モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 キャリーされて素材だけ回収して悩み打ち明けるハジメ君がいた……(読み返して)


神の使徒救出作戦(第十階層から第十五階層)

 

(…結局、一発も撃たないまま第十階層を越えてしまった…)

 

 松明を構えてマリアンナの後ろに着いて行きながら右側を警戒するハジメ。

ルゥムが歩調を合わせて隣を歩き、やや後ろからミッドガルが付いて来ている。

オルクス大迷宮に入ってからハジメがやった事と云えば、精々が剥ぎ取り。

 

・リノプロスの甲殻5個

・リノプロスの頭殻2個

・生肉3個

・モンスターの体液2個

・カンタロスの羽2枚

・カンタロスの甲殻2個

・カンタロスの頭1個

 

 彼がルゥムに尋ねたところ、使い道がないからと素材を全部譲ってくれたのだ。

マリアンナ、ミッドガルもそれらは必要ないと、全て死体は放置している。

大迷宮内に残していおいても大丈夫なのかハジメは心配になったが…

 

「大迷宮内にも腐肉食動物(スカベンジャー)が棲息しているようですし、心配は要りません」

 

 スカベンジャーとは生き物の死骸、糞尿を主食としている動物のことを指す。

小さな生き物で例を挙げるならグソクムシやタテハチョウ、鳥類のハゲワシやコンドル。

ライオンやハイエナもそういった食性を持つ動物なのだ。

 

 トータスに於けるスカベンジャーの役割を持つのは上記の一般的な動物(と言っても大半がモンスターに食われて滅多に見かけることはないが…)に加え、ガブラスやギィギ、クンチュウといった小型モンスターが大型モンスターの捕食した死体の残りを漁って自然のバランスを保っている。

 

「流石にギルドの連中も、外より未知の大迷宮に死体を回収しには来ねえさ」

 

「私達はギルドに帰還後、正確に狩ったモンスターの種類と数を報告すれば問題はありません」

 

「………(こくこく)」

 

「成程…勉強になりますっ」

 

 まだまだハンターとしては未熟であるが故に、訓練所で教わっていないことは先輩に教わる。

松明を照らしながら人の気配がないかの探索を続けるハジメの熱心な様子にマリアンナは微笑む。

一方で後ろをのんびり歩くミッドガルは退屈そうだった。

 

「…ところでよぉ…さっきからリノプロスとカンタロスしか見てねえんだけど…」

 

「…この辺りに生息しているモンスターは二種類だけのようですね…」

 

「もしここら辺が住処なら、もっと数がいてもおかしくないと思うんですが…」

 

 ハンター達の疑問は尤もだった。

大迷宮は滅多に人が足を踏み込まない未知の環境だったが、モンスターが棲息していた。

しかも捕食者である肉食系の大型モンスターの気配がない時点で繁殖は容易の筈だ。

にも関わらず、階層内には数匹がうろついている程度で巣を作っている気配もない。

 

 第十一階層に降りると、近くで水の音がした。

ハジメが松明で音のする方を照らすと、岩の隙間を水が流れている。

マリアンナは手を突っ込んで水を救い、一度口に含んでから吐き出す。

 

「…人体に影響のあるような成分が含まれている様子はありませんね。…しかし、地下にこれほど澄んだ水が流れているのも気になります…」

 

「ホルアド周辺の岩山…あそこら辺が水源地なんじゃねえか?それが下流に伝わって近くの川に流れてんのと、どっかに隙間が出来て、この大迷宮の地下に向かって流れてるとかどうよ?」

 

「可能性としては考えられますねサー。…問題はそれが自然に因るものなのか…」

 

 ハジメはそれを聞いてふと幸利の話していた解放者、大迷宮の話を思い出した。

大迷宮が解放者達の隠れ家でもあったことから、地下にそれらを作るのなら定期的に空気を循環させる必要があるし、水が無ければ植物や虫、モンスターが生きていける筈がない。

しかしそれを今目の前にいる三人に順を追って説明することは出来ない。

歯痒い思いを隠しつつ、ハジメはそこを離れて周辺の捜索を続けた。

 

 

 第十二、第十三階層では甲虫カンタロスが数匹襲ってくるも、ルゥムがこれを瞬殺。

鬼哭斬破刀にかかれば下位の小型モンスター程度、一振りで事足りるのだ。

剥ぎ取ることも出来ずバラバラに飛散するカンタロスの姿をハジメはぼんやり眺めていた。

 

(あのレベルまで俺が至るのは……どれだけの努力が必要なんだろう……)

 

 無理だと諦めるつもりは毛頭ないが、それでも越えられない壁のように感じてしまう。

紫電迸る刃についた甲虫の緑色の体液をサッと拭き取って、ルゥムが戻ってくる。

 

「お疲れ様です、ルゥムさん。すいません、全部任せちゃって」

「……?」

 

 労いの言葉をかけて申し訳なさそうに苦笑するハジメに対し、ルゥムは首を横に振る。

彼女ほどの実力者ともなればこの程度の処理に大した苦労もしていないのだろう。

しかし彼の表情にどこか暗い影が差しているのは、別の理由がありそうだ。

第十四階層に続く階段を前に、足を止めて振り返ったマリアンナが提案する。

 

「…この辺りでいったん、足を休めましょうか」

 

「は、はい!…あ、でも…俺に気を遣ってくれているのなら、休憩は無くても大丈夫です」

 

「ハハッ、強がるなよハジメ。肉体的に大丈夫でも、お前いま精神的に不安定だろ?」

 

「……やっぱり、そう見えちゃいますかね……」

 

「おうバッチリ見えるぜ!なぁルゥム?」

「………(こくこくっ)」

 

「…決まりですね、では…」

 

 マリアンナに誘導されて、座り心地の悪くなさそうな岩に四人は腰掛けた。

スタミナが僅かに減っている事に気づいたハジメはアイテムポーチを漁って携帯食料を出す。

他の三人も各自で用意してきた携帯食料を手に、各々が無言でそれを口にする。

 

「ん…」

「ぐ…んくっ」

「あぐっ、はぐっ」

「……(モソモソモソ)」

 

 マリアンナとミッドガルの携帯食料とハジメの携帯食料、ルゥムの携帯食料はそれぞれ別物だ。

二人のは穀類を粉末状にしたものを固めてパンかクッキーのように焼いたもの。

ハジメのはアプトノスの肉を干して乾燥させただけのもの。

ルゥムのは芋類に干した果物を練り込んだペースト状のものだった。

 

「……んで、直球で聞いちまうけどよ。ハジメお前さん何があったんだ?」

「自分が一番早く食べ終わったからと言って、唐突に喋らないで下さい、サー」

 

 休憩の間の沈黙を破ったのはミッドガルだった。

ハジメは干し肉を食べる手を止めて、俯いて暫し躊躇う。

彼の言う「何があった」とは使徒との関係についてだ。

 

 マリアンナが記憶していた使徒である浩介と知人のようだったハジメ。

そんな彼が使徒を助けにいくという事に対し見せた嫌悪の表情。

何かあると思うのは当たり前だが、普通は彼のように直球で聞いたりしないだろう。

興味本位といった様子のミッドガルを、厳しい目で見るマリアンナ。

 

「だってよぉ~気になるじゃん。俺ずっと気にしてんだけど!」

「貴方の個人的な興味だけで、本人が喋ろうとしないことを無理やり聞くというのは―――」

 

「…マリアンナさん。大丈夫です、喋らなかったのは秘密にしたいからとかじゃなくて…」

 

 一度大きく息を吐いて、目を瞑って心の整理をつけてから、ハジメは語り出した。

自分がかつて使徒だったこと、そこから逃げ出して、集会所で話した自身のその後に繋がること。

使徒でいた時に、周りから無能と嘲笑われて酷い扱いを受けたことも隠さず打ち明ける。

三人は黙って話を聞いていたが、語り終えた途端にミッドガルが言った。

 

「そら助けたくないって思うのが普通だわ」

 

「…サーが助けた彼が貴方に対し、どのような感情を抱いていたのかは分かりませんが…少なくとも他の使徒は役目から逃げた貴方を良く思っていないと…王都で貴方を探していたのは―――」

 

「俺を心配しているように見せかけて、出てきたところをとっ捕まえて私刑…って感じでしょう。―――まぁ、半分は俺の被害妄想が入ってるんで…本当にそうなのかまでは分かりませんけどね」

 

 額に手を置き、やや乱雑に前髪を掻き上げながら自嘲気味に笑うハジメ。

そんな彼に対してルゥムは携帯食料を膝に置いた状態でスッと手を伸ばした。

慰めようとしてくれているのか、彼女の手が頭に置かれてハジメはぐっと泣きたいのを堪える。

 

「とにかく、この仕事はあくまで通りすがりのハンターとしてやる…それだけです」

 

「おう、それで良いんじゃねえの?いざとなったらクエリタしちまえ」

 

「貴方が本気で辛くなったら、後は私達が引き受けますので。何も問題はありません」

 

 二人からの提案を受け入れても良かったが、乗り掛かった舟だ。

こうなりゃヤケクソ気味にでも、とことんやらなければ自分の気が済まない。

ハジメはバシッと自分の両頬を叩いて立ち上がり三人に改めて頭を下げる。

 

「俺の愚痴を聞いて貰って、ありがとう御座います!!」

 

「ハハハハッ!気にすんな、戻ったら一杯奢ってくれりゃあ良いさ!」

「助け合いの精神も時には必要ですから、気にしないで下さい」

「……(こくっ)」

 

 

 第十四階層に降りて暫く歩いていると、マリアンナが立ち止まって地面に耳を押し当てる。

下の階層…より更に下から急ぎ足で上がってこようとする十数人の足音が聞こえた。

それを遮るように他の三人の耳にまで響いたのは、甲高い飛竜種の咆哮。

 

「―――この鳴き声は、聞き覚えがありますね?サー」

「おう、雪原帰りに立ち寄った洞窟で百体ほど狩ってきたからな」

 

「…この先に何がいるんですか…?」

 

「本来このような温暖な場所に生息する筈のない毒怪竜…ギギネブラですよ」

「間違いねえ。……いや、それ以外にも何か混じってやがるな……なんだ?」

 

 ハジメはその名前を聞いて、モンスター図鑑に記載されていた内容を思い出す。

不気味な白い体表と真逆で内側は血のように赤く、毒を吐く飛竜として知られている。

原始的な飛竜種の骨格…つまりは轟竜ティガレックスのような姿形をしているのだ。

 

 あの時の敗北を思い出し、今度は一度のミスも許されないとハジメは身震いする。

彼が緊張でごくりと生唾を飲み込むと、ルゥムが優しくその肩に手を置いた。

 

「ッ…ルゥムさん…」

 

「………(こくっ)」

 

 心配させまいとしている彼女の心の声が、手の温もりから伝わってきた。

何時までも心配されるばかりではダメだと自分に言い聞かせて、ハジメは力強く頷いた。

あの時は一人で挑んで、テレサベルに助けられたけど…今度は違う。

 

「さぁて、竜が先か?よく分からん何かが先か?それともお目当ての連中かぁ?」

 

「最優先すべき目的は人命救助です。モンスターとの交戦の際は各自の判断に委ねます」

 

「……いきましょう!!」

 

「………!」

 

 四人は一気に第十四階層の階段を駆け下りて、第十五階層へと向かった。

斯くして役者は出揃い、逃れられぬ運命の時は刻一刻と迫りつつあるのです。

彼はそれにまだ気づいていません。

気付いた時には、きっと…全てが終わっているから。

 

 




 対人戦やらせたら偵察として超有能なマリアンナ姉貴でした。
さて……辛うじて餌にならずに済んだ連中が、どんな反応をするのか……

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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