴方はただ、私に「ああ、そうかい勝手にしろ」くらい言って…?
突き放して貰わなきゃ…ダメなんだよ…私は…っ!
「―――気に…するよ…っ!あんな、南雲が苦しいって思ってたなんて話聞いて…その場にいた私が…屑だった癖にっ…都合よく、助けられて、仲良くしようとか…!」
「園部っ!!!」
「っ!?」
突然、私の名前を呼びながら南雲が私の両肩を掴んで真正面から向き合う形になった。
怒鳴られたと勘違いして私はビクッと肩を竦ませて目を瞑る。
…けど、南雲は次に目を開けた時にはいつもの優しい顔に戻っていた。
「落ち着け園部?ゆっくり息を吸え、深呼吸だ…ほい、吸って~?」
「……っ」
「なんだ深呼吸の仕方が分かんねえのか?見てろよ、すぅぅぅぅ…」
さっと私の両肩に触れていた手を離して距離を置いた南雲は立ち上がる。
両脇腹に手を置いて俗に云う偉そうに胸を張るポーズで深呼吸を実演し始めた。
私がキョトンとした表情になると、彼は目を向けて息を吐きながら言った。
「ふほぉぉ~…ほれ、こうやるんだ」
「――――――」
私は呆然としていて、南雲に言われた通りにする他なかった。
でも、深呼吸を繰り返している内に、私は自分のさっきの発言を思い返して、如何に支離滅裂な内容を話していたのかを理解する。
私の様子をじっと見ていた南雲はフゥと安堵した笑みを浮かべながら岩の上に座り直す。
「まず最初の盗み聞きの件からな?そりゃ柄にもない自分語りを聞かれたのはちと恥ずいけど、別に聞かれて困るようなことでもないし、俺は怒ってねえ。お前が謝ることはなんもねえぞ?」
「………」
「んで二つ目、あの話を聞いて多分お前が思った事を当ててみるな?―――今まで虐める側に加担してたような自分を屑と思い込んで、助けた俺に対してさっきの話を聞いたら罪悪感とか色んなもんがマッハになって、謝らなきゃと!んでこれからは迷惑を掛けないようにするために、先生に俺のことを話さず黙っていようとか突然言いだした訳だ……アタリか?」
「…………(こくり)」
「ヨッシャ!流石だぜ俺の推理力!…って、こんなの推理でも何でもないんだけどな…まぁいいか」
黙って南雲の言葉を聞いていた私は、問いかけに頷きだけ返すしかなかった。
彼はじっと俯いた私の顔を見つめてから、フゥと困ったように笑いながら息を吐く。
「―――お前さ、馬鹿真面目って誰かに言われたことねえか?」
「……ない……と思う」
「…そっか…けど、俺から見るとお前、村で再会してから今日までずっとスンゲェ気ぃ張ってる。絵に描いたような真面目ちゃんにしか見えなかったぜ?しかも自分とか友達のことだけじゃなくて、クラスの連中に先生、この世界の住人のことまでなんかある度に責任を感じてるような顔してたし……こりゃ相当メンタルが参ってんなぁって思ったよ、マジで。…んでそんな風に思ってた俺からマジな話、こんな時だからハッキリ言わせて貰うけどよ―――」
ゆっくりと語り終えた南雲は真面目な表情を浮かべて、私に向かって手を伸ばしてくる。
何をされるのかは分からないけど…今なら彼に何をされても私は文句を
そう思って静かに目を瞑ると―――
さっきとは真逆に優しい手つきで南雲の手が私の肩に置かれた。
驚いて目を開けた私を見つめたまま、彼の口から信じられない言葉が出てきた。
「いったん頭の中を空っぽにしてさ、リラックスする時間…作った方がいいんじゃね?」
「……え……?」
「多分ここで俺がお前に 周りのことなんか気にするな!我儘に生きちまえ! とか 過去を振り返らず、人生を好き勝手に突っ走れ! なんて無責任なことを言える訳ねえし。言ったところでお前がその通りになるとは思わねえ。だから、お前に考えるのを止めて、心身を休める時間を作れって言うことにした。心も体も疲れてる時は休むのが一番の治療法だしな」
「……ど、どうして……」
「俺がそんな事をお前に言うのかって?そりゃまぁ…フューレンでお前に、辛い事があるなら誰かに頼れって他ならぬ俺が言ったから、言葉の責任を取るってのも理由の一つだけど…」
私は南雲の発言に対し、驚き過ぎて涙も出てこなかった。
彼はスラスラと
不意に彼は何を思ったのか、頬をうっすら紅潮させて目を逸らしながら言葉を続けた。
「―――まぁ、その…なんだ…お前が辛そうにしてんのは…あんま見たくねえって思ったんだ。―――あぁ~だから…な?その……あれだ、相談するのは全然構わないんだが……」
そう言い淀んでから南雲は意を決した表情で真っ直ぐ私を見据える。
色んな感情でさっきまで激しく動いていた心臓が、ひと際大きく跳ねた瞬間だった。
口にした言葉は、まるで―――
「泣く時は、ハンカチくらい持っておけよ」
「――――――??」
……ちょっと意味が分からない南雲の言葉に私の思考が停止した。
数秒の後、彼は焦り顔で後ろを向きながら独り言を呟き始める。
さっきの私よりも物凄い早口で身振り手振りの独り言だった。
「いや、ちげぇだろ俺!そこは「泣かないでくれ」ってストレートに―――あぁ、いやでも相談する時は辛い時なんだから、泣くのは当然であって、それを泣かないでくれって言うのはおかしな話だよなウン―――いや、けど他にピッタリな言い回しなんてあるのか?少女漫画のイケメンを真似て「泣いてるお前を見たくない」とか?いやあんまり変わってねえし!口にしたらドン引きされるに決まってんだろそんなん!畜生めぇ…お袋の漫画がありゃ最適な言葉があったかもしれねえってのによぉ…おのれ異世界!」
「―――っっ…フフッ!」
あまりに南雲の早口と一人で慌てる様が可笑しくて、私は吹き出してしまった。
驚いた顔で「聞いてたんかワレェ!?」と振り返る南雲がまた笑いを誘い―――
「あははっ、あははははははっ!!」
「わ、笑うことねえだろ!これでも必死にお前から相談を持ち掛けられた俺なり誠意というか本心というか伝えるべきことを精一杯この場で考えてたってのによぉ…」
「ご、ごめっ…でも、その独り言っなんか可笑しくって…!」
五分か十分か、私はお腹を抱えて笑い続けた。
こんな風に本気で笑ったのは…一体何時以来だったかな…?
ブスッとした顔で口を尖らせていた南雲は本気で怒っている訳じゃなく、自分の言葉を思い出して目と唇を小刻みに震わせて笑いを堪えている。
こうして私の相談…胸の内を南雲に明かす時間は終わった。
「もう大丈夫か?」と聞いて来る彼に、私は無言で笑みを浮かべて頷く。
彼も笑顔を浮かべ「んじゃ戻るか!」と先に丘をズンズン上っていった。
(――――――ああ、私…この気持ちは…)
実は南雲、私のことはもう許したと後で言ってくれた。
その事に安堵しながら、私は胸の内に抱えた感情の正体に気づいてしまった。
(そっか……うん、そうだよね……)
昔読んでいた少女漫画とかで、主人公の女の子が男の子に一目惚れするシーン。
当時の私は斜に構えていて「そんなのフィクションじゃん?」って笑ってたけど…
事実は小説より奇なり…だっけ?本当にそうかもしれないわ…だって…
南雲の家で看病された時、ブルックの町で二人で買い物をした時、彼の戦う理由を聞いた時、他の
―――優花は胸に手を当てて、心臓の鼓動に答えるように心の中でそっと呟いた。
(私、南雲の事……好きになったんだ…)
ようやっと好意に気づいたんかワレェ!レースはもう始まっとるんやぞ!
さて、あとの二人も食事中は無言だったようですし……このまま深夜テンションで書こう!(見切り発車感)
因みにハジメ君が後半、物凄く言葉選びに迷っていた理由の一つとして「周りを気にし過ぎるな」って言おうとしたんですが、自由奔放にやった彼が言うと頭に特大ブーメランが刺さると自覚して止めたという感じです。
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡