モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 もはや何も言うまい。


不幸も何かの役に立つ ティオ編

 

「――――――という訳でおぬしの話を盗み聞きしたのじゃが」

「また随分と唐突だなオイ」

 

 ノイントから火の番がティオに変わった直後、そんな事を言ってきた。

ハジメは呆れた表情で「三人もいたのか」と言って焚火に薪を放り込む。

周りに誰もいない事を確認して、彼女はフードを取って素顔を露わにする。

 

「他の二人にも同じ事を言ったが、謝らなくていいからな?」

 

「そう言って貰えるとありがたい。…それで、なのじゃが―――」

 

「なんだ、ティオも俺に何か相談事か?」

 

 何故だか自分がこれから先、多くの相談を持ち掛けられるような気がしたハジメ。

その予感は的中する事になるのだが、今の彼にはまだ知る由もなかった。

ティオは焚火の上に小さな鍋を置いて中に水を注ぐ。

 

「いいや、妾からは何も言わぬ。寧ろおぬしから何か質問が来ると構えておったが」

 

「それならさっきノイントに質問して、それなりに良い答えを貰ったよ」

 

「そうなのか。…ふむ、先を越されてしまったのう」

 

 ティオが考え込む素振りを見せて何か喋るのかと思ったハジメは口を閉ざす。

しかし彼女は何分経っても喋る気配はなく、ハジメの予想は外れた。

焚火の燃える音とティオが手に持った鍋の中で温まる水をかき混ぜる音だけが鳴る。

沸騰直前で彼女は懐から何かを取り出して鍋の中のお湯にそっと沈ませた。

ここでハジメがようやく会話をするきっかけを掴んで質問を投げかける。

 

「それは?」

 

「仙境の茶葉じゃ、本来は別の容器に移して淹れるものなんじゃが。…こうして口を縛った薄い布袋に詰めておけば、湯の中に暫く浸しておくだけで数人が飲む分を作れる――――――妾の世話をしてくれた乳母が教えてくれたのじゃ」

 

「ティーバッグみたいなもんか…」

 

「てぃー?…なんじゃそれは…」

 

「俺の故郷でも、それと同じ要領で手間を省いた茶が飲めるものがあるんだよ」

 

「ほう…興味深いな」

 

 そんな事を話している内に、お湯の中で変化が起きていた。

茶葉の成分が滲んで琥珀色へと変わり、湯気から良い香りが漂ってくる。

ハジメはそれを嗅いだ時、懐かしい記憶が蘇った。

 

(ゲブルト村で師匠に出して貰ったお茶も…こんな香りだったかな…)

 

 ティオがコップ二つを取り出して、鍋の中から綺麗に二人分注いだ。

湯気の立つコップの内一つを手渡されたハジメは鼻で香りを吸い込む

焚火で身体の表面は温まっていたが、それでも平原の夜は冷え込むだろう。

ハジメは舌を火傷しないように気をつけつつコップを傾けて一口飲んだ。

 

 

 フフフ、そうして両手でコップを持っている様を見るとまだまだ子供じゃな。

…まあもしかしたら人間にとってその温度は熱すぎるくらいなのかもしれんが…

妾達、竜人族とは慣れた温度というものが若干違うのであろうな。

 

「ん、美味いよティオ…体が温まる」

 

「そうか。口に合ったのなら良かったのじゃ」

 

 そう言って妾も自分の手にした茶を一口ごくりと喉を鳴らして飲む。

そんな妾の動作に驚いた小僧の顔…やはり人間にはちと熱すぎるようじゃな。

ぷはぁと息を吐きだすと白い湯気がぽわっと口から漏れた。

…乳母がこんなところを見たら、はしたない!と妾を叱りつけたやもしれんなぁ…

 

「―――時にハジメよ、ノイントにはどのような質問をしたのじゃ?」

 

「ん?…あぁ、それな。―――まぁこの際だから話しちまうか」

 

 小僧はごほんと咳払いをしてコップを足下に置きながら話し始めた。

小僧の過去を聞いて、ノイントが小僧をどういう人間だと思ったのか、あの者の口から出た言葉を聞いて、妾も小僧と同じように唖然とする。

 

(…本当にあの者は人間らしくなったのじゃな…)

 

 ところが急に話の途中で小僧は固まり、顔を赤らめて「それだけだ」と話を切り上げた。

…ふむ、その様子から察するにノイントめが小僧に何かしたのじゃろうな。

想像に難くないが…小僧の表情を見て触れない方が良いと察する。

 

「―――しかし、おぬしは随分と周りとの関係に難儀しておったようじゃの」

 

「…もう過ぎた事だ…と言いたいんだけどな…」

 

 これから向かう宿場町ホルアド、そこは小僧が今に至る因縁浅からぬ地であると。

万が一にもかつての友…いや、友と呼べるようなものではないか。

優花と同じ使徒の連中と再会すれば、どうなってしまうのやら…

小僧は恐らく現実的に起こりうる未来を想像して、苦悩しているようじゃな。

どれ、助け船の一つでも出してみようかの。

 

「鬱陶しいのであれば、妾が助力する事も出来るが?」

 

「…流石にそれはリスクが大きすぎる、却下だ。…そもそも、ティオは人前で目立つようなことは控えた方がいいだろ。王国の領内って云うなら猶更な…」

 

「―――フム、言われてみれば確かにそうじゃのう」

 

「…ノイントにも頼るつもりはねえ…。その時は―――」

 

 不意に夜の風が強く吹き荒れた。

小僧の口から語られるもしもの未来が確定してしまった時の対処法。

妾は黙ってそれを聞いていることしか出来なかった。

彼は足元のコップを手に取って、ぬるくなった中身を一息で飲み干す。

 

「―――ングッ!…ふぅ…兎に角、その時は頼めるかティオ?」

 

「…妾は構わぬ…が、問題は他にあるだろうて…」

 

 ノイントはあれで人間らしいところもあるが、冷静に判断を下せる女じゃろう。

しかし問題はミュウじゃ、あの歳の娘にそれを強要するのは…ちと残酷だろうて。

妾が思った事は顔に出ていたのか、小僧はチラと横目に見て真剣な表情で頷く。

 

「他に方法はない。…俺が残した問題の不始末だ、自分の手でケリ着けなきゃならねえ。誰かの手を借りることはしねえ…したくねえ。そうするくらいな俺はいっそ―――」

 

「あぁ、もうよい…おぬしの意思が固いのはその顔を見れば十分理解できる」

 

「―――悪い、どうにもこの手の話になると顔が強張る。……癖になっちまったのかもな」

 

…まったく、妾からすればまだ幼い童が…そのような表情(かお)をするとは残酷じゃのう。

妾にはおぬしを止める権利はない、考え直せ等と口にする事も憚られるだろうて。

だから妾に出来ることはせめて、これくらいじゃ―――

 

「…のうハジメ、もそっと妾の方へ寄れぬか?」

 

「…どうした急に、寒いのか?」

 

「ん…そうかもしれんな。…いや、この歳にもなって恥ずかしい限りなのじゃが…妾にはこうした旅の経験がなくてな?寝床でない以上はどうにも…人肌の温もりが恋しいのじゃ」

 

 半分は嘘、半分は本当のことを小僧に向かって妾は口にする。

旅ではないが、竜人の里を逃れて仙境に移り住むまでは殆ど野宿だった。

故に雑魚寝で固い岩肌の上だろうと、湿った草土の上であろうと眠れる。

しかし…人肌が恋しいと感じるのは本心じゃ。

 

 妾の言葉を疑う素振りもなく、小僧は軽く返事だけして隣に腰掛けた。

荷台から持ってきてはいたが妾が脱いでいた外套を手にして、小僧は妾と小僧自身を包む形で外套を巻きつけてピッタリと密着する。

 

「―――ふふ、温かいのう」

 

「そうだな」

 

「もっと温かくしたいのじゃが、よいか?」

 

「…ご自由に」

 

 言質は取ったのじゃ、後から嫌だとは言わせぬぞ?

手を伸ばして小僧の後頭部を軽く引いて自分の太腿の上に乗せる。

当然、バランスを崩して小僧の体は横倒しになるが、妾もそれに合わせた。

地面で正座しながら小僧の頭を支える枕の役割を果たす。

驚いた様子で目を丸くするが、小僧は抵抗せなんだ。

 

「すまんのうハジメ、妾はいま嘘をついた」

 

「…何をだ?」

 

「人肌の温もりが恋しいのではなく…おぬしに与えたいと思うておったのじゃ」

 

 嘘と本心を混ぜた言葉の後に、大胆な行動を取って本心を嘘で固める。

そうする事で小僧は何が嘘か本当か分からなくなったようで、黙り込む。

或いは別に思う所があったのか妾にされるがままじゃった。

 

「…随分と大胆な事をするんだな、ティオ」

 

「……おぬしのあんな話を聞いたのじゃ、何も感じないほど妾は心を失ってはおらぬわ。のう……他者に自らの弱さを見せまい、と健気に振る舞う童よ…今この時だけは、心安らかに在れ」

 

 妾ではおぬしの母上の代わりになどなれぬであろうな。

母の愛は唯一無二であり絶対、番いも作れておらぬ妾にそれを真似る権利はないじゃろう。

だが、年長者として…少なくともおぬしの心に安らぎを与える事は出来る筈じゃ。

助けられた分の恩返しにはまだまだ程遠いかもしれんがの。

 

 おぬしがその気になれば、妾を慰み者として使うことも出来るじゃろうが…

…いや。そうあって欲しいと願っておるのは…妾自身かもしれんがのう?

 

 

 それから夜明けまでの僅かな時を、ティオとハジメは静かに密着して過ごしたのだった。

彼女は気づかなかったが、横になっている間の彼は冷静そうな見た目とは裏腹に――――――

 

(ひ、膝枕…だとっっっ!!?お、おち、おちおち落ち着け俺、これはあくまで俺のしょうもない昔話を聞いたティオが気の迷いで俺を慰めてくれてるのであって、よくある成人雑誌のような「いやん♡エッチ」な意味は無いんだ!馬鹿か俺は、ティオもノイントと同じ大切な旅の仲間だってのに何を邪な考えを…いやでも温もりを与えたいって……あれか!!流行りのバブみって奴なのか!?近くで人が寝てるって状況で俺にオギャれってか!?やりたくても出来んわそんなん!)

 

―――と思春期真っ盛りの青年らしく、かなり動揺していたのである。

蛇足かもしれないが、ティオは旅に同行する女性の中で象徴が最も豊かである。

密着していた時点で彼の二の腕辺りに柔らかなそれが当たっていたのだ。

更に膝枕と来れば、頭にそれが触れていたのは言うまでもない。

ハジメは内股気味で空を仰ぎながら鼻に詰めたティッシュを取り出しながら叫んだ。

 

「良い朝だなああぁぁ!!今日も元気一杯頑張るぞおぉぉぉ!!」

 

 




 大人の女性が相手なので、ハジメ君も会話の最中はちょっと背伸びしてました。
けどやっぱり中身が性真っ盛りの少年なので、今いるメンバーでナンバーワンのスタイル持ちのティオさんの魅力的ボディを意識せずにはいられないのです。

 そろそろアンケートを締め切ろうかしら…?ネタも煮詰まってきた、状況も悪くない感じに固まってきた…後は作者が賽子をポンと投げるだけ。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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