モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 一日遅れですが、皆さま明けましておめでとう御座います。
人生で初の実家で年越しは見事に酒の海に沈んで、夜中に目を覚まして起きたまま辛うじて日の出を拝むくらいしか出来ませんでした。

 物語的には序盤から中盤(のつもり)ですが、急な路線変更やらモチベーション管理の名目で一発ネタ投下やら面白味のないアンケートやら今年も多々あると思います。

 それでも感想や質問を下さる読者の方に改めて感謝を
本年もモンスターハンター・トータスを宜しくお願いします。
寅年の方もそうでない方も、良き一年が送れますように。



奈落の底での話し合い

 パチッパチッと鳴る焚火の音で、ハジメは目を覚ました。

見知らぬ岩の天井に紐が吊るされて色々なものが括られている。

薬草の束、乾燥したアオキノコ、生きたままのにが虫等々……

 

 どうやらここの住人は自然の洞穴を住処に利用しているらしい。

二度、三度と瞬きの内に記憶が蘇り…自分がどんな目に遭ったか思い出す。

 

「―――――ルゥムさんっ!!あ゛ッ!?…ぐ…ぅっ」

 

「まだ動いちゃダメ…傷が塞がってない」

 

 跳ね起きたハジメが包帯を巻かれた胸に激しい痛みを感じて苦悶の声を上げると、傍にいた少女が優しく声をかけて彼の肩に手を置いて寝かせる。

銀髪(イメチェンで染めただけだが…)のハジメと対照的な、金髪の長い髪の少女。

ハジメの瞳と同じ(彼のはイメチェン以下略)で彼女の瞳は真紅の色を帯びていた。

 

「…君…は?…此処は――――――」

 

「貴方は上から落ちてきた。私と教授が、紅兜に襲われていた貴方を助けて隠れ家に運んだ」

 

 ハジメの質問に、少女は薬草とにが虫を石のすり鉢に入れて潰して混ぜ合わせながら答える。

教授…というのは恐らく少女以外に誰かがハジメを助ける為に動いてくれたのだろう。

紅兜とはあの異様に強大な力を持ったアオアシラのことだろうか…?

ハジメが更に少女へ質問をしようとしたところ、洞穴の外から人が走ってきた。

 

「………!!」

 

「る、ルゥムさ――――――おわっ!?」

 

 外から駆け込んできたルゥムが、寝たままのハジメに飛びついて顔を埋める。

見知らぬ少女の前ということもあり、無事だったことへの喜びに羞恥心が勝った。

 

「あ、あのルゥムさん…!人、人が見てますから…!」

 

「………!(ぎゅっ)」

 

 ハジメの肩を掴んだルゥムの手は小刻みに震えていた。

表情は変わっていないものの、その目からは今にも涙が出てきそうだ。

オロオロしているハジメに代わり、少女が苦笑を浮かべてルゥムの肩を叩く。

 

「まだ安静にしてなきゃダメ」

 

「………(こくっ)」

 

 身長差があるにも関わらず、この一瞬だけはルゥムより少女の方がお姉さんに見えた。

彼女の言葉に頷いてからゆっくりとルゥムは離れてその場に座り込む。

すると洞窟の外からまた別の誰かが入ってくる。

 

「目が覚めたようだね、身体の何処かに異常はないかな?」

 

「―――は、はい。大丈夫です……貴方が、教授……ですか?」

 

 穏やかな口調で話しかけてくるその人物こそ、少女が言っていた教授である。

しかし焚火の前に立って教授の姿を見たハジメは、思わずたじろぐ。

全身を同じシリーズの防具で統一した教授の背中から片手剣が覗いていた。

一目でハンターと分かるのだが…その防具が独特な見た目をしているのだ。

 

「ええ、彼女が教授と呼ぶ男は私で間違いありません」

 

(……初めて見た……”アーティア”シリーズ全身に装備してる人なんて……)

 

 それを知ったのはブルックの町の工房で老山龍砲の完成を待つ間。

素材不足で作れなかった防具はどんなものが合うのかとテレサベル達と話していた時のこと。

全身で装備するとSFチックなパワードスーツを彷彿とさせる防具があった。

 

 要求される素材は”さびた破片”という、正体不明の金属である。

ハジメはそれを見たことが無いため、いまいちピンとこなかったが、実際にさびた破片を持っているテレサベル達曰く「フィールドの何処かに落ちてるのを偶然拾ったりする」らしい。

 

「ああ、申し訳ない。私は人前に素顔を晒すことをあまり好ましく思っていないもので…食事の時以外は頭防具(これ)を外さないのですよ。顔を見せない非礼を、どうか許しては貰えませんか?」

 

「あ、いえ…非礼だなんてそんな事はありませんよ。…寧ろ此方が助けて頂いたんですから、先にお礼を言うべきでした。…ありがとう御座います、あのままだったら俺は――――――」

 

「礼には及びません。同業者を助けるのは当然の義務ですから。それに…こんな奈落の底で彼女以外の誰かと会える日が来るなんて思ってもみなかった。貴方達との出会いに、こちらも感謝を」

 

 ハジメは穏やかで紳士的な口調で喋る教授に好感を抱く。

直前までクラスメイトの事でやや尖っていたことも相まって、心が軽くなった。

――――――と、そのとき…ハジメの腹の虫がギュルルと鳴った。

 

「―――ぁ」

 

「おやおや、お互いの話をする前に…まずは腹ごしらえが必要ですかね?」

 

「………(こくこく)」

 

「ん……教授以外の誰かと一緒にご飯を食べるのは初めて……楽しみ」

 

 ハジメはお腹に手を当てながら恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯いた。

教授は手に持っていた荷物を端に退けて、天井の紐に吊るされたキノコ類に手を伸ばす。

寝たままの体勢で食事を取るなんて行儀が悪いと、ハジメは少し無理をして起き上がる。

表面に突起のない岩を背にして、胡坐をかいて座ったハジメの前に金髪の少女が来た。

 

「まだ貴方に名乗ってなかった…私の名前は”アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール”…アレーティアって呼び捨てにしていい。教授もそうしてるから…」

 

「アレーティア……。俺は南雲ハジメ、助けてくれて…ありがとな」

 

「ん……どういたしまして」

 

 アレーティアはこくんと頷き、ハジメの隣に移動してぺたんと女の子座りをする。

何かのモンスターの毛皮を外套のように羽織る彼女は、クールな口調に対してお人形さんのような可愛らしさが行動の端々に見受けられ、ハジメは思わずドキッとした。

 

 自慢になるかもしれないが、ハジメは異世界に来てからそれなりの数の美少女と会ってきた。

この場に居合わせている先輩ハンターのルゥムを筆頭に、リーナ、シア、エタノ、アルテナ、テレサベル、ノイント、ティオ、ミュウ、リリアーナ……年上の美女も含めれば軽く十人以上は親しく接してきただろう。

 

 クラスメイトの優花も今頃になって十分美少女だと思うようになったのだが、本人の過小評価とその他の複雑な関係もあってハジメは彼女も美少女だと正直に言い出せなかったのである。

 

 アレーティアはその中でも群を抜いて美しさと可愛さの両方を備えた超絶美少女だ。

これはあくまでハジメの趣味趣向なのだが……若干彼好みの容姿という加点要素も入っている。

彼に見つめられていることに気づいて、アレーティアは微笑みながら首を傾げた。

 

「……なに?」

 

「あ、いや……なんでもない……」

 

 それから暫くの間、ハジメは教授が食事の準備の間、何も言わずに黙って火を見つめていた。

気持ちを紛らわそうと脳裏に過ぎったのはホルアドで最後に優花達と別れた時のこと。

ティオには予め()()()()()()()()()()()()()()ともしもの時に備えて伝言を残している。

 

 リンネ、ノイントの二人は察しがいいので、伝言に理解はしてくれるだろう。

優花は……やや精神的に落ち着いたばかりのところに追い打ちをかけるようで申し訳ない気はするが、こればっかりはどれだけ対策を立てていてもやむを得ない時があると納得して貰うしかない。

一番の問題はミュウだ、彼女は見た目に反してまだ五歳の幼い少女だ。

ハジメにもよく懐いていたことから、最悪泣いて駄々を捏ねる可能性があった。

 

(……悪ぃことしちまったな……)

 

 傲慢かもしれないが、自分の面倒事で旅の仲間達にまで迷惑を掛けたくない。

その結果が彼女達を悲しませる事になるとハジメもそれなりに覚悟はしていた。

だが実際にそうなってしまうと、覚悟が揺らぎ…良心が痛むのだ。

ハジメは此処を出られたなら、彼女達と再会した時に土下座するくらいの気持ちでいる。

 

「さぁ食事の準備が出来ました――――――おや、どうかしましたか?」

 

「…此処に来るまでの事を思い出して、感傷に浸っていただけです」

 

「成程そうでしたか。貴方達にも何かしら事情があるようですね」

 

「折角の作って貰った食事を台無しにしたくはないので…食後に聞いて貰えますか?」

 

 

 食事は乾燥キノコと岩塩で味付けして刻んだ薬草を加えたスープだった。

四人は黙々とそれを食べ終えて、焚火を囲んで食休みをしてからハジメはこれまでの事を話した。

 

 神の使徒を助ける為に大迷宮に入り、ルゥムと共に毒怪竜、影蜘蛛と戦っている最中に転移トラップで第六十階層まで飛ばされて、魔獣ベヒーモスと激闘を繰り広げた後、橋から落ちて気を失ったところまでの話を。

 

「人助けのクエストで大迷宮に……それは大変だったでしょう」

 

「……教授、神の使徒って何?」

 

 アレーティアが頭に疑問符を浮かべるのに対し、ハジメは意外だと目を丸くした。

()()()()()()()()()()なら神の使徒の話は誰でも知っていると思ったからだ。

すると彼の様子を見ていた教授が思い出したように驚愕の事実を口にする。

 

「失礼。彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()…世情に疎いのですよ」

 

「さ、三百年!?」

 

「ん…言い忘れてた。私は”吸血鬼族”最後の生き残り」

 

 証拠を見せるようにアレーティアは口を大きく開けて自身の牙を見せつける。

ハジメは以前読んだ書物の中に記載されていた吸血鬼族に関する記述を思い出す。

竜人族同様に滅んだとされている種族だが、どうやら間違いなく吸血鬼のようだ。

その両種族が滅んだという内容もあくまで王国の図書館で読んだ本である事を思い出し―――

 

(二度とアテにしねえからな王国の本……)

 

 アレーティアが牙をしまったのを見て、ハジメはそう思った。

 

「話を戻しましょうか。…神の使徒、というのはですね――――――」

 

「あっ…えと…教授。差し出がましいとは思うんですけど、もし良ければ神の使徒について俺から話しましょうか?―――大したことじゃないですけど、俺も元は神の使徒だったんで」

 

「ほお…!成程、確かに使徒本人の口から語って貰った方が分かり易そうですね。私の認識はあくまで一般に公表されている事実のみですから、真実を聞いた方が良いでしょう」

 

「ん…教えて…」

 

「……(こくこく)」

 

 既に大体の事情は知っている筈のルゥムまでもが興味津々といった様子で見て来る。

ハジメは神の使徒が異世界から召喚された人間ということを説明した。

神エヒトによって召喚された使徒は人間族と魔人族の戦争で、人間族が勝つために遣わした勇者とその仲間達であり、ハジメはその中で孤立していたことや逃げ出した経緯を話し始めた。

……数名限定で使徒の負のイメージをこっそり強調したのは言うまでもない。

彼らに手出しが出来ないハジメなりのバレない程度のささやかな反抗だった。

 

 




 原作で一瞬しか出てこなかったユエの本当の名前を本作では名乗っていますが、その理由も後々幕間等で明かしていきたいですね。
因みに伏線でも何でもないのですが教授の装備は「重ね着のアーティア」です。中身はいずれ判明すると思います。

 頭の中で黎明卿のイメージが強過ぎて顔出しNGのハンターになった教授ですが、一応彼もただのハンター(例外の一人)なので枢機に還す光(スパラグモス)を腕から出したりしませんし、子供たちの思いを物理で背負って戦ったりもしません。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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