いつになったら出番が来るのメインヒロイン、その他以下省略―――
「走れぇ!グズグズするなぁっ!!そんな事ではポポの足にも劣るぞ!?」
「「「「「すいません、教官!」」」」」
罵声がよく響く帝国首都近辺の訓練施設。
そこにはハジメや他の地域から集まったというハンターを志す若者たちがいた。
彼らは背中に数十キロの荷物を抱えながら凸凹の坂道を全力疾走で駆け上がりながら滑って降りていくという体力向上訓練の一環に参加していた。
「はぁ……はぁ……ぜぇ……ひぃっ…」
「ひぃ……ひぃぅっ――――――おげぇぇぇっ!」
息も絶え絶え、中には坂の途中で蹲って嘔吐している者もいた。
それもその筈。彼らが昼食を終えたのは十分前の事。胃の中で消化しきれていない食べ物が激しい運動を繰り返す体から出ていってしまうのも仕方がないだろう。
しかし、彼らを怒鳴る男はそれを許さない。
「馬鹿者!食ったものを吐いてどうする!そんな体力でモンスター達と戦うなど笑えんジョークだ!貴様は訓練終了後に再び胃に食い物を詰めてから参加しろ!休憩はそのあいだ無しだ!」
「げほっ…おぇっ――――了解です教官ッ!!!」
「よしっ!ならばすぐに訓練を再開せい!50回!!」
坂の上を指さす教官に返事をした生徒は再び駆け出す。
服が吐瀉物で汚れ、泥や土がついていようとお構いなしに走り続ける。
その中で目立った動きを見せるハジメの姿もあった。
彼は訓練を見て「あ、俺死んだ」と悟り、意味深な笑顔で彼を送り出したアゥータを思い出し、その理由を知って怒りを覚えながら若干やけくそで訓練に臨んだ。――――――その結果
「教官!坂上がりと坂滑り、250回往復終了です!」
「よしっ!他の者が終わるまで続けろ、ハジメ訓練生!」
「はいっ」
驚くべきことに、運動があまり得意ではなかった筈のハジメはよく動けていた。
というか他の者たちに比べて訓練への適応が早かった。疲労や吐き気といったものを感じても、彼の体はそれらを跳ね除けて動くことを優先している。
帝国のハンターズギルド本部直轄、訓練所の教官”シュヴァルツ”。
彼もまた優れたハンターの一人であったが、後任育成に力を入れようと考えたハンターズギルドの推薦で引退後、帝国の軍事教官に協力して貰いながら、ハンター訓練所の設立後に教官となった。
彼が見てきた訓練生の数は合計で千人以上。
しかし、訓練修了過程まで残ったのはその半分にも満たない。
彼は一度も訓練を甘くした事はない。寧ろハンターとして優れた才ある者と見込んだ相手に対しては訓練の内容を厳しくする、某ミリタリー映画の鬼軍曹を彷彿とさせるしごき。
そんな彼の目は、ハジメがハンターとしての才能を秘めた原石であると一目で見抜いた。
訓練所から排出されてきた”例外”のハンター達に匹敵する逸材。
それが分かってシュヴァルツはハジメ個人に対する訓練のハードルを他の訓練生より何倍も高くした。へばってしまいそうになったハジメに対して罵声をひたすら浴びせ続けた。
「周りより少し早く終わったからと気を抜くなよガーグァみたいなアホ面しやがって!」
「はいっ!」
「坂を上るときの腰の角度がなっとらん!ベッドの上で女を抱く時もそんなへっぴり腰になってる貴様はイ〇ポか童貞か!追加30セット!グズグズするな、この鈍間!!」
「はいっ、すいません!」
「謝る暇があれば足を動かせ!次はどうするのか空っぽの頭で考えろ!」
「はいぃっ!!」
返事だけはしっかり返して、ハジメは他の訓練生達から教官に目をつけられた事に対する真意を見抜けず、哀れみの視線を向けられながら体中泥だらけになって坂を滑り降りていく。その姿勢は回数を重ねるごとに安定して、体に無駄な負担をかけないようにしている。
訓練終了の鐘を鳴らされたのはそれから一時間後。他の訓練生達がノルマを達成して、息も絶え絶えになりながら宿舎へと戻っていく中、ハジメは訓練の最中に課せられた追加の訓練が終わるまで続いた。
それをずっと見続けていたシュヴァルツは自然と頬を緩めた。
ここ数年のハンターになろうと訓練所の門を叩いて来た自称才能ある者たちは、大半が彼のしごきに耐える事なく、荷物を纏めて故郷へと帰った。
(………クククッ、面白い……生きて此処を出られると思うなよ小僧!)
ハンターになる為の訓練生を育てる施設の教官が、一人の訓練生を生きるか死ぬかの境界線に立たせて、肉体的・精神的に痛めつける光景は、他の訓練生達に狂気を感じさせた
*
「……ぐ、ぉ……た、だいま…レイ」
「よっ!お疲れさんハジメ、今日は特にボロボロだな~」
泥だらけの服をさっと水で濯いだハジメが宿舎の部屋に入ると、既に着替えを終えてベッドに寝転びながら訓練生に配られる教本を捲る同居人の姿があった。
ネイビーブルーの髪のポニーテール、深緑色の瞳に浅黒い肌で長身の訓練生。
彼の名は”レイネルク・フォウワード・ゼンゲン”、アンカジ公国から来たハンター志望の青年だ。
「っぁ~……あの人のしごきは今に始まった事じゃないとはいえ、骨まで染みるぜ…!」
肩をぶん回してベッドへと腰かけたハジメは、訓練生になってから日課にしている体のメンテナンスを始める。レイネルクは教本をパタンと閉じて机の上へと置いた。
「お前さぁ、訓練生になったばかりの頃はヒョロい見た目してたのに……。割とマジで、何をどうすりゃそんな
苦笑したレイネルクが指しているハジメの身長は、トータスに来る頃より明らかに伸びていた。四肢や胴体も、成長期だからという理由だけでは片付けられない程の逞しい成長を遂げている。
当の本人、ハジメはベッドの上で長座体前屈をしながら答えた。
「俺自身もさっぱり分からん、原因不明だ。身体を強化する便利な魔法なんて持ってねえし、誰かにかけられた覚えもねえ。
「ぶっは!!それ一番ありえるかもなぁ!?」
ベッドに寝転がって笑う同居人に、ハジメもつられて笑った。
ハジメは神の使徒だった事を隠して、あくまでゲブルト村出身の錬成師という経歴だけ書いて訓練所にやって来た。レイネルクは公国で裕福な家の出身らしいが、それを鼻にかける様子もなく、陽気に「
ハンターとしての才能はハジメに負けず劣らず、偶にシュヴァルツが目をつけて、ハジメ共々「ルームメイト同士、手を抜いてやってんじゃねえ!訓練倍だ!」としごかれては、ボロボロになって肩を組みながら自室に戻る事もあった。
ハジメは彼を「レイ」の愛称で呼んでいる。
(異世界に来て友達が出来るなんて……考えもしなかったな……)
思えば故郷での生活に、友人と呼べるほど親しい間柄のクラスメイトはいなかった。
ふと脳裏に、笑顔で話しかけて来る白崎香織の姿が浮かび上がったが――――
直後、意地の悪い下卑た笑みを浮かべる者達の顔も彼女の背後から現れる。
ハジメはぎりっと奥歯を噛み締めて頭の中で唸り飛ばした
(ッ――――――
まだ引き摺っている過去を、少しずつだがハジメは克服出来るようになってきた。
今のように記憶が過去のトラウマを呼び覚ましても、怒りを露わにして一言心の中で発するだけで、煙のようにふわっと消え去って跡形も残らない。
しかしそんなハジメの様子を不審に思ったレイが話しかける。
「…ハジメ?どうした、そんな怖ぇ顔して……」
「―――っあ……?いや、何でもね……ちと昔の嫌な事思い出してよ…」
「嫌な事?」
「………色々あってな……今は、話せそうにねえわ。スマン」
顔を手で押さえたハジメはベッドに顔を突っ伏した。
(
「……無理には聞かねえよ!もう寝るか、おやすみハジメ」
「……おう、また明日な」
ハンターになろうとする少年は、まだ無能と呼ばれた頃の
その呪縛を断ち切った時、彼が何を得て何を失うのかは――――まだ誰も分からない。
部屋の灯りを消す友人は何も言わず、優しく眠りについた少年の髪を撫でた。
*
ハジメ、レイ他数十名のハンター志望訓練生が地獄の訓練を耐え抜いて一か月経った。
50人はいた訓練生の多くが脱落して、残っているのは2人を含めた15名の男女。年齢はバラバラ、ハジメより明らかに年下の少年少女がいれば、40~50歳くらいの小父さんもいる。
15名の訓練生達はいよいよ卒業試験と呼ばれる”モンスターの討伐”に向かっていた。
教官への申請でパーティーを組むものは4~2名で組み、ハジメはレイと組んだ。
ハジメの隣を歩くレイは彼と目が合うと「頑張ろうぜ」とサムズアップを返す。
緊張した面持ちの同期の中で、2人は落ち着きを払って、装備を再確認している。
15名の恰好は全員同じハンターズギルドから支給される防具”レザーライト”に統一された。
モンスターの革を加工して、板状に伸ばした鉄鉱石を使った軽鎧。
これを装備する事でハンター達は防具の”スキル”が発動し、空腹感が紛れる”腹減り半減”の他に、モンスターから受けるダメージを一定確率で減少させる”精霊の加護”や採取の個数が増加する”採取+1”投擲アイテムの技術力にプラス補正がかかる”投擲技術UP”になる。
更に15名は、それぞれが違った種類の武器を手にしている。
ハジメの背にはガンナー入門用に最適なライトボウガン”チェーンブリッツ”が装備されている。
彼は訓練を受けるまでのあいだ太刀を使おうと考えていたが、自分にとって最適な戦い方は何かと教官に問われた際、モンスターとの安全距離を保ちつつ、機動力を損なわないライトボウガンを使い始めた。その結果、ライトボウガンは驚くほど彼の手に馴染んだ。
だがハジメは卒業試験前に驚くべき事実をシュヴァルツより突き付けられた。
(お前は好きな武器を選ぶといい。――――
卒業試験に挑む際は、訓練生達は自分に適性のある武器を使うのが常識。
武器を自由に選べるということ―――それ即ち、ハジメは
シュヴァルツの言葉で一瞬迷ったハジメだが、使い慣れたライトボウガンを選んだ。
それは、
「どうだいハジメ?俺の武器は、かっけぇだろ~!惚れ惚れするだろ~!」
「あぁ、何処からどう見ても漢の浪漫の塊だよ」
「だよな~!!」
先ほどからテンションが上がっているレイを見て、ハジメも笑みを浮かべる。
レイの左手にはランスと同等の盾、背には大砲に銃剣を取り付けたような武器が装備されている。
斬って良し、突いて良し、撃って良し、防いで良しの浪漫武器、ガンランス”骨銃槍Ⅰ”
「正面からの攻撃は俺がきっちり防いで、熱いのをブッ食らわせてやらぁ!」
「期待してるぜ」
*
15名の訓練生達は帝国の北側、通常種のモンスターが棲息する森丘に到着した。
先に到着していたシュヴァルツが全員の健康状態を確認して、満足げに頷く。
「―――よし!此処にベースキャンプを設置する!!」
背の高いレイがベースキャンプのテント・ベッド設営に、錬成師という
1人黙々と作業に没頭するハジメに、シュヴァルツが容赦なく皮肉を飛ばす。
「うむ、狩りには使えないが便利でいいな!!ハジメ訓練生!」
「……ありがとう御座います……」
(お、珍しくハジメが不機嫌になってら)
テントの垂れ幕をかけていたレイがシュヴァルツから目を逸らして微妙な顔をしているハジメを見て驚く。普段はどんな罵倒も涼しい顔して受け流すハジメだが、錬成師という天職について触れられると偶に嫌な顔をしてしまうのは知っていた。
しかしシュヴァルツはハジメの態度に敢えて触れず、他の訓練生に声をかけて去ってしまった。
「そんな調子で大丈夫かハジメ?初っ端俺達がやるんだぜ?」
「……大丈夫だ、問題ない」
「ふぅん……そっか、じゃあ俺作業に戻るわ」
ハジメが背後で「異世界じゃこのネタ通じないか…」とレイにはよく分からない事を言っていたが、声をかけた事で少しは調子を取り戻したハジメの表情を見てレイは安心した。
空に昇った太陽が真上に向かい始めた頃、彼らの卒業試験は始まる――――。
アンカジ公国は過酷な環境なだけあって育つ人が逞しいと思われ。
砂漠、火山とかいう炭鉱夫の天国みたいな環境に、主人公達は何時行くのか……。
次はコメントでも何度か名前のあがってた先生にご登場頂きます!
感想、質問、評価など心よりお待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡