モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 これにて第四章の括りは終了ですかね。
次からはいよいよ真のオルクス大迷宮攻略が始まります。
日本各地で雪降る寒い中、作者は家に籠ってガンガンに暖房を効かせながら翠星のガルガンティア全話見てました(褐色は良い属性。そう思いました)
サブタイトルはマタイによる福音書7章7節より一部抜粋。


探しなさい、そうすれば見つかる

 

(目が覚めても、今が昼か夜かも分からない洞窟ってのは不便だな……)

 

 奈落の底、真のオルクス大迷宮第一階層の仮拠点で目を覚まし、ハジメはふと心の中で呟く。

あれから何日が経過したのか?地上が今どうなっているのか?何も分からないまま。

体を起こしたハジメにそっとアレーティアが作ったばかりのスープを差し出す。

 

「ハジメ、これ食べて」

「おう、ありがとさん……ん、美味い」

 

「口に合ったのなら良かった」

「アレーティアが作ったのか?」

 

「ん…そう。三百年経って腕は落ちてるけど」

 

 寧ろ三百年間、何も出来ずにいたのにこれだけの美味を僅かな素材から生み出せる。

もっとしっかりとした食材が揃えば彼女の本格的な料理の腕が見れるだろうとハジメは思った。

仮拠点の中ではルゥムが膝の上で寝かせた鬼哭斬破刀の手入れをして、教授は姿が見えない。

 

「……これからどうっすかな……」

 

「……地上に出る方法?」

 

「教授の話じゃこの第一階層から上、落ちてきた第六十階層に戻れる方法は現実的とは言えない。唯一の可能性があるとしたら――――――」

 

「……此処から更に下……第九十九階層?」

 

「そうだ。地上と同じ階層数だとするなら、その先に第百階層の終着点…反逆者の住処がある」

 

 アレーティアとそう話しながら、ハジメは頭の中で神代魔法のことを考えていた。

地上へ出てリンネ達と再合流することは第一優先事項だが、それと同時にハジメが故郷へ帰る為に持ち帰らなければならない情報、或いはその手段。

 

 しかし更に下へ進むのであれば、あの紅兜アオアシラとの再戦は避けられないだろう。

真のオルクス大迷宮は表の大迷宮とはモンスターの格が違う、今のハジメでは手も足も出ない。

当然ルゥムと教授も協力はしてくれるだろうが、それではハジメが足手纏いになる。

 

(……そんな情けないことは……!……いや、待て……冷静に考えろ俺。そもそも俺如きの知識や経験がここで通用するかもしれないと思い上がる方がかえって危険だ。情けないのを承知の上で、二人の足を極力引っ張らないように立ち回るのが俺に出来る最大の努力なんじゃないのか!?)

 

 どう足掻いても此処ではハジメが最弱であり、それを素直に受け入れることが大事である。

最高に頼れるハンターが彼の目の前に二人居るのだ、これを頼る以外の選択肢はないに等しい。

自分の薄っぺらな矜持に惑わされそうになったハジメは自分を心の中で殴った。

 

(人に頼ることは恥でもなんでもねえ!この状況でそんなバカなこと考えてんじゃねえよ!)

 

「……ハジメ?」

 

「…あ、あぁ悪い…考え事してた」

 

(―――とにかく、俺がここから先に出来る事は足を引っ張らない最大の努力と、その間の時間を無駄にしないために二人の動きを見て連携を覚える最低限の努力!)

 

 努力にも種類や方向性、量や質といったものが存在するのは言うまでもない。

ハジメは自身の生存と二人の負担を減らすための努力に八割の努力を注ぐことにした。

残り二割で自分が成長する為の力をつけようと考える。

 

「……よし、決まった」

 

「???何が」

 

「この先、大迷宮を潜るにあたっての俺の心掛けって奴だ」

 

「……そっか……私は――――――」

 

 何かをアレーティアが言いかけたたところで仮拠点に教授が戻ってきた。

その手には、襲われた時にハジメの手から離れた武器、老山龍砲が握られている。

驚き目を見開くハジメに対し、教授は優しい口調で話しかけた。

 

「貴方の様子から、これからどうするのか決めたようなので…これを返しておきます」

 

「……また、助けて貰いました。なんてお礼を言ったらいいか…」

 

 思い入れのある老山龍砲を手放してしまったことに、ハジメは悔しさで顔を歪めた。

教授はそんな彼の表情をじっと見つめ、優しいながら敢えて厳しい言葉を掛ける。

 

「ハンターが武器を手放してはいけません。たとえ命を落とそうとも……ね」

 

「…教授」

 

「…フフフ、貴方の顔を見れば、そんな言葉も必要ないとは思いましたが…」

 

「いいえ……ッ!」

 

 立ち上がってハジメは自分の両手で頬をバチッと挟むように強く叩いた。

アレーティアが驚いている横でルゥムは何かを察したかのように頷きを返す。

自ら与えた痛みに戒めを含め、ハジメは老山龍砲を教授から受け取って言う。

 

「二度と手放しません!死んでも!!」

 

「それだけの威勢が十分ですね。…それで、これから――――――」

 

「下へ潜りましょう。きっと最後の場所に、地上へ出る手段がある筈です」

 

「――――――向かう先の確認は不要でしたか。分かりました、ですが―――」

 

「この先で俺は二人の足を引っ張ることになるかもしれません。それを承知の上で……二人の足を引っ張らないよう頑張ります…!なんて人並みの言葉しか今の俺には思いつきません…っ…!――――――それでも!どうかっ、宜しくお願いします!!!」

 

 教授の言葉を遮って頭を下げるハジメを三人は黙って見つめている。

アレーティアもハンターではなく、二人の足を引っ張るかもしれない。

しかし彼女にはある程度の攻撃を食らっても再生できる力がある。

教授との短い付き合いで、大迷宮のモンスターに対する慣れの気持ちもあった。

 

 ハジメはそんな便利なものを持っていない。

どんな攻撃でも食らったら回復薬を飲んで回復しなければならないし、状態異常に陥ったらそれを解除しなければならない。

彼が見知らぬモンスターをこの先目にして、まともに平常心を保っていられるという根拠はない。

誰かに支えて貰わなければ、今のハジメに大迷宮攻略は無理だった。

 

「―――君は自分が弱いという事を自覚して、私達に守って貰いながらでも先に進みたいと?」

 

「はいっ!!」

 

「このような問いにも迷いなく答えられるとは。……素晴らしい!君の覚悟と願望は受け取りました。私としても大迷宮の真実を明らかにしたいという知的探求心と好奇心がある以上、君のそれと利害は一致しています。あとは彼女達の反応次第ですが―――」

 

「ん、私もハジメに同意見。封印部屋の外でも、地の底暮らしはもう十分」

 

「………(こくこく)」

 

「…いいでしょう、では皆さん準備を進めて下さい。此処を出ますよ」

 

 こうして真のオルクス大迷宮を突破する挑戦が幕を開けたのだった。

三人のハンターと一人の吸血鬼の少女は、反逆者の住処を目指して突き進む。

 

 

 

 

 

 

「アレーティア、貴方は地上を出てからこの先どうするか決めていますか?」

 

 仮拠点の荷物を纏めている間、教授は傍らにいたアレーティアに聞いた。

彼女はピタリと動かしていた手を止めて、振り返って離れたところにいたハジメを見つめる。

同じ真紅の瞳を持っているから会った時は一瞬同族かと期待したが、彼は普通の人間だ。

 

…いや、正確には普通の人間の皮を被った別の何かだ…教授と似たような。

紅兜アオアシラから受けた傷は既に完治している。明らかに人間の回復力じゃない。

しかし吸血鬼族としての特徴は持っていないし、何より彼の血からは彼女好みの香りがした。

 

(若々しくて新鮮な……男の生き血……)

 

 残念ながら少々特殊な事情で教授を吸血することは諦めているアレーティア。

出会った時から信用出来る(ヒト)ではあるが、好みかどうかはまた別問題だ。

そもそも会った時から一度だって教授は素顔を見せた事がない。

 

 助けられた恩とは別で、顔を見せない相手の血は吸いたくなかった。

アレーティアのかつて玉座に座った者としてのポリシーとでも言うべきか。

吸う相手は自分で決めるし、選り好みもする。

たとえそれが自分を不利な状況に追い込むと分かっていてもそれは曲げない。

―――だから教授の問いには僅かな沈黙を置いてから答えた。

 

「…もう私に帰れる国はない。帰りを待つ同朋もいない。…仮にここを出たとして、太陽の下に在っても、私という存在はあの場所(封印部屋)に囚われているのと同じ…」

 

「行く宛のない、孤独な生が貴女を苛むと?」

 

「ん……問いに対する答えは分かり切ってるでしょ?」

 

 今のままだと、アレーティアはどこまでいっても孤独でしかないのだ。

彼女から見て、地上に出た後も目的があって行動できるハジメが羨ましいと感じた。

寂しそうに微笑む彼女の横顔をじっと見下ろしたまま教授は顎に手を当てて考える。

そうして数秒の間を空けてから、ハジメに向かって顔を向けて口を開く。

 

「――――――では彼に聞いてみては?」

 

「……え……?」

 

 驚いた顔で見上げるアレーティアに、教授はおどけたように肩をすくめる。

しかし声だけは真剣に、彼女の未来を想う一人の友人としての意思が込められていた。

 

「私には貴女の未来に対する満足のいく答えを提供することは出来ません。私と共に在るという選択も可能性としてはあるかもしれませんが、勧められるような道ではありません。たとえ不死に近い体を持つ貴女であっても、大自然の脅威と常に隣り合わせの生活を続ける私の傍にいては、生き続けることは難しいでしょうから」

 

「……私は……足手纏い?」

 

「有り体に云えば、そうなりますね」

 

 ハンターにして編纂者、教授は常に未開の地を進んで未知のモンスターとも矛を交える。

そんなところに()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()が居ても大した力にはなれない。

良くて火起こしや綺麗な水を出したり、風を吹かせてほんの僅かな仕事の手伝いが出来る程度だ。

最大威力の魔法を幾ら叩き込んでも、大型相手では掠り傷をつけるのも一苦労するだろう。

 

「今すぐに答えを出せと、厳しいことを言うつもりはありませんよ。アレーティア、貴女を縛るものは既に無くなっているのです。後は貴女が自分の心に従って、心に迷いがあるなら人に聞いて、答えを出すきっかけを掴めばいいのですよ。もっと甘えて、答え自体を誰かに求めてもいい」

 

「私の答え……きっかけ……っ……ハジメならそれを出せる?」

 

「此処に居る三人の内、私を除けばあの二人しか貴女に選択肢はありません。しかし彼女の方は人の言葉を解していても、自分の言葉を他人に共有するものではないように見えます。であれば……選択の余地は無いに等しいと、聡明な貴女であれば理解出来るでしょう?」

 

 アレーティアの瞳に映るハジメという青年が、彼女の未来を左右する答えになるかもしれない。

教授がそれから何も言わずに彼女の傍を去った後も、彼女は視界に映るハジメの逞しい背中を食い入るように見つめていた。

 

(………欲しい………)

 

 あの封印部屋から出てきて、初めてアレーティアが持った願望はそれだった。

食事で生命活動を維持するだけの空腹を満たすことはできるだろう。

けれども種としての欲求不満はずっと解消されていないのだ。

彼に着いて行けば、彼女の孤独を打ち消す特別な何かがあるのかもしない。

様々な理由(欲求)が溢れそうになって、彼女は一人静かに笑みを零した。

 

(……ハジメの答え(新鮮な血)が欲しい……!)

 

 




 原作の文を読んだ限りだと他の作品に見受けられる吸血鬼特有の精神を左右するほどの吸血衝動みたいなものはトータスの吸血鬼族に無いとは思いますが、それはそれとして折角の吸血鬼要素なのでこれは活かさないと勿体ないかなぁと思う訳ですよ(超早口)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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