モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 少し遅くなりました。
いよいよミラボレアスとの戦いが近づき、胸が高鳴る作者で御座います。
モンスターハンターライズの情報とか漁りながら「これ使えるなー」とか思った設定をこっちの作品に組み込んでいこうかと考え中です。

 前回はゲブルト村の愉快な村人達+アイルーキッチンのアイルー達が登場でした。
感想欄でハジメ君がケモナーマスク扱いされてて滅茶苦茶笑いました。

 更にハジメ君がケモナーマスクだった場合の話とか考えたら、姫繋がりでリリアーナか、異世界で初対面だったイシュタル爺さんがジャーマンスープレックスをされてしまうのではと考えて更に草生え散らかしました。

(リリアーナ姫が尻姫ルートかイシュタル爺さん腰やられて退場ルート待ったなし)メインヒロインがユエからシアになりそう…

では、本編どうぞ。今回はちょっと文章が回りくどいかもしれません。
(以前書いたやつをそのまま改良加えず投稿する作者。何故添削をしないのかコレガワカラナイ)



無能と呼ばれた少年の本心と…

 ハジメがモフモフ天国から帰ってきたときには、すっかり日も暮れて辺りは暗くなっていた。

松明が轟々と燃え盛り、ゲブルト村の住人達がその場に集まって宴はまだかと待ちかねている。

ハジメは一人トリップしていた事をアゥータに指摘されて赤くなった顔を手で隠していた。

 

「う、あぅぅ……」

「そんな恥ずかしがる事かぁ坊主?アイルーを初めて見た人なんて大体が同じ事考えて同じ事聞くもんだけどなぁ。……この村にあいつ等連れてきて、撫でたいって村の人殆どが言ってきたぜ?」

 

「それでも……男は人に見られて恥ずかしいって思う部分があるんです……察してください」

「ハハハッ……オーケーオーケー。んで恥ずかしがってるところ悪いんだが―――そろそろ――」

 

 そう言ってアゥータは自分の手に握った木のジョッキを高々掲げて叫ぶ。

 

「この村の発展に!村にやってきた南雲ハジメ!村の鍛冶屋を手助けしてくれた錬成師に!」

「「「「「乾杯ぃ!!」」」」」

 

 宴がついに幕を開けた。ハジメが王国でクラスメイト達と招かれた貴族のパーティーとは違う。陰口を叩いて互いの品格を落としあう貴族のような息苦しさを感じない。ガチャガチャ食器の音が鳴り響き、時には下品な笑い声も聞こえて来たり、誰もかれもが大声で料理と酒を手に話し合う。

 

「うんめぇ!今日のこの肉はなんだ料理長ぉ!」

「ニャ。本日の肉料理は”アプケロース”に”ロイヤルチーズ”と”ホピ酒”と”シモフリトマト”を煮詰めて作った特製ソースをかけてみましたニャ!」

 

「こっちの野菜はなんだチンミぃ!」

「ニャーッ!”クック豆とワカメクラゲの和え物”ですニャ!ドレッシングは3種ありますニャ!”マカセロリの酢漬け”、”レアガーリックとオニオニオンのオイルレーズン和え”

 ”北風みかんとソウルキャビアのマッシュソース”好きに選んで召し上がって下さいニャ!」

 

「おーい誰か酒樽持ってこい!こっちの机のが切れそうだ!」

「あぁん?しょうがないねえ―――――カクシ、ダシ、手伝いな!」

「「ニャ―ッ!」」

 

 周りの勢いに取り残されたハジメは、一応宴の主役であったにも関わらず、机の端に座って、皿に載せたアプケロースを口に運んで、一人感動で震えていた。

そこへジョッキを2つ持って顔を赤くしたアゥータがやってくる。

既に何杯飲んだか彼自身覚えていない。後ろの酒樽を空にしたことだけは確かだ。

 

「よおぉぉうハジメぇ、楽しんでるかぁ!」

「(さ、酒の匂いが……)は、はい…!どの料理も美味しいですよ、アゥータさん」

 

「何だ何だ飲みッ気より食い気かお前さんはぁ!?――――まぁそっちの方がいいかもな!いずれはお前さんがデカくなって、ルゥムの奴を寝台の上で組み伏せて食っちまえ!」

「は、はいぃぃぃっ!?」

 

 思いもしない人の名前が出てハジメはうっかり取り皿を落としてしまう。

そんな彼のリアクションがよほど気に入ったのか、アゥータは更に捲し立てる。

ジョッキに注いだ酒をグビグビ呷り、ハジメの肩に空いた腕を回しながら力説する。

 

「いいかハジメぇ!男ってのはハンター、女はモンスターだ!狩るか狩られるかの駆け引きで、優位を失っちゃあいけねえ!股の間に立派な武器があるんなら!そいつで女をひぃひぃ言わせんのが、男の狩りってもんだ、分かるかぁ!!」

「はひぃっ!」

(完全にこれ酔っ払いの絡み酒って奴だー!?)

 

 何時の間にか肩に回していた手をハジメの尻へと伸ばして鷲掴みにするアゥータ。

ハジメは素っ頓狂な声を上げて顔を赤くするが、アゥータはお構いなしに揉みしだく。

現代でいうところのアルコールハラスメント、そしてセクシュアルハラスメント。

……性別が同じ者同士での合意のないそういった行為がセクハラに該当するかは知りません。

 

(僕にそっちの気はありませんよぉぉぉぉ!!)

 

 すっかり骨抜きにされて、肉食獣の前に放り出された子ヤギのように震えるハジメ。

食いッ気などと勝手に宣っておきながら、ハジメの食が進んでいない事に目敏く気づいたアゥータはニヤリと笑って―――すかさずアゥータが持ってきて机に置いていた、誰も口をつけていない酒のジョッキをハジメの口に突っ込む。

 

「そら飲め飲め!」「んぐっ!?ん”ん”ん”-っ”!!」

 

 吐き出そうとしても、抵抗できないほどの力で抑え込まれてハジメは酒を飲んだ。

当然、未成年の飲酒など許されるはずもないのだが―――異世界だからセーフ……かもしれない。

しかしハジメは酒の味など知る筈もなく……ビールの苦みに咽てしまう。

 

※良い子は法律を守って、二十歳になってからお酒を飲もうね!

 異世界に召喚されるないし転生しても、肉体と年齢に変化がなければ止めようね!

 

「んごほぅ!?―――けほっ、おえっ……!」

「なんだぁ?ビールはダメかぁ?しょうがねぇなぁ~……」

 

 そういって再び机に並ぶ飲み物を見定めるアゥータ。

どう見ても選ぼうとしているのが酒だと分かったハジメが片手を上げて待ったをかけるが、そんな弱弱しい彼の意志が伝わる筈もなく―――今度は赤褐色の濃い液体が注がれた氷入りのグラスを握っている。

 

「これなら平気だろ…ウチの村の特産品、ゲブルト村のアイルーキッチン料理長ウマアジ作”ゲブルトアップル酒”」

 

「んくっ……んくっ……」

 

 もう抵抗するだけ無駄だ―――覚悟を決めてグラスを受け取ったハジメはそれを飲んだ。

そして驚かされた、一口目からリンゴの爽やかな風味が口に広がって、甘さは控えめに口当たりも強くない。

喉を通る際に感じる酒の熱も咽る程強くなく、リンゴジュースでも飲んでいるような気分。

 

「な?いけるだろ!?よぉーしもう一杯!」

「はい!」

 

 ちょっと大人の階段をズルして上がった事で浮かれてしまったハジメ。

アゥータが離れた机から持ってきたゲブルトアップル酒の入った壺と氷を山のように器に入れているのを、笑顔で受け入れて二杯目を口に運んだ。

彼のまともに覚えている記憶は、そこで途切れてしまった。

 

 

「だからぁ!俺ぁ何度も言ってた筈なんすよ!聞いてます!?アゥータさぁん!」

 

「あぁ~聞いてる聞いてる~……」

 

 飲ませ過ぎたとアゥータが後悔するころにはすっかりハジメも酔っぱらっていた。

顔を真っ赤に半開きの眼で半ば睨みつけるようにハジメは愚痴をこぼし続けている。

 

「俺ぁ趣味に生きるッス!だから集団生活とか学校とか大事って言われても分かんねえっスよぉ!―――だっちゅーのに、チンピラ共に絡まれるわ、協調性重んじる馬鹿にいちいちありがたくない小言をグチグチグチグチ言われて、よく分かんねえけど男子に人気な女子がしきりに話しかけてくるってんで余計に嫌われるし……大迷惑なんスよ!分かります俺の苦労!?」

 

「あー……うん。その”学校”てのがよく分からんが、お前さんが人並み以上に苦労を重ねてきた事だけは分かるわ……そら、水飲め水」

 

「んぐっんぐぅぅ……あざーっす!―――そんでこっからが聞くも涙、語るも涙の話なんスよ!」

 

 凡そトータスには普通の子供が通える学び舎などは存在しない。多くが一般家庭で育ち、大人達に働くための知識だけを教わって、貧しい者であれば文字の読み書きが出来ないなどは当たり前のことである。

 

 そんな事を後に知るハジメは受け取ったジョッキの水を一気飲みして咳払いを一つ。

既に宴は最高潮の熱が引いており、各々が机や食器類を片付けて家に帰ろうとしていた。

アゥータだけが聞き手になっていては大変だろうと気遣ったアイテム夫婦が近くの椅子に座る。

二人もハジメが急に態度を変えて語り出した時は驚いたが、既に酔っ払いの戯言と心得ているのか、どんな言葉にも「うんうん、わかるわかる」と笑顔で頷く。

大抵の酔っ払いというものは、そういう反応だけで満足するのだ。

 

「俺ぁ生まれも育ちも地球の日本……って言っても分かんねっスか。……とにかくまぁ、トータスじゃない別の世界からやって来たんスよ……。あ、これマジな話っすからね?酔っ払いの冗談とかじゃなくガチっス」

 

「お、おう……」

 

「そのっスね……。さっきはやって来たって言ったっスけど、ほんとは望んでこの世界に来た訳じゃないんスよ!この世界の神”エヒト”とかいう奴にいきなり魔法で拉致られたんス!―――ってエヒト様エヒト様五月蠅く言ってたイシュタルっつージジイが言ってましたっス!」

 

「―――イシュタル……聖教教会のトップの?」

 

 聞き覚えのある名前を聞いて反応するアイに何度も頷きを返すハジメ。

聖教教会―――その言葉を聞いた一瞬の間、人知れずアゥータの眉間に皺が寄っていた。

テムは彼の話が作り話や与太話にしては出来過ぎていると、話の続きを促す。

 

「やけに偉そうにエヒト様がどうとか、魔人族と戦争とか語りやがって……。マジこっちは知ったこっちゃねえっつー話じゃないっスか!いきなり学校にいって異世界に拉致られるとかもう一昔前のラノベにあるテンプレ展開じゃないっすか!つーか何で目を開けた瞬間に目の前いるのが美少女じゃなくてジジイなんスか!萎えるわ!つーか神の使徒って一纏めにすんなし!」

 

 机をドン!と叩いて理不尽な怒りを吐き出すハジメ。

偶々近くを通りかかったウマアジが驚いて毛を逆立てるが、アイは「彼酔っちゃってるのよ、気にしないであげて」と手を振って無視するように諭す。

するとテムがぴくッと眉を浮かせてハジメの発したある言葉に反応した。

 

 

「神の使徒?……ハジメ君……もしかして君は―――――」

「どうしたの貴方?彼の話が何か気になるの?」

 

 テムの記憶に引っかかったのは、数日前にゲブルト村を訪れた商人リポディーの話だった。

ハイリヒ王国の騎士団が神の使徒を連れて、オルクス大迷宮に挑んだという話。

神の使徒とは聖教教会が崇める神エヒトによって異世界から召喚された勇者達の事とリポディーが語っていた事を思い出すテム。

明らかにハジメの話は酔っている事から信憑性には欠けるが、リポディーの話と繋がる。

 

「……ん?どうしたっスかテムさん??―――ゥィヒッ!」

「ハジメ君……聞いてもいいかな―――――……君は王国で噂の”神の使徒”なのかい?」

 

 話を聞いていたアゥータとアイの目が大きく見開かれた。

神の使徒の噂は、帝国領の辺境にあるゲブルト村にまで伝わっている。

神の使徒が現れて魔人族との戦争が終わったところでモンスターの被害が収まる訳でもなく、村の生活が豊かになる訳でもないと、村人達はあまり関心がなかった。

しかし目の前の少年―――ハジメが神の使徒であるかと、テムは真剣に聞いているのだ。

 

「あ、貴方ってば酔ってるの?幾ら何でもそれは―――」

 

 アイがテムの肩を揺さぶって半笑いで問いかけるが、テムは表情を変えない。

ハジメがどうやってゲブルト村にまで来たのか、詳しい事情を知っているアゥータはその可能性を否定しきれずに、ハジメの言葉だけを待っていた。

暫く呆けた眼で三人を見つめていたハジメは、当たり前といった様子で答える。

 

「そうっすよ。―――つっても俺はそれが嫌で王国からケツ捲って逃げたんスけどね」

 

 アイはあまりにさり気なく「そうだ」と答えたハジメに驚いたまま固まっている。

テムはそれを聞いて「そうか……」と小さく頷くばかりで、それ以上の言葉を発さない。

只一人、その答えに至るだろうと予想していたアゥータだけが彼に聞いた。

 

「なぁ坊主………何でお前さんが逃げたのか、理由を聞かせてくれるか?」

「あ、アゥータ君?それは流石に―――」

 

「………いいっすよ。話しても胸糞悪いし、酒が不味くなるかもしれないっすけど……」

「構わねえ……。―――坊主の本心で好きに話してくれ」

 

 

 そこから先は少し前までの理不尽な愚痴を漏らすだけのハジメとは打って変わって、酒に酔って顔を赤くしながらも素の自分というものを徐々に表に出したハジメが、錬成師という天職と一般人並のステータスで魔人族との戦いに役立たない無能とクラスメイト―――神の使徒達から馬鹿にされていた事を淡々と語り出した。

 

 無能と罵られる事は大した苦痛にならなかったと語るハジメ。

無能と罵る者達と寝食を共に過ごさなければならない事が一番の苦痛だった。

故郷へ帰りたくても、その方法が分からないハジメは耐える事しか出来なかった。

 

 その本心を口にした時、不意にハジメの視界がぼやけてしまう。

酒のせいで微睡んでしまったのかと目を擦って―――視界がぼやけた理由が知らず知らずのうちに瞼に溜まった涙だと知るハジメ。

 

「あ、りゃ……?なんだこれ……俺、泣いて…?」

「ハジメ君……辛いのなら、言わなくても「アイさん、続けさせてくれ」アゥータ君!」

「アイ。今は静かに聞いてあげよう……」

 

 涙を流したハジメを見ていたアイが心配そうに止めようとするのを、アゥータが阻んだ。

しかしテムもアゥータに賛同してアイを諫める。ハジメは零れる涙を拭いながら再び話す。

 

 運命の日となった宿場町ホルアドでの一夜。

ハジメはあの時の事を思い出さないようにしていたが、語れば語るほど、あの時の記憶が鮮明に…手触りが、音が、言葉が、匂いが、目に映ったものが蘇る。

ハジメの体が震え、目から溢れる涙が大粒へと変わっていく。

 

「俺がこの世界にいる意味はあるのかなって思って!誰にも必要とされなくて、自分勝手な望みだけ叶えようなんて馬鹿やって、助けられて、村の人達に迷惑かけて!今も縋ろうとしてる……!」

 

 そこまで言い切ったのがハジメの抑えていた感情の限界だった。

堰を切ったように溢れて来る涙と喉から漏れる嗚咽が、彼の溜まっていた不安を吐き出した。

 

 ハジメは村で救われた事に感謝しながらも、それを申し訳なく感じている。

人間不信―――とまでは言わないが、周りに嫌われてばかりだったハジメは、他人の顔色を窺って無意識に被害妄想をしていた。

 

 救ってくれた村の人たちが、ほんとはハジメに迷惑しているんじゃないか。

人の浮かべる笑みが自身への嘲笑と錯覚して、聞こえる言葉の羅列が罵倒の幻聴に聞こえる。

そして―――そんな風に考えてしまう自分が、どうしようもなく最低な人間だと思ってしまう。

この世の不幸を一身に背負ったような顔をして、見苦しいったらありゃあしない。

今すぐにでも人の前から消えてしまいたい…。

 

 三人は悲痛な面持ちでハジメの話を聞き続けていた。

アイはハジメの本音に思わずもらい泣きをして、夫のテムに抱きしめられている。アゥータは安心しきった笑みを浮かべて、そっとハジメの肩に手をのせる。

 

「心に溜まってたもん……吐き出せたか、坊主?」

「………ぐずっ…ズズッ…あざっす……!」

 

 酒のお陰だろうとハジメはこの時思った。

親から聞いた話だったか、酒に酔った人は意外と本音をポロっと口にしやすいのだ。

そして個人差はあるが、酔った人の中には泣き上戸になる者も珍しくないという。

 

 アゥータがこの為だけに酒を飲ませたのかは分からないが、結果的にハジメは自分の本心を人に話す事が出来た。……少し、胸の中がスッとした。

泣きながら鼻詰まり声で感謝するハジメ。

 

 そんな時だった、村人の一人が大声を上げて樹海の方を指さす。

 

「ルゥムの嬢ちゃんが帰って来たぞー!!」

 

「おぉ?もう宴も終わっちまうってのに、今頃帰ってきやがったかあんにゃろう!……よし坊主!お前になら効果覿面の酔い覚ましだ、ルゥムの野郎に慰めて貰ってこぉい!」

「……うえっ!?ちょ、アゥータさん待っ――――」

 

 椅子から無理やり立たされたハジメは樹海に続く道へと千鳥足で走らされる。

明らかにアプトノスが牽引するような巨大な荷車を()()()()()()歩いて来たルゥム。

荷車には、鳥竜種と思しきモンスターが寝息を立てて縛り付けられていた。

ライセン大峡谷付近の荒野でハジメを襲ったランポスとは比較にならない、圧巻のサイズ。

 

 しかし驚いているのはハジメだけ。

集まった村人達は気に留める事なくルゥムへと話しかける。

 

「ルゥムちゃん遅かったねえ!怪我はしてないね?」

「……(こくっ)」

 

「後ろのそいつぁ眠鳥”ヒプノック”かい!?一人で捕まえたのかい!」

「……(ふるふる)」

「おっとそうだったね、オトモちゃんを忘れてたよ!」

「ニャ!でも僕は旦那さんのサポートだけで、一人でやったのと同じニャ!」

 

「随分前から鳥竜種の鳴き声が作業場の近くで聞こえてたから不安だったって若手の連中が言ってたのはこいつだった訳かい!よくやってくれたねえ、疲れただろう?ご飯、食べていきなよ!」

「……(コクコク)」

 

 太刀をオトモに預けたルゥム。

村人達は彼女とオトモの頭を交互に撫でて出迎え、残っている宴の席へと連れていく。

ウマアジ率いるアイルーキッチンのアイルー達が新しい料理を作る為に村人達の足元を四足で駆け抜けると、ようやく村人達の一番前に出れたハジメ、彼を連れてきたアゥータがルゥムに声をかけた。

 

「お、お帰りなさい!ルゥムさん!えっと……お仕事、お疲れ様です!」

「……(こくっ)」

「お疲れさん、あの眠鳥……”変種”だな?そりゃあ捕まえるにしても手間だったろうな」

「……(こくっ)」

 

(やっぱり喋らないんだ……でも、村の人達も気にしてなさそうだったな……)

 

 

 ハジメは宴の席へと歩いていくルゥムをじっと見つめてしまう。

彼女の恰好は朝からずっと変わらず肌の露出が多い防具のままだった。心なしか男衆の視線が彼女の胸や太ももに吸い寄せられているが、殆どの男が既婚者であった為、鬼のような形相の嫁に耳を摘まれて涙目になっていたりする。

テムは「僕の目には君しか映らないよマイハニー」と涙の止まったアイを笑わせようとしていた。

 

「………!!」

 

 ルゥムは何も言わずに椅子に座ろうとしたが、突然立ち上がってハジメに顔を向けた。

周りもそんな彼女の様子に驚いて、ハジメは何か気に障ったのかと肩を竦ませて後ずさる。

 

 じっとハジメの顔を見つめたルゥム。彼の眼は泣いた後で赤く腫れており、頬には涙を拭いた跡がくっきり残ってしまっていた。息がかかりそうな距離で見つめる彼女に、ハジメはまた顔を赤くして、彼の心臓は、自身の胸板に当たりそうな彼女の豊満な胸を覆う白い毛皮の胸当ての柔らかな感触に性的興奮を覚えて高鳴る。

 

「…………」

 

 おもむろにルゥムはハジメの顔に向かって手を伸ばし―――その頭を優しく撫でた。

ざわざわと村人達の驚きが増す。彼女がこういった事をするのを初めて見たようだ。

理由が分からずに困惑するハジメに対して、アゥータが何も言わないルゥムの代わりに答える。

 

「お前が泣いてたのをルゥムも気づいたみてえだな。そいつなりに心配してくれてんだろ」

 

「………?」

 

 頭を撫でながら、ハジメに向かって首を傾げるルゥム。

「元気になった?」そう言っている気がして、ハジメはゆっくりと頷く。

するとルゥムは手を引っ込めてハジメから離れる。

 

 そこへ、料理を作り終えた五匹のアイルー達が巨大な盆を手に現れた。

ハジメは最初見た時、それが目の錯覚かと思って何度か瞬きをした。

だが目の錯覚ではない。アイルー達はパーティー会場で複数人が切り分けて食べるような巨大な肉の塊を中心に所狭しと詰め込んだ野菜や果物を山盛りにした盆をルゥムが座った椅子の前に置く。

 

「……えっ……アゥータさん、あれルゥムさんの……えっ?」

「言いたい事は分かるが坊主。その心配は不要ってもんだ……あれくらい俺達は普通だからな」

「俺達――――――えっ?」

「………(ぺこり)」

 

 両手を合わせて小さくお辞儀をしたルゥム。

直後、肉の塊から突き出た骨を掴んで肉へと齧り付く彼女を見て、ハジメはショックを受けた。

あの小柄な体躯で可愛らしく小動物のように黙々と食べるのかと童貞みたいな妄想をしていた彼の眼前で、肉の塊がどんどんと消えていく。野菜や果実もいつの間にか姿を消していた。

更にルゥムはアゥータの持ってきたジョッキを無言で受け取り……一息で中を空にする。

 

 食事が始まったのはつい数分ほど前。

いま机にはその食事を載せていた盆だけが残っていた。肉は欠片も残さず骨が真っ白にテカテカ光るまでしゃぶり尽くされて、野菜や果物は葉っぱ一枚、種一つとして残っていない。

ルゥムのお腹は少しだけぽっこり膨れているだけで、彼女は変わらず無表情。

少しだけ食事を終えて満足しているのか、膨らんだお腹を擦っている……無表情で。

 

(あの細い体の何処にあの量の食事が入ったんだ!?)

 

 酒が回り始めてベッドで眠りに落ちるまで、ハジメはその疑問だけをずっと抱えていた。




 アイルーキッチンに通うハンターのオカルト現象
何故か山盛りにされた料理をペロリと平らげてクエストにいけるハンター。
しかし質量保存の法則をあまり無視する訳にはいかないので(建前)
ルゥムのお腹をちゃっかり膨らませたとか書いた作者でした(只の性癖暴露)

感想とか待ってまーす!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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