付け足して……この話で出て来るのは「通常個体」のベヒーモスです。
ワールドには更にこれを凶悪にした「極個体」がいます。
王国の騎士団と団長のメルド率いる神の使徒一行はオルクス大迷宮を訪れた。
第一の階層から二十層までを攻略して二十一層へ到達するまでが、その日の目的である。
しかし最後の二十層で檜山大介が起動した転移のトラップが、悲劇の引き金となった。
オルクス大迷宮の六十五層に転移させられた彼らの前に現れた巨大なモンスター。
全身は黒い毛を逆立てて、筋骨隆々で山を思わせる大きな体とそれを支える太い四肢。
頭には鋭く捻れた一対の角が生えており、双眸は戦いへの猛りを秘めていた。
四足歩行の巨体を大きさ以上の存在感に際立たせているのは、棘の生えた長い尻尾。
生態系が謎に包まれたモンスター、古龍種の中でも特に情報が少ない伝説の魔獣。
ベヒーモスは転移してきたメルドたちを即、敵と認識して咆哮を上げながら襲い掛かった。
これはよくある話――――――運命の賽子に抗えなかった、哀れな少年少女たちの末路。
*
「グ、ルアアァァァァァッ―――――――――!」
ベヒーモスは天に向かって
既に咆哮の怯みから解放されたメルドと彼の率いる騎士たちが動いていた。
勇んでベヒーモスの前に出ようとする勇者、天之河光輝をを引き留めて後ろへ下がらせる。
「「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さずっ”聖絶”!!」」」
彼らが展開した守りの障壁。それは王国が誇る騎士、最高戦力の持つ絶対の防御。
しかし半球体状の守りを突き破って、赤熱の塊が彼らの頭上より三度、降り注いだ。
「うぐ、あぁぁぁぁ――――っ!」
一発目のメテオはメルドの頭上へと直撃して爆発する。
その結果、まともに爆炎を纏った衝撃を食らったメルドは後ろへと吹き飛ばされた。
左右に展開していた騎士の三名は、橋の両端にまで吹き飛んだ。
二発目、三発目が後ろへ吹き飛ぶメルドへ追い打ちをかけた。
そしてそれの衝撃を更に食らった騎士三名は――――橋の外へと弾き飛ばされる。
「「「団長ぉぉぉ………!―――――――」」」
助けの手を求めて宙で藻掻いた騎士たちは、呆気なく橋の下へと落ちていく。
落ちてしまえば最後、誰も帰ってこない奈落の底へと、三人の騎士は消えていった。
「メルドさん!!」「ちょっと光輝!アンタがいなくなったら――――」
一人の騎士に誘導されて、橋の周囲を飛び回る小型モンスター蛇竜ガブラスの攻撃を退けた光輝は橋の上で一人倒れたまま動かないメルドへと駆け寄る。
光輝の率いる勇者パーティーの一人、八重樫雫が彼を呼び止めようとしてガブラスに邪魔された。
細い尻尾を叩きつけるガブラスに対して、雫は剣を斜に構えて受け流そうとする―――だが
―――シャアッ!
「――――――っぅ!………ガハッ!」
「雫ちゃん!!」
視覚外から襲ってきた別のガブラスが、鋭い爪で雫の背中を切り裂いた。
空中から急降下での爪による斬撃を受けた雫は痛みに苦悶の表情を浮かべ―――
直後、受け流す筈だった正面のガブラスから放たれた尻尾を胴体に叩き込まれて吐血する。
治癒師の白崎香織は傷ついたクラスメイト達を纏めて治療しようと試みていたが、親友の危機に悲鳴を上げて駆け寄ろうとする。――――それが更に混乱を招くとは考えられず。
「メルドさん……?しっかりしてください、メルドさん!」
光輝は地面に倒れ伏して微動だにしないメルドの身体へと手を伸ばしたが―――
「熱ッ!!?」
メルドの着ている鎧が溶けて変形してしまうほどの熱に手を引っ込めてしまう。
その間にもベヒーモスは敵対者たちの残党を狩ろうと狭い橋の中を進んでくる。
光輝は怒りの感情を爆発させて剣を握り、正面のベヒモスへと叫ぶ。
「よくもメルドさんを…!騎士団の人達を……!許さない!」
「やめろ光輝!戻れぇっ!!!」
勇者パーティーの一人、坂上龍太郎がガブラスを払いのけながら光輝に叫ぶ。
普段の彼であれば光輝の無茶に対して呆れながら笑みを浮かべて付き合うくらいの事は出来た。
しかし今は撤退するクラスメイト達に襲い掛かるガブラスを相手にして、身動きが取れない。
自他ともに認める脳筋な彼でも分かる。―――ベヒーモスはいまの自分たちでは、倒せない。
たった一撃、頭上から突如襲来した隕石のようなものの攻撃を三回食らってメルドは倒された。
彼に続いた騎士たちは隕石の衝撃に吹き飛ばされて、六十五階層より下の奈落へと落ちていった。
底の見えない高さだ、絶対に助からないだろうと龍太郎でも分かる。
今の自分たちに出来る事が何か?
それはメルド団長たちが僅かに稼いだ時間を無駄にせず、この場から一人でも多く生き延びて戻ることが先決である。―――だが光輝は聞く耳を持たない。
「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で――――「グルアァァッ!」―――」
本来であれば長い詠唱を終えて剣から放たれる極光の斬撃がベヒーモスを襲ったのだろう。
しかし、目の前の敵が呟く詠唱を待ってくれるほど、古龍は甘くない。
橋全体に迸る雷光、それが何を意味するのか誰もが分からなかった。
次の瞬間―――――上の階層に続く出口で止まっていたクラスメイト、治癒の魔法を雫にかけて微動だにしない香織、ガブラスを相手に拳だけを振り回す事しか出来なかった龍太郎。
そして……詠唱をしている途中だった光輝の頭上へと雷が撃ち落された。
*
この日、神の使徒は事実上の崩壊となった。
オルクス大迷宮から命からがら生き延びた騎士アランによる報告はこうだ。
二十層で起きた転移トラップの発動により、六十五層へと転移させられた騎士団と神の使徒は、伝説の魔獣と恐れられる古龍種のモンスター、ベヒーモス一体と無数の蛇竜ガブラスに襲われた。
騎士団のメルド・ロギンス団長はカイル、イヴァン、ベイルの三名を連れてベヒーモスと対峙。
その隙に報告者である自分が神の使徒たちを連れて六十五層から撤退する……筈だった。
ベヒーモスとの交戦から一分も経たないうちにメルド・ロギンス団長は戦死。
カイル、イヴァン、ベイルの三名は攻撃を受けて橋から転落、生死不明となる。
自分もその後の光景をハッキリと見た訳ではなかった。最後に昇りの階段へと入ってこれた神の使徒のひとり、園部優花の証言によると―――橋の上に落雷が降り注ぎ……
神の使徒の勇者パーティー、意識不明の重傷で生還した結界師、谷口鈴を残して全滅。
永山パーティー、他の神の使徒を先導していた暗殺者、遠藤浩介を残して全滅。
檜山パーティー、槍術師の近藤礼一を残して全滅。
園部パーティー、証言者の園部優花を残して全滅。
生還は自分を除き
詳細はメルド団長のみが知っていたもので、現在ホルアド市内を捜索中。
その報告を受け取った教皇イシュタルは、何も言わずただ神エヒトへの祈りを捧げた。
王国の貴族たちは未知の魔物に対して恐怖した。一人生き残ったアランを批判した。
そして――――畑山愛子は報告を受けて治療院に運ばれる虫の息だった谷口鈴を見て失神。
その後は生きる気力を失って、与えられた自室に引き籠る日々を送ったという。
これはよくある話の、彼らが辿るかもしれない終わりの物語の世界。
それが果たして正しい世界の道に続いているのか、それは神エヒトですら分からない。
グロテスクな表現に期待していた方々、ごめんなさい。
ベヒーモス君が人を捕食するイメージがどうしても湧きませんでした。
どっちかっていうとドドガマル君を銜えてる映像イメージしか……
兎にも角にも、彼らの話は此処でいったんお終い。
次からは南雲君がハンターを目指す為の第一歩を踏み出す…かもしれません!
感想とか待ってまーす!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡