モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 途中、解放者と反逆者で呼び方が統一されていないのはワザとです。
アンケートはもう少しだけ集計します。(実はある方からメッセージにて「ハジメが主人公としての話」と「周りで起きてる話」の二つに訳が方が読み易いかも?」という意見を頂いて、そちらに移行しようか検討中です)


解放者の隠れ家にて

 

(――――――俺、どうなったんだ)

 

 自分の意識がまだ残っているという事は、恐らく死んではいないのだろう。或いは肉体だけが死んでこれから魂が天に召されるか、三途の川渡る一歩手前といったところか。

モンスターとの戦いに負けて死んだのではなく、予想外の落石から人を守って……

 

(ハンターとしちゃちとカッコ悪いが……いや、まぁ…良かったのか)

 

 身を挺して守りたい人を守れたなら、彼の死には確かな意味があった。

ハジメの見間違えでなければ最後にアレーティアが驚いた表情で自分を見ている。落石からは完璧に守り切ったと見て間違いないだろうと考え、彼は満足げにフゥと息を吐いて―――

 

「……ん、ん?」

 

 まだハッキリとは覚醒していないが、徐々にハジメの五感が意識の外から情報を運んでくる。

離れたところから聞こえる草木の揺れる音と小鳥の囀り、閉じている瞼越しに感じる光、寝起きで乾いた口の中に微かに滲む鉄分交じりの唾液の味、鼻腔を擽る薬草の湿った匂い、自分の肩まで覆っている柔らかいシーツのような感触。

どうやらまだハジメは死んでおらず、天国にいる様子ではないらしい。

 

「こ、こは……」

 

 ハジメはゆっくりと瞼を開いて、眩しく感じる光に目を細めながら体を起こす。

彼が寝かせられているのは一人用のベッド、それもかなり豪華な装飾が施されている代物だ。記憶は曖昧だが、王国にいた頃に使わせて貰った高級ベッドによく似ている。

枕の傍に片手を着いて、もう片方の手で自分の体を頭から足まで軽く触れた。今の彼は頭に包帯、防具の下に履いていたインナーだけ着ている状態だ。

 

「っ!防具、それに武器は!?―――ぁ」

 

 武器は死んでも手放してはならないという教授との誓いを破ってしまったのかとハジメは焦って周囲を探し、ベッド脇の椅子に立て掛けてある武器、老山龍砲と横に並べられた防具に気づく。

 

 ボーンヘルムには光線で焦げた羽飾りの痕と落石の当たった場所には僅かだが凹み。

アロイアームは鉱石で覆った皮手袋が長期使用でかなり草臥れており、ランポスレギンスは戦闘に加えかなりの移動距離もあったせいか靴底が擦り減っている。

ボーンメイルやクックフォールドに目立った外傷はないが、血を拭き取った跡に彼は気が付く。

 

「――――――ありがとな」

 

 自分が生き残れたのはあの三人のお陰でもあるが、同じくらいに武器と防具に助けられた。

作ってくれた職人に感謝を、そして素材となってくれたモンスター達にも同じくらいの感謝を。

ようやく思考が定まってきて意識も正常に戻ってきたところで、彼の後ろから声が掛かる。

 

「ッハジメ!?」

 

「アレーティア、無事だったか!」

 

「それはこっちの台詞…!」

 

 ベッドの周りを囲っていた天幕が翻って、隙間からアレーティアが駆け込んでくる。

無事を喜ぶハジメに対し、彼女は今にも泣き出しそうな顔で飛びついてきた。

 

「うお!?」

 

「……死んだ、かと…思った…!」

 

 ハジメの胸に顔を埋めてアレーティアは零れ落ちた涙を見られないようにする。

いきなりの事にドギマギした彼は、一瞬引き攣った頬を緩ませて子供をあやす様に彼女の肩をポンポンと叩いて言った。

 

「――――――無事だ。この通り指の一本も欠けちゃいないさ」

 

「うん……!うん!」

 

 暫くの間、彼女の涙が止まるまでハジメは静かに目を閉じていた。

それからゆっくりと離れていくアレーティアが落ち着いたのを確認して問いかける。

 

「アレーティア、俺達はあの竜を倒せたのか?ルゥムさんと教授は……」

 

 ハジメは結晶の塊を頭に食らった衝撃で、意識を失う前の記憶が曖昧になっていた。

アレーティアは彼の言葉にこくりと頷いてからベッドの上によじ登り、ハジメの頭に巻かれた包帯を軽く解いて傷の具合を確かめながら疑問に一つ一つ答える。

 

「あの竜はハジメが私を岩から守ってくれた直後に死んだのを教授が確認した。私はルゥムの力を借りながらハジメを此処に運んで治療した。……ん、やっぱりルゥムが使った薬のお陰で傷自体はもう塞がってる。あと半日もすれば完治すると思う」

 

「そうか。ま、身体も寝起きで怠いだけだしな…いつでも動ける」

 

「……それで、此処は……」

 

 包帯を元に戻してベッドから降りたアレーティアが天幕を捲って外の景色を見せる。

差し込み明るさに目を細めたハジメは一瞬ここが外なのかと思った。

しかし徐々に目が慣れてきたことで、その疑問の答えが否であると答えを出す。

 

 正面に見える西洋風の三階建てくらいに見える大きな屋敷。玄関が見えるという事からハジメが今いる場所は屋敷の正面に広がる庭園のような場所と考えられる。

彼が寝かされているベッドのある場所はガゼボという西洋風の東屋みたいな建物の中。

ガゼボは人が雨宿りや日陰で休む為の建築物だが、陽の光も雨も無縁の奈落の底ではどちらの心配も要らず、恐らくだがこのガゼボ擬きにベッドを置いているのは屋敷の主の趣味だろう。

 

 そんなガゼボ擬きの周りに広がる庭園には青々とした芝が広がっており、長い間手入れをされていない生垣や観賞用の樹木があちこちで伸び放題になっている。

 

「多分、だけど…この大迷宮を作った反逆者の隠れ家」

 

「!!……そうか、ここが……」

(神代魔法の在る場所…!元の世界に帰れる手掛かりが、此処に…!)

 

 アレーティアの言葉に反応して動揺を悟られないようにハジメは息を長く吐いた。

それから彼女はゆっくりと屋敷の方を指差して今この場にいない二人の行き先を告げる。

 

「私はずっと此処でハジメの看病をしてた。二人は、あの竜の剥ぎ取りが終わってから荷物を取りに行って…今は屋敷の中と周辺に危険が潜んでないか確かめてる…。……あっ、戻ってきた」

 

 周囲に視線を巡らせていたアレーティアが声を上げてハジメも反射的に同じ方を見た。

芝生の上を歩いて木々の間から姿を現したのはルゥムだった。ベッドの上で身体を起こすハジメの姿を見た途端、彼女は無表情のまま猛ダッシュで駆け寄ってくる。

 

「………」

 

 ハジメとアレーティアが制止の声を上げるより先にルゥムは彼をギュっと抱きしめた。

当の本人がいる目の前で比較するのは申し訳ないが、アレーティアにはなくてルゥムにはある立派な母性の象徴がぎゅむと胸板に押し付けられて、思わずドキリとしてハジメは顔が赤くなる。

 

「る、ルゥムさん…!あ、えと…その…!心配かけて、すいませんでした」

 

「………!(こくこく)」

 

「…ルゥム、顔には出さなかったけどずっとハジメのこと心配そうに見てた」

 

「……あぁ、っとそのぉ……ご覧の通り、無事なので、なんといいますか―――」

 

 素直に離れて下さいと言えばいいのに…この男(ハジメ)、こんな時もヘタレ全開の童貞である。

しかしルゥムの方が無事であると分かって安心したのかゆっくりと体を離す。

それを後ろで見守ってるアレーティアの目が鋭くなっていたのは、多分気のせいだろう。

 

「ん、ルゥム…屋敷の外には何かあった?」

 

「………(フンフンフン)」

 

「…じゃあ後は教授が戻ってくるのを待つだけ?」

 

「いや、此処で待っているより俺らの方から合流した方が早いだろう」

 

 そう言ってハジメはベッドから降りて防具を着ようと手を伸ばす。

アレーティアは驚いた顔でそれを止めようとしたが、ルゥムがそっと彼と彼女の間に入る。

戦闘の可能性がほぼゼロと考えていいのなら、防具を着て歩き回るくらいは問題ない。そう彼自身が判断したのなら彼女達に出来る事は見守ることだけだ。

 

 

 防具を着て、背中に老山龍砲を装着してからハジメはルゥムの後を追い、アレーティアが彼の後ろに着いて行く。歩きながら防具越しに手の握ったり閉じたりを繰り返し、ハジメは体の感覚を普段通りに戻したところで周囲を見渡し、驚き交じりの声を漏らす。

 

「…本当に此処は地下なのか…?」

 

「私も最初来た時は驚いた。此処は他の階層と違って、空気が澄んでる」

 

 緑が生い茂るという点だけならこれよりも壮絶な階層は今までに幾つもあった。

しかしこの隠れ家中心とした空間は、心に安心感を抱かせる。流れる小川の音や草木のさざめき、ドーム型の天井から降り注ぐ謎の光まで含めて全部が人の住みやすいように調整されている。

 

 天井から伸びる円錐状のそれは明らかに鉱石類で作られた人工物である。

底面から生えた球体が謎の光を放ち、この隠れ家のある空間全体を照らしていた。

 

 壁の一部から水が噴き出して滝となり、その先で小さめの湖と小川を形成している。遠目にしか確認できなかったが、水面を魚が跳ねる様子も見受けられた。

更に彼が気になったのは庭園と屋敷から離れたところに広がる畑や家畜小屋だ。

家畜小屋には生き物の気配こそないが建物が劣化している様子はなく、畑には収穫されないまま成長しっぱなしの野菜や果物がそこら中に溢れかえっている。

 

 見る人によってはまさに桃源郷のような光景、暢気だがハジメも故郷に帰ってからの老後はこんな場所で静かに余生を送りたいと思わずにはいられなかった。

 

 歩くこと数分、開けっ放しになった正面玄関の扉を潜って三人は建物の中に入る。

流石に人の手入れがされている様子のない建物の中は少し埃っぽかった。

ハジメは軽く咳払いをし、アレーティアも気分が悪そうに口元を手で抑えた。ルゥム一人だけが気にしない様子でズンズンと奥へ、埃積もる床の上にくっきり残った教授の足跡を辿る。

玄関入ってすぐの大広間にある螺旋階段の上から教授がひょっこり顔を出す。

 

「おや三人とも来たのですか…ハジメ君、怪我の様子はどうでしたか?」

 

「問題ありませんよ教授、ご心配おかけしました。…それでルゥムさんが屋敷の外を見回ってきたみたいですけど、特に何もなかったみたいで…そちらはどうですか?」

 

「此方は…ええ、そうですね。口で説明するより、見て頂いた方が手っ取り早いかと」

 

 教授に招かれるまま、三人は屋敷の二階廊下へ進んで…建物の端に来た。

途中ハジメは閉じたままの扉を見て魔法陣が描かれているのを見て察する。

 

「屋敷の殆どの部屋は魔法で閉ざされてるみたいですね…」

 

「ええ、ですが心配は要りません。この先にある物で恐らく解決出来ますから」

 

 そう言って教授が立ち止まったのは三階に続く細い階段。教授、ハジメ、ルゥム、アレーティアの順で登っていき、四人は一つしかない部屋に入る。

部屋の中は薄暗かったが、教授が足を踏み入れると同時に柱に飾り付けてある紫色の鉱石がぼんやりと光を灯して部屋の中の様子が明らかになった。

床一面に赤い塗料で描かれた幾何学模様の魔法陣、それが何を意味する魔法なのか知っているのは四人の中で魔法を使えるアレーティアくらいだろう。

 

 しかし部屋の奥でもっと四人の目を惹くものがあった。

それは朽ちてボロボロとなった椅子、椅子に座ったまま朽ちている人骨である。黒を基調とした豪華なローブを着ている他、片方の手の薬指には床の魔法陣とは違った模様の描かれた指輪が嵌められていた。後ろの三人へと振り返って、仰々しい様子で両手を広げた教授が紹介する。

 

「この屋敷、そして大迷宮の創造主。彼こそは()()()の一人”オスカー・オルクス”

 

 




 オスカー・オルクスの話も原作からちょっとだけ変化があるかも?
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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