モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 ちょっとしたオリジナル設定の説明を。
原作ではアルテナとシアが出会うのは魔人族侵攻時ですが、この世界においては同じ年に生まれたということもあって、ちょっとだけ面識があります。
初見で忌み子の事をお互いに知らなかった幼い頃の話です。
オリ設定で生まれた母親については後ほど……。

 今回の時系列は本編の第二章「お騒がせ彩鳥は自重しない」の少し前になります。




幕間の物語 森と共に生きるもの

 

「覚えておきなさい、私達の一族は森と共に生きるのよ―――――」

 

 森と共に生きる。

それは私が母から最期に告げられた言葉。

森人族に連綿と続く掟のようなものだ。

 

 母はこの世を去った。

老い、流行病で土に還ったならどれほど良い最期であったろうか。

母は殺されたのだ、森に縄張り現れた災厄の魔物に。

 

 私達は……森に生きる一族は仇を討とうと奮戦したが、全てがアレの前で無力だった。

偶然通りかかったあの狩人達がいなければ、フェアベルゲンは滅んでいたかもしれない。

 

 人間が作った国…ヘルシャー帝国から生まれた()()()()()()()()()()

モンスターのあらゆる攻撃を致命傷寸前で受け止めて、怪しげな薬や粉塵で瞬く間に傷を治す。

私達は奴らが恐ろしかった。帝国の亜人狩りに奴らが手を貸さなかったのが、唯一の救いだった。

 

 

 

「今こそ攻勢に出るべきだ――――!」

 

 机を叩いて立ち上がり、そう宣言したのは熊人族のジン・バントン。

筋骨隆々で獣臭のキツい男は他の部族から賛同を集めようとしていた――――

私、”アイリス・ハイピスト”は冷めた目でそれを見つめている。

 

(その無駄にデカい腕を振り回す事しか出来ない毛むくじゃらが……)

 

 今、フェアベルゲンの中心に部族の長老たちが集まり、定例会を開いていた。

議題は「亜人狩りを廃止した帝国に対するフェアベルゲンの今後の対応について」だ。

 

 半年ほど前、新たに帝国の皇帝となったガハルド・D・ヘルシャーの使いの者を名乗る男が親書を携えて森に現れた。

話を聞く前に、血気盛んな熊人族が殺してしまった為、親書の内容を読む事しか出来なかったが。

 

 帝国は亜人の奴隷制度を廃止、現在帝国に身柄を拘束されている奴隷を全員解放して森に返還する。フェアベルゲンに対する侵略行為の一切を止めるというものだった。

長老たちの誰もがその意図を掴めずにいた。……私の父、アルフレリック・ハイピストを除いて。

 

「帝国の狙いは、私達が魔人族側に与することなく中立で居て貰うことだろう……」

 

 父上の考えは当たらずとも遠からずといったところだ。

外に目を向ける私達森人族だけが、人族と魔人族が戦争状態にあることを知っている。

魔人族側から、再三に渡る同盟の話が持ち掛けられたからだ。

同盟とは名ばかりで、有り体に言えば属国になれという話だったから即座に断ったが……。

 

 長きに渡る戦いの勢いは魔人族側にあった。

どういった手段を用いたのかは不明だが、奴らは魔物を従える術を身に着けている。

その証拠として、一度だけ奴らは魔物にフェアベルゲンを襲わせようとした。

父上はそれについても凡その見当がついていたようだが、決して答えようとはしなかった。

 

「今は森の守りを盤石にする事が優先であろう、ジン」

「何ッ!貴様は我らの誇りを踏みにじった帝国の奴らに復讐する、この千載一遇の機会を逃すというのか!?どういうつもりだアルフレリック!!」

 

「どうもこうもない。向こうから戦いの意思はないと伝えに来てくれたのだ。それを無視して報復の為だけに無駄な血を流すというのは、森人族として賛同しかねる」

「ハッ!高い木の上から全てを見下ろして物を言う貴様等らしい物言いだな!」

 

 憤慨するジンに同調してアルフレリックを罵ったのは虎人族の長老ゼル・グステン。

熊人族に並ぶフェアベルゲン武闘派の部族を纏め上げる男だが、頭の回転は遅い。

私達の部族を纏めて侮辱する発言に、思わず腰の短剣を抜きそうになったが――――

 

「落ち着きなさいアイリス」

「……はい。申し訳ありません、父上」

 

 私の殺気に気づいたのか、会議所の空気が一瞬にして凍り付く。

殺気を当てた熊人族と虎人族は気を逆立てて私を睨みつけている。父が短剣を抜き放つ寸前の手を止めてくれなければ、今頃は奴らの頭に短剣が突き刺さっていただろうに――――惜しい事だ。

 

「娘の無礼を許してくれ。部族の事を誰よりも大切に想ってくれている。心優しい娘なのだ」

「―――ふ、フンッ!そんなのは我らとて同じ事よ!」

()()()()の小娘が、いい気になりおって!」

 

(…チッ。今度隙を見つけたら、そのスカスカの頭に矢の一本でも撃ち込んでやるものを……)

 

 険悪になった会議所の空気を、パンパンと手を叩いて収める者が現れた。

糸目が特徴的な狐人族の族長ルア・シェンホア。商人気質の穏健派筆頭として知られる男だ。

 

「まぁまぁ皆さん平和的に話し合おうじゃありませんか。此処で部族同士の血を流しても、帝国に踏みにじられた誇りは取り戻せない。森を守る準備が遅れるだけ…………違いますか?」

 

「……そうだな、ルアの言うとおりだ……」

「……フン……!」

 

 私はこのルアという長老が、不気味に感じる。

狐人の特徴である糸目というのが生まれた時から苦手な部類ではあったが、ルアに関しては―――

()()()()()()()()()()()()()ような、そんな恐怖を腹の底で感じてしまうのだ。

 

「お二方の意見の間を取って、森の守りを固める為に各部族から戦士を募る。―――その後、時期を見計らって人間共の住処、帝国領の町や村に()()がされたのと同じことをすれば良い事」

 

「フム……」

「俺に異論はない。どの道、奴らを殺す事には変わりないのだからな――――!」

 

(殺す……ね。……お前じゃどう足掻いても()()()()よ……)

 

 ジンもゼルも分かっていない。

帝国は兵士一人一人の強さが、亜人の戦士とは桁違いだ。

武器に関しても棍棒や弓を主体とする我々に対して、向こうは剣、槍、大砲、弩その他多数。

戦いが始まれば三日と持たず戦線は崩壊し、我々は嘗ての悲劇を目の当たりにすることだろう。

今度は亜人を奴隷にしなくなった帝国によって、一族郎党皆殺しにあってもおかしくはない。

 

「―――――彼らとの話し合いに応じる気はない……か」

 

 私の呟きは、父1人だけにしか聞こえなかった。

 

 

「……まったく、息の詰まる定例会に私を呼ぶなど……父上も人が悪い」

「すまなかったねアイリス。……お前には肩身の狭い思いをさせた」

 

 定例会が終わって間もなく、私達親子は森人族の領地へと帰った。

長椅子に腰を下ろして深くため息をついた父上の前に腰かけて、腰の短剣の手入れをする。

この短剣はかつて、厄災の魔物を退けた狩人から貰った品だ。

 

「いえ、これも次期族長に選ばれた者としての務め。――――――それよりも……」

「逃げた兎人族の処遇についてか?」

 

「はい。忌み子を隠していた、それについて弁明もせずにフェアベルゲンを抜けた彼らを捨て置く訳にはいきません。森中を隈なく探し出し、処分すべきかと」

 

 定例会に挙がった話の一つ。

それは弱小部族の一つ兎人(ハウリア)族による忌み子隠匿と脱走の件についてだ。

 

 忌み子は稀に亜人族の中から生まれる、魔物や魔人族の特徴である魔力操作を有する者。

フェアベルゲンにおいて忌み子は生まれた瞬間に処分することが義務付けられていた。

それを兎人族は十年以上も隠し通した挙句、明るみに出た途端にフェアベルゲンから逃げた。

 

 癪な話だが、熊人族や虎人族と私の意見は同じだった。

裏切者には死を、忌むべきものには苦痛を以て制裁を。

それがフェアベルゲンに生きるものが守らなければならない法と秩序である。

 

「即処分というのは、あまりに残酷だと思うがね。……彼らを見つけたらまずは身柄を拘束。長老会議の前で弁明くらいはさせてもいいだろう」

「……父上がそう仰るのであれば、私に異論は御座いません」

 

 内心では甘いなと、時間の無駄だと思った。

何をどう言い繕うとも、兎人族が全員処刑されることは決まっている。

穏健派であり心優しい父上の一存でも、それを覆すことは不可能だ。

せめてもの情けで、一思いに殺してやる方がまだ救われるだろうに……。

そんな事を話していると、部屋の入り口からひょっこり顔を出す者が現れた。

 

「―――――お母さまっ、お爺様っ」

「……ただいま、アルテナ」

「おぉ、アルテナ。遅くなってすまないな……」

 

 アルテナ・ハイピスト。16歳の森人族であり、私の可愛い娘だ。

生まれてから手入れを欠かさず、一度も刃で切らずにいる金色の髪が足元まで伸びている。

私のように戦いの為だけに短く切り揃えた無骨な者と違い、娘は美に恵まれていた。

 

「先ほどの話――――兎人族は、殺してしまうのですか……?」

「……聞いていたのか。あぁ、奴らは罪を犯した。故に罰を受けなければならない」

 

「……ただ、忌み子を匿っていただけで……ですか?」

「そうだ。今までもそうしてきた。奴らだけを特別扱いする訳にはいかない」

 

「……そう、ですか……」

 

 アルテナは私の腹から産まれたとは思えないくらい、心優しい娘に育ってくれた。

だからこそ、同じ年に生まれて知り合った兎人族の忌み子に死んで欲しくないと思っている。

 

 長老の孫として生まれたアルテナを、部族の殆どが溺愛し、特別扱いした。

忌み子という扱いではあるが、自分と同じような特別扱いを受けた少女に親近感が湧いていた。

私はそんなアルテナと向き合うことが出来ず、何も答えないままそっぽを向く。

そこへ、息を切らして森人族の斥候が飛び込んでくる。

 

「何事だ!」

 

「ほ、報告します――――樹海の入り口付近を偵察中の仲間より、逃走中の兎人族を発見したと!―――――同時にフェアベルゲン近辺の小川にて忌み子の兎人族を連れた帝国の狩人が二名!今は魔物と戦闘中であるとのこと!」

 

「ッ……父上!」

 

「森人族長老アルフレリック・ハイピストが命ずる。次期族長アイリス・ハイピスト。戦士を連れて即刻、兎人族を捕らえよ。忌み子と狩人達、1人も残さずにだ」

 

「――――承知しました」

 

 片膝をついて頭を垂れる。

心配そうにするアルテナの頭をぶっきらぼうに撫でて外へ飛び出す。

私の足音を聞きつけた戦士達が、各々の家から出てきて整列する。

 

「長老の命により、兎人族と忌み子。そして森に足を踏み入れた不届きな狩人を捕らえる!そこのお前とお前、私について来い。他の者は小隊を組んで兎人族の方へ向かえ!」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

 二十人以上の森人族は、魔物の毛皮で編んだ外套に身を包み、陶器の面をつける。

この面は亜人族に近しい者でありながら、慣れあいを好まない”奇面族”から借りたものだ。

つけている間、原理は分からないが魔物に発見されにくくなるらしい。

 

 木々の上を飛び跳ねながら、部下の2人を連れて目的の場所へ向かった。

青い髪に兎の耳―――間違いなく、例の忌み子シア・ハウリアだ。

木の根に身体を隠して、狩人が戦っている魔物から姿を隠している。

 

 意外にあっさりと、忌み子は捕まった。

十年以上も匿われて生きてきた者にしては、呆気ない……。

 

 そして、私が警戒を払っていたハンターも拍子抜けするくらいにあっさりと後ろを取られて降伏した。部下たちがもう一人を捕らえてきた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()

奴らの事情など、どうでもいいが……。

あれだけ恐れていた自分が馬鹿みたいで、挑発的なことを口にした。

 

―――――さて……貴様等の命運は、これで私達の掌。

全ては森に生きるものの為、森と共に生きるもの――――我ら森人族が貴様らを見定める!

 





 何気にゼルとルアの二人にも家名みたいなのをつけましたが、適当です。
まだまだ出てきてない亜人族も多いと思いますが、それはまた本編で……

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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