モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 原作でハジメ作だったアーティファクトがオスカー作に置き換えられています。
毎度恒例ですが設定などは一部独自解釈交えて書いてますのでご注意を。


天才オスカー・オルクスのアーティファクト

 

「私はこの書斎に残って記録の写しを行います。三人はこの指輪を使って協力し、他の部屋の調査を行って下さい。――――――いいですね?」

 

「了解です」

「ん、任された」

「………(こくっ)」

 

 教授を書斎に残して、ハジメ、アレーティア、ルゥムの三人は次の部屋へ向かった。

書斎の隣には食堂と部屋の中で繋がっている調理場がある。不思議なことに、食料が貯蔵されている様子やそれらが腐敗している様子も一切なく、中はがらんとしている。

念の為に何かないかと三人は手分けして部屋の中へと足を踏み入れた。

しばらくガサゴソと棚やら壺の中やら調べていると………

 

「うおっ……こりゃ葡萄酒(ワイン)か………?」

「……多分。中は……千年単位の熟成の味?」

「………(こくこく)」

 

 余談だがワインは高級品ほど年代ものが多く、最古のワインで50年もの等が存在する。

一般に流通する安物のワインというのは熟成を考慮して造られておらず、栓を開封した後は速やかに飲み切らないと味が劣化するらしい。

 

 ボトルを手にしたハジメの横でアレーティアが悪戯っぽく笑う。

この世界の瓶詰め技術が彼の故郷のそれと同程度なら多少の癖はあっても人によっては良い風味が感じられるかもしれない。

…が、ハジメは引き攣った笑みで逆に言い返す。

 

「飲みたいと思うか?」

「……遠慮しておく」

「………(こくこくこく)」

 

 蛇足かもしれないが、ルゥムの頷きはアレーティアの返答に同意するものである。

三人はワインボトルを元の棚へと戻し、これ以上は何もないだろうと判断して部屋を出た。

それから一部屋か二部屋、客間や応接室といった高級感溢れる調度品や家具を除いて調べるものはないところを通過して、三人は変わった扉の前で立ち止まる。

 

「……此処だけ、扉の材質が違いますね……」

「………(こくっ)」

「…念のため、警戒」

 

 これまでの木製の扉と違い、重厚な金属で出来た金庫扉のようなもの。

ハジメが指輪を翳す横でアレーティアが何が起きても対応できるように身構えた。

しかしその横でルゥムは武器を構えることなく自然体で立っている。

 

 指輪が光り輝き、浮かび上がった幾何学模様と金庫扉の表面に刻まれた魔法陣が一致する。

ガチャリと錠の外れる音がして、ハジメが少し強めに力を入れて押すと、金庫扉がズズズと引き摺るような音を立てながら奥へと誘う。

 

「これは………工房か?」

「ん、多分そう………奥に図面みたいなのもある」

「………(こくっ)」

 

 これまでの小綺麗な部屋とは違って、床や天井に凸凹の岩が剥き出しになっており、部屋の中に窓は存在せず、代わりに空気を循環させる為の穴が、三方の壁に何個か開いている。

薄暗い部屋の中にハジメが足を踏み入れると、独りでに机の上のカンテラみたいなものから光が灯って部屋全体を明るくした。

 

 工房の入り口には、屋敷の主オスカー・オルクスが使っていたとされる作業道具が一式並んでおり、錬成師の端くれとしてこの世界の工具知識も齧っているハジメは、それが古い型式のものに似ていると気づく。

 

 アレーティアが指さす机の上には先ほどの灯りとなった光を放つカンテラの他に、劣化して使い物にならなくなった羽ペンや書斎の本と同様に劣化し過ぎて文字が見えなくなっている羊皮紙の巻物が幾つも積まれていた。

 

「あのカンテラの光……第一階層で見たのと色は違うが……緑光石か?」

「…そうみたい。カンテラの中に埋め込まれた緑光石から、強い魔力を感じる。……でも、緑光石とは性質がちょっと違う」

 

「性質が違うか……さっきの生成魔法が関係してそうだな」

「ん、あれもアーティファクトの一種で間違いない」

 

 既に故人とはいえ、生成魔法を用いて生み出した発明品(アーティファクト)が魔法のカンテラとは…

オスカー・オルクスという人物はかなりの変わり者だったのかもしれない。

 

 そんな事を考えながらハジメは部屋の中を進んでいき、机の陰にある箱の前で立ち止まる。箱の天面に彼の目を惹く言葉が刻まれていた。木箱を持ち上げて、それを読み上げる。

 

「―――狩りに役立てろ?」

 

「ハジメ、それって――――――」

 

「オスカー・オルクスのアーティファクト第二弾、だな。……さて……魔法のカンテラの次は何が出てくるんだ?――――――って、これは」

 

 蓋を開けてハジメが手に取ったのは、()()()()()()()であった。対人用にしては普通の矢を撃てるような大きさをしていないし、対モンスターにしたって()()()()()()()()()()()()()()くらいしか使い道が思い浮かばない。

すると、小さな弩を収めてあった箱の底に一枚のメモが入っている。

大きな字で書いてあるのは、恐らくこの小さな弩のようなアーティファクトの名前だろう。

 

「………”スリンガー”?」

 

 小さな弩のようなアーティファクト改めスリンガーの用途は、彼が想像していた通り石ころ等を装填して狙った方向へ射出する事を目的としている。

一見あまり役に立たないような気もするが、ハジメはメモに書かれている玉の種類を見て、そこに閃光玉という名前があったのを見てハッと閃いた。

 

「……そうか。ハンターの投擲が、これを使えば……」

 

「ハジメ、これの使い方……分かったの?」

 

「ん、あぁ……まだ何となくイメージしか掴めてないけどな……」

 

 ハジメは一度スリンガーを机に置いてアレーティアに思い浮かんだイメージを説明する。

例えばこんな場面、距離の離れているモンスターに対してハンターが閃光玉を投げた。

しかし投擲した閃光玉の飛距離が足りず、モンスターの動きを止められなかったとする。

 

 だがこのスリンガーを使って、閃光玉を撃ち出した場合はどうなるか?

人の手よりも精度は高く、撃ち出す玉の飛距離は飛躍的に伸びるだろう。

そうすれば先ほどのような失敗は起こらない。

 

「メモによると…スリンガーは腕に巻きつけて使うらしい」

 

「…巻き付ける?」

 

「物は試し……っと、こんな感じか?」

 

 ハジメはスリンガーを手首から下、肘よりやや上の表向きにベルトで固定する。

アレーティアが距離を取ったのを確認してから、ハンターの武器を使った基本的な動作を行いながら、スリンガーが動きを阻害しないことを確かめた。

 

「こりゃ凄い。重量もそんなに無いし、()()()()()()使()()()()()

 

「…それって凄いこと?」

 

「ああ。これを使えば、近接武器を使うハンターにも遠距離攻撃手段が生まれる」

 

 ハジメが見たメモには石ころ以外にも目を惹くスリンガー用の玉が記されている。

その中にはハンター達がギルドから支給される”投げナイフ”の名前があった。

投げナイフ自体の威力は低く、現状は大タル爆弾の起爆くらいにしか使い道がない。

理由は不明だが、ギルドからの制約で持てる本数も五本に定められている。

 

 そんな投げナイフは毒テングダケやマヒダケといった状態異常系の効能を持つ素材と組み合わせることで”毒投げナイフ””麻痺投げナイフ”に調合することで真価を発揮するのだが、それも一々武器をしまって投げる手間が発生し、好んで使うハンターは少ないという。

 

 武器を納刀して、投げるというこれまでの常識とされてきた一連の動作が、事前にスリンガーへ投げナイフを装填することで、いざという時は狙って撃つだけに変わる。

両者の行動に2,3秒の差が生じるのは必然であった。

 

「しかも、スリンガーの機能はこれだけじゃない」

 

「…その下のロープ?」

 

 アレーティアが指さしたのはスリンガーの翼*1に相当する場所から下にある円盤のようなもの。薄く平べったい釣竿のリールを思わせるそれには細いロープが巻かれていた。

ロープの先はスリンガーの先端で黒光りする鏃に繋がっている。

メモには使用方法が書かれているだけで、ハジメはその内容に若干引いた。

 

「オイオイ……こんなの常人じゃ使えねえだろ……」

 

「どういうこと?」

 

「この鏃を射出して、中のロープを延ばしながら特定の箇所に刺したり巻き付けたりして、それをスリンガーが巻き取るのに合わせて使用者が移動する。……普通の人間なら、巻き取る時に生じる負荷で身体が壊れる。……ハハッ、頑丈な体を惜しまずに使ってワイアーアクションしろってか?良い趣味してるよ、オスカー・オルクスは……」

 

「……動力が何なのか、それが一番気になる……」

 

 アレーティアがぽつりと呟いた疑問に対して、ハジメも「そうだな」と軽く返事をする。

しかし、このスリンガーがオスカー・オルクスの発明品である以上、疑問の解消は難しい。

当の本人は既にこの世を去っており、恐らくその動力源やら制作過程を知るには………

 

「設計図とか、その辺にないか探してみる」

 

「ん、頼んだアレーティア。俺は他にどんなアーティファクトがあるか調べてみるよ――――――っておわっ!?ルゥムさん、いつの間に……」

 

「………(すっ)」

 

 二人が話している間、黙々と部屋の中を漁っていたルゥムがある物をハジメに見せる。

それはオスカー・オルクスの手に嵌められていた指輪とは違ったデザインの指輪だった。

真紅の透明な宝石はルビーを彷彿とさせる。

 

「この指輪は…」

 

 ハジメはそれを手に取った瞬間、ハンターが使()()()()()()()()()と似た感覚を覚えた。

目線でルゥムに問いかけると彼女が既にそれを試したのか首を左右に振る。

 

「…まさか、こんな形でも在るなんて…」

 

 ルゥムが指輪の置いてあった場所からメモを取ってきた。

指輪の形をしたアーティファクト、名前は”宝物庫”……なのだが……

 

「この感覚……間違いなく”アイテムボックス”ですよね?」

「………(こくこく)」

 

 ハンター達が活動拠点としている集会所や訓練場、闘技場といった施設には必ず置かれているのがアイテムボックスであり、その実態は謎に包まれている。

全員が同じアイテムボックスを使っているのに、中から取り出せるのは個々で保管したもの。

武器や防具などの一部を除いて別の拠点に残してきた素材やアイテムも、移動した先でアイテムボックスがあれば自由に取り出しが可能という優れもの。

 

 武器や防具と一緒にモンスターの素材や生きたままの魚、虫などを何十匹…いや何百匹放り込んでも使用者が望んだものだけを正確に取り出せる仕様になっている。

箱の大きさに対して、何故それだけの物が入るのかはハンター史上始まって以来、未解決の謎。

 

 宝物庫のメモ書きにはアイテムボックスと似たような説明が記されており、上位互換といえる点は従来のアイテムボックスにはない、()()()()()()()()()()()()である。

 

(ひょっとして、この宝物庫の仕組みを解析出来たらハンター全員が喜ぶんじゃないか?)

 

 これまでは集会所や一部の場所でしか使えなかったアイテムボックスが、指輪として持ち運べるように改良・量産化されて個々のハンター達に配られたとしたら?

クエスト中に頻発するアイテム不足などに悩まされるハンターの数は激減するだろう。

フィールド探索中の採掘、採取で得たアイテムがポーチの所持数限界を超えたとしても、その場でアイテムボックスに送れたら一々町に戻る必要がなくなる。

 

「ヤバいっすね、俺達のハンターライフに革命が起きますよルゥムさん」

「………(こくこくこく)」

 

 

 その後も三人は工房を探索し、オスカー・オルクス作のアーティファクトを何個か見つけた。

 

 一つ目は魔力を動力源とする義手。トータスにも義手や義足というものは存在するが、神経伝達物質の研究が浅いため、形だけで動かすことの出来ないものが殆どであったという。

しかし魔力を動力源とする時点で常人にはあまり使用がおススメ出来ない代物だと分かった。

試しにアレーティアが接続部に魔力を注ぎ込んで動かしてみたが――――――

 

「……ん、そこそこ吸われる……ずっと使うのは大変」

 

 魔力量が一般人の数十倍以上ある彼女がそこそこという時点で、一般人が死ぬレベルである。

何らかのギミックを搭載する予定だったが、どうやら作成者であるオスカー・オルクスがアイデアに詰まって途中で開発を止めてしまったのだろう。近くに置かれた図面などを見ると、書きかけで乱雑に消された痕が幾つもあった。

 

「でも疑似神経の発明自体が歴史上初。色々な事に応用出来ると思う」

 

「魔力消費量の低下も、多分専門家の知恵があればなんとかなるだろうな」

 

 二つ目は原動機だけの開発で止まってはいるが、設計図で全体図が見えていた。

その形に覚えのないアレーティアとルゥムは首を傾げ、ハジメは驚きのあまり言葉を失う。

オスカー・オルクスが作ろうとしていたのは魔力を原動力とした()()()だったのだ。

更に彼はまだ自転車の概念すらないこの世界で、大型二輪まで創ろうとしている。

 

(……オスカー・オルクスは本当にこの世界の住人なのか……?)

 

 自分達とは違う方法で、異世界転生した現代知識のある地球人なのではと疑いたくなる。

魔力で動く四輪車と大型二輪。中二風に表現するなら”魔導オートモービル””魔導バイク”

なんだか背中がむず痒くなる気がして、ハジメはそれ以上考えるのを止めた。

 

 そんな彼の様子を見て二人はこれが何なのか知っているのかと彼に問いかける。

ハジメは一から説明すると長くなるので、車というものがどういう発明品なのかを軽く説明して、目の前のこれが魔力で動くという点を除けばほぼ故郷の車と仕組みは同じであることを話した。

 

「……ハジメの世界、すごい」

「………(こくこく)」

 

「ん、そうか。……そう褒められると……悪い気はしないな」

  

「ハジメも車、動かせるの?」

「…いや、俺の故郷だと車を運転するのに免許っつー…まぁ、分かり易く言えば資格が必要でな。まだ俺はそれを取ってないから、運転は出来ないよ」

 

(親父の運転を助手席でずっと見てたし、暇なときに親父の書斎で教習所の本とか読み漁ってたから……動かすことは出来るんだろうけどな)

 

 とはいえ交通ルールや車の存在に不慣れなこの世界での運転はあまりに危険だろう。

ハジメはこの図面を持ち帰るにあたって、故郷で学んだ運転教本の内容を思い出して、一文も逃さず教えて守らせることを固く心に誓うのだった。

 

(あと車でドライブより、個人的にはバイクで一人旅のが憧れあるんだよなぁ…)

 

 過激なハリウッド映画作品ならド派手なアクションにバイクは欠かせない。

その手の映画作品を網羅しているハジメにとって、バイクの運転は将来の楽しみであった。

あと中学生くらいの頃に読み漁ったキ●の旅とかの影響もあるとか。

 

(このバイクの設計は……まぁ暇がある時にやってみるかなぁ……こっそり設計図写しとこ)

 

 そんなこんなで三人の工房探索は終わり、部屋を出る頃には外が暗くなっていた。

 

*1
一般的な弩で云うところの翼、弓で譬えるならアッパー・リブとロアー・リブ




 肝心の車とバイクの耐久性ですが、普通に脆いです(ボルボロスの突進で大破するくらいには。動力系に異常を与えるため全属性が弱点)
原作だと遺骨に嵌ってた指輪が屋敷の結界とかを解く+宝物庫っぽいんですが、本作では別々の存在として書きました。

宝物庫……工房にあったアーティファクト、ハンター曰く指輪型アイテムボックス

遺骨の指輪……屋敷の結界を解いたり、他の大迷宮攻略に使う為の指輪

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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