感想欄でクラスメイト達の話も並行して読みたいとご意見を頂きましたので、一日で勢いに任せて書いた話を投稿する作者の鑑(自画自賛)
……たぶん期待されてたのは勇者(笑)の話かもしれませんが。
彼らの話を書こうと思ったら多分1000字に届くかギリギリのレベルで、訓練場で猛特訓して「次こそベヒーモス倒すぞー!」「「「おー!」」」で終わります。
畑山愛子の天職”作農師”はとても稀有な技能を持っている。
僅かな魔力で土壌を豊かにし、作物の成長を促し、品種改良や肥料の作成まで行える天職は王国の歴史でもめったに見ないものだった。
彼女は戦争参加に反対していたものの、勢いづいた生徒達を止める事が出来ず、聖教教会に衣食住を半ば強制的に与えられてる立場として、王国中の農耕地域を活性化させる事業を護衛の騎士と戦争を辞退した一部の生徒を連れて回っていた。
*
「愛子、王室から手紙が届いたぞ」
小さな町の馬屋で、自分たちを輸送してくれている馬の面倒を見ている愛子の下へ、神殿騎士の隊長”デビット・ザーラー”が一枚の羊皮紙を手に近付いて来た。
愛子はハッとなってその手紙の内容がハジメに関するものかと期待してデビットへ駆け寄る。
「南雲君の事ですか!?」
「い、いや――――王国南方にある湖の街ウルのモンスターの動きが落ち着いたから、次はそこで作農師として力を揮ってくれと……」
「そう……ですか……」
しょんぼりと肩を落とした愛子は、モソモソと桶に口を突っ込んで餌を食べる馬の頭を撫でる。
心ここに在らずといった様子の彼女に近寄られた事を内心喜んだデビットだったが、彼女が落ち込んだのを見て、その原因である行方不明の錬成師の少年に理不尽な怒りを心の中で向ける。
それを少し離れた馬車の中で見守るのは6名の生徒。通称”愛ちゃん護衛隊”パーティー。
愛子に自覚はないかもしれないが、小柄で庇護欲をそそられる彼女は神殿騎士達の間でちょっとした人気者であり、隊長のデビットに至っては真面目な顔で交際を申し込もうとする始末。
それを見たパーティーのリーダー”園部優花”は「愛ちゃんを
「愛ちゃん、元気ないね……」
「しょうがないよ、王国中の町や村を回ったのに南雲君の手掛かり一つ無しなんだから」
「それよりも優花っち怪我はもういいの?」
優花の言葉に対して首を横に振る隣の女子”菅原妙子”
優花の向かいの席に座る”宮崎奈々”が心配そうに彼女の腕に巻かれた包帯を見つめる。
怪我というのはあのオルクス大迷宮で負ったものである。彼女達も天職とステータスが微妙だが攻略には陰ながら参加していた。……参加しなければ天之河や彼に賛同する者達に何を言われるか恐ろしかったからという理由つきだが。
優花の腕は古龍ベヒーモスが陣取っていた65階層を無数に飛び回っていた蛇竜ガブラスにつけられたものだった。パニックに陥っていた彼女は受けた当初はあまり痛みを感じなかったが、それは迷宮を出てから徐々に表れて、重傷のメルド団長と数名の騎士の死が重なって彼女と友人たちから戦意を奪って愛子の護衛へと逃げるきっかけを与えた。
「もう平気よ。心配してくれてありがとね、奈々」
「しっかし南雲の奴、何処に行っちまったんだろうな」
「アイツの事だから宿場町の何処かに隠れてると思ったんだけどな」
「……まさか何処かで魔物に……」
クラスメイトが1人行方不明だというのに暢気な雰囲気の男子”玉井淳史”が頭の後ろで手を組んで背もたれに寄り掛かる。その際に彼が伸ばした足に当たってしまった”仁村明人”がそれを鬱陶しそうに自分の足で押し退けながらも言葉を返す。
窓の外をしきりに見渡して不安そうな面持ちの”相川昇”がぽつりと呟いた。
優花は流石に不謹慎が過ぎると彼を睨む。
「……それ、絶対に愛ちゃんの前で言わない事」
「そ、そうだな……すまん。気をつけるわ……」
*
暫くして馬の休憩と町の住人への挨拶が終わったデビット率いる神殿騎士と愛子が馬車に戻る。
次の行き先を伝えたデビットが馬と馬車を連結させて馬を走り出させた。
ガタゴト揺れる馬車の中で愛子は「頑張りましょうね!」と生徒達に一時の笑顔を見せるものの、すぐに憂鬱な面持ちで窓の外へ視線を映してしまう。
「……………」
「……ねねっ!次いく町”ウル”だっけ?そこって何が有名なのかな?」
空気を読んで明るい話題の一つでも出そうと会話を切り出したのは奈々だった。
それを聞いた愛子が興味を持って窓の外から視線を戻そうとしたのを見て、優花が会話を進める。
「ウルってこの世界有数の稲作地帯らしいよ」
「稲作って、じゃお米が食べられるの!?」
「マジか!!」「おおっ!」「テンション上がるなぁ~!」
生徒達の明るい会話を聞いて愛子は微笑ましい気持ちになる―――と同時に気づかされた。
彼女達の視線がチラチラと自分の顔色を窺っている。それはつまり、会話をしながら自分の事を気遣っているのだと……愛子は自分の情けなさに涙が出てきそうだった。
だからこそ――――自分も明るく振る舞わなければと意を決して口を開く。
「そうですよ皆さん!ウルでの作業が終わったら、町で一番の宿に泊まれるんですから!」
「うっひょーマジっすか!高級ホテルじゃん高級ホテル!」
「宿って言ってるでしょ。仁村君はしゃぎすぎ」
「でもでもそういう妙子だって、眉毛ピクピク動いてるよ~?」
「こ、これは違うし!?美容と健康にいい眉毛ピクピク運動してるだけだし!」
「こんな異世界まで来て美容と健康なんて、女子は大変だなぁ~」
「……相川君、そういうデリカシーない発言するから女の子に嫌われるんだよ?」
「う、うるせぇ!」
「こらーっ!喧嘩はダメですよ!!」
馬車の中で賑やかに会話をする愛子達。
走らせた馬の手綱を握りながら、デビットは1人静かに微笑みを零すのだった。
やがて草木生い茂る街道を抜けた馬車は、凸凹な荒野の道へと差し掛かる。
馬車より先を走る一頭の馬に跨るのは護衛隊の偵察役を務める”ジョシュア・オキーズ”
馬車と並走して走る一頭の馬に跨るのは術師の”ジェイド・ハット”
副隊長の”チェイス・ドミノ”が跨る馬は、馬車の後ろを追走していた。
馬の走りを少し早くしたチェイスが馬車を操るジェイドへと報告に入る。
「デビット隊長、ライセンの荒野に入りました」
「よし、此処からは陣形を広げて索敵範囲を内から外に向けるぞ」
先ほどまで走っていた街道に比べて見通しの良い荒野でデビットが陣形変更を伝えた理由。
それは警戒する相手の差である。
王国内は南方の最前線を除けば
ライセン大峡谷とハルツィナ樹海が近くにある帝国は、ハンター達によるクエストでの狩猟や近年のモンスター研究による対策技術の向上で被害は減っているものの油断は出来ない。
そして、人族の手が最も行き届いてない”アンカジ砂漠”と”グリューエン火山”が近くにあって、過酷な環境下に置かれながら、そこに適応したモンスターの被害に悩まされる”アンカジ公国”が生活環境としては最も危険である。
王国でモンスターよりもっと被害が多いのは野盗の類による街道での追い剥ぎや誘拐である。
それを事前に情報として仕入れていたデビットは、密集陣形で愛子達を守る事を最優先に、野盗が仕掛けてきても対応できる状態を維持していた。
だが、ライセンの荒野には
見かけたら即座に反転して逃げるか、最悪は騎士の誰かを囮にしてでも生き残らなければならない。最高神エヒトに信仰を捧げた自分達なら大丈夫だと自分に言い聞かせるデビット。
しかし、神の加護も信仰の祈りも、大自然の前では塵芥に等しいと、彼らは思い知らされる。
*
数時間、デビット達が荒野を走り続けて陽が落ち始める。
数時間休まずに馬に鞭打ったことが幸いして、ウルディア湖が彼らの視界に映った。
ようやく一息つけると先頭を走るジョシュアが頬を緩ませようとした―――その時。
――――グォ、ギャアッ、アッアッアッ、オォッ!
「――――ッッしまった!!?」
馬上から見て岩に隠れるような形で、数体のモンスターの横を通り抜けてしまった。
死角になっていたからという言い訳など意味もなく、モンスターのリーダー格が吠える。
その鳴き声はデビットや他の騎士達にも伝わり、彼らの背中に緊張が走る。
後方のチェイスが馬の尻を叩いて速度を上げると、それを追いかけるようにして岩影から数体のモンスターが姿を現した。馬車の窓から後ろを見た優花が小さく悲鳴を上げる。
「ま、魔物ッ……!」
青と橙色の皮と襟巻のような耳の中型モンスター、狗竜と呼ばれる鳥竜種”ドスジャギィ”
雄の小型個体”ジャギィ”と雌の個体”ジャギィノス”の群れを率いる頭目。それが声をあげたことで、岩陰や地面に掘られた穴から十匹近くのジャギィとジャギィノスが這い出て来る。
まだ馬とドスジャギィ達に距離は開いているが、時間が経てば追いつかれてしまうだろう。
モンスターが洞穴や岩陰に巣を作って集団生活するなどという知識を持ち合わせていないデビットはただ悔しさで歯噛みする事と、この状況を打開する策を打ち出す事に全力で思考を回す事しか出来ない。
―――アッアッアッアッオーゥ!!
独特な鳴き声をあげて追走するドスジャギィの鳴き声は、彼女達を嘲笑っているようだった。
ドスジャギィより小柄で素早いジャギィ数体がチェイスの馬に近付こうとする。
半身で振り返ったジェイドが魔法を唱えようとして、最悪の事実を思い出す。
チェイスは腰から剣を抜いて、馬に噛みつかれないようブンブンと剣を足元へ振り回す。
ジャギィは様子を窺い、時折剣が触れるギリギリまで近づいては「ギャィ!ギャィ!」と威嚇するように馬の進路を妨害する。
「く、そっ!」
「チェイスさん!!」
馬車の中から悲痛な声をあげる愛子。
狭い車内が不安定な道を更に激しく走るため酷く揺れ動いた。
立ち上がろうとして足を縺れさせた奈々が転倒して、優花の足へと顔から飛び込む。
「ちょ、奈々!?いま動いちゃダメだって!」
「わぷっ、ご、ゴメン優花っち!でも――――」
「どうすりゃいいんだよ!?」
「逃げるしかないだろ!あんなの勝てっこねえ!」
「け、けど!馬だってかなり走って疲れてるし……最悪!」
「やめて!言わないで!」
混乱する生徒を見て、愛子はハッと我に返る。
彼らが混乱するのは仕方ない。魔人族との戦いをしている神の使徒なんて王国や教会に持ちあげられようとも、彼らはただの子供なのだから。
しかしそんな時に、彼らを教え導く教師である筈の自分が真っ先に慌ててどうするのか!?
「皆さん落ち着いて、各々持っている武器をいつでも抜けるように準備してください!」
「あ、愛ちゃん?」
「――ッ、今はその呼び方でも怒りません。とにかく冷静に!次の行動に移る準備を!!」
目の前から生徒がいなくなって、生きているのか死んでいるのかも分からなくなる。
そんな悲しい事を二度も経験したくない。愛子の心は恐怖に震えながら勇気を奮い立たせた。
本文と前の帝国の皇太子の話にある文を読んで頂ければ分かりますが、今のところは彼に動きがないと思われる方も多いでしょう。
安心してください、彼の幕間の物語もきっちり準備してますよ!
(寧ろそっちがかなり手の込んだ話になりそうだったり……)
最近ちょっと感想の数が増えてて嬉しい作者です。
これからも感想、質問、ご指摘など心よりお待ちしております!!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡