モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 実はオブラートに包んで書いてありましたが、八重樫さんのダイスロール結果…
あれは正しくは「精神的に追い詰められて理性が崩壊する」ことになります。
そして今回はその負債を回収することに……合掌


悪人は、自分の重荷を背負うだろう 中編

 

 光輝が目を覚ました時、周りには見知らぬ男女四人組がいた。

意識がぼんやりしていた彼の目を覚まさせたのは、ハジメと呼ぶ男の声。

担架の上で上半身を起こした彼が目にしたのは、明らかに以前の南雲ハジメとは姿形がまったく似ていない銀髪赤目の青年だった。

 

「お前が……南雲…なのか…!」

 

 光輝の問いかけに対し、ハジメはその場から動かずに沈黙を貫いている。

神の使徒達全員が呆然としている中、ハッと我に返った雫が叫ぶ。

 

「光輝っ、今はそんなこと追及してる場合じゃないでしょ!?みんな怪我をしてるし、香織だってまだ目が覚めていないのよ?話なら大迷宮を出てからでも―――「雫は黙っていてくれっ!」っ」

 

「……その兜を取れ、南雲……」

 

「………チッ」

 

 ボーンヘルムで辛うじて顔半分が隠れているから断定が出来ない。

それを指摘されたハジメはやっぱり隠し通せないかと舌打ちして頭防具を取る。

銀色の髪に赤い瞳、髪は少し伸びているが…かつての南雲ハジメの面影は微かにあった。

 

「……やっぱり、お前なんだな……」

 

「――――――それで?俺だから、何だってんだよ天之河」

 

「……お前、皆に言うべき事があるんじゃないのか……?」

 

「はぁ?何も言うことなんて無いだろ。……いや待てよ、お前まさかとは思うが……メルド団長から俺が辞めた理由…聞いてなかったのか?つーか言ってなかったのか、メルドさんよぉ」

 

 言葉の端々に怒りの色を滲ませていく光輝に対し、ハジメは嫌そうな顔をして首を傾げる。

会話の相手をいったん光輝からメルドへと移したハジメは自分がいなくなった後の事を尋ねた。

既に優花から教えて貰っているが、この場で全員に同じ話を聞かせて反応を見る必要があった。

彼の軽薄な言葉遣いにも怒りが含まれていると察して、メルドはすぐに苦い顔をして答える。

 

「―――お前が他の使徒から酷い扱いを受けている事に苦しんで、いなくなったことは伝えた」

 

「メルドさん!!俺は認めてませんよ!!?」

 

 メルドの言葉のあとに続く形で光輝が吠えた。

雫は止めたかったが、龍太郎が無言で彼女の眼前に手を出して制する。

 

「南雲ッ!お前が辞めた理由は知っている!だが俺はそんなことで納得なんかしないぞ!?苦しいのも辛いのも皆一緒だ!それをお前だけ特別扱いされて戦う事から逃げるなんて、許さない!」

 

……ほら、これだよ……やっぱりこうなった……

 

「そうだ天之河の言う通りだ!一人だけ逃げようとした南雲は許されねえっ!」

「お前がいなくなって白崎さんがどんだけ辛い顔してたか知ってんのかテメエ!」

 

 ここぞとばかりに食いついてきたのは小悪党の二人、礼一と良樹だった。

実際に香織が泣いていた理由はハジメを卑怯者、臆病者と罵っていた光輝や大介達に対する反応だったが、彼らはハジメがそれを知らないのを良いことに事実を改竄して彼を批判する。

 

 光輝が彼らの言葉に待ったをかけない事に龍太郎は疑問を感じつつも静観を貫く。

内心ハジメに対する怒りが無いといえば嘘になるが、彼とあの三人に助けられたのも事実。

だから今は黙って事の成り行きを見守ることにしているのだ。

親友、光輝が必ず正しい事を言って丸く収めてくれるだろうと思いながら。

 

「あぁもうウザってぇ…!だから俺に何を言って欲しいんだ、さっさと言えよ天之河!」

 

「なんだその態度は!?それが皆に迷惑をかけた奴の態度か!」

「おう、そうだぜ天之河!もっと言ってやれよ!」

「お前のせいで何もかも滅茶苦茶になったんだ!人の事クズ呼ばわりしやがって!」

 

 ついに全ての問題の責任をハジメにまで押し付けるような発言をし始めた礼一。

先ほどの恨みもあって、身体の調子が完全回復していたなら、ハジメを殴る勢いだ。

しかし、両者の言い争いも長くは続かなかった。メルドが怒り心頭といった様子で怒鳴り―――

 

「お前らいい加減に―――」

 

「いい加減にしなさいよアンタらあぁぁぁぁ!!」

 

 メルドの声を遮って、空気を震わせるほどの怒声を放ったのは雫だった。

眉間の青筋が痙攣し、顔全体が怒りで真っ赤になって、歯を剥き出しにして怒っている。

 

「し、雫…?」

「八重樫…さん?」

 

「どいつもこいつもっ!!今が言い争ってる場合じゃないって分からないの!?どんだけおめでたい頭してんのよアンタ達はぁ!!」

 

「し、雫っ落ち着「落ち着きたいわよアタシだって!!こっちに来てから気が休まらないのはアンタのせいよ!!毎日毎日ガキの頃から誰がアンタのケツ拭いたと思ってんの!?」っ……」

 

 フーッフーッと獣地味た息を吐きながら肩を上下に揺らして、雫の怒りは止まらない。

度重なる肉体的、精神的疲労が大迷宮に入ってからピークに達していたにも関わらず、魔物との遭遇や撤退もあって感情的にならないよう我慢してきたものが、ついに爆発したのだ。

光輝への怒りの矛先が、次に礼一達へと向けられる。

 

「アンタらも、口を開けばキモオタガーキモオタガーってバッカじゃないの!?そんなこと言ってる暇があるんだったら、少しは誰かの負担を減らすよう自分を磨きなさいよ!そんなだから女の子に振り向いても貰えないのよ!」

 

「な―――なぁっ……」

「~~~っ!」

 

 八重樫雫は怒ったとしても最後には落ち着いてくれる。

しかしそれは彼女が平常心を保っている状態で成立するものであって、今の彼女は剣道の試合に臨む際の掛け声にも劣らぬ怒鳴り声で、髪を振り乱して感情のままに暴れていた。

ついには眠ったままの香織にまで怒りの矛先が向けられる。

 

「香織もさぁ!!南雲君、南雲君って本人がそれで迷惑被ってるって気づきなさいよ!こいつ等が南雲君に絡むようになったのだって香織が原因だって遠回しに教えてあげたのに、なんで気づかないのよぉっ!」

 

 抑えていた本音の暴走は止まらない。

数年…いや十数年溜まりに溜まった怒りが収まらない。

それらを発散しても自分の残した罪は決して消えない。

これだけらしくない事をしても元の世界には帰れない。

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁもう、どいつもこいつも!!人に頼ればなんでも解決すると思ってええええええぇぇぇぇ!あたしだってねぇっ!!!」

 

 園部優花がそうだったように、八重樫雫だって…普通の女の子なのだ。

普通の女の子で在りたいと願っても、それが叶わなかった可哀想な子だった。

苦労人…言葉にすれば軽く見えるそれが、彼女にとっては鋼鉄の枷も同然だ。

 

 首枷に強いられているのは頼れる女の子として相応しい言葉。

クラスのリーダー的存在ぶっている光輝を陰ながらサポートする八重樫雫。

 

 手枷に強いられているのは男の子にも負けない力強さ。

クラスメイトに只の光輝の取り巻きみたいに思われないアイデンティティを固めること。

実家で教わる剣道だって、出来ることならやりたくなんてなかったかもしれない。

でもそれをやれば家族が喜ぶから、周りが賞賛するからやらざるを得なかった。

 

 足枷に強いられているのは光輝の幼馴染である事実を受け止める心。

ガールフレンドなんて聞こえの良い存在になってはいけないし、なるつもりもない。

女らしさを否定された()()()から、彼女にそんな自由は許されなかった。

 

「こんなっ、こんなものぉぉぉっ!!」

 

 ついに雫は自らの身を守るための剣すら鬱陶しいと感じるようになっていた。

それが借り物であり、国の宝である以上は大事にしよう…なんて考える余裕もない。

乱暴に鞘を引っかける皮の紐を引き千切って、剣を地面に叩きつけようとして――――――

 

「っ!?」

 

「………」

 

 いつの間にか雫の傍に立っていたルゥムが、剣を握る彼女の手を掴んで動きを止めていた。

片手で止められたことで、内心ショックを受ける雫だが…それよりも衝撃的なことをされる。

 

「………(ぽんぽん)」

「………ぁっ」

 

 ルゥムは空いた方の手で優しく雫の頭を撫で始めた。

無表情で何を考えているか分からない、雫をどう思っているか、彼女の言葉に何を感じたのか。

それでも、ルゥムの行動はただ……心が疲れた彼女にとって、最も必要なことだった(ずっと欲しかったもの)

 

「あ、うあぁぁぁぁ……っ!」

 

「………(こくこく)」

 

 身長差も殆どない二人だが、雫はルゥムの胸に顔を埋めて声を上げて泣き出した。

辛かった、苦しかった、誰かにこの声を聞いてほしかった…()()()()()()()()

泣いている雫に対し、ルゥムは相変わらず無言で頭を撫でながら頷いた。

 

 この場に居合わせた、クラスメイトの誰もがショックを受けている。

自分達が故郷に帰りたい寂しさや戦うことへの恐怖心を、彼女に相談する者が多かったから。

光輝は訳が分からないといった様子でただ茫然としていることしか出来なかった。

 

 ハジメはなんとなく彼女の言葉から想像して雫の過去に何があったのか察し(…こいつを責めるのはやめとこ…もしここで俺が責めたら自殺しかねない勢いだし…)と思うのだった。

いつかまた再会するだろう幸利にも、この事を話しておくべきかとハジメは考える。

彼の場合、憎悪と復讐心全開だから「ワロス」と満面のゲスい笑みを浮かべるかもしれないが…

 




 女のヒステリーほど面倒臭く、また虚しいものもないって誰かが言ってた。
最初はハジメ君も強引にハイテンションで乗り切ろうと思っていましたが、まさかの雫ブチギレで内心ビックリして黙って話を聞いてました。ルゥム姉貴、まさかの皆のお母さん的存在に……

 余談で思いついた比喩表現的なものですが、優花のストレス的なものを破裂寸前の水風船が破裂する前に受け止めてくれた器(ハジメ)があったのに対して雫の場合は限界まで膨らんだゴム風船に光輝や小悪党が針でツンツン刺していたのでバンッ!と破裂しました。

(手のひらサイズの水風船とその五倍くらいデカいゴムの風船では入る中身に差が出るのは当然ですが、破裂した時の派手さも後者が圧倒的にデカいみたいな)

 優花が自責の念とかで自分から水(ストレス)を入れるのに対して、雫は周りがやらかしてその後始末で気づかぬ内にガス(ストレス)を入れられてたんだよなぁ……そらこうなるわ。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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