モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 全部書いてから一言、大した悩みの解決してねえ!?
寧ろ悩みを解決されたのがハジメで、ノイントのは完全に作者がノリで突っ込んだ属性を解放させちゃったというか覚醒したというか…



不幸も何かの役に立つ ノイント編

 

 焚火の前で暖を取っていたノイントの向かいにハジメは腰掛ける。

優花はほんのり赤い顔で「私、もう寝るね!お休みハジメ、ノイント!」と睡眠中のリンネ、ミュウ、ティオのところへと向かった。

 

 火の番はノイント、ティオの二人が交代で行うことにしている。

ハジメはモンスターに襲われた時の対処要員としてずっと起きているつもりだ。

 

「優花と何か話していたのですか?」

 

「ん…ちょっと相談を受けてな。…なんとか解決したよ」

 

「そうですか…ハジメは人の悩みを解決するのが得意なのですね」

 

「いや、そんな事はないぞ?自分の悩みもスパっと解決出来ないし、あくまで俺のは助言だ助言。助言を貰って悩みを解決できるかは本人の気持ち次第だろうさ…」

 

 手をヒラヒラ振ってハジメはさっきまでの作業に戻る。

グチャグチャに入っていたアイテムポーチの中身を一旦外に出してから、種類やレア度、個数で見分けがつきやすいように並べ替えていく。

ノイントが無言になって、気になったハジメが顔を上げると、彼女は無表情で口を閉ざしたまま、視線だけはハジメの手元へと釘付けになっている。

 

「……これが気になるのか?」

 

「いえ…その奇怪な布袋(アイテムポーチ)というよりも、ハジメのこまめな整理整頓の様子が…です」

 

「別に大した事はしてないんだが……そこからだと見づらくないか?」

 

「では近くで見ても宜しいでしょうか?」

 

「そんな畏まって聞かなくても、構わないよ」

 

「―――では失礼して」

 

 そう言って立ち上がったノイントはスタスタと焚火を回ってハジメの所まで歩いていき…ストンと腰を下ろしたのは彼女の肩が彼の肩と触れそうなほど近い場所だった。

しかしハジメは「近すぎないか?」と言うだけで嫌がらない。

ノイントはじっと彼の手元を見つめている。

パチッと焚火が音を立てる以外、二人の間に会話はなく静寂が訪れる。

 

 

(やはりハジメは不用心です…)

 

 私は隣で作業に集中しているハジメの欠点を言葉にせず、心の中で指摘する。

こんな風に見知った相手でも不用心に隣に座らせては、何かあった時に対処が遅れてしまう。

 

 例えば私が急に昔の自分を取り戻して、この世界の神を自称する私の創造主だったものが隠していた事実を広めない為に、この場でハジメを殺そうとしたら?

きっと貴方が気づいた時には私は殺せる体制に入っているのでしょう。

貴方は私を救った事を、死んだあとで激しく後悔することになるかもしれない。

 

「…?どうした、ノイント…」

 

「…いえ、ハジメは優しいと…そう思っただけです」

 

「なんだ急に。――――――いや、なんか察したぞ」

 

 ハジメは急に「ははぁーん」と呆れて笑みを浮かべながら私を見る。

…私から盗み聞きしたことを謝るつもりが、どうやら気づかれてしまったようですね。

恐らくは先ほどの優花との会話で盗み聞きしたのが彼女だけではないという可能性を感じ、私の言動からその予想は的中したと思っているのでしょう。

 

「俺の恥ずかしい昔語り、お前も聞いちまってたわけだ」

 

「肯定です。…同時に、謝罪します」

 

 作業の手を止めて、ハジメは膝に手を置いてから空を見上げる。

その顔は盗み聞きに対して怒っている様子はなく、寧ろ恥ずかしさと盗み聞きに気づかなかった自分の未熟を恥じているような…困った笑いを浮かべていました。

…フフフ、そういう顔のハジメも…素敵ですよ。

 

「謝らなくていい。…率直に聞くけど、お前はどう思った?」

 

「…どう…とは?」

 

「ん、まぁ…俺の恥ずかしい過去を知られちまった訳だ。やっぱ…ノイント的には、俺はやられっぱなしの情けない奴に見えるか?それとも、嫌な事から逃げてばかりの卑怯な奴か?」

 

―――思考が停止する、どうしてハジメがそんな事を聞くのか理解が出来ない。

私の驚いた顔をチラチラと横目で見ながら、彼は空を見上げたまま一人喋る。

 

「さっき優花の相談に乗ったって言っただろ?その時は流石に、あいつも色々悩んでるみたいだったから聞けなかったんだが。一度、俺以外の誰かから見た南雲ハジメ(自分自身)はどう映っているのか、率直な感想を聞いてみたくてな…」

 

「―――貴方という人間を言葉で表現しろと?そういう事ですか」

 

「ニュアンス的にはそれで合ってる…のか。正直に教えてくれるか?」

 

 これは予想外の展開、流石に私も動揺してしまいました。

彼の目には真剣さが感じられます…恐らく建前の評価では逆に彼を落胆させてしまう。

しかし…私から見た…ハジメとは、これを口にしてよいのでしょうか。

 

「―――ご存知の通り、私は感情表現というものがヒトに比べて乏しい。それを承知の上で、私から貴方がどう見えているか、お答えする事になるのですが…宜しいですか?」

 

「ああ、ストレートに、ドン!と来い」

 

 最初の問いかけに含まれていた彼の口から零れた、自身を卑下する評価。

恐らくは彼の中では、自身の行動や感情の在り方に迷いを感じているのでしょう。

集団生活に於ける人間の在り方は、周りに合わせることが前提条件。

それを怠れば集団の輪から追い出されるのは必定…ですが私は――――――

 

「…ハジメが故郷に居た頃…今のハジメではない、昔のハジメ…。その時の貴方が周りから嘲笑と嫌悪の対象になっていたことは…色々と考えましたが、貴方に非はないと私は断言します」

 

「…そっか」

 

「集団生活に於ける貴方の独善的な趣味趣向は確かに受け入れ難いものかもしれません。…ですが、そういったものを許容する事が出来るのも心を持つ人間の特権ではないでしょうか?」

 

「そりゃ…まぁ、そうかもしれんな」

 

 意外な言葉だったようで、ハジメはポリポリと頬を掻いて視線を逸らした。

…ああ、そういう所も年相応という感じがして愛しいと私は静かに目を細める。

 

「―――これが貴方を好意的に見る私としての意見です。…それ以外の視点から見るのであれば、貴方には彼らに逆襲する義務もあったのではないかと思います」

 

「…逆襲?」

 

「はい、逆襲です。…貴方が嫌な事をされたように、彼らに同じ事をやり返す」

 

「けど、それじゃ―――」

 

 同じ事をやって、やられて、やり返して…延々と繰り返しになってしまう。

確かにそれでは根本的な解決にはならないかもしれませんね。ですが―――

 

「ただやり返すのでは意味がありません。相手に、自分達がやっている嫌な事を止めさせるべきだと判断出来るように誘導する必要があります」

 

「―――同じ事をされて、どういう気持ちになるか理解させるって事か?」

 

「肯定です。理性のある人間であれば、不毛な事の繰り返しに時間と労力を費やす事の無意味さに気づいて、そういった行為への興味関心を薄れさせていくと思われます」

 

「…成程な…一理ある」

 

「…ただこの場合には、第三者による仲裁があって然るべきなのですが…」

 

 ハジメは「そうだな」と感心したように私の言葉を聞いて頷いていた。

彼の質問に答えているだけなのに、褒められているような気がして嬉しさがこみ上げる。

表面上は冷静に、私は一度咳払いをして話を続けた。

 

「その他にも様々な選択肢が存在しますが。…そのどれを取ったとしても、メリットがあればデメリットも存在します…極論になりますが―――」

 

「選択肢に正解なんてない…か?」

 

「…はい。人の選択に間違いはなく、問題はその選択をどのようにして正しいと自身や周囲に認めさせるか、その過程と結果にあると提言します」

 

「周囲に…?…あぁ…そうか、自分だけが正しいと思い込んでたら、そりゃただの自己中心的っつーか自己満足の選択肢にしかならないよな…すげぇなノイント」

 

 不意に彼の口から発した私を褒める言葉が、また私に動揺を与える。

ピクンと揺れた肩が彼の肩に触れて、そこが激しく熱を帯びる感じがした。

心なしか心臓の鼓動も大きくなっているような気がします。

 

「…っ…これくらいは、少し考えれば分かります」

 

「ハハッ!確かに、そうかもしれないな。…けど、人間ってのはそういう少し考えれば分かる事が分からなくて、間違ったり失敗したりを繰り返すんだろうな…」

 

「―――千年単位で、私は無駄に生きてきた訳ではありませんから」

 

 私の発言に、ハジメの表情が固まってしまいました。

失敗です…流石にこんな言い方をされては彼も返す言葉が見つからなかったようですね。

私的には「よっ!年長者!」と陽気に笑ってくれる彼を想像していたのですが…

沈黙を長続きさせては彼に申し訳ないので、私から言葉を切り出す。

 

「南雲ハジメ…天上の星々より遥か遠くの異世界より現れ、群れを成すに能わず、独りにならざるを得なくなった人。…世界中の誰もが、貴方の在り方を、考えを、貴方自身をどれだけ否定しようとも、私だけは…それでも、と言い続けましょう―――」

 

「………」

 

 隣に座るハジメが、ゆっくりと視線を私の方へ送るのが分かります。

私は夜空を見上げる形で肩に垂れた銀色の髪を指に乗せて背中の方へと流した。

彼に向かって、私の(うなじ)を魅せつけるようにしながら―――

 

「貴方の選択に間違いはなく、その結果として、私は此処に居られるのですから」

 

「ノイント…」

 

…このポーズ、実は以前見た踊り子の方の一瞬の動きを真似てみたのですが…

むぅ、どうやらハジメは私のポーズよりも、言葉に驚いて放心状態になっていますね。

…この際ですから、私から少しアプローチを仕掛けてみますか…

 

「―――それはそれとして、まだ貴方に伝えていない評価はあります」

 

「…そ、そうなのか?」

 

「はい。…寧ろ、こっちの評価の方が私にとって重要な事です」

 

「そんなに重要な事って何だ!?」

 

 仰天したハジメをチラと見てから、静かに決意を固くする。

地面を軽く蹴って、両手で彼の胸を押しながら寄り掛かる形で地面に倒れた。

 

「ノイント、なにをっ―――「ん…」!?」

 

 彼は今普通の服を着ている。だから胸元を締める紐を解いて肌を露わにする。

そこに私は自分の鼻を当ててからスゥと匂いを嗅いであの時の感情を再度確かめた。

…やっぱり、間違いないようですね…

 

「ハジメ…」

「お、おうっ」

 

「私は貴方に特別な感情を抱いている事を、この場で宣言します」

「…っ!?そ、れは…」

 

「貴方の体から発する匂い、私はそれを定期的に欲しています」

「匂いフェチ……だとッッッ!?」

 

 驚愕して口を開けたままそれ以上、いけないと私の肩を掴んで彼の胸板から離される。

少しだけ残念ですが、あまり強引過ぎると嫌われてしまいそうなので従いましょう。

あくまで今回は私が彼に好意を持っていると、それを理解して貰うための行動ですから。

…ですが、匂いフェチとは…?

 

「ハジメ、匂いフェチとはどういう意味ですか?」

 

「え゛っ」

 

「差し支えなければ教えて下さい。匂いフェチとは…」

 

 地面に倒れ込んだままの姿勢で、ハジメは視線をあちこちに泳がせていた。

その様子から匂いフェチなる単語があまり一般的なものではないと推測できます。

しかし彼は私が無言で見つめているのに耐えられず、ゆっくりと説明してくれた。

 

 フェチとはフェティシズムの略称であり、彼の故郷では性的興奮を引き起こす状態やものを差す言葉でもあるといい、性的倒錯(パラフィリア)の方が意味合い的に近いという。

私の今の状態は体臭性愛(オルファクトフィリア)というものに近いようですね。

 

「つまり私は…異常…なのでしょうか、ハジメ」

 

 私が不安そうな顔をして俯いた瞬間、ハジメの手が頭に触れる。

押し倒されたままで優しい顔で笑みを浮かべながら彼は私の髪を撫でた。

背筋がゾクゾクする…けど、嫌じゃない…寧ろ、嬉しい?

 

「…いや、そんな事はない」

 

 彼が言うにはそういった特殊な事物に性的興奮を覚える人間も少なくはないとか。

ただ世間的には精神障害の一種と判断されてしまう為、番いになるような相手以外には秘密にしておくのが良いとのこと。…ふと疑問になって聞いてみる。

 

「ハジメは私の匂いをどう思いますか?」

 

「は、はぁっ…!?それは―――」

 

「それは…何でしょうか?」

 

「…嗅いだりしねえし、わかんねえよ」

 

 顔を赤くしてそっぽを向いた彼を見たら、私の興奮は頂点に達していた。

彼の胸板から後頭部へ手を伸ばし、自身の胸元へ引き寄せる。

服越しに胸の形が潰れて彼の顔が埋まっていくのを見て私は嬉しくなった。

息を荒げてこの先にまで進みたい衝動を抑えて質問する。

 

「ん゛ん゛~!!?」

「ハジメ、今嗅いで…教えてください…っ」

 

 流石に恥ずかしくて真っ赤になった私の顔を今見せることは出来ない。

ハジメは優しいから、きっと私が望んだ答えをくれるでしょうね。

一秒もしない内に手の拘束から抜け出した彼は真っ赤な顔をして怒り出す。

 

「お前なぁ…!こういう事は好きでもない男にするもんじゃ―――」

 

「???私はハジメが好きです、だからこうして確認を―――」

 

「なっ―――!?」

 

「その事について、ハジメからの答えを今すぐに要求するつもりはありません。…ただ、匂いは…私の匂いをハジメはどう思いましたか…?」

 

 真剣な目で私が見つめると、ハジメは息を呑んで暫く答えを考えていた。

心の中で何を思っているのか…予想は出来ますが…敢えて彼から口にするのを待ちます。

 

「~~~っ……甘酸っぱい感じだ……嫌いじゃない」

 

「――――――!!」

 

 この時、私は人間らしくなれた事を心の底から嬉しく思っていた。

心臓の鼓動、熱を帯びた吐息、下腹部の疼き、理性と欲に揺れる四肢と五感。

全てが落ち着くのを待ってから、私はゆっくりとハジメから離れる。

 

「―――そろそろティオ様と交代の時間ですので、失礼します」

 

「……おう」

 

「ハジメ…」

 

「おう…」

 

「良い答えが貰えることを、願っています」

 

 答えを聞かずに私は振り返る事なく寝床へ小走りで走っていきました。

後になって聞いた話ですが、私がいなくなってティオ様が焚火の所へ行くと…

そこには鼻血を出して夜空を仰ぎ見ながら「Oh…」と声を漏らすハジメさんがいたそうな。

 

 




 主人公への好意を面と向かって一番最初に口にしたのが原作勢で敵だった筈のノイントが一番という(オリキャラ含めればエタノが一番最初、彼女が二番手ですかね?)
書き終わってからこれR18扱いにならないよな…?って不安になる作者でした。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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