前半から途中までほぼ惚気話聞かされるだけで終わると思います。
このノリがまだ続くようなら清水君魔改造もしてしまおうかな……?
程なくしてリリアーナさんが頼んだお茶とお茶菓子が運ばれてくる。
琥珀色の液体がティーカップに入ってるごく普通のお茶を想像していたんだけど、流石に高級そうな店だけあってお客の目の前で淹れてくれるようだ。
店員の丁寧な動きに俺達が関心していると、リリアーナさんはレイネルクさんに話しかける。
「何時頃からこちらに…?」
「ほんの数時間前さ、帝国からここまでぶっ通しの旅だったから疲れた疲れた」
そう言ってレイネルクさんは肩を揉みしだきながらぐるりと回す。
…リリアーナさんと知り合いみたいだけど、口調や素振りからは貴族っぽくは見えない。
俺達が招かれた晩餐会で挨拶をしてきた貴族っていうのは、上品な言葉遣いで立ち振る舞いが徹底している、堅苦しいイメージしかなかった。
服装だけは上流階級のそれだが、レイネルクさんは良い意味で下町っぽさを感じる。
無駄に着飾らない、ごく自然と馴染みやすい空気を作れる人のようだ。
「……そういえば其方さんに名乗ってなかったかな」
不意にレイネルクさんが俺、男子2人女子2人の順で視線を向けた。
さり気なく存在感の薄い俺に気づける人って初めてかも。
リリアーナさんが咳払い一つして代わりに話し始めた。
「この方は”レイネルク・フォウワード・ゼンゲン”王国より東に位置するアンカジ公国の領主様の御子息で、次期領主になられるお方です。…レイネルク様、彼らは聖教教会が神エヒト様より神託を受け異世界より召喚された”神の使徒”の方々です」
「「「「「初めまして」」」」」
「へぇ~君達が噂に聞く……」
目を丸くして驚いたレイネルクさん。
顎に手を当てて俺ら1人1人の顔をじっと見つめてきた。
吉野と辻は流石にドキッとしたのか顔を赤くして目を背ける。
……あっ、野村ステイステイ。絶対にお前じゃ勝てないから。
つーか公国の領主様の息子なんだから、怪我させたら問題になるだろ。
「―――――――初めて見たアイツと同じ年頃の……成程ね……」
レイネルクさんが手にしたティーカップに口をつける直前呟いた言葉。
それを聞いたのは近くに座っていた俺とリリアーナさんだけだった。
彼女は何のことか分からず首を傾げていた。
俺はなんというか、よく分からないけど……レイネルクさんが
リリアーナさんとクゼリーさんを除く、俺達”神の使徒”だけに対する何かを。
俺の視線に気づいたレイネルクさんは笑みを浮かべてしゃべり出した。
「ん―――碌な挨拶も出来なくて悪いな神の使徒様。そこのリリアーナから紹介を受けた通りだ。貧困に喘ぐ公国の頼りない次期当主になる予定の男さ。リリアーナとはガキの頃から王族の娘と領主の息子だったから式典だなんだってある度に顔を合わせては遊んだりしてな」
「フフッ…懐かしいですね。ランデルもよくレイネルク様には懐いていました」
「懐いてたっつーか……大事なお姉ちゃんを独り占めしようとする悪い男をやっつけようと何かと突っかかってきた覚えしかないんだが?」
レイネルクの言葉に吉野や辻が「あー」と分かったような表情をする。
ランデル殿下はリリアーナさんの弟、ハイリヒ王国の王子なのだがまだ幼い。
……のだが、幼い割にはかなりマセたがきんちょで晩餐会が開かれた日に白崎さんに一目惚れして事ある毎に話しかけては近づいて来る天之河や他の男子を敵視していた。
レイネルクさんも同じような目に遭ったのだろう。リリアーナさんも気づいてれば止めてあげればいいのに、なんだかんだ弟に甘いお姉さんなんだろうなぁ。
「はいはーい!私、質問いいですかー!」
「ちょっ、真央―――」
勢いよく手を上げて会話に参加したのは吉野だった。
その表情から察するに碌でもないことを言い出しかねない雰囲気に見える。
隣に座った辻が懸命に止めようとするが時すでに遅し。
「リリアーナさんとレイネルクさんって男女のお付き合いとかってあったんですかー?」
「えっ!?そ、それは―――」
「ハハッ、中々にド直球な質問だなお嬢さん」
男女のお付き合い。…うんまぁ気になるよね、あんな親し気にしていたらさ。
いくら王族と領主という立場の付き合いがあったからって、俺達と大して年も違わないリリアーナさんがあんな風に男の人の名前を呼んで話しかけるのは初めて見たよ。
汚い話だけど、政略結婚とかで将来を見据えての縁談とかは持ち出されたんだろうか?
リリアーナさんが顔を真っ赤にして俯き、横目でレイネルクさんの顔色を窺う。
辻は吉野の頭をパコッ!と叩いて「ウチの仲間が申し訳ありません~!」と頭を下げていた。
そういった恋バナに疎い重吾でも流石に気付いたようだ、野村と一緒になって「無理に言わなくてもいいですよ~」なんて笑っているが、その顔には興味津々と書かれている。
クゼリーさんが懐かしむように微笑を浮かべている……あっ、ふーん……。
「そ、その……レイネルク様の御両親からは何度か、レイネルク様と婚約を前提にお付き合いをするのはどうかとお父様の方に話をされていたようですが、お母様が恋愛は当人たちで自由にさせてあげるのが一番だと言ってくださって………私はまだ幼くて……」
ご馳走様です。まだお茶淹れて貰ったばかりでお茶菓子に手もつけていないけど。
俺が心の中で合掌していると、吉野が興奮しきった顔で「んほぉ~!」とか女の子が出しちゃいけない声を出して椅子の上で悶絶していた。
隣に座る辻が顔を真っ赤にして机に突っ伏している。
そんな辻を見て野村が条件反射で鼻の穴をヒクつかせていた。お前ホントブレないな。
重吾は「そうなのかぁ」とか平凡な台詞だけ言ってお茶飲んでやがる。お前以下略。
リリアーナさんがすっかり顔を真っ赤にして震える手で茶器に手を伸ばす。
一口お茶でも飲んで心を落ち着かせてから話題を切り替えようとでもしたのだろう。
それを横目に眺めていたレイネルクさんが意地悪な笑みを浮かべて口を開いた。
「昔のリリアーナは俺に 成人したら私をお嫁さんにして下さい! なんて言ってたなぁ?」
「ぶふうぅぅぅぅっ!!!???」
「うわあっ!?」
リリアーナさんがコメディー番組ばりの勢いで飲みかけのお茶を噴き出した。
向かい側に座っていた野村に思いっきり掛かって悲鳴が上がっている。
レイネルクさんの隣に座っていた俺に被害はないが、重吾にも若干飛んでいた。
クゼリーさんついに堪えきれず手で口元を抑えて笑っている。
恐らく彼女はそれを知っていたから、この話題に敢えて口を挿まなかったのだろう。
ゲホゲホと咽ていたリリアーナさんが椅子から立ち上がって真っ赤な顔で怒り出す。
「れ、レイ様ッ!!!それはもう10年も前の話ではありませんか!!」
「けど事実だろう?俺はあの時リリィが口にした言葉を片時も忘れたつもりはなかったんだが」
「な、なッ――――――――!」
わぁお☆2人の呼び方がごく自然な流れで愛称になってるぞぅ!
俺がクゼリーさんに目線で確認を取ってみると、うんうんと頷いている。
どうやら人前ではお互いの立場も考えて愛称で呼び合うことはなかったようだ。
それがこんな恥ずかしい過去話を暴露されてつい出てしまったと。
俺らの存在など意に介さず彼女はツカツカとレイネルクさんに詰め寄った。
「貴方は昔からそうやって私を揶揄って―――!」
「お前のそういう反応が可愛いから揶揄うんだろ。お前以外にゃこんな風に言ったり揶揄ったりなんてしないさ。―――――
「~~~ッ!!!」
甘ぁぁぁぁぁいっ!説明不要ッ、お茶が砂糖も入れてない筈なのにゲロ甘だ!!
野村がびしょびしょになった顔を店員から差し出されたタオルで拭きながら「俺も辻とあんな風に……ゴニョゴニョ」とか妄想に浸ってやがる。
重吾は俺と同じように「あれ?お茶がなんか甘く感じるな」という顔をしていた。
吉野は満足げにむふーと鼻息を荒くしており、辻は頭から湯気が出ている。
「―――んでお嬢さんの質問に対する答えだが、
「ほほぅ、
「あぁ、
「~~~お二人ともぉっ!!」
レイネルクさんだけを止めても事態が収拾つかないと判断したリリアーナは発端である吉野の方へと歩いていき、この話題を今すぐ止めさせようとする。
何故か悪くない辻が暴走中のリリアーナさんではなくクゼリーさんに「すいませんすいません!」と頭を下げているが、クゼリーさんは苦笑して「大丈夫ですよ、あの2人はいつもあんな感じですから」とフォローしていた。
それから数時間、賑やかなスタートを切った茶会の席は大いに盛り上がった。
気付けば真上にあった太陽が傾き、もうじき日が暮れそうな時間になっている。
空の様子を見てそれに気づいたレイネルクさん立ち上がり口を開いた。
「――――――さて、俺はそろそろ宿に戻ろうかな。長旅の道中、喫茶店で寂しくひと休みの予定が、まさかこんな賑やかに楽しいお茶の時間になるとは……」
「いやーこっちも連れが色々と堪能させてもらったみたいで……感謝しています」
連れ、吉野はレイネルクさんから色々な恋バナのアドバイスを貰ってすっかり打ち解けていた。
リリアーナさんといい雰囲気なだけじゃなく、レイネルクさんは俺達より少し年長者なだけあって恋愛事に関する人生経験が豊富な人だった。
吉野の傍でちゃっかり辻と野村が聞き耳立てていたのは此処だけの話。
リリアーナさんも話しているうちに落ち着いてきたのか、自身の晒した醜態に恥じらいながらも俺達をリラックスさせたいという当初の目的が達成できたことに満足気な表情を浮かべていた。
「まさかレイ様があのハンターになるとは……話を聞いてビックリしました」
ハンター。その聞き慣れない単語も俺達は会話の中で説明を受けた。
冒険者とは別の存在で、帝国には魔物を専門に狩りを行う人たちの組織があって、そこで活動する人をハンターと呼んでいるらしい。
魔物のことになると俺達の脳裏にあの大迷宮で襲ってきた黒い奴が過ぎる。
思わず俺はレイネルクさんに尋ねた。
ベヒーモスという名前の魔物を知っているかと。
しかし彼は難しい顔をして唸った後、首を横に振った。
ハンターが所属する組織には過去に発見されてきたモンスターの名前や特徴などが記載されているらしいが、ベヒーモスに関しては一切の記述が見つからなかったという。
それだけ未知の魔物を相手に生き残れた俺達は幸運だったのだろうか。
「生き延びられた。それだけでも儲けものさ」
レイネルクさんにそう言われて俺達は少し考えさせられた。
確かに
その結果が果たしてよかったのか……
「大自然の中じゃ弱い奴、運のない奴が食われて死ぬんだ。どんな目に遭ったかは想像もつかないが、まずは生き延びられたことに安堵して、それから次に何で勝てなかったのか、戦う時どうすれば勝てるのか仲間達と一緒に考えて自分なりに答えを出して体を鍛えてみな」
その言葉がどれだけ俺達に重く圧し掛かったのか、その場では理解出来なかった。
弱肉強食の世界に自分達が身を置いてるなんて風には考えたこともなかった。
レイネルクさんは上着を羽織って店を出て行く。
見送りのために下へ降りていくリリアーナさんの後についていきながら、重吾を始めとする俺達パーティーメンバーの心内で様々な思いが渦巻いていた。
俺はあの時の敗北とそれを次に生かすことを考えるのと他にもいくつか……
レイネルクさんが俺達を紹介された時に見せた不自然な表情の理由。
俺達が苦戦するような魔物を狩って生計を立てるハンターという存在。
どうしてか会話の中には一度も出てこなかった南雲の背中がチラついた。
*
まさかホルアドでリリアーナと再会するとは思わなかった。
久しぶりにリリィと話が出来て嬉しかったし、あの様子から察するに他で想い人とかはいないと………ヨシッ!
……しかし紹介されて驚いた、あいつ等がハジメの言っていた神の使徒だったとは。力持ちっぽいリーダー格に、地味だが頭の回転の速そうな術師、才能の伸びしろはなさそうだが気配りの出来る娘に、ムードメーカーな娘、それに……あの存在感が絶妙に薄い奴は驚かされた。
てっきりモンスターの能力かなんかかと勘違いしちまった。
話してみると、モンスターとの戦いには慣れていなさそうだった。
それどころか戦うって行為自体にまるで慣れていない。
先輩風を吹かせるほど俺も実戦経験が豊富なわけじゃないが、教官の言っていたことをそのまま伝えた。少しでも生き延びられるなら、よかれと思ってな。
……悪人という感じはしなかったが、ハジメ同様に幼さが窺える。
あんな感じに性格や趣味が違う男女が集団の輪を作れば、自然とその中で淘汰される奴が出て来るのは時間の問題だろう。
なんとなくハジメ、お前の言いたかったことがわかったよ。
けどな……そうやって逃げていても根本的な解決はしないぜ?
いつかは俺もお前も、嫌な現実とも向き合わなけりゃならないんだ。
確証はないが……お前なら大丈夫さ、上手く乗り切れる。
なんせお前は、ハンターとして俺にとって最初の相棒だったんだからな。
少しだけ精神的に成長出来そうな永山君パーティーでした。
このパーティー面子って天職と技能があまり詳細に書かれていないので何とも言えませんが、前衛と後衛のバランスとしては悪くないかもしれませんよね。
(若干前衛が少ないような気もしますが、そこは二次創作のオリキャラ要素が介在する余地アリと他のクロスオーバーのアプローチになるかなと)
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初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡