モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 サブタイトルはイスラム教の聖典コーラン(クルアーン)より抜粋。


悪人は、自分の重荷を背負うだろう 前編

 

 ハジメが再会した神の使徒(クラスメイト)は前より人数が減っていた。

パっと見て良かれ悪かれ印象の強い奴が一人、その取り巻きも一人見当たらない。

一番顔を会わせたくない相手が、都合のいい事に二人とも気を失っている。

 

 一瞬だけ「ザマァ見ろ」と笑う悪意全開の自分がいたことに気づいて、ハジメは自分を戒める。

関係を絶つと自ら決めた以上は、彼らに何が起ころうとも無関心でいようと決めたのだ。

唖然とした表情でハジメ達を見る使徒達の中で、ハジメは野村に向かって話しかけた。

彼ならハジメと面識があまりなく、気づかれないと思ったからだ。

 

「そこのお前、生き残ってるのはこれだけか?」

 

「……あ、あぁ……あとの三人は、魔物にやられちまった」

 

(三人…?……あぁ、護衛で来ていた騎士か)

 

 健太郎の言葉を耳にした騎士が顔を僅かに逸らしたのを、ハジメは見逃さなかった。

短く「そうか」とだけ返して彼の背後で担架に乗せられて意識のない綾子を見る。

 

「彼女は?何があってこうなった?」

 

「…デカい蜘蛛の魔物に、脇腹を切られて…多分、毒かなんかだと思う」

 

「………ルゥムさん!」

 

 ハジメは少し考えを巡らせた後、物は試しとルゥムに声を掛けた。

彼女に手持ちの回復アイテムは何を持ってきているかと聞くと、とんでもないものが出てくる。

 

・高速回復薬 10個

・回復薬G2 10個

・生命の粉塵 3袋

・生命の大粉塵 3袋

・解毒の粉塵 3袋

・状態回復の粉塵 3袋

・ウチケシの実 10個

・漢方の粉塵 3袋

 

「ガチガチじゃないですか…ていうか俺が見た事ないものまで混じってるんですがそれは…」

 

「………?」

 

「…あぁいや、ツッコミ入れてる場合じゃなかったか…解毒の粉塵、お願いできますか?」

 

「……(こくっ)」

 

 これがトップクラスのハンターの持ち物なのか眩暈を覚えるハジメと入れ替わって前に出たルゥム。扇情的な見た目の彼女に、思わず健太郎は赤面する。

しかし彼女が粉塵が入った袋を取り出して辺りにまき散らそうとするのを一人の声が遮った。

 

「な、なに訳分かんねえことやってんだよ!いいから治癒魔法かけろよ!」

 

 礼一だ、彼の言葉にルゥムは手を止めて無表情で振り返ったルゥムは首を傾ける。

それを見てハジメが舌打ちして「ルゥムさん、構わずやって下さい」と言って礼一の方へ歩く。

身長二メートルはあるハジメに見下ろされ、流石の礼一も怯む。

 

「……な、なんだよ……!」

 

「……分からねえなら黙ってろ、死にかけのクズが」

 

「なっ―――!?」

 

 内心「言ってやったぜええ!イェア!」と荒ぶる喜びの舞いを抑えつつ、ハジメは踵を返した。

その間にルゥムは袋の中から少し青白い粉を手に摘まんで空中にまき散らす。

 

 担架に乗せられていた綾子の脇腹に粉が触れると、体内に侵入した毒が一瞬で消滅する。

少し離れたところにいる礼一や良樹、龍太郎、光輝の四人もその効果は伝わった。

 

「お、おぉ…?なんだこれ…体の怠さが消えた…」

 

「ッ…光輝君の顔色が、心なしか良くなったよ!」

 

 龍太郎が片腕で自身の体を弄り感嘆の息を漏らし、意識のない光輝に代わって恵理が明るい表情を浮かべて喜びの声を上げる。

すかさずルゥムはアイテムポーチの中から生命の大粉塵を取り出して空中に振り撒いた。

失った手足はどうにもならないが、身体についた傷痕が物凄い速さで塞がり、身体に活力が戻る。

そんな中で、脇腹の傷も塞がった綾子が瞼を震わせて意識を取り戻す。

 

「……ぅ……っ。……あ、れ?ここは―――」

「綾子っ!?綾子ぉっ!!」

 

「真央…?それに皆どうして…」

「あy―――辻っ、お前もう大丈夫なんだな!?」

 

「の、野村君…?…うん、なんにも…私、どうしてたの?」

 

 担架から降りて、まだふらつく体を真央に支えて貰いながら綾子は何があったのか聞く。

ハジメはもう十分かとその場を去って、ルゥムも彼の後についていった。

…絵面だけ見ると彼が彼女の先輩であるかのように振る舞っているが、実際は真逆である。

体力が全開して安心しきっている良樹とは違い、礼一だけはハジメの背中を睨みつけていた。

 

 マリアンナとミッドガルの下に戻ると、メルドも傷が癒えたのか二人に深く頭を下げている。

四人が来た理由を尋ねられて、ミッドガルが集会所前で倒れていた浩介のことを話す。

それに反応したのは浩介の所属するパーティーのリーダーである重吾だった。

 

「浩介は…!あいつは無事なんですかっ!?」

 

「心配すんな、薬飲ませて今は安静にさせてるよ。峠は越えた」

「毒が体内の奥にまで回っていたので、どんな後遺症が残っているか分かりませんが…少なくとも命に別状はありません。戻る頃には動けるようになっていると思いますよ」

 

「ッ……!よかっ、た…!」

 

 声を上げないように口を閉ざして、重吾は両目からポロポロと涙を零す。

ミッドガルが軽く笑って「その涙は、再会した時までとっておけよ?」と言う。

マリアンナを四人のリーダーと思ったのか、メルドに続いて雫も頭を下げた。

 

「本当に、なんてお礼を言ったら―――」

 

「感謝の言葉は不要です。敢えて私は厳しいことを言いますが、あくまで仕事としてあなた達を助けに来たに過ぎません。報酬はしっかりと要求しますので、そのおつもりで」

 

「あぁ…王国騎士団長としてそれは必ず支払うと約束しよう!」

 

 これでめでたしめでたし、一行は大迷宮から脱出できるのでした。―――――――――――――――たった一人の男の、うっかり発言がなかったら……ね。

 

「そんじゃ…マリアンナ、ルゥム、()()()!引き上げるぞ…って……やべっ!?」

 

「っ!!!サー・ミッドガルッ!!

 

 マリアンナが声を張り上げて掻き消そうとするが、それはあまりにも遅すぎた。

安堵の表情を浮かべた使徒達の表情が驚愕に変わり、視線が一点に集まる。

 

 視線の先では「あぁ…マジか…畜生ガッデム…」と額に手を当てて項垂れるハジメ。

マリアンナが憤怒の表情でアイアンクローをミッドガルの頭に食らわせた。

 

「あだだだっ!?わ、わりぃ!マジで今のはワザとじゃイダダッ!?」

「貴方という人はぁぁ――――――!!」

 

「………?」

 

 ルゥムが首を傾げると、ハジメの方を見たまま一歩、二歩と近づく人影が二人。

メルドと雫だ、ハジメは内心「逃げてえ…」と思いつつ、逃げる先の第十四階層に上がる階段は位置的に二人の方にあると知って逃げても無駄だと悟る。

 

「……まさか……お前……あの坊主……なのか?」

「……貴方が……南雲……君?」

 

「……………はああぁぁぁぁぁ~~~

 

 問いかけにしばらく間を置いてから、文字通りクソデカ溜息を吐いて再度項垂れるハジメ。

バレてしまった以上は面倒事は避けられないと最悪の状況に直面する覚悟をした。

そして…偶然(うっかり)に始まった不幸が、更に必然の不幸を呼び起こす。

 

「……いま……なんて、言ったんだ…雫…?南雲…だって?」

 

「っ!?…光…輝っ」

 

(…ミッドガルさん、やっぱ一杯奢るの無しで良いですよね…?)

 

 生命の大粉塵の影響で体力が回復したことで一番重傷だった光輝も目を覚ました。

この場に於いてハジメに唯一の救いがあるとしたら、香織ただ一人だけ目を覚ましていないことだが、それでも最悪の状況になってしまったのは変わりない。

少しミッドガルを責めたい気持ちがあったものの、ハジメは別のことを考えた。

 

(言霊…うん、そうだな…異世界だし、神秘的な効果がここに来て謎パワーを発動させたことにしよう。ミッドガルさんを責めても仕方ないよな、だってこうなるかもってずっと口にしてたんだからな、本当になっちゃったよ俺のバカヤロウ)

 

 否、考えるというよりは思考停止と現実逃避である。

 

 




 うっかり属性が付与されていたサー・ミッドガル兄貴、痛恨のミス。
なおハジメ君的には「何でやらかしたぁぁ!」と思う気持ちはあるものの、それに関しては特に怒ってはいませんでしたとさ。
そして、お目覚め勇者君……さぁ、過去の因縁にケリをつけるぞぅ!(やけくそ)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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