MHXXでG級にさっさと上がるぜー!とか意気込んでディアブロスに挑んで見事に三乙で返り討ちにあったハンターがいるらしい……まぁ私なんですが。
真のオルクス大迷宮第一階層で紅兜アオアシラとの激闘(そう思っているのはハジメだけかもしれないが…)を終えた一行は更なる強敵が待つであろう第二階層へ足を運んでいた。
緑光石のお陰で第一階層は松明の灯り無しでも狭い道の先が見えるほど明るかったが、第二階層は全くの逆で、道が広くなっている代わりに灯りとなるものが一つも無い。
「次の階層に続く階段まで、私が先頭を行きます」
教授の後ろに続く形でアレーティアが、左右後方をハジメとルゥムが警戒して進んでいる。
松明を掲げている手は、来る前に洗ったというのに剥ぎ取り中の獣臭さがまだ少し残っていた。
ハジメも内心顔を顰めてはいるが、先輩ハンター二人が平然としているのを見倣う。
一方でアレーティア、左右と前から漂う濃密な血の匂いに頭がクラクラしていた。
吸血鬼族の吸血に衝動的なものは無いが、それでも本能的に欲しいと思わずにはいられない。
ましてやすぐ近くに彼女好みの青年がいるのだ、自然と息が荒くなってしまうのを抑える。
「……ん、はぁ……ふぅ…」
「アレーティア、大丈夫か?荷物重いなら俺が―――」
「……平気」
「…そ、そうなのか?」
「ん……だからハジメは周りの警戒に集中して」
「そうか…悪い、ちょっと辛そうだったから…つい、な…余計なお世話だったか」
「いい、気遣ってくれて…ありがとう」
そんな会話をしている横で、ルゥムは不意に足を止めて靴底の裏に違和感を感じた。
彼女は足を退かして軽く松明を近づけながら屈み、違和感の正体を指先で摘まみ上げる。
暗くてどの種類かまでは断定出来ないが、それは虫の脚だった。
大きさからしてにが虫か光蟲あたりかもしれない…しかしどうしてそんなものが?
「………(くいくい)」
「どうしましたルゥムさん。……何ですかそれ?」
ルゥムはそっと立ち上がってハジメの胴防具、ボーンメイルの肩の出っ張りを摘まんで止めた。
彼女が無言で持ち上げたそれが虫の脚だという事は分かるが、何を伝えたいのかまでは理解出来ずに困惑してハジメは首を傾げる。
すると前を歩いていた教授がヌッと引き返してきて、じっと虫の脚を観察する。
「……ほう、これは……成程。そういえば此処の番人はアレでしたか」
「番人っていうのは…此処を縄張りにするモンスターの事ですよね教授?」
「ええ、先ほどの紅兜に比べれば弱いかもしれませんが…少々厄介な相手ですよ」
「それは――――――」
「………!」
ハジメが質問しようとした瞬間、ルゥムはバッと振り返って鬼哭斬破刀に手を掛ける。
二人も会話を止めて彼女の視線の先に顔を向けると、暗闇の奥からドスドスと足音が響いてきた。
歩調からして二足歩行、大型に分類される足音に合わせて聞こえてくるけたたましい鳴き声。
―――ギャアギャアギャァッ!!
「……先に向こうが気づいたみたい」
「俺達はこの暗闇の中で松明を点けてるから目立つしな…!」
アレーティアの呟きに緊張気味に答えながらハジメは手に持っていた松明を近くの岩場に刺してから老山龍砲を展開する。
次第に足音が大きくなって、ついに第二階層を縄張りにするモンスターが姿を現した。
くすんだ藍色の肌は暗い洞窟内で迷彩効果を発揮していたことだろう。
鳥竜種の中では類稀な知能の高さで知られている奴だが、驚くべきことに他の鳥竜種のような身を守るための硬い鱗や甲殻といったものを有していない。
後述の生態を成立させる為に体から余計な重みを減らして、運動能力に特化した
非常に臆病な性格ゆえに一箇所に留まることはせず、常に移動していることから驚異的なスタミナの持ち主としても知られ、時には垂直な壁面すら走り抜けてしまう強靭な脚力を戦う為の武器として活用するらしい。
好奇心が強いという一面もあり、縄張りに侵入してきた者が奴の興味を惹くようなものを持っていれば、向こうから襲い掛かってきて掠め取られてしまうのだ。
外敵への攻撃手段として口から毒液を吐き出す為の毒袋を体内に持ち、頭部のトサカと嘴の先端は他のモンスターにはない特別な攻撃手段を生み出す機能が備わっていた。
”毒怪鳥”の呼び名でも知られるそのモンスターの名前をハジメは叫んだ。
「―――”ゲリョス”かっ!!」
―――ギャアァァッ!
ゲリョスが真っ先に狙いを定めたのはルゥムだった、口から吐き出された毒液が頭上に迫る。
彼女は咄嗟に横へ飛んで毒液を躱し、鬼哭斬破刀を抜刀して暗闇の中に駆け出していく。
教授がアレーティアを庇う様に立って神封龍剣【絶一門】の盾を正面に構える。
ルゥムを追いかけて横を向こうとしたゲリョスに対し、ハジメは老山龍砲の弾を装填する。
(こいつの表皮は
この世界では人間族の文明に合成ゴムは勿論、天然ゴムという概念も浸透していなかった。
幸いにして謎技術だけなら地球の科学やら物理法則やらを軽く凌駕する竜人族の技術の中には、ゴム擬きの素材が幾つか含まれている。
近年、ヘルシャー帝国でも竜人族の技術や知識を別方面に生かそうという試みも増えているそうな――――――とまぁ、余談はさておき。
絶縁体に分類されるゴムは電気を通さない事で知られている。
科学文明の進んでいないトータスでも、ゲリョスの持つ皮が雷属性による攻撃を通さないという事は、多くのハンターが知っていた。
そしてルゥムの持つ武器、鬼哭斬破刀は雷属性……属性攻撃の強みが生かせない。
太刀本来の高い攻撃力で圧倒しても、完璧に狩猟するための一手が欠けている。
(火炎弾、装填―――狙いは頭!)
ハジメは火炎弾を装填口に押し込んで発射装置を力一杯引いて装填準備を整える。
ゲリョスの狙いが暗闇に姿を消したルゥムから自分に向くようワザと大声で叫ぶ。
「こっちだぁぁ!!」
ドォンと一発、真っ直ぐ飛んでいった火炎弾は見事にゲリョスの頭、トサカ部分に命中した。
ギロリとゲリョスの目がハジメの方を向いて、彼は緊張をひた隠しながら強気に笑う。
「来いよ!ご立派な羽も此処じゃ使えねえだろぉ!?」
伝わらないと分かっていながらも煽り文句を込めて、ハジメは火炎弾の第二射を放つ。
二発目の弾は僅かに照準修正で右下に逸れて、ゲリョスの首筋の皮をジュゥと焼いた。
―――ギャアァァ、ギャアァッ!
(―――っと、やべぇ回避!)
奇声を上げて突っ込んでくるゲリョスの巨体に、アレーティアと教授を巻き込まないように、予め横に向かって転がっていたハジメ。
彼の狙い通りにゲリョスは突進して、教授は感嘆の声を上げながらそれを追う。
「いいですよ、そのまま頭部への攻撃を続けて下さい……!」
「はいっ!」
ゲリョスの狙いが逸れたと知って、暗闇からルゥムが抜刀ダッシュで戻ってきた。
視界の端に彼女を捉えながら、ギリギリまでゲリョスを惹きつけたハジメは、突っ込んでくるゲリョスとは反対方向、太い脚と翼の間を狙って転がる。
「――――――ッ!!」
(あっぶねえ、今頭の上に爪掠めたか!?)
ザッ!と鈍い音がして、転がり回避に成功したハジメは片手で頭防具に異常がないか探った。
その結果、思っていた通りにボーンヘルムの角飾りの一部が欠けているのが指先の感触で判明する。
もし頭に直撃していたら、ド派手に吹っ飛ばされていただろうと冷や汗をかいた。
突進した先に獲物がいないと分かったゲリョスが足を止めて振り返る。
ルゥムが斜め前から縦斬りを、横に回り込んだ教授がジャンプ斬りで仕掛けた。
反撃で尻尾を振り回すか、それとも再びハジメに突進を仕掛けて左右の二人毎巻き込むか……
そんな予想をしていたハジメの眼前で、突然ゲリョスが奇妙な行動に出始めた。
――――――ガァッ、ガァッ、ガァッ
不気味に声を上げながら、嘴をカツカツと打ち鳴らすゲリョス。
それが何を意味するのか、長年の経験で知っていた二人の判断は早かった。
教授は後ろへ転がった直後、通常の構えより上に盾を突き出して視界を覆う。
ルゥムは構わず縦斬りからの突きを繰り出し、その攻撃が繰り出される瞬間に地面へ転がることで難を逃れるつもりでいた。
「急いで目を塞いで下さい!」
「………!」
「なっ――――――!?」
「ッ!?」
反応が遅れたのはハジメとアレーティアの二人。
カッ!と第二階層全体を照らし出すような眩い光が、ゲリョスのトサカから放たれる。
教授とルゥムはガード、回避とそれぞれの手段で光の影響を受けずに済んだ。
ハジメは手で庇おうとするがコンマ数秒差で間に合わず眩暈を起こしその場でフラつく。
アレーティアも両目を抑えてその場で膝を折って動けなくなった。
―――ギャアァァ!
動けなくなったと分かるや否や、ゲリョスが手近な相手に攻撃を仕掛けるのは当然のこと。
焦点の定まらない視覚の代わりに聴覚が巨体の接近をいち早く告げてくれたが、足を動かそうと頭で理解しても身体は言う事を聞かず、ドンッ!という鈍い音がして、ハジメの体は宙を舞った。
「ご、ぁ―――!?」
ハジメの体は地面の上を二、三回弾んでからゴロゴロと転がった。
バルファルクから致命の一撃を食らった時と似たような痛みが体中に走り、彼の苦悶の声に混じって口内に血の味が広がった。
幸か不幸か、突進を食らったお陰で気絶状態からは復帰できたがたった一撃で満身創痍。
(ク、ソがっ…こんな所で死ねるかよ…!)
ハジメは奥歯で口の奥を噛み切って、自分に痛みを与えて立ち上がる。
ゲリョスがバッと振り返って追撃の毒液を吐こうと口を開く瞬間が彼の視界に映った。
(イチかバチか――――――!)
老山龍砲は手元にある、まだ一発だが火炎弾は撃てる状態にあった。
しかし今から立ち上がって正しい姿勢で構えて狙いを定め、引き金を引く余裕はない。
ハジメは中途半端に寝転がった体制のまま、銃口だけゲリョスに向けて引き金を引いた。
―――ゴギァアアァァ!?
「ぐっ――――――!?」
火炎弾はゲリョスの口内へと突き刺さり、予想外の反撃にゲリョスは仰け反って倒れる。
ハジメも反動大の影響がダメージを受けた体にモロに刺さって呻いた。
しかし賭けに出た彼の行動が、二人のハンターに追撃の機会を与える。
「これで終わりにしましょう」
「………!」
教授、ルゥムが抜刀ダッシュでゲリョスとの距離を詰めて勝敗は決した。
神封龍剣【絶一門】の切っ先がゲリョスのトサカを叩き壊し、鬼哭斬破刀の刃が頭部を丸ごと切り落とす寸前まで食い込んで血が噴き出す。
―――ギ、ァァ…ァ……
ゲリョスの鳴き声が次第に小さくなっていき、ハジメは勝ちを確信する。
しかしゲリョスの狡賢い生態を熟知している二人は容赦なく追い打ちをかけた。
「なっ―――!?」
教授が一度引いた神封龍剣【絶一門】を、今度はゲリョスの眼球目掛けて突き刺す。
この瞬間、ルゥムも鬼哭斬破刀に更なる力を込めて完全に首を斬り落とした。
ゲリョスは暴れ出そうとするが、眼球から脳への一撃が致命傷となった。
今度こそ悲鳴を上げる力も残っておらず、ゲリョスの体はピクリとも動かない。
唖然とするハジメの前で淡々とした様子で武器をしまった教授が解説した。
「…と、まぁ…このように、ゲリョスは死に真似をして獲物の油断を誘うのですよ。これが意外と厄介な攻撃で、暴れる前に緊張を解いてしまったハンターが重傷を負ったという報告が後を絶たないのです。良い勉強になりましたねハジメ?」
「………(こくこく)」
「は、はい…痛っ…」
体力の半分以上は持っていかれたようで、ハジメは全身の痛みに苦悶の声を上げた。
それを見てルゥムはすぐさま太刀をしまって小走りで彼に駆け寄る。
アイテムポーチをサッと漁り、彼女は取り出した回復薬G2を差し出す。
「ありがとう御座いますルゥムさん……って、自分で飲めますから!」
「………(フンフン)」
「おやおや…」
「―――――――――ハッ!?」
気絶状態からようやく解放されたアレーティアが我に返る。
ルゥムに抱き起されて気恥ずかしさや何やらで顔を真っ赤にして慌てふためくハジメ。
そんな彼の言葉に対して首を横に振って頑なに介抱しようとする姿勢を崩さないルゥム。
先にゲリョスの剥ぎ取りをしている教授はそれを見て和んでいるようだった。
気が付いたら全てが終わって、目の前でイチャイチャ?されてたアレーティアはぽつりと呟く。
「………なにこれ」
ハジメが獲得した素材一覧
・ゴム質の上皮3枚
・猛毒袋1個
・狂走エキス3個
・毒怪鳥の翼1枚
・ライトクリスタル2個
・竜骨【中】2本
・鳥竜玉1個
*
三人のハンターにとっては少し残念なお知らせとなるが、第二階層に採取ポイントはなかった。
だが既に熟練ハンターとして素材のストックに余裕がある二人は落ち込む様子もなく、ハジメも先ほど剥ぎ取りが終了したゲリョスから希少な素材の”鳥竜玉”を手に入れられたことで歓喜狂乱の真っ最中でそれどころじゃない。
「――――――あぁ、そうでした。この次の階層はお二人とも十分注意してください」
「………?」
「フヒヒ……っと、ん゛ん゛っ!―――何があるんですか教授」
「階段の近くまでいけば分かりますが、第三階層は階層内の温度がある理由で常に高温状態です。幸い私は手持ちのクーラードリンクがありますので、お二人に分けておきます」
そう言ってアレーティアの荷物からクーラードリンクの瓶を4個、ハジメとルゥムに渡す教授。
ハジメは階段を降りる途中でそれを飲もうとアイテムポーチにしまい、彼女もそれに倣う。
そして……不意にビクッと肩を震わせたアレーティアの方に教授が声を掛ける。
「さてアレーティア。これで私が飲む分を除けば貴方は調合したばかりのものを飲んでもらう事になる訳ですが……覚悟は宜しいですね」
「……っ!」
「逃がしませんよ、ルゥムさん。拘束を」
「………(こくっ)」
脱兎の如く逃亡を図ったアレーティアの後ろに音もなく回り込んだルゥムが羽交い絞めにする。
何事かとハジメがオロオロしていると教授が「君は彼女の口を開かせて下さい」と指示してきた。
彼の手元に握られているものを見て、ハジメは「あぁ」とこの後に起こる全てをの事を察して、逃げようとしたアレーティアに同情はしても、避けられない事だ諦めろと目線で促す。
「いや…絶対に、それは嫌っ!!」
「我儘を言うもんじゃありませんよ。これも慣れれば美味しいのです」
そう言って教授は掌サイズのすり鉢の中にポトリとにが虫を落とす。
容赦なくそれを潰したかと思えば、手際よく”氷結晶”を混ぜ合わせた。
これが原初より代々受け継がれしクーラードリンクのレシピなのだ。
アレーティアはゴミを見るような目ですり鉢の中の青白い液体を睨む。
「あり得ない……ハンターは味覚が異常!教授は特に!!!」
「酷い事を言いますね、貴女を助けたのは私だと云うのをお忘れですか?」
「それとこれとは関係ない……!ルゥム、離して!」
「………(フンフン)」
「~~~っハジメ!!」
最後の救いと言わんばかりにアレーティアに名前を呼ばれたハジメ。
しかし彼は無言でボーンヘルムを深く被って目線を合わせず歩み寄って――――――
「許せ」
「ふ、ぐぁ―――!?」
その一言と同時にガッと力任せにアレーティアの口を開いて教授に合図を送る。
アレーティアは涙目でハジメ、ルゥム、教授、すり鉢の中の液体を睨んでいた。
ピチャッという水音と共にそれが彼女の口の中に入って、にが虫の命の源だったエキスと氷結晶の凍傷してしまいそうな冷たさが一気に押し寄せる。
「ご、ぉあぁあぁぁぁあああーーーーっ!!!??」
ハジメによって強制的にそれを飲み込む以外の選択肢を奪われてしまったアレーティアが直後に発した悲鳴が、第二階層で起きた出来事で最大のものだったと此処に記しておこう。
普通に考えたら虫をすりつぶしたエキスを飲むのに誰だって抵抗するんだよなぁ……
余談ですが昔のモンハンコラボで売られていたクーラードリンク擬きを飲んだことがある作者ですが、味は苦味の強いポカリみたいなもんでした(生産者には申し訳ないけどクソ不味いです)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
-
続編にして
-
このまま話数増やしてもいいんじゃね?
-
打ち切りはヤメロォ!
-
もっと周りの話補完して♡