原作では畑の肥料扱いされた白骨化鬼畜眼鏡兄貴、今回は好待遇の模様。
オスカー・オルクスの言葉はそれで終わった。
あまりに衝撃的な発言に誰もが言葉を失い、中でもハジメが最も内心動揺している。
(神エヒトが死ぬ、それはいい。けど…世界が滅びる?…それは…)
それだけは絶対に阻止するべきだ。
彼の脳裏に過ぎるのはゲブルト村の住人達や、ブルックの町の住人達、同期のハンター達が次々に燃え盛る炎に焼き焦がされる光景だった。
まずは落ち着いて他の三人の意見を聞くべきだと、ハジメは軽く息を吐いてから振り向く。
「……とんでもない話……でしたね」
「……私も理解が追いつかない」
「………」
「これは、すぐにでも帝都のハンターズギルド本部へ情報を持ち帰り、報告すべき案件です。……そこから先は帝国のトップ……皇帝陛下や他の国のお歴々が決めることでしょう」
この場でオスカー・オルクスから聞かされた話を一言一句漏らさずギルドへ報告する。
それによって人々の生活が大きく揺るぎかねないだろうと四人は薄々感じていた。
教授はオスカー・オルクスの亡骸から指輪を拝借して、三人にある提案をする。
「まずはこの事を死して尚も記録として伝えてくれた彼に敬意を表し、亡骸をこんな薄暗い部屋ではなく……そうですね、屋敷の外の庭に埋めてあげませんか?」
「ん、それがいい」
「………(こくっ)」
「分かりました。そしたら俺が運びます」
教授と入れ替わるように亡骸の前に立って、ハジメはゆっくりと目を瞑って黙祷を捧げる。
オスカー・オルクスがこの事を伝えていなかったら、彼らは何も知らないまま滅びを迎えていた。
元の世界に帰れる足掛かりになるということも含めて、ハジメは心の中で彼に感謝した。
そして、彼の亡骸をそっと抱きかかえようとした次の瞬間――――――
「ッ!?ぐ、ぁ……!」
「ハジメッ!?」
「………!」
頭の中に直接手を突っ込まれて脳みそを揺さぶられるような不快感がハジメを襲う。
それと同時に彼の頭の中に流れ込んでくるのは、久しく聞いていない何かの詠唱の類。
さっきも聞いたオスカー・オルクスの声と同時に、ハジメはある言葉を口にする。
「………生成……魔法?」
「どうかしましたか?」
「……なんか、頭の中にさっきまで知らなかった情報が入り込んできたと言いますか……うまく表現できないんですけど、”生成魔法”ってのを、俺は使えるようになったみたいです」
「ほう、それは興味深い――――――」
一度亡骸から手を離して、ハジメは暫く壁に寄り掛かって頭の中を整理する。
神代魔法の一つ、生成魔法…それは特定の物質に対し、術者の魔力を付与して異なる性質を持った物質を生み出すことが出来る魔法だった。
特定の物質とは鉱石類であり、使用する鉱石の加工難易度が高いほど要求される魔力は多い。
後に分かることだが、生成魔法の使い手であったオスカー・オルクスもハジメと同じ錬成師だったらしく、オルクス大迷宮のとんでもない仕掛けの多くは彼の創作に因るものだという。
まだ少し片頭痛のようなものでズキズキする頭に手を置いていたハジメ。
そんな彼を見てアレーティアが心配そうに歩み寄ってきて肩に手を置く。
彼女に見上げられる形で、ハジメは息を吐いてから微笑んだ。
「ハジメ……大丈夫?」
「ん、あぁ……変な感じはまだ残ってるが……もう平気だ」
「……ハジメの言ってた生成魔法……多分、私にも流れてきた」
「!!マジか……ってことか教授とルゥムさんにも――――――」
「ええ、君が突然痛みに悶えた直後に……貴女もそうですか?」
「………(こくこく)」
ルゥムの頷きに対し、教授は頭防具のアーティアで覆った顎の位置に手を当てながら考える。
それから足元に描かれた魔法陣を見て、頭の中に流れてきた内容と同じ単語が幾つか刻まれていることから、彼はある仮説を立てた。
「恐らくですが、この部屋、この魔法陣の上に立って彼の記録映像を見た者には自動的に生成魔法が付与されるのではないでしょうか?」
「……成程、だから全員に……」
「――――――とはいえ、我々ハンターにとって魔法という存在は無縁に等しいものですね。これを与えられたからといって、我々全員が十全に使いこなせるかは難しいところです」
「ん、教授の意見と似てるけど…私も魔法は得意でも、生成魔法が使いこなせるか魔力操作で軽くイメージしてみたけど…難しい……適性が必要なのかも」
「適正……」
「――――――それも追々、この屋敷を調べながら考察するとしましょう」
教授がその場で話を一旦切る形で四人は薄暗い部屋を出て、改めてオスカー・オルクスの遺骨の埋葬をすることになった。
ルゥムとアレーティアが庭の一角から綺麗に咲いている花を摘んで花束を作る。
…ルゥムは手先が不器用なのか、或いは経験がないのか殆どアレーティア作だが…
ハジメは錬成で地面を掘り起こし、近くにあった適当な岩も錬成で棺に変えた。
教授に協力して貰いながら服を着せたままの遺骨を棺に納め、花束を作って余った分の花を合わせて棺の隙間を花でいっぱいに満たす。
(ずっと何百年…何千年もの間、一人で寂しかったでしょう…どうか、安らかに…)
掘り起こした時は錬成を用いたが、棺を埋める時は各々手作業で土を被せていった。
それが今この場で出来る、彼らなりの死者に対する礼儀といえるものだった。
墓石に名前を刻むのは教授が行った。剥ぎ取り用のナイフの刃が欠けるのも気にせず、淡々と彼は墓石にこう綴った。
*
暫く感傷的な気分に浸っていた四人も、気持ちを切り替えて屋敷の探索を始める。
…まぁ指輪が無ければ部屋を開けて中を調べることも出来ないので一緒に行動するのだが…
教授が最初に開けたのは書斎、例の御伽噺とわらべ歌について調べた。
しかし数千年も経って劣化が進み、とてもじゃないが読める状態ではない本が殆どだった。
(……こういうのも記録映像で残すって発想はなかったのか……オスカー・オルクス……)
あまりに衝撃的な内容故に記録する本人が慌てて行動に移した結果そこまで考えに至っていなかったのか、或いは単にあの記録映像で見た優男らしい見た目からついうっかりその事を忘れてしまったのか、真相は闇の中である。
古い文献を読み解くことに長けた教授のお陰で、なんとかある程度は解析が出来たが……
「数多の飛竜、駆逐―――蘇る―――数多の肉、骨、血―――彼の者―――土、鉄、水、風、木、炎―――その者の名――――――叫べ、聞け、祈れ―――天と地とを覆いつくす―――」
「キョダイリュウ……デンセツ……ヨミガエル」
「………」
聞いているだけで不安になるようなフレーズばかりが並べられた伝説と、わらべ歌にしては随分と物々しい雰囲気を彷彿とさせる歌詞の内容だった。
しかしただビビっているだけでは何も始まらないと、ハジメは素人意見を承知の上で話す。
「天と地を覆いつくす……それほどに巨大なモンスターってことでしょうか?」
「ギルド本部の記録に、そのようなモンスターが存在していたとの報告はありませんでした。……ですが、ギルド発足の時点で集められた記録はせいぜい百年程度。この御伽噺やわらべ歌が人々の記憶に在った頃であれば、それも可能性の内に入れていいでしょう」
「……けど、それなら今まで一度も発見されていない事に疑問が残る」
アレーティアの言う通り、仮にその超巨大モンスターが滅びの元凶だと仮定しても、天と地を覆いつくすほどのサイズともなれば地中や海中に潜んでいたとしても今まで誰かしらの目に留まっていもおかしくないはずなのだ。
「数多の飛竜、駆逐…それに肉、骨、血っていうのも…このモンスターが飛竜の大群を相手取っても一網打尽に出来るくらい強いってことなんですかね?」
「その点に関しては確信を以て是と言えるでしょう。歩く災いとまで恐れられる古龍は、現れる度に他のモンスター達を悉く縄張りから消していますから。この御伽噺やわらべ歌に語られる存在が、その程度の事を出来ない筈がない」
「……そうすると……滅びの元凶となるモンスターは古龍……?」
「それに準ずる、危険生物と捉えるべきでしょうね」
余談だが三人がこうして様々な考察をしている間、絶対に喋ることのないルゥムが何をしていたかというと、ハジメに頼まれて積まれた本の山を整理する為に本棚と机を行ったり来たりしていたのだ。ちょっと不憫な気もするが、本人は相変わらず無表情で気にしている様子もない。
それから三十分ほど経って、情報量があまりに少なく、解析するにも専門的な学者の意見が必要不可欠との結論に至って、滅びの元凶を調べるのは保留となった。
「さて…先ほど彼女が面白い本を一冊、本棚から持ってきてくれましたよ」
御伽噺やわらべ歌の本に比べて、掌より少し大きいくらいの使い込まれた手記。
表紙の内側にオスカー・オルクスの名前が書かれていることから、彼のものだろう。
中には他の神代魔法、彼の話で少し触れた他の生き残りである解放者達について書かれていた。
他の三人に意識されないよう、ハジメは心の中で興奮を抑える。
(これだ…!これだけは確実に、今この場で全文暗記する…!)
「オスカー・オルクス同様に彼を除く生き残り六人の解放者達も、それぞれ隠れ家を大迷宮の奥底に隠して、見事辿り着いた者に神代魔法を教える手筈になっているようですね。……他の大迷宮について場所が判明しているのは旧大陸の地図と現在の地図を照らし合わせると……」
「樹海、大峡谷、火山、雪原の四カ所」
「此処を含めて五つの大迷宮は時間をかけて探せば見つかるとして……他の大迷宮に関しての情報は、書いて無さそう……ですね」
「神代魔法自体は、我々ハンターから見て欲するものではありませんが……他の大迷宮にも先ほどの滅びの事象に関する新たな記録が残されている可能性は大いにありますね」
オスカー・オルクスの手記に曰く、他の解放者の中には人ならざる者もいたという。
彼が人として天寿を迎えたのであれば、それを数十年、数百年単位で遅れながらに追いかける形で亡くなった解放者もいるだろう。
その数十年、数百年の間に彼らが滅びの事象に何らかの答えを得ているかもしれない。
「いずれこの四カ所には調査が必要かもしれませんね。…それも、これらの情報を報告した後、追ってギルドから連絡が来るでしょう」
ハジメはそれを聞いて安心と不安の両方で心を板挟みにされる。
前者は他の大迷宮を攻略する際に、情けない話だがオルクス大迷宮のような恐ろしいモンスターが跳梁跋扈する場所であれば、ハジメ一人の力で突破することは不可能だった。しかし他のハンター達と協力すれば、恐らくは短期間で四カ所の攻略も可能だろう。
一方で不安に感じたのは、この情報をギルドや帝国が知って「不用意に人を立ち入らせないよう制限をかける」等という命令が下された場合。ハジメはハンターとして、また帝国市民としてもその命令に背くことになってしまう。
(……トレイシーさんに、お願いするしかないんだろうか……)
こんな時、自分のややこしい立場に頭を抱えたくなるハジメだが、故郷へ帰るという最重要事項を達成する為に、外聞やら立場やら気にしている余裕は無いと悟る。
越権行為になりかねないが、もし仮に立ち入り制限などの命令が出た場合、ハジメだけでも特例で大迷宮を調査出来ないかを、トレイシーに相談しようと彼は考えた。
そうしてハジメが思考の海に浸っている間、アレーティアがある事に気が付いた。
さっきまで忙しく動き回っていたルゥムが一冊の本を手にして突然立ち止まっている。
「――――――ルゥム?」
「………っ!」
小さく息を呑んでピクンと肩を震わせた彼女は振り返って「何でもない」と言わんばかりに首を振る。アレーティアは気になりはしたが、特に追及することもなく「ん、気のせいにしておく」と言って他の本を調べる作業に戻る。
ルゥムが持っていた本のタイトルには、こう書かれていた。
最後の最後でオリキャラに新しいリアクションを発動させた挙句、ストーリーズ要素をぶっこんでいくスタイル(前々からそれっぽり発想はありましたが、書くのは初めて)
調べていく内にストーリーズの内容ネタバレは厳禁と公式から言われてるっぽいので、設定を幾つかお借りしたうえで独自解釈&オリ展開に混ぜ込んでいきます。
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡