モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 今回は勇者君の文字化けしていた内の片方の負債を回収します。
没ネタになったのでぶっちゃけますが、最初は毒の影響でもう失明していた状態という結果でしたが、ハジメの姿を前回見ている描写になっていたので、違う理由にしました。(若干胸糞?注意)


悪人は、自分の重荷を背負うだろう 後編

 

 一頻り泣いた後、雫は誰とも言葉を交わさずに隊列の最後尾に歩いていった。

ハジメはルゥムに対し「ありがとう御座います」と頭を下げるが、彼女はキョトンとした表情で首を傾げる。それを見て顔を赤くした雫が慌てて戻ってきた。

 

「あの…すみませんでした…それと…ありがとう御座います」

 

「………(こくっ)」

 

 頭を下げる雫に向かって頷きを返したルゥムはマリアンナ達の方へ歩く。

必然的にハジメは雫と距離が近くなるのだが、掛ける言葉が見つからなかった。

そんなハジメとは逆に雫は何か決心したようでずいと一歩前に進んでハジメに向き合う。

 

「………南雲君」

「ん…何だ八重樫?」

 

「香織は今あんな状態だから、私から改めて目を覚ました時にキチンと話をしておくわ。だから、これはあくまで私個人としての謝罪……光輝のことも、クラスの皆のことも纏めてね」

 

 するとそこに永山パーティーの面々がやってきた。

重吾、健太郎、真央、綾子の四人はバツが悪そうな顔でやや俯いている。

雫もあんな事を言った手前、視線を合わせ辛くてサッと目を背けた。

 

「……南雲……八重樫にも……その……悪かったな」

 

 全員の謝罪を聞いている余裕はないと判断して、重吾が二人に向かって深く頭を下げた。

ハジメに対しては檜山達に虐められていた時の事、自分達も黙ってそれを見ていた時点で加害者だったとメルドから話を聞いて自覚したと言う彼らを見て、ハジメは内心評価を改める。

 

(…なんつうか…俺もチョロい人間だな…)

 

 あれだけ恨みは消えないとか心にどす黒い感情を抱いていたにも関わらず…

こうして謝られてしまうと、あっさり許してしまいそうな自分がいることを否定できない。

癖でボリボリと後頭部を掻きながらフゥとため息を吐いてハジメはそれに答える。

 

「…謝罪は受け取っておく。…許す許さねえは今すぐに決められる事じゃねえから保留だ」

 

「…そうか…」

 

「…まぁ、そのなんだ…早く町に戻って、遠藤の奴を迎えにいってやれよ」

 

 ぶっきらぼうにそんな事を言って、ハジメはボーンヘルムを被ってその場を去った。

後ろでは雫と永山パーティーが向き合いまた泣きそうになりながら話をしている。

ハジメはこれで一件落着となればいいと思ってフッと見られないように笑みを零すが―――

 

「――――――ま、待て!まだ話は終わってないぞ南雲!!雫を泣かせて、逆に謝らせる?それに、重吾達にまで頭を下げさせて…お前どういうつもりだっ!?」

 

(…あんまりこういう事は心の中でも口に出したくないんだけどよぉ…なんでコイツは死ななかったかなぁ。…いや、ポジティブにこの場に檜山がいないだけマシと考えたいけどさぁ…)

 

 この世界の神(エヒトルジュエ)ではない…もっと物語の進行役的なものに成り代わった奇想天外な神様(ダイスロール神)

名状しがたい冒涜的存在がこんな展開を生み出したという前提で、なんでこんな中途半端な状態で再会させたんだと文句の一つでも言いたい気持ちで、ハジメは再び溜息を吐いた。

 

 このまま続けると水掛け論になりかねないと、諦めて相手になろうとしたが―――

 

「いい加減にせんかぁぁぁっ!!」

 

「ぐぁっ!?」

 

 ドゴッ!と鈍い音がして担架の上に居た光輝が眉間を横から思い切り殴り飛ばされた。

彼を殴ったのはメルド、片目に包帯を巻いた彼は憤怒の表情で更に詰め寄る。

 

「南雲ハジメの神の使徒脱退を認めたのは他ならぬ俺だ光輝!幾らお前が神の使徒、勇者として俺より上の立場であろうと王国騎士団の庇護下にある以上は俺の決定に異議を唱える権利はあっても、決定を覆すことは許さん!」

 

「どうしてですかメルドさん!俺は皆の総意を背負って―――」

 

「それは間違いだ!お前はただ、自分が気に入らないから尤もらしい理由を並べて彼を批判しているだけにしか見えん!勇者にあるまじき行為を、これ以上見過ごすわけにはいかん!」

 

 光輝とメルドの言い争いが始まって、彼の担架を持っていた龍太郎と鈴が止めようと動く。

恵理もなんとか光輝を落ち着かせようとするが、地面でじたばた暴れる彼に迂闊に近寄れない。

ハジメは黙って光輝を見下ろし、足を失って尚もこんな振る舞いが出来る彼に逆に感心する。

雫と永山パーティーの面々も加わって、更に場は混沌を極めようとした時、悲劇は起きた。

 

 

 

―――ヴゴオオオォォォォッ!!!

 

 

 

 第十五階層から更に下の階層から響き渡る、毒怪竜ギギネブラの奇怪な叫び声。

ハジメは聞き慣れない不気味な声に思わず顔を顰め、永山パーティーはサッと血の気が引いた。

同時にあの蜘蛛(ネルスキュラ)に襲われたことを思い出して、良樹と礼一がパニックを起こす。

 

「わあああぁぁぁぁ!?あいつ等きやがったんだぁぁっ!」

「早く逃げろ!殺されるぞぉっ!!」

 

 この時、バタバタと動いた二人の手から一本の松明が滑り落ちた。

運悪く岩の出っ張りに棒が当たって宙を舞った松明の火が落ちた先には――――――

 

「ぐぎあああああぁぁぁぁぁ!?」

 

「!!光輝ぃぃっ」

「光輝君ッ、嫌ああぁぁぁっ!!」

 

 松明の火が光輝の顔に当たって、肉の焦げる音と光輝の絶叫が重なる。

両目を抑えて蹲る彼に、颯爽と駆け寄ってきたミッドガルが高速回復薬をかけた。

因みにミッドガルは防具で見えていないが、両頬に紅葉マークがくっきりついている。

彼の背後では未だに不機嫌ではあるが、ギギネブラの声に迅速な対応をするマリアンナの姿。

 

「――――――っ!!」

 

「おい光輝、しっかりしろ!光輝ぃっ!!」

「お願いっ、助けて!光輝君を死なせないでぇっ!!」

 

 高速回復薬のお陰で出血は免れたが…光輝の前髪と両目は無惨に焼け爛れていた。

理解の及ばない痛みが襲ってきたことで、彼は再び気絶する事になる。

ハジメはまさかの状況に唖然として事の発端である二人を睨んだ。

 

「お、俺達は悪くねえぞ…!」

「そうだっ、そいつがそもそも口論を始めたのが悪いんだっ!!」

 

「ッッッこんのやろォォォ!!」

「止せ龍太郎!今は争っている場合ではないと何度言わせるか!!」

 

 怒りで頭が沸騰した龍太郎が二人に殴りかかろうとするのをメルドが肩を掴んで止めた。

二人は怯えた表情でそそくさ騎士達の方へ逃げようとするが、騎士達からも距離を置かれる。

メルドと龍太郎、恵理が協力して再び担架に光輝を乗せた。

 

 その間にハジメは地面に耳を当てて下の様子を探っているマリアンナから話を聞く。

 

「ギギネブラはこの階層からそう遠くない地点を進んでいるようです。…どうやら先ほどの怒鳴り声は下にまで響いてしまったようで…恐らくこちらを追いかけようとしているのでしょう」

 

 雫が「私のせいで…」と絶望的な表情になったのを見て、すかさずハジメがフォローを入れる。

 

「どのみち、これだけ人の気配が集まってる。声を出していなくとも足音で気づかれたのでは?」

 

「……可能性は否定できませんね。とにかく、今は作戦の変更を!」

 

 マリアンナの云う作戦とは、神の使徒を救出した後の流れだった。

現在いる第十五階層から第一階層までのモンスターの脅威は無いに等しい。

しかし怪我人を大勢連れての移動は確実に気配を悟られるから戦闘は避けられないだろう。

 

 来た時と同じように先頭をマリアンナ、左右警戒をハジメとルゥムがして、殿をミッドガルが務めることで確実に奇襲されることもなくホルアドに帰還できる算段だったのだが―――

 

「護衛に二人、追っかけの対応には二人ってのがベストか?」

「…それが最善ですね…」

「………(こくっ)」

 

 追ってくるギギネブラを誰かが一人で残って相手をするという選択肢もあったが、仮に追い抜かれた時のフォローが厄介になると却下された。

誰が残り、誰が護衛に付くかを悩む暇は無かった。

 

「…俺は残ります」

「…宜しいのですか?相手はギギネブラ、私とサーの方が適任では…」

 

「帰り道を確実に覚えているのはマリアンナさんですし、俺の武器はヘビィボウガンです。最悪の場合は音で威嚇すれば大抵のモンスターは惹きつけられます。…ギギネブラとの交戦経験はゼロですが、それでも―――」

 

 実はハジメ、内心では他に思うところもあるのだ。

このままホルアドに帰ってから、クラスメイト達とまたひと悶着起こす可能性が否定できない。

出来る事なら彼らにはこのままメルドに首根っこを掴んで貰って王都にお帰り頂きたい。

ミッドガルがそんな彼の心の声を読み取ったのか、不敵に笑う。

 

「それじゃあ、さっきのミスの挽回するために俺が――――――って何だよルゥム!?」

 

「………(フンフンフン)」

 

「…ルゥムさん、残るつもりなんですか?」

 

「………(こくっ)」

 

 汚名返上の機会を邪魔されたミッドガルが不貞腐れて唇を尖らせる。

しかしルゥムは頑なに首を横に振って、ハジメと残ることを選ぼうとした。

マリアンナは即座に思考を切り替え、連携や信頼関係の面でも彼女が適任と判断を下す。

 

「ではハジメさんとルゥムさん、お二人がこちらに残って対応を。私とサーで彼らの護衛で」

 

「ちぇっ、さっきのミスを取り返してやろうと思ったのによ」

 

「いいですよミッドガルさん、気にしてないんで。ただ……帰ったら一杯奢って下さい」

 

「……ハハハッ!いいぜえ、それでチャラにしろよなハジメ!」

 

「はいっ!!」

 

 マリアンナが立ち上がって、既に撤退の準備を始めているメルドに作戦を伝えにいった。

ハジメが残ると聞いて彼は驚愕で目を見開いたが、すぐに固い表情で「分かった」と承諾する。

別れの言葉を告げる間もなく、こうしてハジメは使徒達とは逆に…下の階層へと向かうのだった。

 




 両足ない状態で地面でバタバタと「やだやだ」駄々っ子捏ねていたら、顔面に松明ぶち当たって失明とか悲し過ぎる…(これで残り一つの処理)
いずれ書くとは思いますが、ある人物の小悪党に対する殺意ゲージが限界突破しました。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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