何気にモンスター戦の描写は久々かもしれません。
あと、不完全燃焼気味なのて後編に続かせて大型モンスター出したいです(我儘)
ウルの街を照らしていた太陽が灰色の雲に隠れ始めたのは昼を過ぎてからだった。
水妖精の宿でオーナー代理をしているフォスが窓をしめていると、裏の勝手口が開かれる。
「あぁっ!リンネさん!掃除サボってどこにいってたんですか!!」
「めんごめんご、ちょっと野暮用。――――またちょっと出て来る」
勝手口を開け放って店の中にズカズカと入ってきたリンネ。
フォスは掃除をさぼった理由を詳しく聞き出そうとしたが、彼女が普段よりも険しい表情を浮かべている事に気づいて口を閉ざした。
リンネが向かったのは宿の従業員が使う休憩室の先、彼女の自室。
自室のドアを開けたままで、リンネは自室の隅に置かれたハンター専用の”アイテムボックス”から幾つかの装備品を取り出した。
ルゥムと同じ、飛竜の甲殻に覆われた金色の鞘に収まった背丈より長い太刀”飛竜刀【月】”
彼女の髪型に合わせた角飾りや灰色の皮と白い剛毛に覆われた”EXオルムングβシリーズ”
右腕にはハンターの力、スキル効果を増幅させる装飾品”護石”
腰には”剥ぎ取り用のナイフ”と”アイテムポーチ”
ポーチの中には身分を証明する為の”ステータスプレート”の他にハンターである証”ギルドカード”
服を脱ぎ捨てて半裸になったリンネ。衣擦れの音と金属の擦れ合う音でフォスは彼女が何をしようとしているのか察して不安そうな顔を浮かべる。
「……また、モンスターですか……?」
「勘……だけどね。最近は監視所からの定期連絡での目撃例も多くなってるし、念入りに街の周りと田んぼの周りはモンスター除けの”こやし玉”巻いておくよう町長に伝えといて。……さて」
リンネは防具を身に纏い、アイテムポーチの中にボックスの中から慣れた手つきで放り込む。
最後に片腕で太刀の腹を掴んで掲げ、背中の定位置へと佩く。
ステータスプレートに映るリンネの概要は以下のようになっている―――。
リンネ・ユキト 32歳 女 レベル不明
天職:無し
筋力:???
体力:???
耐性:10
敏捷:50
魔力:0
魔耐:0
技能:言語理解
それを見て彼女はふっと笑う。
ハンターになった者は皆、同じように表記されてしまうのだ。原因は何百年経っても不明。
しかし天職が無しという
それを懐かしいと思い、また料理をしていた時のように過去の記憶が呼び起こされる。
(アタシがハンターとしての本業を捨てて、もう十年か……未だに実感がわかないなぁ…)
あくまでハンターとしての活動を辞めているだけで、モンスターと戦わない年は一度だってなかったことを思い出して、リンネは自分の
(あの時と同じようには戦えなくなったけど―――まぁ、
「それじゃあ悪いんだけどフォス、ちょっと見回り行ってくるから」
「分かりました。……お気をつけて下さいね、
「今はアンタがオーナーよ。腕一本とれた宿屋のオーナーとかイメージ悪くなるでしょうが!」
あまり笑えないブラックジョークを飛ばして正面玄関からリンネは出ていった。
フォスは開けっ放しだった彼女の部屋に脱ぎ散らかされた衣類を見て、やれやれと言いながら、妙に慣れた手つきで畳んでいる。
こうしてリンネが急に宿屋を飛び出して、その後片付けを彼がするのは今回が初めてではない。
宿屋のオーナーとしてリンネに指名された時から、或いは彼女が街を守ってハンター生命を絶たれた瞬間から、フォスは静かに彼女の私生活を支えていた。
その事にリンネが気づいて、フォスの給料を時々多くしている事も、彼は知っていた。
街を支える用心棒は、宿屋のオーナーを務める男によって人知れず支えられているのだ。
*
ウルの街から農耕地域までは片道徒歩で数十分かかる。
農耕地域は川から水を引いて田んぼを作り、そこに稲を植えて育てていた。
しかし川沿いの針葉樹林と隣接する農耕地域は季節により、極稀ではあるがモンスターに出くわす事があり、農作物が荒らされて、働く者たちが襲われることもある。
リンネは息を荒くしながら緩やかな斜面を駆けあがった。
一歩踏みしめる度に背中の飛竜刀がカチャカチャと音を立てて揺れる。
彼女の眼は既に臨戦態勢へと入っており、目に映る全てを注意深く観察していた。
木の揺れ、小動物の動き、川に流れる水から吹き降ろす風に舞い上がる枝葉まで見逃さない。
耳は自身の体から発せられる鼓動、木々の擦れ合う音、、水の音から風の音まで聞き分ける。
そして―――――ほんの僅かだが、彼女の耳は樹林の奥から聞こえる獣の唸り声をキャッチした。
(……いる。数は一、二……多くても四か。……四足で歩いている、飛竜種みたいな大きさじゃないけど、人よりは確実にデカい……”牙獣種”……おおかた群れから逸れた”ブランゴ”かしら?)
―――ガルルッ!
―――グルァッ!
音の発生した場所へと近づくにつれて、モンスターの鳴き声はより明確な敵意をもって響いた。
しかし彼女の長かったハンターとしての経験と知識が、モンスターの正体をブランゴと仮定して、無視できない疑問が浮かぶ。
(群れを統率する”ドドブランゴ”が近くにいないのは何故……?)
牙獣種のモンスターは取り分け知能が高く、社会性に優れた個体が多い。
中でもブランゴは別格で、雪山における彼らの群れで行う狩りは狼のそれとは比べ物にならない。鋭い爪や牙を使った攻撃、雪を投げつけて獲物の動きを封じる多彩な動き。
そしてブランゴ達には必ず群れを指揮するリーダー格というものが存在する。
より強固に鋭く発達した爪の他に前足がブランゴより大きい。
立派に伸びた牙こそがリーダーの証。
それこそが中型モンスター牙獣種”ドドブランゴ”である。
このドドブランゴというモンスターは一体いれば雪山一つに生息するブランゴ全てを掌握して、モンスターとは思えないほど高い知能を有した戦法を駆使して縄張りを侵す者を襲う。
ボスであるドドブランゴの指示や許可もなしに、子分であるブランゴが雪山を降りて白い体で目立つと分かっている針葉樹林に姿を現すことが、そもそもおかしな話だ。
(……考えても始まらない……か。街の人が襲われる前に、始末しないと!)
いったん考えを止めて左腕を背中へと回したリンネ。
その手は何時でも飛竜刀が抜けるように柄をしっかり握っている。
リンネの予想は当たっていた。木々の隙間から顔を出したのは、マンドリルという動物に似た、白い体毛の小型モンスター”ブランゴ”
ブランゴが四頭、餌を探しているのかクンクンと鼻をひくつかせて周囲を窺っていた。
1人対4匹の狩りが、幕を開ける。
――――グガアァッ!
―――ガァッ?
――――グガアッ!!
――――グガッグガッ!
四頭のうち、接近するリンネに気づいたのは三頭だった。
威嚇で声を上げるブランゴに対して、リンネは勝気な笑みを浮かべる。
背筋を駆け巡る戦いへの高揚感。命のやり取りという背徳感が、彼女の脳内に多量のアドレナリンを放出させた彼女は掛け声と共にブランゴの群れへ突っ込んだ。
「――――――死ェやらァァ!!!」
殺意を込めたリンネの初撃は、左手で引き抜いた太刀を頭上で半回転させてからの振り下ろし。
狙いは四頭の中で一番リンネから見て近くに感じたブランゴの頭部。
それは外れる事なく、ブランゴは回避する間も与えられず頭に飛竜刀の刃がズブリと食い込む。
―――ギャッ―――
悲鳴と共に白目を剥いたブランゴはその場に倒れて絶命する。
残り三頭。いきなり仲間が死んだ事に対して三頭は極めて冷静に、馬鹿正直に目の前の
グチュァッと音を立てて飛竜刀の刃を引き抜いたリンネ。
切先からボタボタと刃に絡みついた血肉が零れて、ツンとした生臭さが鼻に来る。
まともな感性の人間なら顔を顰めてその場を去るが、リンネは逆だった。
(……あぁ……この臭い……
―――グルアァッ!
一頭のブランゴが仲間の仇と言わんばかりに吠える。
この場にはない雪の代わりに地面から掘り出した石礫混じりの土の塊を掴んで放り投げた。
放物線を描いた土の塊は、しっかりとリンネの側頭部を捉えていた。
しかし、それが飛んでくると同時にリンネの目も既にそのブランゴへと向いている。
膝を曲げて姿勢を低くしたリンネは足元に力を入れて、腰の位置まで飛竜刀の柄を引いた。
直後、地面を抉るようにして駆け出したリンネの頭上を土塊が通過。彼女は血に濡れたままの切先を二頭目のブランゴへと突き出した。
―――グギャアアァッ!!?
「チッ!」
二頭目が運が良いのか悪いのか、切先はまたズブリと、今度は二頭目の右肩付け根へと深々刺さってしまった。痛みに悲鳴をあげて、前足のバランスを失ったことで、二頭目はよろめく。
その隙を三頭目、四頭目が見逃すはずもなかった。
―――ガアァッ!
―――ギャアッ!
前足で同時に地面を掻くようにしてスタートダッシュを切り、後ろ足で更に地面を蹴って加速する。ブランゴの牙を使った捨て身の突進攻撃である。
後ろから突っ込んでくる二頭のブランゴに目を向けたリンネは―――再び笑みを浮かべて、突き刺していた飛竜刀を力一杯引き抜く。
「―――ッしぃぇャアァッ!」
左足を軸に右足で反時計回りに身体を回転させた勢いを殺さずに、引き抜いたときの力も上乗せしたリンネの飛竜刀は血しぶきを空中に散らしながら、確実にその刃で突っ込んでくる二頭を斬れる位置へと振られていた。
―――ギエァアアァッ!
―――グギャアッ!?
一頭は喉元を切り裂かれて悲鳴をあげながら毛を逆立てて仰向けに倒れる。
もう一頭は眼球を抉るようにして切り裂かれた為に地面へ倒れて間もなく絶命した。
血の池を作りながら暴れるブランゴへと、容赦なくリンネは追撃を加えた。
ブォン!と勢いよく袈裟に振られた飛竜刀の刃が喉を斬られたブランゴの胸を切り裂いた。
既に顔面を斬られて絶命された仲間の後を追うようにして息絶える。
――グ、ガ、ギャ……!
先ほど肩を貫かれて地面に崩れ落ちていた最後の一頭が復活した。
傷は塞がっていないものの、モンスターが持つ恐るべき生命力のなせる奇跡なのか、それ以上傷口から血が漏れる様子はない。
目の前の獲物だと思っていた絶対強者に対して、残ったブランゴが取った行動は至って単純だ。
すでに数的優位を失い、自分も深手を負った。
ならばこの場を逃れて、再挑戦を狙うだけのこと。
ブランゴはその場から針葉樹林の中へと逃亡を図った―――しかし
「ゥ、ラァァアァァァ!」
既に腰を低く構え直し、刺突の構えを取っていたリンネが叫ぶ。
成す術なく、今度は確実に頭蓋へと飛竜刀を突き立てられて、ブランゴは死んだ。
命が失われる際に一声さえ上げられず。
(………こんなもんかな……?)
「ふぅ……っと」
またズブリ、グチャリと音を立てて飛竜刀をブランゴの死体から引き抜くリンネ。
刃についた血を、死体の白い毛を使ってふき取って鞘に納める。
改めて周辺を見渡し、血の匂いが充満している事に深々と息を吐いた。
(今夜はブランゴのあばら肉で一杯やろうかな?)
慣れた手つきで剥ぎ取りナイフを腰から抜いたリンネは、自分の生活分とギルドへの提出分、街の住民への土産分に、四頭のブランゴの死骸を切り分けていく。
その中で、彼女は死んだブランゴへの違和感を覚えた。
(こいつ等……腹の中に何もない……
雑食のブランゴは雪山という過酷な環境下で生活するために、腹の中は常に何か入れている。
剥ぎ取りをしたら胃袋から草食種のモンスターである”ガウシカ”や”ポポ”
鳥竜種の小型モンスター”ギアノス”や”バギィ”だった消化しきれていない物が出てきたなんて話も珍しくない。――――だが目の前の四頭の胃は縮んで空っぽだった。
雪山から降りて来るまでの間、食べる物がなにもなかった可能性は低い。
木の実でも虫でも、ブランゴなら問題なく食べる筈だ――それがなかったということは…。
(迷ったり餌を求めてきたというよりは―――――
モンスターが縄張りを捨てて、空腹感を抱えたままでも移動する理由などそれしかない。
リンネは血に濡れた左手を、冷たい川の水で洗いながら上流へと視線を向けた。
確信はない―――だが、確実に何か……よくない事が起ころうとしている。
彼女の脳裏には、かつて自分から右腕を奪った古龍の起こした災厄の光景が浮かんでいた。
MHW:IBの女性防具オルムングβ頭の美しさは最強。異論は認める。
作者は防具カラーで黒髪にしたり深紫に変えたりで遊んでます(只の好み)
感想とか待ってまーす!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡